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ビスタをスコープにだってぇ??

『ロッキーVSドラゴ:ROCKY IV』を鑑賞してきた。よくもまあ、これだけの未使用テイクがあったなぁと思いながら、正直やっぱり鑑賞前に一番心配していた懸案事項がダメで、鑑賞中、妙な居心地の悪さを感じながらみていた。それは・・・

画面アスペクトがビスタ(1:1.85)からスコープ(1:2.35)に変更されたこと。

 画面アスペクトの技術的な話はこちらを参照していただくとして、はやい話が映らない部分が増えただけでなく、構図のバランスがおかしくなってしまったという印象が拭えないのだ。大体再編集バージョンを作るにあたってアスペクト比を変えるなんて、あまり耳にしたことがない。そのぐらいの暴挙だと思う。

 ただ例外はあった。80年代のビデオ草創期。テレビ画面が4:3だったため、画像いっぱいにうつすためには、映画の画面をトリミングしなくてはならなかった。特にスコープサイズの映画の場合は、画面のかなりの部分が切られたのだ。そこで映画は映画、ビデオはビデオで作業しやすくした方法が、スーパー35というやり方だった。これはテレビとほぼ同じアスペクト比のスタンダードサイズで撮影し、上映時にマスクをすることでスコープやビスタで上映するという方法。ただし撮影時にある程度、テレビでもスクリーンでも大丈夫なように意識していたやり方だ。『ブラック・レイン』や『トップガン』『ターミネーター2』がそうだった。
 しかし今回は違う。最初の撮影時にスコープなんて意識しているわけがない。

 『ロッキー』はスピンオフの『クリード』2作をのぞいて、すべてビスタだ。撮影監督はビル・バトラーという方で『ジョーズ』で知られる方。またこの方は『ロッキー』シリーズで2~4まで担当されて、スタローン監督と組んでいる。いわば『ロッキー』の画調を決めた方とも言える。ビル・バトラーは御年101歳、さすがに関わっていないようだ。そうするとスタローンの独断? その可能性は高い。というのも撮影の立場からすると気持ち悪い構図がいっぱいなのだ。
 ご存じの方も多いと思うが、アメリカでは撮影の責任者は撮影監督で、撮影場所やカメラの設置位置、カメラ移動や照明など、撮影全体の方向性を決める。だから撮影監督はカメラのオペレートはしない。別にオペレーターがいて、その人がやる。そのオペレーターだが、特に意図なくフレーム枠に人物をくっつけてしまうと首になるといわれていたと聞いたことがある。はやい話が、そんな居心地の悪いフレーミングはしないということなのだ。そのぐらい映画のストーリーテリングで構図が果たす役割は大きい。

 そんなに違うのかって? 違う。ここからご覧いただく映像は『ロッキーⅣ』の映像(ビスタ)をもとに、そこから、私がスコープのフレーミングにしてみたものである。上がビスタ、下がスコープである。

 私がただ単に『ロッキーⅣ』に見慣れていただけかも知れない。でも、再編集版などが出るたびに思うのだが、オリジナルバージョンのファンは、ちょっと自分の感性や過去を否定された気分がするのも事実である。私はそこまで『ロッキーⅣ』を評価しているわけではないが、ビル・バトラーがどんな感想をもったのか、それだけが気になっている。

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