「ダメ、ゼッタイ」なんてクソ食らえ!もっと大事なことを伝える薬物乱用防止教室
こんにちは。JinJinです。
今回は薬物乱用防止教室について書きたいと思います。
私は毎年、中学校で薬物乱用防止教室の講師をさせて頂いています。
多くの方が学生時代に一度は受けた記憶があると思います。
そう。あの「ダメ、ゼッタイ」の授業です。
私の記憶では
麻薬や覚醒剤は強い依存性を持ち、一度使ったらハマる
一度でも薬物に手を出したら人生終わり
薬物やめますか?それとも人間やめますか?の二択
という内容を1時間聞かされるというものでした。
もちろん生徒さんに薬物の恐ろしさを伝え、手を出さないでもらうことは大切です。
ですが、「人生終わり」や「人間やめますか」には違和感があります。
1. JinJinの薬物乱用防止教室
私が近年実施している薬物乱用防止教室は一味違います。
薬物の恐ろしさを伝える
はじめの1/3ほどの時間で薬物の恐ろしさをお伝えします。
実は私の勤務先には薬物の問題を抱えた患者さんもおられます。
私が患者さんに教えてもらったことも織り交ぜ、身近な問題として捉えてもらえるよう心掛けています。
主に次のような内容について説明します。
各薬物の特徴
耐性・依存性
身体機能への影響
精神機能への影響
社会機能への影響
特に「社会機能への影響」では、
「誰にも迷惑をかけないのだから薬物をやるかどうかは本人の自由だ」
という主張について生徒さんと一緒に考えます。
社会の中で一人で生きているのであれば「誰にも迷惑をかけない」かもしれませんが、そんな人がどれだけいるのでしょう。
誰もが多かれ少なかれ、周囲の誰かとつながりながら社会生活を送っているはずです。
でも、ここで気をつけなければならないことは、本人は「一人で生きている」と感じている可能性があることです。
後の方で話題にしますが、孤独や不安、生きづらさの中で必死で生きているのかもしれません。
ロールプレイ
次の1/3の時間は薬物の使用を誘われた時の断り方を一緒に考えて、ロールプレイをやります。
私が薬物を勧める人を演じます。そして生徒さんがそれを断るというロールプレイです。
頭ではわかっていても、親しい人の誘いを断ることは難しいものです。
ロールプレイであっても体験しておくことは大事です。
私の薬物乱用防止教室のロールプレイでは以下のように場面設定もしっかりやります。
あなた(生徒さん)のお兄ちゃんの中の良い友達
これまで何度も一緒に遊んだ仲
成績優秀でスポーツもできるし、面白い先輩
今はあなたの自宅に遊びに来ていて、お兄ちゃんがコンビニに買い物に行っている
あたな(生徒さん)は試験前で勉強しないといけないんだけど、なかなか集中できなくて、このままだと点数がヤバいことになりそう
「集中して勉強できるためのいいサプリがあるんだけど、やってみない?」という誘い
生徒さんも最初は戸惑いや恥ずかしさがあるようですが、だんだんとその気になってくれます。
毎回、ロールプレイに参加してくれる生徒さんは上手に薬物の誘いを断ってくれました。
薬物使用の背景と手を出してしまった後の対応
残りの1/3の時間は薬物に手を出してしまう背景と、手を出してしまった時の対応がテーマになります。
薬物に手を出させないことが目的とされる薬物乱用防止教室で、手を出してしまったときの対応を話題にすることには賛否両論あると思います。
しかし、決して失敗することのない人生なんてないはずです。
まして、薬物使用のきっかけになる感情というのはありふれたものだと言われています。
例えば覚せい剤を使用したくなったときの感情の上位として次のようなものが挙げられています。
そんな気分に対して自分なりに精いっぱい抗って、克服しようとして、もがいて、苦しんで、だけど負けそうな時に薬物使用という選択肢を選んでしまうことがあるのです。
「ダメ、ゼッタイ」「人生終わり」「人間やめますか」しか知らされていない若者がどうしようもなくて、追い込まれて薬物使用に至った場合、彼らはその後どうするのでしょう。
誰にも言えず、助けを求めることもできず、薬物使用を続けて重症化していくか、自ら命を絶つかくらいしか選択肢がありません。
実際には病院や行政・保健機関などへ相談することができますし、治療を受けることができます。
そして決して楽ではないかもしれませんが「人生終わりじゃなく」「人間として生きていく」ことが可能なのです。
2. 市販薬の過量服薬
私の薬物乱用防止教室では、従来あまり話題にされることはなかった市販薬の過量服薬(OD)も話題にします。
特に若い世代では市販薬のODは大きな問題になっています。
インターネットで検索すれば、「おすすめの薬」や「おすすめの量」などの情報が簡単に見つかります。
市販薬といえども、ODによる身体・精神への害は甚大です。
絶対にしないでほしいと伝えます。
本来、誰かを助けるためにある薬が、間違った使い方によって誰かを傷つけるものになってしまう。
そんな状況は薬剤師として見過ごせません。
でも、ODしないといけない状況に追い込まれてしまう子供たちもいます。
多くの子供達にとって、自宅は安全で心休まる場所のはずです。
しかし、残念ながら自宅が心休まる場ではない子どもたちも少なくありません。
家族と過ごす時間が増えることで、心に傷を負う時間が増えてしまう子供もいるのです。
そう、DVや性被害、モラハラなどです。
「少しでも楽になりたい」「違法な薬はこわい」「親にバレずにできる対処法は」と考えた結果、市販薬のODへと向かってしまうケースがあるのです。
一部の人は「意志が弱い」「逃げている」などと言うでしょう。
では追い込まれている子供たちにそれを伝えて何になるのでしょう。
彼らに必要なものは「正しい知識・情報」と「信頼できるひと」のはずです。
薬物乱用防止教室の中でこういったことを伝えていくことで、生きづらさや孤独、不安を抱えて苦しんでいる若い世代の人が1人でも救われるといいなと願っています。
3. まとめ
昭和の時代から続く薬物乱用防止教室ですが、時代の変化に合わせて、そして社会情勢の変化に合わせて、伝えるべきメッセージもアップデートしていくべきだと思います。
もちろん「ダメ、ゼッタイ」も大切ですが、
「道はある!味方もいる!ゼッタイ」
を覚えて帰っていただくようにしています。
最後までご覧いただきありがとうございました。