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悪政続くも「内閣支持37%」に/どうすれば声が動くのか/阪南大学准教授 下地真樹
4月。新型コロナの流行で緊急事態宣言が発令された。確かに緊急事態ではあったが、仰々しい演出とは裏腹に、対策としての中身はほとんどなかった。「外出・営業自粛なら、経済補償が必要だ」という声も「検査どころか医療自体が受けられない」との声も聞こえないフリで、ひたすら「自力で耐えよ」を求めているとしか理解できない無為無策。批判を浴びて、ようやく10万円の給付金を決めたのが4月30日。この政権には人々の苦しみを取り除こうという意志があるのか?
5月。「官邸の守護神」と名高かった黒川検事長を検察トップに据えるための検察庁法改正案。法律に従えばとっくの昔に定年退職しているはずの黒川を、閣議決定で定年延長したのが違法であったが、その辻褄を合わせるためとしか思えない法案だ。結局法案は廃案となったが、「余人をもって代えがたい」人材であったはずの黒川本人の麻雀賭博が発覚し、あえなく辞任となった。
当初の意図が潰えた、ということではあるだろう。しかしスッキリしない。法改正が「検察が内閣に従属することにつながる」との批判があったが、そもそも検察庁は、ほとんど常に政権と(自民党と)ツーカーだった。冤罪確実事案の再審請求が通るたびに機械的に異議申立てをする様を見ればわかるように、もともと公正さも正義も無縁の組織だ。結局、官邸による検察支配を阻止したとはいえ、そもそもが腐敗している検察という組織の自律性が守られたという話に過ぎない。モリカケでも桜でも起訴に持ちこむなら別だが、そういうことが起きるわけでもなさそうだ。
6月。「一般社団法人サービスデザイン推進協議会」なる団体のことを知る。コロナ対策の一環として実施される事業者向け「持続化給付金」事業の委託を受け、中抜きしてそのまま電通に丸投げした、との疑惑だ。報道や国会質疑によれば、電通からもさらに関連企業への下請けが行われている。火を見るより明らかな不正案件だ。なるほど、世界的パンデミックという危機にあたっても、この政権の縁故主義的性格は平常運転、あるいは「今こそチャンス」ということだろうか。そして電通への投げ銭の迅速さに比して、4月末に決まった給付金はまだ届かないというトロさである。
これが目下のこの国の姿だ。NHKの世論調査によれば、さすがに内閣への不支持率は45%となったらしいが、むしろ、いまだに支持が37%もあることの方に驚く。支持の理由の55%は「他の内閣より良さそうだから」だそうだ。思わずずっこけてしまう回答だが、計算すると世間の20%くらいの人はこう考えている、ということになる。新聞もニュースも見ていないのだろうか。見る暇もないほど日々の生活に忙殺されているのだろうか。いずれにせよ、どうすればこのような人たちに言葉が届くのだろうか。それがどうしてもわからない。
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