見出し画像

【現地報告 イスラエル】「都市計画」名目にしたムスリム墓地の破壊・収容

イスラエル在住 ガリコ美恵子

 テルアビブにある国防省前の公園で、2カ月前から毎週末、イスラエル人左派が「占領を目で見る」という抗議活動を行っている。
 公園の芝生に設置された大スクリーンには、兵士がパレスチナ人に行う残虐行為が次々と流される。立ち止まり、質問する通行人がいる一方で、口論する人もいれば、右派が嫌がらせすることもある。この企画は好評で、パレスチナ占領について考え始めた人もいれば、占領の実態を初めて知る人もいる。
 私も動画を提供しているのだが、イスラエル人権協会(ハアグダ・レスフヨーット・ハエズラハ・べイスラエル)がこれを観て、エルサレムの状況を報告してくれと私に連絡してきた。
 私は、エルサレムで軍や警察がパレスチナ民衆相手に「戦争」している映像の数々を送り始めた。「こんなひどいことをしてるとは想像以上だ。処置する」と返事がきた。
 10月7日、入植者の若者数名が、ダマスカス門の階段広場に、イスラエル国旗を持ってやってきた。イスラエル国旗をパレスチナで掲げるのは、挑発になる。そこにいたパレスチナの小・中学生が抗議の声をあげた。すると警官が、声をあげた少年達を暴力的に弾圧し、多くが怪我を負い、逮捕された。こうしてダマスカス門の緊張が高まった。
 そんなさ中の10月10日、エルサレム旧市街の堀に面したヨセフィーイェ墓地で、工事が始まった。エルサレム市役所とイスラエル自然省共同の「都市計画」の一環で、「旧約聖書の庭道」という名の国立公園になるという。ヨセフィーイェ墓地は、12世紀に造られたムスリム墓地だ。墓石のない無縁仏も多数ある。第一次中東戦争で戦死したイラク兵や、第三次中東戦争で戦死したヨルダン兵の骨も埋葬されている。4年前に暗殺された、私の知人の墓もある。
 ブルドーザーが土を掘り返すと、骨があちこちで現われた。これを知った地元の民衆が駆け付け、骨を埋め、コーランを読んで、鎮魂儀式を行った。これに対しイスラエル警察は、祖父の墓の前に座り込んだ若者を殴って逮捕し、息子の墓にしがみつく女性を暴力的に排除した。
 同墓地は2014年にも3つの墓石が破壊されたが、今回さらに3つ破壊された。残りの墓石は4つとなった。
 10月19日は、ナビ・ムハンマッド(モハメッド)の生誕祭だ。毎年ブラスバンド行進が行われ、ダマスカス門はイスラム教徒で満員になる。ところが今年は、行進終了直後、警察は民衆を散らそうと、スカンクカー((汚水を噴射する大型車)を導入し、音響弾を投げ、逃げない民衆を警棒で殴り倒した。私はこれらの動画を人権協会に送り、人権協会が「警察が違法行為をしている」と批判文書を当局に送ると、翌日、イスラエルの大手テレビ局が来た。警察の弾圧は数日間止まったが、喜んだのは束の間だった。
 ムスリム墓地保存委員会が提出した「工事停止要請」は裁判所に却下され、2週間後、工事が再開された。これに抗議して、29日パレスチナ人が墓地前で集団礼拝を行うと、警察は激しい弾圧を展開した。
 同墓地の横には、ハニ老人の私有地があり、駐車場になっている。占領以前は、羊の売買場に使っていた。政府はそこも没収する計画だ。ハニ老人は抗い、裁判で闘っている。「代償金を払うと言われたが、受け取らない。俺の先祖が残してくれた土地だ。勝ち目はないが、最後まで闘う」と言う。
 マイダン・ニュースによると、当局は10月、東エルサレムで200人以上のパレスチナ人を身柄拘束した。ヨセフィーイェ墓地の工事は今も続いている。

ーー長期ハンストで抗議続けるパレスチナの囚人たち

 パレスチナ囚人6人の政治犯が脱走した時(1763号参照)、当局は全囚人に集団懲罰をした。面会は停止され、拷問、奇襲攻撃が相次いだ。これに対し、捕まった脱走囚を含む囚人250人が、抗議のハンストに突入。9日後、交渉が受理され、ハンストは終了した。ガザのハマス党は、「ガザで拘束したイスラエル兵を解放する条件の中に、脱走囚6人の解放を入れる」と発表した。イスラエル当局がこれに同意するかはまだわからない。
 イスラエルには、拘留理由を明らかにせず、起訴せず、裁判もなしに、ほぼ無期限に拘留する「行政拘留」という制度がある。この行政拘留に抗議して、長期ハンストを続けているパレスチナ人がいる。一部を紹介する。(11月2日時点)
 ケイド・アル=ファスファス(32)は、125日間ハンストを続けているボディービルダーだ。ハンスト開始(7月15日)以降、体重が40㎏減少したが、11月15日、最高裁は、ケイドの勾留半年延長を追認。ケイドは、帰宅できるまでハンストを続ける、と表明した。
他にもヒシャム・アブ・ホーウォッシュは77日間、シャディ・アブ・アカールは70日間、アヤド・アル=ハリミは41日間。彼らは、長期のハンストで、命に危険がある。病院に移送されたが、病室はシャバク(秘密警察)に監視されている。一方、ミクダッド・アル=カワスミ(24)は、113日のハンストの後、来年2月の釈放で交渉成立(11月11日)。ハンストを停止した。
 ミドル・イースト・アイによると、イスラエルの刑務所に、現在4600人のパレスチナ人が収容されているが、うち544人が行政拘留である。

写真:ナビ・モハマッドの誕生日。ダマスカス門周囲で汚水噴射するスカンクカー


【カンパのお願い】いま人民新聞は財政的に苦しい状態にあります。今後も取材活動を行っていくために少額で結構ですのでぜひカンパをお願いします。noteからの振込方法が分からないという方はぜひ以下へお願いします。振り込み先
郵便振替口座 00940-5-333195/ゆうちょ銀行 〇九九店 当座 0333195


いいなと思ったら応援しよう!

人民新聞
【お願い】人民新聞は広告に頼らず新聞を運営しています。ですから、みなさまからのサポートが欠かせません。よりよい紙面づくりのために、100円からご協力お願いします。