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パクリ疑惑の日記



時効だと思うので語ってみる。

20年ほど前、地元のデパートでバイトをしていた。

バイトメンバーのひとりで、1個下にとても可愛い女の子がいた。おっとりしていて、育ちも良くて、ちょっと世間知らずで守ってあげたくなるような、そんな子だった。

その子が、
「おもしろい漫画があるので貸します!!」
と言って、少女漫画を貸してくれた。


じつのところ、私は彼女の言う「おもしろい」を信用していないところがあった。


なぜなら、とある日のエピソードでこのようなことがあった。

彼女が、
「今朝、おもしろいことがあって」
と、弾んだ声で話しかけてきたので、ふんふんと聞いてみた。

朝、リビングで彼女は母親と一緒にトーストを頬張っていたのだという。

彼女の家は高級住宅街の真ん中にあるので、清楚なリビングの様子がまざまざと目に浮かんだ。

彼女はそのときめずらしく、長い髪をみつあみに結んでいたのだという。

そこへ3個上の兄が起きてきて、彼女のそばまでやってくると、
「その髪型、まるでアルプスの少女ハイジみたいだね」
と言って、さわやかに笑ったのだという。

それで彼女の母親が、
「あらやだ、本当にまるでアルプスの少女だわ」
と言って、うふふと笑ったのだという。

彼女もおかしくなってきてアハハと笑い、お兄さんもははははと笑っていたのだという。


「どうですか、おもしろくないですか?」
と言って、その時のことを思い出したのかまだこらえきれずにウフフと笑っている彼女に、


「は?」

と言いそうになったがこらえた。


今でも思い出すと
「は?」
と言いそうになるが。


ごめんだけど、なんもおもろない・・・

全然、おもろない・・・

いやわかってます、彼女と彼女のご家族は何も悪くない。悪いのは刺激を求めすぎる私だ。

それにしても育ちが違うと、こんなにも笑いへの姿勢というか、貪欲さに違いが出るのだな。

彼女の笑いには欲がない。


そのショックが強く脳裏に刻まれたので、とにかく私は彼女の「おもしろい」を信用していなかった。(彼女自身は良い人なので人柄は信用してます)


そんな彼女が貸してくれた少女漫画。

「おもしろいです!」と言って貸してくれた少女漫画や。

そんなに期待はしないで読んだのだが、これがまあ、


ほんと、おもろくない。

ほんっっっっとーにおもろくない。

ハリボテ感というか、人物がそこにいる感じがしない。

作者が好きな感じのどこかで見たキャラが、作者が好きな感じのどこかで見た台詞を言わされている。

延々それだ。

おもろくなさすぎてビックリして、もうほとんど内容も覚えていないしタイトルも忘れた。たしか4巻まで貸してくれたので、4冊は出ていたんだなぁ。


そして一番ビックリしたこと。


主人公の男女が、初めて思いを伝え合う場面だったか。


まんま、

まんま、

「ロングバケーション」(キムタクと山口智子の大人気ドラマだ)のワンシーンをまるパクリしていたのである。

台詞が、そのまんま使われている。


なぜ気がついたかというと、私はその頃「ロングバケーション」のビデオを繰り返し鑑賞することにハマっており、台詞がほとんど頭に入っていたからである。

パクられたシーンだが、

キムタクと山口智子が、最初は男女としてまったく惹かれ合っていなかったのに、なんとなく流れでキスをしてしまうシーンがある。

流れでキスしたと言ってもただれた関係ではない。夏の夜風がさわやかすぎて、ちょっと二人の心にイタズラをしたんだな。


キムタク演じる瀬名は、直前のシーンで想い人にフラれている。

瀬名は繊細で、人がよすぎて、好きな子の恋愛がうまくいくように後ろで立ち回っちゃうんだよね。(でもたぶん瀬名の中では、山口智子演じる南との友情のような絆が大きくなっていて、実らない恋に終止符を打とうと、きっぱりそう思えたんだと思う。)

一部始終を見ていた南が、瀬名を元気づけようとわざと能天気な声を出すのだ。
「もう夏だねー」と。

で、

「空は青いし、海は広いし、瀬名君は人がいい。瀬名君みたいな人とずっと一緒にいられたら、それはそれで幸せなんだろうな。」

これ、映像と雰囲気の良さと、山口智子の声音もあいまって、すごい良いセリフになっているんだけど。


この辺の一連のセリフがぜーーーーーーんぶ、前述の漫画でパクられていたのである。


えーーーーーーっ!!

と驚いた。

おもしろくないだけならまだしも、おパクリあそばしてるなんて・・・

というか、少女漫画の中で作者が一番魅せたいであろう、主人公男女の思いが通じるシーンでパクっているので、作者が本当に言いたいことなどこの作品には込められていないのである。
全然おもしろくない。当たり前である。


で、すぐにパソコンを立ち上げて、同じことに気がついた同志がいないか調べたが、それらしい記事は出てこなかった。


大人なので、「面白かったよ」と言って漫画は返した。

続きは気にならなかったので、5巻目以降が出ていたのかよく知らない。



最近そのことを無性に思い出したので、
「ロングバケーション パクリ」
などでネットを調べてみたのだが情報は出てこなかった。
漫画のタイトルも忘れてしまっているので、再検証も難しい。


夫にその話をしてみたら、夫も興味を持って調べてくれたのだが、やはり情報が出てこなかった。

夫いわく、

「面白くてすごく人気のある漫画だったら、誰かが騒いでると思うんだけど、その必要もないくらいつまらない漫画だったってことじゃない? あまりに些末な問題すぎて、誰も興味がないんだよ」

だと。

つまり、人気がある漫画だったら、誰かが足を引っ張ろうとして粗を探すということでもあるのか。


・・・この世はこわいな。


とりあえず、何か手がかりをお持ちの方がこのような小さな記事に気がついてくださったらぜひに情報求ム。です。






仁礼(にれ)

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