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1980年代土地バブル時代に始まる乱開発 熱海「土石流」の深層 闇の中に不動産業者・弁護士・政治家
7月3日、かつては「東京近隣の保養地、別荘地」として開発されてきた熱海の高級住宅街で前代未聞の土石流が発生し、死者28人を出す大惨事を引き起こした。当初は自然災害のように報道されていたが、次第に乱開発による人災であることが明らかとなっていった。
熱海は江戸時代に始まる保養地だが、この地域で本格的に不動産開発が始まったのは1980~90年代のバブル景気時代だ。
東京から新幹線で1時間半、温泉あり山あり海ありという好立地とあって、土地バブルに乗ってホテル、リゾートマンション、高級住宅地の開発が始まった。
不動産業者は熱海周辺の土地を買いあさり、リゾートマンション・ホテル街に変身させた。
バブルが去った後も、別荘地やリゾートマンションは新幹線で東京圏へ通勤するサラリーマンの高級住宅へと変わっていく。
今回の土石流惨事の現場は、伊豆山から相模湾に流れる2級河川逢初川の谷間で、建設残土による盛り土を2007年熱海市に申請したのは、小田原市の不動産業社、㈱新幹線ビルディングである。
だが残土は許可量をはるかに上回り、中には建設廃材や産業廃棄物が混ぜ込まれている、と住民から苦情が市に何度も寄せられことから、熱海市議会でしばしば問題となった。熱海市から是正するよう指導が入ったが、ことごとく無視し工事は続行された。
2011年、当該の土地は熱海市が固定資産税未納を理由に一旦は差し押さえている。しかしその3日後には差し押さえは解除され、現在の土地所有者㈱ZENホールディングスの麦島善光社長が即日買い取っている。これは、行政も絡んだ両社による開発と売買の役割分担といっても過言ではない。麦島といえば知る人ぞ知る大物実業家で、長野や愛知、大阪などを股に掛け、不動産業・学校法人・社会福祉法人など幅広い事業を展開してきた。
この二業者は他所でも違法な産廃の不法投棄を行い、地域住民からしばしば訴えられており、熱海市でも問題企業として指導監督が入っていた。㈱新幹線ビルディングの天野二三男元社長は、自民党系の同和団体「自由同和会」の中心人物で、自民党二階俊博幹事長とのパイプを持つと言われており、熱海市役所でも恐れられていた。
また2016年、ZENホールディングスの子会社麦島建設は、受注した都内のビル解体工事で、電力設備からPCB(ポリ塩化ビフェニール)が流出し、追加費用をめぐり係争となり、3年間放置した後回収したという。
熱海土石流からは、1980年代以前に使われていたトランス(変圧器)やコンデンサー(蓄電器)などPCBが多く含まれる電気機材が土砂の中から見つかっている。
この札付き企業グループが、なぜここまで大っぴらに乱開発、不法投棄を行うことができたのか。それは、現在の該当土地所有者であるZENホールディングス会長・麦島と深い関係にある敏腕顧問弁護士、今や反原発訴訟の先頭に立つ河合弘之氏の存在がある。
崩落現場近くでは、太陽光発電のための違法な森林伐採が行われてきた。当然山の保水力は失われ、近年問題となってきた再エネ乱開発のハシリであった。河合弁護士も再生エネルギー推進論者で、この太陽光発電にも深くかかわっている。再エネ乱開発と今回の土石流との関連はまだわかってはいないが、そこには闇の人脈が伺える。。
そして突然、登場するのが先般の静岡知事選で勝利した川勝平太知事だ。「この熱海の開発には何の問題もない。新しい天災といっていいものだ」とでしゃばり、㈱新幹線ビルディングを擁護に動き出していた。その裏にも政治取引が匂っていたが、人災であることが明るみになるや、「違法工事の疑いがあり、再調査する」と言い出した。
裏社会・裏人脈、一見普通に見える不動産会社や有名弁護士・政治家が入り組み、複雑怪奇な問題が次第に顕在化してくる。これを司法の力で解明するのは並大抵なことではない。
土石流で肉親28人を亡くした遺族は17日、㈱新幹線ビルディングの元社長・天野二三男を重過失罪で刑事告訴した。
同じく土砂災害にあった住民も損害賠償を求めて、現土地所有者ZENホールディングスを相手に民事訴訟を起こす準備を始めている。
さて、ZENホールディングスの河合弁護士や、㈱新幹線ビルディングの蜂谷英夫弁護士は、どんな対応をするのか?
(編集部 松永)
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