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それは突然の出来事で

真夏の太陽が、容赦なく照りつける日だった。アスファルトから立ち上る熱気に、吐き気がしそうだったし、頭がくらくらした。その日、私は精神科クリニックにいた。診察を受け、薬を処方すると言われたけど、その薬を飲むかどうか迷っていた。

 

最近、些細なことでイライラが募り、自分でもコントロールできない状態だった。薬がそのイライラを抑えてくれるという。それでも、薬に頼りたくない、という気持ちの方が強かったし、自分は悪いところなんてないと思っていた。数年前まで精神薬を飲んでいたけど、飲まなくなっても普通に生活していたし、と思った。結局、その日の薬は飲むことを断った。

 

医師は、厳しい口調で別の病院への紹介状を書いた。「検査のため」と言われた。検査と言われたけど、一体どんな検査をするのだろうと、疑問はあったものの、両親の付き添いもあったので、仕方なく紹介状を受け取った。

 

二番目の病院は、想像していたよりもずっと大きく、そして古びた雰囲気だった。まあ、昭和の精神病院というイメージ。受付で紹介状を渡し、しばらく待合室で待っていると、医師に呼ばれた。

 

診察室に入ると、医師は少し私と会話して、私の顔を見てから、険しい表情で言った。「あなたは統合失調症です!」その言葉は、衝撃的で、私の心を打ち砕いた。

 

私は、自分が統合失調症だなんて、考えたこともなかった。ショックで、頭が真っ白になった。医師の怒気を帯びた声は、私の耳に鋭く突き刺さった。反論したけど、いいえ、あなたは統合失調症です、とさらに言われた。ただ、涙が溢れてきた。

 

そして、私の意思とは全く関係なく、事態は急転直下した。二名の看護師が、私の両腕を掴んだ。抵抗しようと試みたが、二人の力には敵わなかった。嫌がる私を、彼らは閉鎖病棟へと連れて行った。

 

閉鎖病棟の扉が閉まる音は、まるで私の自由を奪う音のように聞こえた。真夏の暑さと、医師の言葉、そして看護師の力による拘束。それらが混ざり合い、私の心は深い闇に沈んでいった。なんでこんなことになったんだろう?

頭がグラグラ揺れるようだった。

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