生成AI関連のアプリについて思うこと・マイクロSaaSについて思うこと。VCの雄、YCombinator が採択しているサービスから見えること。生成AIのバリューチェーンの観点から。
始めに、
jinbaflow 開発チームのエンジニアのTakです。個人のNoteで、書いたほうが、皆さんに読んでもらえるのか、公式の方がよいのか分からないので少しウロウロさせてください。jinbaflowはDifyとCursorを合わせたようなアプリです(すべてを代替をしているわけではない)
ちなみに、https://useflow.jinba.ai/ で日本語版のページも作りました!本体のサービスは他の開発を優先しているため、日本語版の公開は遅くなります….でも、AIへの指示は日本語で行えます。英語が苦手な方も問題なく使用できるので試してみてください。)
今回は、私(きっと私のチームメンバーも)が考えている。生成AI関連アプリの動向と、日本のデジタルの未来について思うことを書きます。
”日本”とまで主語を大きくしてしまうと問題がぼやけてしまう気がしますが。。。いったんは、千差万別ある日本のITの中でも私が見てきた限られた大企業のITをイメージしています。
本当はもう少し、チームの開発の様子についてもお話したいですが、それはまた今度...
今回の話をするにあたって。イメージを最初に持っていただくならこんな感じです。あたり前かもしれませんが、ユーザーがモデルを使うのにはある一種のバリューチェーンを通っています。
YCombinatorが採択し続けるAIベンチャーたちの正体
生成AIを利用したアプリ開発が世界中ですごい速度で行われている中、私の最近の主たる情報源は有名VC YCombinator(*サンフランシスコの老舗ベンチャーキャピタル。Airbnbなどの投資を手掛けている)のLinkedinポストです。もちろんJinbaflowもいつか載りたいなと思いつつ。夜な夜な読んでいるのですが、明らかに生成AI祭りです。しかも、今年度は例年の冬・夏に加えて、秋まで開催しています。(実は僕たちもこの前YCのCEOと話す機会がありました)
しかもしかも、採択されているのが、モデルを作ることではなく、利用するサービスです。業界に詳しい人なら当たり前だろと思うかもしれないのですが、モデルを作るためには 莫大なサーバー費用と開発費用が掛かります。
私自身も、昔、深層学習により解析サービスを作っていたことがあるので、生成AIそのものの開発は素人に毛が生えた程度ではありますが、この開発の奥深さと強大な資本ゲームであることを察しています。
どこかの記事に、データ量と計算量の壁があり、一定量を超えると、そこまで鈍化していた精度が一気にあがるとのことが書いてあるレポートがありました。日本でも、このモデル本体の開発をしている会社はほぼないと思います。
よって、モデルを作るという世界で戦っていくのは、いささかベンチャーでは難しい世界ですし、非常に特殊なものがあります。だからこそ、YCombinatorが採択し続けるAIベンチャーたちの正体は、それらのモデルを利用したアプリたちなのです。これは意外なことで、もし私が投資家であったならば、安易にこんなことを言ってしまいそうです。
「え、独自モデルとか開発してないのですか?」3年前だったらこの質問は正しかったでしょう。私が昔やっていた、ニッチな生体信号の解析の分野ではまだ、独自モデル開発が今でも正しいかもしれません。
よって、今多くの開発の舞台は、このモデルを作ることから、それをどのように利用するかを確立するべき時代が到来しています。
採択されている400近い会社のほとんどが、それぞれの形でAIの使い道を提示・提供している会社です。このうちのいくつかの会社は日本でも「このAIはすごい」と話題になっている物たちです。
そのうちの実に100近くの会社はさらに開発者向けのサービスを展開しています。もちろんこの結果YCの投資仮説が生成AIが次の革命であるということに紐づいています。YCはWeb3が盛り上がっているときには、そこまでWeb3に投資していなかったことからも、今回がいかに本気か見てとれます。
微笑むのは、バリューチェーン上のスマイルカーブ、セオリー通りか
一般的にビジネスでマージンが大きいとされているのが、バリューチェーンのはじめと終わりです。この両端のマージンが上がることから口角の上がったスマイルカーブと呼ばれています。
現段階では間違いなくそうでしょう。そもそも、AIのインフラは独占的な市場である一方で、AIを活用する例も一般には流通していないために、AIの活用知識のある方が重宝されます。
これ自体はきっと続くのだろうと思います。これは、農業や工業と長い歴史をもつ産業からも言えます。エビの養殖業でもエビの飼料を作る会社と、加工業者のマージンが高かったりします。決してこれは、何か、儲かっている人々がずるをしているということを言っているわけではないです。
実際に需要に対して希少な価値を提供できることが非常に重要なことは変わりないからです。
ただし、今回の生成AI業界においては少し違うかもしれません。
これは、①人々が想像をはるかに超えるマーケットサイズになったときにプレイヤーミックスが大きく変わりうる。②そもそも社会自体を変えてしまう可能性がある点です。
①は、Googleに近い例かもしれません、インターネット黎明期、サーチエンジンの重要性は当初から話されていますが、実はGoogleはリーディングプレイヤーではなかったのです。彼らの技術は、ある意味で市場では過少評価されていました。しかし、彼らが台頭するとともに、一気にマーケットのミックスが変わります。当初インフラと思っていたレイヤーが変化し、Googleがインフラになってしまったのです。②の点の可能性については次の章でお話します。
ここからSoftware開発は異次元に加速していく可能性がある。
先ほど、書いた通り、実に4分の1のサービスが開発者向けのアプリなのです。びっくりすることに、PMO業務、フロントエンド、バックエンド、サーバー構築、アーキテクトに及ぶまで、ほとんど全ての開発に関する領域に対して何かしらのソリューションが開発されています。
これが、社会構造を変える可能性がある点です。
これが、何を意味するのか、もちろんこのうちの半分の会社は5年後にはなくなるでしょう。でも、残りの半分は人々に根付くサービスになっていきます。(ちなみに、YCに採択された会社の生存率は、ほかに比べて圧倒的で、5年たっても半分くらいが生き残るという、アメリカベンチャーではありえない生存率です)
こう考えると、今後開発は本当に楽になっていきます。きっと数年前にコード生成技術を使ってみた人が、こんなものかとバカにしていたのが、すぐにあれ、きれいだぞ、やばいぞとなっていきます。
現に弊社のエンジニアでアマゾン本社に努めていた若手は生成AIをうまく使いこなし圧倒的な速度でコードを書きます。もちろん設計上の汚さが残り、途中で沢山の修正が加わっているのが現状です。でもそんなことは些末なことで、すぐに設計そのものを担うAIサービスが精度を上げて近づいていきます。
そうなったらどうなるか、もうサービスの海です。
ありとあらゆることがデジタルで実現していきます。今までなら、あまりにも小さすぎると考えていた個人の業務も開発コストがさがることによって誰かが、それをSaaSと生み出していきます。これがマイクロSaaSです。昔だったら大規模だと思われる開発がどんどん小さくなって便利なっていきます。
一方で、もう一つ起きるのが、デジタル業界側の利ザヤが膨れ上がることと、もしかしたらモデル会社がコストを釣り上げてくること。まず、一つ目はもうすでに起き始めていることでもあります。昔だったら10人かかる作業が、AIによって今では2人で終わることもあります。なぜか、例えばモックAPIを作るサービスがあり、テストを書いてくれるAIがあり、といろんなことをAIがやってくれます。となると、デジタル関連の会社の利ザヤは大きくなっていきます。その分、デジタルを志す人も増えるといいですね...
マイクロSaaSとデジタル開発効率
こうして、今まで以上にサービスが開発し続けていったら何が起こるのか。
これは、到底管理できない量のサービスが生まれてきてしまいます。
コンビニの品数くらい一つの会社がサービスを使ってしまう日が来るかもしれません。(例えば、求職の文言やポスターをつくるなら、このAIサービスみたいなのが生まれる。)
そんな時に我々は、思うのです。
①その時に本当に適正なコストで運営ができるサービスが必要になる。
②いろんなサービスが統一のプラットフォームで出ていたら創造が加速する。
適正なコストで運営ができるというのは、開発者も利用者もコストを下げて開発、運用できる環境を指し示します。デジタルでできそうだと思うことはきっと大抵のことは創造できるでしょう。
今でもそうです。大企業が独自アプリの開発を行う例がたくさんあります。(同時に沢山の不祥事も耳にします)これらの独自アプリが低価格でできる未来が来た時にきっとマーケットは少々の混乱が起きます。保守派も生まれると思いますし、革新派も生まれると思います。いずれにしても、流れが生まれることは確かだと思います。
そして、それらの小さいサービスが一つのプラットフォームで作られることで高い互換性が保持されます。それが創造の加速です。
もちろん、我々以外にもたくさんのプレイヤーが同じことを思っているのかと思います。でも我々もそんな面白い未来を日本から作りたいと思っています。
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