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貧困ジャーナリズム大賞2021 「貧困」の実態を伝える 報道・ジャーナリストへの評価を

白石 孝(新型コロナ災害緊急アクション)

 反貧困ネットワークは、14回目となる「貧困ジャーナリズム大賞」の募集を開始した。募集するのは、2020年9月上旬から21年10月下旬までに発表された報道活動(新聞、雑誌、書籍、テレビ・ラジオ番組、インターネットなど全ジャンルを含む)だ。組織所属か否かは問わないが、事業者単位ではなく「個人」(グループも)を対象としている。
 「貧困」に関する報道の分野でめざましい活躍をみせ、世間の理解を促すことに貢献したジャーナリストたちを顕彰するという賞だ。これまで日本社会が抱える貧困の問題に関して、隠されていた真実を白日の下にさらしたスクープ報道や、綿密な取材で社会構造の欠陥や政策の不備を訴えた調査報道、また、地道な努力で問題を訴え続けた継続報道などを対象としてきた。取材される側である当事者や専門家の側から見た報道の評価を、年に一度社会に示すのが趣旨だ。
 反貧困ネットワークの役員を主とする選考委員会により、自薦他薦のものを選考し、「貧困ジャーナリズム大賞」を1~2個、「貧困ジャーナリズム賞」を数個、「貧困ジャーナリズム特別賞」を1~2個選考する。応募締切は、10月31日(日)必着。


 昨年は、授賞式とシンポジウムを11月26日に開催。大賞は、「沖縄タイムス」の篠原知恵、又吉嘉例、嘉数よしの、勝浦大輔記者による長期連載「『独り』をつないで─ひきこもりの像─」だった。
 「特別賞」は、「あらいぴろよ」さんのコミック「虐待父がようやく死んだ」と、映画監督隅田靖の映画「子どもたちをよろしく」だった。
 「貧困ジャーナリズム賞」は、以下の10作だ。
 ①中国新聞記者2名の連載「この働き方大丈夫?」。②ドキュメンタリーコレクティブ「DocuMeme」5名によるNHKのBS1スペシャルの「東京リトルネロ」。③NHK大阪の「分断の果てに〝原発事故避難者〟は問いかける」スタッフ。④NHK・ETV特集「調査ドキュメント〜外国人技能実習制度を追う〜」スタッフ。⑤毎日新聞3名の「やまゆり園事件は終わったか」。⑥神奈川新聞取材班「やまゆり園事件」(幻冬舎)。⑦テレビ新潟報道部4名の「桜 SOS~フードバンクと令和の貧困~」。⑧朝日新聞熊本支社2名の「内密出産 国は動かず」。⑨ジャーナリスト藤田和恵の「『コロナで失業』40歳男性はなぜ派遣を選ぶのか」(東洋経済オンライン)。そして最後に⑩東京新聞中村真暁の「足立区生活保護とりやめ問題」。
 大賞は「ひきこもり」報道だった。これは15歳から64歳までの「ひきこもり」者数が115万人と推計(内閣府)され、長期化・高齢化し、80代の親が50代の子どもの面倒を見て生活困窮に陥る「8050問題」が深刻な社会問題になっているからだ。しかし、本人の努力不足や甘えの問題、親のしつけの問題とする「自己責任」「家族の責任」との風潮が強いため、本人や家族の多くはひっそりと身を潜めて暮らしている実態がある。また国や自治体も、重要な社会問題として直視してこなかった。
 沖縄タイムスの報道は、長期取材で本人や家族、支援者らとの信頼関係を築きながら、口をつぐみがちな本人や家族の声なき声を拾い上げた。これまで分かりにくかった本人や家族が直面する厳しい現実と苦悩を「当事者の目線」で伝える報道だと、選考委員会で評価した。
 この報道が全国のひきこもり当事者や家族を大いに励ました。また本報道をきっかけに、官民連携した「ひきこもり家族会」の発足や、自治体のひきこもり支援体制強化に繋がった。報道の重要性と役割を再確認させるものとなったのだ。
 授与式シンポでは、「有名な賞よりこの賞をいただけることが何よりも嬉しく、励みになる」、「報道でこういう賞をいただくのは複雑な思い。いくら頑張って報道しても改善になっていないからだ。副賞金額ゼロが救い」、「どの取材をしても当事者以外は得している社会が見えてくる」、といったジャーナリストの声が印象に残った。
 「貧困ジャーナリズム大賞」はどなたでも「他薦」出来るので、以下のサイトで詳細をご覧いただき、推薦していただきたい。

▼「貧困ジャーナリズム大賞2021」…https://hanhinkonnetwork.org/archives/316

※募集は終了しました

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