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給与という企業の意思のこれから #かわる初任給

寄稿している日経COMEMO#かわる初任給 というテーマ企画、この2-3年の間で2度の経営統合をおこない「人事・評価制度」をアップデートし、2019年には等級ごとの月例賃金の下限値を見直した当社においても、初任給をはじめとした各社給与や人事・評価制度の話題は非常に気になるところ。

最初に書くと、今回のテーマでもある「能力によって初任給を変える会社が出てきました。このような変化をどう思いますか?」に対する自身の答えは肯定的である。但し、実施する企業ごとに

・自社のたたかう事業領域やフェーズ、収益性はどうか
・変更後も柔軟に変えていくことやその為の対話を厭わない覚悟を
・給与だけでない社員への還元は何かを試行錯誤し続ける

が必要だと感じる。

自社のたたかう事業領域やフェーズ、収益性はどうか

下記の記事などを見ると、ソニーは新入社員の初任給を人工知能(AI)などの先端領域で高い能力を持つ人材については、2019年度から年間給与を最大2割増しに変更。

19年春の新入社員が約400人、5%ほどの社員が対象とのことなので、20人程度の新入社員が従来の約600万円相当より、2割ほど高い720万円相当の年間給与を得る人が出てくる。

これらはGAFAやアリババなどとの、グローバルにおける人材獲得競争を考えれば、ある意味で自然な流れだ(※記事内に出ているファーストリテイリングなども同様にグローバルで人材獲得をおこなう企業)。

他にも大企業を中心に、初任給変更のニュースは多い。ここについては、第三者である他社の人事にはその善し悪しはわからないし、初任給が高い=それだけの権限と責任はセットだと思っており

初任給や給与だけを上げれば良いという話ではなく、その給与で採用した人材がきちんとそのパフォーマンスを出せる環境づくりや、その個人が力を引き出せるような成長支援が大切になってくる。企業人事や経営陣としては、

組織としての自社のたたかう事業領域やフェーズ・組織の収益性から現状のあるべきを正しく考え、競合他社含めた市場環境と人材の市場価値を知り、その上で目指したい状態(ベンチ―マークしたい立ち位置など)を意思をもって設定し、そこへの道筋をつくり続けていかなければならない。

変更後も柔軟に変えていくことやその為の対話を厭わない覚悟

年功序列、終身雇用といった高度経済成長期とともにあった仕組みも、これからの企業運営においては、一概に正解ではなくなったことは多くの社会人が知るところである。

インターネット以降、あらゆる企業においてより早い変化が求められるようになったが、一方で誰もが変化し続けるというのは、そんなに簡単なことではない。20‐30年と積み重ねてきた経験やスキルをそう簡単には手離せない。

今はイケイケのベンチャー、スタートアップ、誰もが憧れるような企業に在籍する若者だって、いつかは年を重ね、経験やスキルを武器に仕事をしたり、変化に対する抵抗感がないという人は稀になるだろう。

初任給や給与もその時代時代において、これからも変わり続けていくだろう。ましてや副業兼業が解禁されつつある今、1社のみから給与を受け取る人も減っていくはずだ。就業する個人の意識にも、そういったリスクヘッジの意識は広がっていくだろう。

僕自身は企業としての給与レンジや人事・評価制度をころころと変えていくことを推奨しているわけではないが、自社の状況や目指すべき状態と実態をふまえて、変更後も柔軟に変えることを恐れないこと(もちろん社員の生活は守ることは前提に)は、大事だと考えている。

そして変えていく時には何をもとに変えるのかや、どうしていきたいのかの意思を、その過程を出来る限り透明に、見えるように対話していくことが求められていく。嘘や化粧はバレる時代。大切なのは自社の意思を明らかにし、対話し続ける覚悟だ。

給与だけでない社員への還元は何かを試行錯誤し続けること

先に述べたように、社会生活を送る上では誰もが変化を好んで出来るわけではないし、どんなに変化をし続けてきた人だって、家族や自身の就業をとりまく環境(ライフイベントや健康状態)によっても、その考え方やパフォーマンスは変わり続けるだろう。誰しも未来がどうなっているかまでは見えない。

ハイリスクハイリターンのチャレンジをしたい人・したい時期もあれば、ローリスクローリターンをしたい人・したい時期もあるかもしれない。個人のバックグラウンドによっても異なるだろう。それが出来るかどうかは企業の事業領域やフェーズ、収益性によっても変わってくるし、企業として社員の誰にどう報いるかにも意思が必要だ。

会社が永久に存続し、終身雇用を保証してくれる時代ではないことは皆が気づいているからこそ(もちろん企業はその努力をし続ける)、在籍時に社員に対してどう報いていくか、給与だけでないあり方、成果への報い方を考え、試行し続けなければいけない。それは休み方や働く時間の長さかもしれない。働く環境や場所、雇用のあり方かもしれない。

極端に言えば、自社がなくなったとしても社員が社会で求められ続ける力や変化への耐性を身につけていく機会をつくっていくこともその一つかもしれない。最近では、正社員を退社し、「業務委託契約」という形で社員との関係性を結びなおすタニタのような会社も出てきた。

社員は会社との契約を結びなおすことで、他社とも個人の意思で仕事を出来るようになり、従来よりも一歩外に出て良い緊張感と危機感を持ちながら、自身のスキルや経験を修練させていくことになる。これも一つの支援とも言えるだろう。

くしくも新型コロナによって、働き方は激変しつつある。リモートワークは多くの企業で当たり前になり、コロナ収束後の働き方も変わっていくとも言われている。(※もちろん小売や物流、医療、飲食など、それが難しい業態もあり、今この瞬間も現場にいる全ての方々には本当に頭が上がらない)

初任給は入り口には過ぎないし、給与におけるお金は社員に報いる一つの手段に過ぎない。給与という企業の意思のこれから、そしてその姿は変わり続けていかなければならない。

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最後に当社において少し触れておくと、いわゆる新卒特化の採用活動は2018年以降おこなっておらず、通年で第二新卒・既卒を問わない形での採用活動をおこなっている。その為、近年は新卒2-5年目くらいの中途社員の採用が増えてきており、給与の実態はその人自身の持つ経験やスキルなどを考慮し、決定される。

ちなみにいわゆる新卒=大学卒・院卒学生の場合は、面談などの後、社内にてインターンシップシップを1カ月以上、実施してもらうようにしている。(※これは入社後ミスマッチをゼロにしたいという観点でもある)

結果として新卒が入社した場合は月給30万円(みなし45時間分こみ)からがスタートラインとなる。但し、これも2019年の見直しによって変更になり、等級ごとの月例賃金の下限値に合わせたものである。(※小売企業としての他社や、採用でバッティングする企業との実態をみて見直している)

※給与以外の支援のあり方も自社のnoteに記しているので、お時間あれば是非見て頂ければ幸いです。




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