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【前編】巣ごもり生活を脱して、旅に出てきた。
「日帰りで大阪から行けるところまで行ってみない?」
薮からスティックくらい突然でわけのわからないぼくの提案に、「お、いいねぇ!」と、まるで最後の方舟に乗り込むモーセのごとくどーんといつも乗っかってくれる、こないだ丸一日映画鑑賞企画に参加してくれた友達。
らぶ。
というわけで、とある日の晴れた休日。
レンタカーを借り、travel してきた。
コロナも落ち着いてきたし、ワクチンも2回摂取した。
巣ごもりしすぎて、もう外に出たい欲がすごかった。
仲間になりたそうな目でじっと見つめて、「いいよ!仲間にしてあげる!」って言ってもらえたと思ったら、世界が平和になるまで「モンスター預かり所」に預けられたモンスターみたいな気分だった。
「てめぇ!仲間にしたなら、せめて馬車の中にぐらい乗っけろや!」
ふつふつと湧いてくる、いくあてのない怒り。
「Aボタン連打で”ブラウン”なんて変な名前つけやがってバーロォォォ!」
もはやストレスフルマックス状態。
まだルイーダの酒場で別れを告げてもらった方がよかった。洞窟の中で一生じいさんと暮らすくらいなら、自由をもとめて旅に出て、勇者に殺された方がいくぶんマシだ。
世界が平和になったのなら、もうこんな洞窟に用はない。
「ワクワク」と「ウキウキ」をパーティに向かい入れ、作戦名「ガンガンいこうぜ」で、ぼくはモーセとともに世界に躍り出ることにした。
(あ、でも医療従事者の方々にはほんと感謝してます。こうやって安全に外に出ることができるようになったのもみなさまのおかげです。本当にありがとうございました。)
早朝、友人モーセと集合。
「さて、どこへいこうか」
行き先はぜんぜん決めていなかった。ぬかった。完全にぬかった。
旅に出ること事態が目的になってしまい、肝心の魔王を倒すことをすっかり忘れてしまった勇者に等しい。
「日帰りで行けるところまで行く」というテーマから外れてはいないので、それでもいいっちゃいいのだけれど。
「1日で行って帰ってこれるとなったら、どの辺が妥当なんだろ」
「うーん…」
頭を悩ませる友人モーセと、ブラウン石田。
「ここぐらいでいんじゃない?」
使い慣れないナビを操作しながら選んだ行き先は「福井県敦賀市」に決まった。
距離にして180kmほど。
時間にしておよそ2時間半。
当初の主旨が、「大阪から日帰りで行ける限り遠くへ行くこと」だったことを考えると、距離的にはかなり近いといえた。
魔物が出てあぶないからちょっと隣町までビアンカを送りに・・・くらいの距離だ。
とはいえ、久しぶりのトラベル。
ずっと洞窟の中で一生を終えるんじゃないかとびくついていたブラウン石田にとって、トラベルに出ることそのものに価値がある。
もういい。魔王を倒すことをすっかり忘れた、愚の骨頂、勇者でいい。
車内では、お気に入りのK-POPを爆音で鳴り響かせながら、日本海の大海原を目指してモーセ号を出港させた。
・・・。
ボリュームのつまみを小さくして、モーセ号を再出港させた。
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