AIでデザインはオワコンか?デザインの最後のフロンティア「創造性のデザイン」【デザイン3.0の道標】
久しぶりの投稿でスミマセン。
しばらく生成AIの動向を静観していました。その上で”イチ”デザイン業界関係者として思うところをつづりたいと思います。
AIは色々なことができるようになってきています。イラストやアイコンをはじめ動画や音楽などのクリエイティブ、情報の検索と要約やアイデアだしなどのリサーチ領域はもちろん、デザイン思考の肝となる「How Might We?」(※)だってできてしまいます。初めてワークショップに参加する人が出す下手なHow Might Weよりよっぽど良い感じのものを出してきます。(かと言って、ワークショップ初参加者が「How Might We?」に参加しなくていいという話ではないです。)
※How might we? : 解決すべき課題に対して、「我々はどのようにすれば〇〇できるだろうか?」という形式で"問いのリフレーミング"を行うワーク。一見解きにくい課題の解決策を考える前に適切な問いに変換することで解きやすい切り口を見つけることができる。例:「エレベーターの待ち時間が長い」という課題に対して、「我々はどのようにしてエレベーターの待ち時間を短く感じさせることができるだろうか」という問いに変換することで、エレベーターホールに鏡を置く(鏡に映る自分を見て身だしなみチェックをしてる間にエレベーターが到着する)というアイデアを生むことができる。
今後もAIができる領域は拡大して行くのは間違いないというのは皆さんも感じられていることかと思います。私個人的には、例えば、ワークショップ中の時間が区切られた中で”乾いた雑巾をさらに絞る”かのようなアイデア出しをやらなくなるのは、脳トレをサボるようで自分がバカになっていきそうな一抹の不安を覚えますが、今回はそれは一旦無視します。
さて、大AI時代におけるデザインを論じる上で、確かなところからはじめましょう。
上述の通り、たいていのクリエイティブの作業はAIがカバーしてしまいます。真のプロフェッショナルが生み出すアイデアには、適切なストーリーやコンセプトが埋め込まれているものです。AIはシンプルなプロンプトでもプロっぽいアウトプットが出てきますが、そこにストーリーやコンセプトがなくても、たいていの人はそれをシビアに評価することができず受け入れるしかありません。(プロンプトの使い方でAIのアウトプットにストーリーやコンセプトを込めるのはプロンプトエンジニアリングというよりはプロンプトデザインと呼ぶべきかもしれません。私はあまり詳しくありません。)説明的AIも現状は何を材料にアウトプットを作ったかは説明できても、何の目的に対してどういうロジックを構築してアウトプットに結びつけたかというレベルにはまだ至ってないように思います。そのようなAIの使い方の問題を潜在的に抱えるにしろ、普通の組織メンバーがAIを使って(一見)素晴らしいクリエイティブを生み出すという状況には到達しているでしょう。それは人+AIで天才になれるということかもしれません。「組織の中に天才が何人もいる」そして、それは素晴らしいことのように聞こえます。
しかし、組織で何かを作り出しアウトプットしていくためには意思決定をしなければなりません。何人天才がいても、誰の案を採用するか、部分的に複数人の案を組み合わせるにしても意思決定は避けられません。その過程を注意深く進めないと、オリジナルのアイデアの良さが失われて、トガリがなくなり丸まって平々凡々なアウトプットに陥ってしまうことでしょう。
その時、アイデアをどう評価して意思決定を行うのか、ということが非常に重要な問題になります。
そして、採用した案が期待するほどの成果を生まなかったとしてもAIは責任を取ってくれません。AIを使って1億円かけて開発したプロダクトが全くうまくいかず、AI開発会社に損失を補償してもらう…なかなかあり得ない状況だと思います。(AIそのものが売り物ならあり得るかもしれませんが??)
つまり、責任を人が負う以上、意思決定は人が行わなければなりません。そして、今のAIに比べたらほとんどの人は凡人です。
天才(AI+人)が作ったものを凡人が評価できるのか?これはいつの時代も不遇の天才と呼ばれる人がいるように、何年何十年と時間が経てば正しく評価できるかもしれませんが、その瞬間にはなかなか難しいことだと思います。
ここまでをまとめると、どれだけAIを使おうと
「誰かがアイデアを正しく評価し、意思決定を行わなければならない」
この点は確かなのではないかと思います。
そしてそれは、アーティストやクリエイターといった個人単位で活動しているならともかく、組織で活動している場合、今(AIが発展した時代)に限らず、太古の昔から生身の天才を抱える組織において存在していた課題です。
もっともシンプルな解決策は、一人の組織責任者がアイデアを評価し意思決定を行うことです。これは組織の黎明期においては仕方のないことですが、あまりにも領域が拡大し、視点の多様性が求められる現代において、一人で全てを判断するのは限界があるということは皆さんもご承知のことかと思います。
そうすると、「いかに複数人(集団)でアイデアを正しく評価し、より良い意思決定(合意形成)を行うにはどうすべきか」ということが課題になります。それこそが集団的創造性の核心です。それをいかに創造するかが私の提唱するDesign3.0の目的になります。
Design3.0の中身については他の記事で少しずつ説明していきたいと思いますが、この記事で大AI時代においてもデザインが必要とされる領域が伝われば幸いです。
ではまた。