ユーカリが丘線に乗った日記
ユーカリが丘へ行った。
用事があって行ったのだが、少し時間があまったので、ユーカリが丘線に乗り、公園まで行ってみることにした。
幼い頃、両親がこの公園へ連れてきてくれたことを思い出した。
思いかえせば、色々な公園に連れて行ってもらったけど、虎がいる公園はなんだかオシャレで、子供心に憧れがあって。
親としては気まぐれに、そして自分の用事のついでに様々な公園に連れて行ってくれたのだろうけど。子供としては(今日は虎さんのいる公園につれてってくれるかな!?)と、当たりを待つみたいにワクワクしていたよ。
ひとりで虎にまたがることはできなかったので、親が乗せてくれたっけ。
今日はひとりで乗ってみたけど、いかんせん大人の体重でアスレチックするのはかなりの負荷。ひさびさの全身運動で心地よく疲れた。
この後、電車を乗り継いで帰路についたが、服にカマキリの赤ちゃんがくっついていることに気がついた。公園から連れてきてしまったようだ。
場所は人のひしめく京成線の車内。
ここで振り落とせば誰かに踏まれてしまうだろう。
せわしなく動き回るカマキリの赤ちゃんを、親指と人差し指でそうっとつかんだ。
身動きがとれなくなった彼(彼女?)は必死で私の指を噛んでくる。まだ小さなカマを必死で動かして抵抗している。
ま、全然痛くないんだけど。
あまりに小さく、無力である。
だんだん親心のようなものが芽生えてしまった。
ひとまずビニール袋に入れ、逃げてしまわないように対策した。
左手にカマキリの入ったビニール袋。
右手でその生態について調べる。
花の下によくいて、花に集まってくる虫を食べるらしい。少しくらいの雨には強く、草の下でたくましく生きるようだ。
悪いことをした。
ユーカリが丘より少しコンクリート多めな場所に連れていくことになる。
どこで放そう?
最寄りの駅を降りると、いつもは目につくことがなかったが、意外と緑があることに気がついた。
マンション近くに、紫陽花やコナラ、サツキなどが群生している植え込みがあった。
ここなら少しは元いた環境に近いかな。
ビニール袋から取り出すと、最初は私の腕をのぼってこようとしたのだが、爪の先でちいさく弾くと、土のある場所へ落ちて行った。
草と土の匂いに気がついたのだろうか。迷わない足取りで、紫陽花の方へと向かって行った。その背中にがんばれ、と声をかけた。
夕方からは夫婦そろって鍼灸院へ。
気力の上がるツボにはりを打ってもらった。少しずつ体は回復している。毎週来ていたが、隔週にしてみよう。
家に帰り、神棚に日本酒を上げる。
いつもは一日無事に過ごせたことを感謝するのみだが、今日は、カマキリがたくましく生きることを祈っておいた。
仁礼(にれ)
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