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D&Dリプレイ 地獄の戦場アヴェルヌス(3) - ディアの記録

D&D5e ヤマタイカDM「地獄の戦場アヴェルヌス」第3回セッション、ディア視点のリプレイです。ネタバレを含みます。ご注意ください。
・ディア:ティーフリング、ローグ
・ディレク:ドラゴンボーン、ファイター
・リラ:フォレスト・ノーム、ドルイド
・フリント:ヒル・ドワーフ、ウィザード
・シシリア:ヒューマン、クレリック

店主アランの依頼

エルフの歌亭、店主アランからの依頼は単純なものだった。ハーフオーガと荒くれ者の一団が金貨60枚ほどのツケを溜めてこんでおり、それを回収したいというものだ。やつらが根城にしている廃屋の場所は分かっているらしく、地図を示して教えてもらった。

話のついでに先ほど聴こえたエルフの歌が話題になった。この店には昔からエルフのゴーストが居着いており、常連客に毎日のように歌を聴かせるのだとか。その歌がこの店の看板てわけ。普段は死んだ恋人への思いを歌っているのだが、今日は様子が異なり「地獄へと乗り込む者ら」とかそんな一節があったようなのだ。

「そんなおセンチなゴーストが、なんだって急に地獄とか言い出したんだい?」誰にともなく尋ねてみる。
リラとフリントによればゴーストは別の次元に干渉しており、時に予言めいたことを伝えることがあるとか。
「店の中で普段と違ったことと言えば、あなたたちが暴れたことぐらいだ。あなたたちに関する予言かもな」店主アランがからかい半分で言う。
自分たちに関係する予言だなどと言われたら気になってしまう。アランに歌詞の詳細を尋ねるがもう覚えていない。もう一度歌ってもらうよう店主からゴーストに頼んでもみたが、ゴーストは沈黙している。依頼をこなしたらもう一度頼んでくれるようアランと約束し、ひとまずツケの取り立てに向かった。

アランに教わった場所には家とも呼べないようなあばら家がかろうじて建っていた。壁はボロボロ、屋根は抜け落ちていて今にも崩れてしまいそうだ。中から数人の粗野な笑い声が聞こえてくる。

夜闇にまぎれて窓からそっと中の様子を窺う。ハーフオーガとならず者風のヒューマン2人。楽しく酒盛りの最中らしい。ディレクが念のため裏口を調べてくると言ってあばら家を一周してきた。さすが経験豊富な傭兵は一味違う、そつがない。

裏にも出入り口がひとつ。それと別の部屋から何者かのいびきが聞こえたという。酒盛りの3人以外に誰かいるようだ。このハーフオーガたち、まともにツケを請求したところで払うような連中には見えない。どうやって取り立てるか仲間と相談しているとリラが面白いことを考えた。

幻術で寝ているやつの振りをしてハーフオーガたちに声を掛け、なんなら同士討ちさせようというもの。自分で言い出しておいてリラは恥ずかしそうにしている。簡単な幻術ならあたしも使える。リラはあたしにやらせたいのか伏し目がちに見てくるけれど、言い出しにくいのかもじもじしている。そのかわいらしい様子にいたずら心が湧く。無言の訴えに気づかない振りをして、言い出しっぺのリラ自身にやってもらうことにした。

リラは顔を真っ赤にしながら頑張って罵声をひねり出し、いびきが聞こえた方向から「バーカバーカ」と粗野な声をまねて幻術で音を出した。ハーフオーガは一瞬、あっけにとられた顔をしていたが、まったく騙された様子もなく激高し始めた。
「おれをバカにするやつはだれだ?!こんなのにだまされるとでも思ってるのか!」ハーフオーガは顔を真っ赤にして武器を取ると、なんとあばら家の壁をぶち破って外に飛び出してきた。リラは顔を青くしている。ああ、面白いものが見れて満足した。ここからは荒事の時間。どうせこうなるだろうと思っていたのよね。

あばら家の中で、ならず者が奥の部屋に駆け込んでいくのが見えた。寝ている仲間を起こしに行ったみたい。人数が増える前に出来るだけ叩いておきたいところ。リラはクマに変身してハーフオーガと正面から戦いに行った。ディレクは「ツケを回収しに来た」と宣言してあばら家に侵入、威圧するようにならず者に迫り、支払いを求めるがそう簡単にはいかないようだ。あたしも真似をしてハーフオーガに啖呵を切るが、ハーフオーガは目の前のリラ(クマ)との力勝負に夢中で聞いてもいないようだ。

その時、派手な音を立ててあばら家の壁が吹き飛んだ。壁にできた大きな穴からは、大きなハンマーを持った1体のオーガが出てきた。いびきの正体はオーガだったらしい。こちらは生粋のオーガのようで片言の共通語で「ムスコ、イジメル、ダレダ!」などと叫んでいる。こいつら親子かい?そんなオーガの目の前でリラ(クマ)が鋭い爪を振り下ろし、ハーフオーガを打ち倒した。うつぶせにのびているハーフオーガを踏み越えて、リラ(クマ)はそのままオーガと戦い始めた。ここは彼女に任せて大丈夫そう。あたしはそっと距離をとる。おっかないオーガには近づきたくないもの。

あばら家の中ではならず者2人を相手にディレクが傷だらけになりながら奮闘している。あたしは窓から様子を窺っていたが、隙ありと見て素早く窓を開け、ショートボウでならず者を狙い撃ちにした。矢はならず者の眉間を貫き、ならず者はその場に倒れた。

シシリアはディレクの怪我を気にしているが、オーガが行く手を遮っていて通ることができない。オーガを排除すべく魔法を撃っているが気もそぞろでなかなか当たらないようだ。

あたしはディレクの加勢をするため窓の外から矢を放っていく。金の在りかを聞き出す必要があるので、1人は生かしておきたい。殺さないように狙いをずらして撃ったが敵の動きが偶然重なって急所を捉えてしまう。かろうじて生きているようなのでよかったが危ないところだ。瀕死のならず者をフリントがスリープの呪文で眠らせてくれた。無力化する魔法は便利だ。あのならず者には後でたっぷり鳴いてもらわなくちゃいけないからね。

残るオーガはさすがに手強く、リラ(クマ)は巨大なハンマーの一撃を受けて変身が解けてしまった。急に小さなノームの姿に戻ったが、クマが戦うポーズのままなのがかわいい。リラはその格好のまま、再度クマに変身してオーガに食らいついた。オーガもさすがにかなわず、息子の横にひっくり返って失神した。

オーガの親子とならず者をきっちりと縛り上げてから、ならず者をはたいて起こす。
「ほら有り金全部出しな?お仲間みたいになりたくないだろ?」あたしが凄むと後ろから「言動がチンピラなんだよな……」と聞こえてきた。チンピラ結構。仕事が早くていいでしょ?
「わ、分かった。カウンターの棚に芸術品がいくつかある。それを持っていけ」ならず者が観念してうつむいた。

ディレクに頼んで確認してもらう。どこから盗んできたのか価値のありそうな芸術品が数点出てきた。これを売ればツケ代くらいにはなりそうだ。さて次は利子分を取り立てなくちゃ。
「他の物はどこに隠してるんだい?これだけってことはないだろ?」ディレクと一緒に脅してみるが、これで全部だと言い張っている。どうやら本当にこれだけらしい。あたしはやる気をなくして帰り支度を始めた。

ディレクは諦められないらしく徹底的に家探しを始めた。すると床下の隠し収納を探し当て、1本のポーションを見つけた。ビンの中はにごった緑色の液体で、クラゲのような泡が浮いている。フリントが指先に一滴垂らしてなめる。どうやら水中呼吸の薬らしい。当然、こいつも回収して帰ることにした。オーガたちは縛り上げたままだ。運が良ければ誰かがほどいてくれるかもね。

エルフの歌亭への道すがら、芸術品を売却して金貨100枚となった。店主に60枚を渡して依頼を達成。これで宿の心配はいらなくなった。

奇妙な夢

初日だからといって張り切りすぎた。もうへとへとだ。部屋のベッドに倒れこむ。気を失うように眠りについた。

夢を見た。街が黒い霧に覆われて人々が逃げ惑っている。あたしの娘が人波に揉まれながら助けを求めている。手を差し伸べようとするが群衆と霧に邪魔されて届かない。なんの奇跡でもいい、あの子を助けたい。そう願って手を伸ばす。透き通った青い光があたしの手から伸びていく。光があの子に届いた瞬間、目が覚めた。

頭が締め付けられるように痛む。角と角のあいだ、あたしを裏切ったエルフによって埋め込まれた青い石がほんのりと熱を持っている。手をかざすと青く光っているようだ。光を見ているとざわついた心が落ち着いてゆく。そのうち光は消え、痛みも引いた。自分の感覚が拡がったような不思議な感じがする。この青い石があたしに何かしたのだろうか。考えても分からないので階下におりて仲間と合流した。

エルフの歌

店主アランの説得で、エルフのゴーストがもう一度昨日の歌を聴かせてくれることになった。歌声が美しいのは分かるけど、エルフ語なので何を歌っているのかは分からない。それを店主が共通語に翻訳してくれたけれども、その歌詞は意味深なだけで何を言いたいのかあたしにはさっぱりだった。

ディレクとシシリアは心当たりがあるらしく、歌詞の意味を解説してくれた。それはエルタレルとヘルライダーを歌ったものだという。ヘルライダーは実際に九層地獄に攻め込んだことがあり、そこからヘルライダーと呼ばれるようになったのだ。店主はこの歌があたしたちの運命と関わりがあるように言っていたが、デヴィルの血筋を持ったあたしに関係があるのだろうか。難しいことは分からない。

公衆浴場への潜入

死せる三者信徒の捜索を開始する。情報屋タリナから仕入れた情報に従い、下層地域にある公衆浴場へ向かう。途中、回復のポーションを買い込んだ。

公衆浴場の建物は高い外壁で囲われている。門の外からのぞき込むと素敵な庭と洒落た建物が見えた。とにかく話を聞かないと始まらない。皆で門をくぐると噴水に1羽のカラスがとまっていた。リラが嬉しそうに話しかけたが、カラスは首をかしげると飛んで行ってしまった。リラはカラスに話が通じなかったと言って不思議そうな顔をしている。カラスに話が通じる方が不思議だと思うけど。

建物の入り口を覗きこむ。大理石を贅沢に使った室内は天井が高く、壁画やステンドグラスが目を引く。ディレクやシシリアが重装備をガシャガシャ言わせているさまを見て、2人いた男性客は慌てて風呂からあがると、そそくさと着替えて出て行ってしまった。確かに浴場には似つかわしくないわね。かろうじて客に見えそうなあたしとフリントの2人で潜入することに。

店員を大声で呼んで入浴とマッサージの料金を払う。フリントがもじもじしながらあたしを横目で見てくる。なんと手持ちの金がないという。いったい何をしに来たんだい。仕方がないのであたしが2人分を支払う。後で利子つけて返してもらうからね。

男女で分かれてそれぞれマッサージを受ける。フリントの方にはジャバスという男が、あたしの方はカミーラという女が担当になった。あたしは男の強い力でゴリゴリに揉んでもらう方が好みなんだけど、今はそんなことを言っている場合ではない。

フリントが施術を受けながら店員ジャバスと話しているのが、仕切り壁ごしに聞こえてくる。この店のオーナーはサランラの息子、モートロックらしい。サランラはこの街の大物。四公の1人だ。モートロックは夜、閉めた後の店内で何かをやっているらしい。

少しの沈黙のあと、ジャバスは思い切ったように話し始めた。
「あの、燃える拳団の方たちですよね……」
いきなりバレた。どう切り抜けたものか考えているとジャバスは続けて言った。
「燃える拳団の徽章を着けてらっしゃるし、それにアランからも聞いていますので」
エルフの歌亭の店主アランは寄合に話を通してくれるという話だったけど、もうここまで伝わっているのか。商売人のネットワークも馬鹿にできない。ジャバスはあたしたちの他に客がいないことを確かめてから、苦しげに続けた。
「オーナーは何か、後ろ暗いことをしているようなんです。深夜、店に人を引き入れて、下水道に消えていくのを見てしまいました。そう、そこが隠し扉になっていて。閉店後はすぐに帰るように言われているんですが、この間、帰るのが遅くなってしまって、偶然見てしまったんです。オーナーは気づかなかったのか何も言いませんけど、身の危険を感じています。どうか、助けてもらえませんか」

話が急に核心に近づいた。夜の闇にまぎれて隠し扉から下水道へ。怪しい以外の何物でもない。こちらはもとよりその調査が目的だ。助けてやると約束する。

「我々は客捌きが忙しくて、あなた方が隠し扉から入って行ったことには気づきません。どうかその間に……」ジャバスの提案に従って、ありがたく通してもらうことにする。仲間たちに事の次第を伝えるため、店を出ようとした後ろからジャバスが恥ずかしそうに言う。
「もう一人の従業員、カミーラっていうんですけど、その、近いうちにぼくら結婚しようと思ってるんです。ですから、どうか……」
ああもう、そういうのね、眩しくって見てられない。
「店のことはあたしたちが何とかしてやるけどね、あなたたちも別の働き口を探した方がいいよ」背中越しにそれだけ伝え、あたしとフリントは仲間たちのところに戻った。

仲間に成り行きを説明し、下水道へと潜入する運びとなった。リラはさっきのカラスを気にしているらしく、壁にへばりついていたヤモリと話をしている。あのカラスはいつもあの噴水にとまって扉を見ているらしい。食事もしないし夜もいるとか。リラは小動物と話ができるそうだが、あのカラスとは話が通じなかった。つまり本物のカラスではなかった可能性があるという話だ。例えば使い魔とか……。あたしたちを見て飛び去った行動から、何者かが見張りとして置いていた可能性も高そうだ。とは言え、今のあたしたちにできることは先に進むだけ。全員そろって店内の隠し扉へと向かった。

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