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【Design 3.0 の道標】ロジカル思考、デザイン思考、アート思考
近いうちに記事を書こうと思うが、私は
【Design 1.0】を「カタチのデザイン」、
【Design 2.0】を「価値のデザイン」、
【Design 3.0】を「創造性のデザイン」と定義している。
Design 3.0について書く前に、【Design 3.0の道標】シリーズでは、そこに至るまでのデザイン論を解説していきたいと思う。
前回の記事でデザインは”問題解決行動”と定義した。数学的により正確に表現するなら”逆問題解決”と言われるものに当たる。
今回は、ロジカル思考とデザイン思考とアート思考の違いを書いてみたいと思う。
ロジカル思考
逆問題解決を説明する前に順問題解決から説明しよう。
順問題解決を数式的に表現すると下記になる。
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ひねくれた人以外は間違いなく誰もが「答えは3」とこたえるだろう。
いわばこれはロジカル思考だ。論理的に正しいし、誰が考えても同じ答えに至れる。だから、クライアントや上司や同僚の人を説得しやすいし、合意に至れる。
しかしながら、VUCAの時代ではロジカルに割り切れることばかりではないのはみなさんもご存じの通りだ。
デザイン思考
では、逆問題解決たるデザイン思考を数式的に表現してみよう。
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今度は左辺の2項目が「問い」になった。足すことで(1)を(3)にするものは何かを求めることだ。つまり、逆問題解決とは答えが先にわかっていてそれを生み出す原因を作り出すことだ。
中学校で数学の方程式を学んだ人ならあっという間に答えがわかるだろう。左辺の(1)を右辺に移項して、「?=3-1=2」だ。
しかし、現実世界には「=」に「時間的隔たり」がある。左辺は現在で、右辺は未来ということだ。それは(?)に何かを代入してもすぐには答えがわかるとは限らないのだ。なので何度も(?)にいろいろ代入して試して確かめてみるしかないのだ。
ここで各項が何を表現しているかを説明しよう。
(1):現状
(3):(未来の)あるべき/ありたい姿
(?):解決策、つまり問題解決行動=デザインだ。
(3)であるべきなのに、(1)では足りないという問題に対して、解決策を考え提供する。これがデザイン思考だ。
ここで、方程式による解法が使えないとして、皆さんが頭の中で一瞬にして踏むであろう思考プロセスを書き出してみよう。
①現状(1であること)をよく理解する
②未来のあるべき姿(3)を設定する。
③1を3にし得る解の候補を列挙する(1、2、3、4、5、、、)
④解候補を一つずつ(?)に代入して右辺をシミュレーションする
(1+1、1+2、1+3、1+4、1+5、、、)
⑤もっともあるべき姿に近い解候補を絞り込む(この場合2だ)
これを今日のランチ問題に置き換えよう
① 現状:今日の朝ごはん、昨日のランチ、体重、予算、一緒にランチに行く人は誰か、、、
② 未来のあるべき姿:ダイエット中ならやせた自分かもしれないし、午後に重要なプレゼンがあって準備のためすぐに仕事に戻らないといけないかもしれない。時間軸も目標も人によるだろう。
③ 解候補の列挙:①と②から求められるのは、野菜中心のヘルシーメニューか、サクッと食べられる牛丼か、はたまた大事な人との会食であればコースメニューのお店かもしれない。どの方向性においても選択肢はいくつかあるかもしれない。社員食堂か飲食店Aか飲食店Bか、、、それぞれの店においてもメニューの選択肢がいくつかあるはずだ。
④ ③で挙げた複数ある選択肢とその組み合わせを①の条件に当てはめ、頭の中で何度もシミュレーションを行う。
⑤複数回繰り返したシミュレーションの結果、ベストではないかもしれないが、②で設定した未来のあるべき姿を最も実現できそうな解を得ることができるはずだ。
そう、この思考プロセスは誰もが普段からやっていることだ。
それを製品の外観であったり、ビジュアルコミュニケーションだったり、サービス設計といった分野でスケッチブックやパソコンやその他のツールを駆使しながら実施するのがデザイナーであり、それ以外のビジネス領域に適用したのがデザイン思考だ。
IDEOのCEOティム・ブラウンによれば、
自分がデザイナーだと自覚したこともない人々にデザイナーの道具を手渡し、その道具をより幅広い問題に適用するのが、デザイン思考の目的なのだ。
つまり、デザイン思考はデザイナーのものではなく、むしろデザイナー以外の人が体系立てて逆問題解決を実施できるように整理されたプロセスなのだ。
ちなみに左辺の(1)が人間である限り人間中心であり、右辺の(3)が未来である限り未来志向の思考プロセスなのだ。
ちなみに(2)の表現は無限にある。そこに(1+1)を入れてもいいし、(-2+4)を入れてもいいし、(0.1×20)を入れたって答えは全部(3)になる。だから、車にしろファッションにしろ、デザインはたくさん生まれるし「審美性」、つまり「美しさ」という厄介な評価軸が必要になってくるのだ。
アート思考
さて、専門がデザイン思考なのでそこにかなりページを割いてしまったが、私なりにアート思考について説明しよう。
アート思考の数式的な表現はこれだ。
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と言われても、「なんのこっちゃ!?」と思われるかもしれない。アート思考の定義は人によって多少の違いはあるかもしれないが、「新しい物事の見方を生み出す」という点では共通しているように思う。
だから、多くの人が(3)という答えを出す状況下において、(5)という答えを生み出すのだ。
ちなみに根拠もなく(1+2)が(5)だと言っているのではない。
下の画像を見ていただこう。
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(5)にみえただろうか、そしてそこに隠れる(1)と(2)を見つけられただろうか。(2は鏡像になってはいるが)
そう、数値的な演算を幾何学的な演算に切り替えたから(5)という答えに至れるのだ。種明かしをしてまえばどうということはないのだが、おそらくほとんどの一般人が(3)という答えしか思いついていないところに、(5)という見方を示すことで一般人には驚きであり新鮮でありイノベーティブに感じるのだ。一方で最初から(5)だと思っていた人にはいたって普通のことかもしれない。
90年代の人にスマホを見せればイノベーティブに感じるかもしれないが、現代の人にとっては極めて普通のことだ。
ともかく、常識的には(1+2)の答えは(3)としか考えられないような事柄に対して、(5)という新しい答えを見出す思考プロセスがアート思考といってよいのではないかと思う。
どうだろう、ロジカル思考、デザイン思考、アート思考の違いはご理解いただけたであろうか。
今回はこの辺りにして、
次回 【Design 3.0 の道標】じゃあ、Design1.0、2.0、3.0は何なんだ!?
を書きたいと思う。ではまた。