【要注目】デジタルウェルスマネジメントの登場
こんにちは。お金のマッチングプラットフォーム"お金の健康診断"を提供する株式会社400Fで代表をしている中村仁です
普段は業界分析noteを書いているのですが、今回はそんな中で気になったトレンドを簡単に紹介したいと思います。それはデジタルウェルスマネジメントです。
フィンテック業界ではロボアドバイザーの登場によって富裕層が行なっていた資産運用を誰もが享受できるようになるになりました。ただ、このモデルは資産形成層や退職金をもらう前後の一般的なユーザーが対象となっていました。
私自身が野村証券出身で最後は京都支店でウェルスマネジメントビジネスを行なっていたため「富裕層相手のビジネスのデジタル化はまだまだ先だろうな」という見通しを持っていました。しかし、その考えが一変しそうでありますしデジタルウェルスマネジメントというトレンドは今後一気に加速しそうな感じでもあります。今回はそんなデジタルウェルスマネジメントを手掛ける企業を紹介します。
a16zからシリーズA最高額を調達したThe Coterie
The Coterieはa16zがシリーズA最高額である4,000万ドルを出資したデジタルウェルスマネジメント企業です。この会社の創業者たちはシリアルアントレプレナーで他の創業者たちに価値の高いウェルスマネジメントを提供するために会社設立をしたと表明しています。
The Coterieでは顧客が著名なベンチャーキャピタルに出資をすることができるルートを確保しています。他にも同社では創業者向けのローン提供を行なっており、最大25万ドルまでをプライムレートとほぼ同等水準で貸し出しを行います。それ以外でも事業承継のサポートも行い税金対策なども実施します。
同社に対してはa16zが熱量の高い出資メッセージを書いているので是非ご覧ください。
9,000万ドルを調達したデジタルファミリーオフィスArta Finance
Arta FinanceはAIを活用したデジタルファミリーオフィス構築を目指す企業で、著名VCであるセコイアや元Google会長のエリック・シュミット氏などから9,000万ドルを調達しています。同社は決済事業を率いていたのシーザー・セングプタ氏が立ち上げました。
同社では通常超富裕層のみに提供されていたような投資商品へのアクセスを可能にすることや、投資戦略の立案、そしてローンの提供などを行なっていく予定です。ローンについては証券担保ローンを活用し、金利は4.83% - 5.03%となっています。また手数料水準については成功報酬をベースにすることで富裕層との目線を合わせることを考えております。
また、同社は自社プラットフォームをRIAや他のファミリーオフィスとのパートナーシップを組むことも進めています。
ウェルスマネジメント向けプラットフォーム提供会社Farther
Fartherはウェルスマネジメント向けプラットフォーム提供会社です。2022年にBessemer Venture Partnersなどから1,500万ドルのシリーズAの調達をしています。
同社は新たなデジタル完備した仲介業を行なっているとイメージしてもらうと良いかもしれません。営業担当者が顧客に向き合えるようにするために事務作業などの負担を減らします。また、リモートワークを前提にオフィス環境なども設定されていたり、営業担当者向けのツール開発も行なっています。
事務作業の負担などを減らすことにより顧客と本部運営のコストを減らすことで営業担当者には最大75%の収入按分を行います。そのため、独立系アドバイザーや大手証券勤務の営業担当者を獲得することを目指していると考えられます。日本で考えた場合にはSBIマネープラザが一番イメージできるかもしれません。SBI証券の営業担当者向けツールを使って自前で営業を行うモデルだからです。
デジタルウェルスマネジメントの提供価値
米国中心になりますがデジタルウェルスマネジメントという領域は自社でのサービス提供モデルとプラットフォーム提供モデルがあると言えます。そういった中で評価としては自社モデルの方がされています。これはエンドユーザーを獲得することでよりスケールできると考えられるからです。
ではそのような会社が提供している価値は何かというと①プライベートエクイティ、ベンチャーキャピタルなどのオルタナティブ投資へのアクセス、②ポートフォリオ構築のサポート、③事業承継や相続対策、④証券担保ローン、となっております。これらは通常のプライベートバンクなども提供しているものですが、それらをデジタライゼーションすることでより利便性高くしていると言えます。
デジタルウェルスマネジメントの可能性
ロボアドバイザーはある意味誰でも設計できるポートフォリオモデルを低価格で提供するモデルです。一方でウェルスマネジメント領域は拡張性が元来低いモデルでした。それをテクノロジーによってスケールできるようにすることが大きな変化であると考えます。
直近登場している企業の提供価値を見ても何か突拍子もないものや全く新しい発想の価値提供というわけではありません。既存のあるビジネスをより効率的に提供できるようにしているというものであると考えます。ウェルスマネジメント領域はある意味職人芸のような個人プレーが中心でしたが、テクノロジーの活用によって再現性のあるものにできるということが証明されてきているのかもしれません。
個人的にデジタルウェルスマネジメントが既存のプライベートバンクのようなものを置き換えるかどうかはまだ疑問ですが、テクノロジーの導入によって生産性が高く、サービスの付加価値が格段に上がることは間違い無いと思います。今後もその動向に注目したいと思います。
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