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サンタが庭で転んで賠償請求?

オーストラリアのミッチェル弁護士から、弁護士ならではの法的視点から見た季節のお便りが届きました。南半球のオーストラリアのクリスマス!世界中を駆け巡るサンタさんは必読です。

サンタが庭で転んで賠償請求?

ここオーストラリアでは、クリスマスを盛大にお祝いします。日本でいう元旦みたいなものでしょうか。宗教的な重要性(キリスト教で最も重要な日であるイエスの誕生を祝う)とは別に、2024年12月24日のクリスマス・イブから祝日が続くことで日常生活にも影響があり、ほとんどの職場は2025年1月6日までの2週間(も!)お休みです。

我が家では、クリスマスは家族と祝う特別で楽しい時間であり、サンタクロースからのプレゼントを含め、大いに盛り上がります。一年間良い子にしていれば、クリスマス・イブにサンタが家にプレゼントを運んできてくれると子供たちは信じています(いました)。

サンタ論争はどこの家庭でも起こると思いますが…
サンタ論争と言えば…
サンタ論争といえば、1935年のハリウッド映画「マルクス兄弟」に出てくる有名なセリフを思い出します。
グルーチョ・マルクス(弁護士役)がチコ・マルクスにビジネス契約の内容を説明する場面で、その契約には「正気条項」が含まれていることに言及します。
法律用語で、契約書に含まれるこのような条項は、契約当事者の一人が心神喪失に陥った場合、契約無効となることを意味します。それを聞いたチコは不安になりますが、グルーチョは「大丈夫、どの契約書にも書いてあるから」と言いきかせます。チコはその後、サンタクロースはいないという含みを込めて “You can’t fool me, there ain’t no Sanity Clause (Santa Claus) ”「私をだませませんよ、正気条項なんてないでしょ(サンタはいないでしょ)」と答えます。

クリスマス休暇が合法ではなかった時も

クリスマスに関係する法律は他にもあります。

信じられないかもしれませんが、イギリスでもアメリカでも、クリスマスのお祝いは常に合法だったわけではありません!例えば、1600年代半ばにイギリスとスコットランドの両議会は、クリスマスの「ユール」休暇を廃止する法律を可決しました。

また1659年から1681年にかけて、マサチューセッツ州でも同様の禁止令が出されました。これは、ピューリタンの入植者たちが、クリスマスの祝宴は神への冒涜であると考えたからです。

現在、英国ではクリスマスは合法です(かつ、奨励されている)。しかし、サンタのかっこうをして車を運転するのは運転に支障をきたす可能性があるため違法です!!

そして、クリスマスを祝うことは、北朝鮮を含む少なくとも5つの国で禁止されています。

おそらく、それらの国ではサンタは歓迎されないのでしょうね。

狙っているのは家族だけではなく…(=^ェ^=)

本題。サンタさんが転んで怪我をしてしまった!

さて、もしサンタが実在し、クリスマスプレゼントを家に届けた後、庭の小道を横切る電気コード(クリスマス・イルミネーションの電源に使われている)につまずいて怪我をしたらどうなるのでしょうか。サンタは金銭的補償を求めて訴訟を起こせると思いますか?

オーストラリアの土地の所有者は、その敷地に立ち入る者に対して、安全のために合理的な措置を講じることを保証する法的注意義務を負っています。この法律の基本的な根拠は、敷地内に立ち入る訪問者が、土地の状態によって怪我を負うことがあってはならないということです。

サンタは、通院・治療費、所得損失、将来見込まれる出費に対する手当など、金銭的補償を求めて、土地所有者を訴えることができます。

サンタが賠償金を得るには、怪我の原因となった危険を引き起こした法的過失があることを証明しなければなりませんが、それは刑事上の過失ではなく、訪問者の安全に対する合理的な配慮を怠ったというレベルで問題ありません。

電気コードを訪問者の通り道に這わせたことは、民法上の過失として裁かれる可能性が高いです。コードをテープで覆ったり、通り道ではなく家の壁沿いにコードを這わせるなどして、家主が適切な予防措置を講じていれば、サンタの負傷を防ぐことができたはずです。加えて、コードにつまずく危険性があることを標識に書いてサンタに警告しなかったことも影響がありそうですね。

また、サンタの到着時に庭の小道が薄暗かった場合、それが怪我の可能性を高める一因になりますので、通り道にガーデンライトを設置していれば、サンタは電気コードにつまづくことはなかったでしょう。

訪問者は合法的なゲストか否か、来そうな人だったか否か

オーストラリアの各州には、この種の金銭補償を課すことを規制する法律があります。考慮される側面のひとつに、訪問者が合法的なゲストか不法侵入者かということがあります。

もしサンタがそのお宅を訪問する合法的な許可を得ていない不法侵入者であるとみなされた場合、法律によってサンタは金銭的補償を受ける権利を失う可能性があります。

不法侵入=犯罪とみなされるため、犯罪行為から利益を得るべきではないというのがその根拠です。

さらにひねりが加えられているのがオーストラリアの法律で、不法侵入者の存在が家主によって合理的に予見可能であった場合、不法侵入にもかかわらず、その訪問(侵入)者は金銭的補償を請求する権利を有します。

クリスマスの想い出〜大勢の家族と3ペンス硬貨入りケーキ

私が若かったころの話ですが、クリスマスといえば、オーストラリア南部の歴史ある町バララットで、親戚一同とともにお祝いをするのが恒例でした。

私の叔母が作る美味しいクリスマス・プディングの中には、新年の幸運と富の象徴として小さなコインを入れる習慣がありました。サーブされたケーキの中にコインを見つけると幸運が訪れるとされ、この素敵な伝統は1300年代初期にイギリスでクリスマス・イブのケーキの中に小さな銀貨を焼き込んだことにさかのぼります。(オーストラリアで現在使われている硬貨は異なる金属でできており、食べ物に混ぜるのに適していないため、叔母は、若い頃から大切に持っていた歴史的な3ペンス硬貨を使っていました)。

今年のクリスマスも我が家では、クリスマスハムの最初の一切れを誰が受け取るべきか、家族内で目まぐるしい論争が繰り広げられることでしょう。正当に考えて、ハムを調理した人が、最初の一切れを受け取る権利がありますよね?

クリスマス・プディングにコインが入っていてもいなくても、新年にたくさんの幸せが訪れることをお祈りいたします。メリー・クリスマス!!

皆さんにも幸運が訪れますように!


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