見出し画像

勉強しなきゃ日記

人の相談を受ける仕事をしている。

「ご相談窓口」というような名前の窓口からお客さんが申し込んでくる。

ご相談だと思っているので、こちらもアドバイスをする。
もちろん喜ばれたり、お客さんが幸せになる姿を見ることがほとんどで、やりがいがある。

だが。

さいきんお客さんに寄りかかられることが多い。
甘えられるのだ。

「もう死にたいです」なんて言われて、必死でなだめる。

2時間ずっとお客さんが話していて、私はその間、ずっと「そうなんですね」と棒読みする。

毎日1万字のメールが、同じお客さんから何通も届く。
まるで友達に話すような愚痴が、何文字も何文字も書かれている。

私はまるでゴミ箱だ。

共通しているのは、これらのお客さんが心から私を信頼してくれているということである。

人の話を聞いてあげたくて、人の悩みを解決してあげたくて、やり始めた仕事だ。
こうなりたかったはずだ。
それなのに、なんだか違うと感じている。

さいきん、暖かいからだろうか。
寄りかかる系のお客さんが爆発的に増え、疲弊している。


こんなにも同じ問題が毎日毎日ふりかかってくるというのは、お客さんのせいじゃない。

私だ。

私が何か、乗り越えるべき問題をかかえているのだ。


思えば。

「アドバイスおじさん」なんて存在が巷では話題だが、私はあれになりかけていたんだ。
たぶん。

ちょっと上手くなってきた頃合いのおじさんが一番アドバイスしたがるんだけど、本当の熟練者のおじさんは、何もアドバイスしないんだって。

相手の底力を信じて、相手が自分で失敗して、自分で這い上がってくるのを待っている。相手の強さを信じてあげる。
それが本当の熟練者。

そういうことだと思う。

私、ちょっとこの仕事がわかってきたような気になっていたから、いい気でアドバイスしていたんだ。

私はハッキリとものを言うから、言われた方はその瞬間、救われた気持ちになるだろう。そうか、そうすればよかったんだ!って。
でもそれは鎮痛剤程度の効果しかない。
時間が経てば弱いその人が顔を出してきて、また不安になって相談をしてくる。

私がもっとその人の中にある「強さ」を信じていたら……。


私は、頼られたかったんだと思う。
誰かに格好いいと認められたかったんだと思う。

だから、相手の強さを認めずに、自分が気持ちいいアドバイスだけをしていた。
「こんなやり方があるんだよ、すごいでしょ!」
「私はこんな考え方を知っているんだよ!」
言いたくて仕方がないだけの、恥ずかしいやつ。

望み通り、まるで信者のようにみんなが私を頼ってくれたけど、本当の私には力が無くて、救ってあげられなくて、みんな結局なやんで戻ってくる。

自分を癒したくて、自分が何かを求めたくて、アドバイスをしていただけ。
一番アドバイザーになっちゃいけないタイプだよ。


素人なのにこの仕事を選んだからな……。

アドバイスを必要としている人もいるけれど、ただ自分の話を聞いてほしいだけの人もいる。それを見定めて、必要な人に必要なことを伝えられるようになりたい。

今から資格をとるのとか大変かもしれないけど、やれそうなことから勉強してみようかと思い始めている。



仁礼(にれ)

いいなと思ったら応援しよう!