前回の記事では組織において天才が凡人に殺される構造に触れました。
であれば、凡人は黙らせて、ビジネス、テクノロジー、カスタマー・エクスペリエンス各分野を才能ある人にを任せればいいのではないか、と思われるかもしれません。
しかし、ここにも集団的創造性を阻む落とし穴があります。
そこで今回の記事はマシュー・サイド著「多様性の科学」を紹介したいと思います。
多様性の科学の概略
過去においては様々な業界でこれまで能力至上主義が主流となっていました。いわゆる学力です。科目は複数あるにしても、企業の採用において重要なファクターとなっていた歴史があり、そして、学校の教育体系にもまだその色が残っているのではないかと思います。そんな中、多様性の重要さが認知されておらず軽視されてきた背景があります。
ところがVUCAと呼ばれる時代に入り、課題の複雑性が増す(認識されるようになる)と単一の指標のもとに能力を測って組成された集団の脆さが徐々に明るみになりました。9.11のテロを防げなかったCIAであったり、サッカーイングランド代表チームであったり、エベレスト登山隊だったりします。
しかしながら、先の見えないVUCAの時代だからこそ、人は安心を求めたくなります。
スタートアップであれ、大企業のチームであれ、志は同じとしてもものの見方の多様性が重要になってきます。だから外部のエキスパートや課題の当事者に意見を聞きに行くことが基本的な活動として極めて重要になります。
そのカギを握るのは、他でもなく集団のリーダーです。
マシューはリーダーシップを支配型と尊敬型に分けて論じます。
当然ながら、リーダーの取るスタンスはメンバーの行動に影響を及ぼします。
さて、あなたの仕事は、直線的な課題でしょうか?それとも複雑な課題でしょうか?
もし複雑な課題と向き合っているのであれば、自分自身の中にある不安と闘わなければなりません。
あなたの業務がイノベーションであるならば(もちろんそうでない人たちも)多様性と、そこから生まれる集合知をどう蓄積していくかが非常に重要になります。それは単に組織設計だけではなく、風土・文化づくりと密接に関わってきます。
以上が「多様性の科学」の概略になります。本書では9.11のテロを防げなかったCIA、サッカーイングランド代表チームの凋落、エベレスト登山隊を襲った事故、といった多様性による集合知が欠けていた事例をもって、その重要性を説いています。
最近の企業では多様性が非常に重要視されるようになってきています。しかし、なぜ重要なのか社員の皆さんはどこまで理解できているでしょうか?単に、これまで人類が克服できなかった”差別”に対するアンチテーゼと捉えていないでしょうか?もちろんそういった側面もあるかと思いますが、多様性はVUCAの時代を生き抜くための必要な戦略要素だということがこちらの本を読めばお分かりになるかと思います。
Design3.0の構成要素①多様性
Design3.0が目指す集団的創造性(マシューが言うところの集合知)において多様性は非常に重要なファクターです。
以前、こちらの記事でDesign3.0は世に出る製品やサービスの地下3階にあたるものだと説明させていただきました。地下1、2階の土台となるから地下3階なのです。
では、地下1、2階のDesign1.0とDesign2.0では何が行われているのでしょうか?
デザイン対象がカタチか価値か、の違いがありますが、①着想→②統合→③アイデア創造と実験→④実装の4つのプロセスからなります。この表現はソースや流儀によって差異があったりしますが、一旦ここではこの4段階とさせてください。
それに対して、多様性はインプット側に作用しますから左側に配置しました。
上下と左そして中央に何が配置されるのか、それは今後の記事で紹介していきたいと思います。
ではまた。