D&Dリプレイ おじいちゃんの湯治 - ゼフの日誌
温泉なるものがあるらしい。なんでも熱い湯が地面から湧いており、それを貯めて身体を浸ける。身体が温まり腰や膝の痛みを癒してくれるという。冒険続きで節々にガタがきているわしを連れて行こうと計画してくれたようだ。仲間たちの心遣いがうれしい。ポトンなどは温泉で呑む酒を楽しみにしているだけのようにも見えるが。普段は川の水を少々浴びるくらいだが、温泉で汗を流すというのは衛生面でも興味深い。
険しい山道を登る。温泉というものは山奥にあるらしい。膝を癒しに行くのに膝を酷使するという矛盾。今度、浮遊盤呪文を見つけたら呪文書に追加しよう。進むにつれ蒸し暑くなってくる。蒸気が立ち込め硫黄の匂いが強くなる。
にわかに空気中の魔力が濃くなり、蒸気がモンスターの形を成した。メフィットが4体、ドレイクが4体。蒸気のエレメンタルといったところか。全員武器を構えこれを迎え撃つ。
湯気のブレスや倒した時の爆発などでじわじわと体力を削られる。騒ぎを聞きつけたのかマグミンという炎をまとったエレメンタルも現れる。大混戦になり敵味方が入り乱れている。
ポトンが離れてくれと叫んだので一時離脱して距離を置く。ポトンは火球呪文を唱え始める。広範囲を焼き尽くす炎の呪文。そういえば最近使えるようになったので、一度撃ってみたかったと言っておった。なんとポトンは自分を中心に発動して、敵を全て攻撃範囲に収めるつもりらしい。しかしそれは……。次の瞬間、炎が大きく広がり、少し離れていたわしの所まで熱風が飛んでくる。炎の中心にいたポトンは真っ黒焦げになり、髪もひげもチリチリに縮れている。一方、モンスターどもは……1体も減っていない。むしろ火を浴びて気持ちよさそうに勢いづいておる。熱を操るエレメンタルじゃからな。そんな気はしていた……と呆れる仲間たち。ポトンは自分を焼いただけの結果を見ると、いじけて座りこんでしまった。しかしやり切ったという満足感でいっぱいの顔をわしは見逃さなかった。
その後、バーラシュの装備にエレメンタルの火が燃え移り危うい場面などもあったが、どうにかエレメンタルどもを退治することができた。
山あいの小さな村にたどり着く。黒こげのポトンを見て村人が驚いている。休む場所を提供してもらう。村人にこの辺にあるという温泉について尋ねる。確かにもう少し進んだところに温泉があるという。だが最近その温泉を占拠している不届き者がいるらしい。ぶよぶよの巨人とペットの虎だとか。温泉はこの村の名物だが巨人が居座っていて迷惑しているという。
温泉に入るためにも、この村を助けるためにも、巨人を排除することに。硫黄の匂いが強まる山奥へとさらに分け入る。
進むにつれ木々や茂みが減り、岩がちの地形へと変化していく。湯気が濃く立ち込める窪地にたどり着く。大小の泉が点在し、そのいずれからも湯気がのぼっている。これが温泉というやつか。ひと際大きい温泉に1体の巨人が浸かっている。その近くの小さい温泉には虎と狼までも浸かっている。野獣も温泉を好むようだ。
巨人はわしらに気付くと縄張りを主張し、ここから立ち去るように警告してきた。説得できる相手ではないと結論付け、わしらは武器を抜く。
ハリオンは先手を取り真っすぐ狼に向かうと拳の連撃で黙らせる。
わしはバーラシュに加速呪文を唱える。動きが目に見えて速くなったバーラシュは風のように巨人の後ろに回り込むと、2本の太刀で流れるように斬りつける。あまりの速さにまるで4本の腕があるように見える。
ハリオンは巨人の頭が下がった瞬間を見逃さず、こめかみに矛の一撃を叩き込む。巨人は一瞬、意識を失ったようだ。片膝をついて動きを止めている。全員で一斉に追撃する。
ポトンは巨人と虎に対して火球呪文を唱える。先ほど自分を巻き込んだ時の威力に恐れをなしたか、炎の威力は今ひとつだった様子。虎がわしの方に向かって来ないように抑えてくれている。頼れる男。
巨人も反撃を試みるが意識が朦朧としているのかバーラシュを捉えることもできない。わしらの激しい波状攻撃を受けて、ついに巨人はうつ伏せに倒れ動かなくなった。
さっそく温泉に浸かってみる。さっきまで巨人が浸かっていた湯はなんとなく避ける。衛生面に問題がありそうな気がする。温泉ではローブや鎧は脱ぐのが礼儀らしい。武器も防具も手放している今、モンスターに襲われたら危ういな、などとポトンの立派な腹を見ながら考える。念のため呪文焦点具のペンダントだけは身に着けておく。
体が温まると腰と膝が楽になった。しかも肌がツルツルのスベスベになった気がする。温浴の効果だけでなく薬効もあるように感じる。ポトンがわざわざ持ってきた東方伝来の蒸留酒を分けてもらう。ほろ酔いの頭で考える。ここからまた歩いて帰るのは面倒極まりない。ここに住めたら最高じゃな。