海外ミステリー本感想10「あんたを殺したかった」
ペトロニーユ・ロスタニャ著
あんたを殺したかった
ハーパーBOOKS
いつもの書店で偶然見つけてすぐに購入した本。ワニ町シリーズの2作目を読んですぐに読み始めた。
あらすじの内容と書名に引かれて購入してどうかと思ったが、当たりだったことを昨日読み終えて実感した。
この作者の本はおそらくこの作品が日本で最初に翻訳されていると思う。2015年から犯罪小説を執筆に専念と巻末で紹介されているが、残念ながらまだこの作品以外の本に出合ったことがない。
この作品からハーパーBOOKSで残りの作品が順次刊行されることをお願いしたい。
非常に読みやすい筆致で進む小説でどんどんページは進んだ。随所に証拠が出てきて複数の解釈が出来てくる。読んでいる方もヴェルサイユ警察の面々と同じような思考で頭をフル回転させることになる。
いい疲労感を抱きながら読み進めることが出来た。
フランスというとシムノンのメグレ警視シリーズが思い出される。重厚な内容の展開はイギリス人作家とは明らかに異なるものであった。
より純文学に近い作品といえばいいだろうか。シムノンの築き上げた世界は不滅であろう。
その流れでとらえると同じフランス人作家でもかなり違うことに気付かされる。
現代のフランスミステリーといえばいいだろうか。これからさらに多くの作品が生み出されていくであろうから、フランスミステリーの新たな系譜が生まれるに違いない。
それにしてもどれだけの優れたミステリーが存在しているのであろうか。
すべてに目を通し網羅することは到底出来ないが、無限の可能性をミステリーの世界に常々感じているのは私だけであろうか。
もうあらゆるトリックや展開が出尽くした感があるとは思うが、まだまだ私達をとりこにし、楽しませる作品が生み出されている。
飽きることなくこれからも最上のミステリーに楽しませてもらって癒される日々を送りたいと思う今日この頃である。