イセコイ冒頭ミュージアム #イセミュ ジンパパ感想
初めてnoteを使います。不慣れなツール故、読みにくかったりしたら、ごめんなさい。
こちらには、長岡更紗さんの個人企画、
「イセコイ冒頭ミュージアム」 #イセミュ
の感想を書かせていただこうと思います。(ヘッダーの画像も長岡更紗さんのバナーをお借りしました)
はじめに
レギュレーションについて
まずはレギュレーションのおさらい。詳細は主催の長岡更紗さんの割烹にあります。
(以下、レギュレーションの抜粋)
要は「書き出し祭り」のイセコイ限定版ですね。しかし、この縛りが素敵な効果を生んでいます。
一つは同一ジャンルでいかに差別化するかという挑戦が加わることで、どの作品にも味が出て、面白さが増していること。これは、第20回書き出し祭りの特別枠(和風ファンタジー)でもそうでした。
そして、もう一つは、想定読者が特定されていることで、いかにそこにリーチするかという要素が加わっていること。
言わずもがな。想定読者は女性です。つまり、私は想定読者から限りなく遠いところにいます(15歳美少女の知命も過ぎたおっさんなので ←?)。
事実、私はイセコイどころか、恋愛小説ビギナーです。なにしろ、このジャンルにおける「ヒーロー」がヒロインと結ばれることになる恋愛対象としての男性を指すことすら、つい最近まで知らなかったぐらいです(ヒーローと聞いて、まず頭に浮かぶのは仮面ライダーとかそういうのです)。なので、「ふんっ」と鼻で笑ってブラバしていただいても一向に構いません。鼻水垂らして嗚咽漏らしながら追いかけたりも、(ちょっとしか)しません。
そんな私が読んでみよう、感想を書いてみようと思いたったのは(参加者の皆さんからヨイショされて舞い上がったってのも否定しませんが)、純粋にこのジャンルを学びたい(そして、旨味を血肉に変えて、吸収したい)という、ピュアピュアな下心からです。主催者様や作者様への忖度ではなく、どこまでも自分本位な理由なのです。
ただ、純粋な下心も捨てたものではありません(たぶん)。作品を楽しみながらも、かなり真剣に読ませていただきました。イセコイとしての面白みとは何か、同時に書き出しとしての魅力に溢れているか。イセコイ要素、書き出し要素を満たしつつ、面白い作品、特定想定読者にきっちりとリーチする作品、更には想定読者以上の広がりを見せ万人受けする作品とはどういうものか……。
とはいえ、的外れな解釈や感想を書いてしまうかもしれません。その場合は、「ジャンル知識の欠片もないノットフォーミー野郎が戯言を好き放題言いやがって」とどうか、どうか、どうか無視してくださいませ。(心からのお願い ←の体裁の重要な免責事項)
さて、個別感想に移る前に、自分が作品をどのように分析しながら読んでいたか、まずはそこに触れさせてください。
まずはイセコイとしての要素。私が参加作品を読ませていただくにあたり、重要視したのは3つです。
イセコイとして重要視したい3点
ヒロインが魅力的か。好感が持てたり、共感出来たりする要素があるか。長所と短所の両方が開示され、短所が呼び込むトラブルや長所が冴える解決を示せているか。
ヒーローが魅力的か。スパダリ的好感を持てたり、庇護欲をくすぐる可愛らしさ(あるいはその両方)を持っているか。(なるべく、少女の心を宿して読もうとしてます ←)
ヒロインとヒーローの間の恋愛感情が感じられ、しかもその恋が一筋縄ではいかないところがきちんと描かれているか。恋愛要素に、ジレジレや擦れ違い、キュンキュンを感じられるかがポイントになります。
イセコイですからね。たぶんここは外しちゃいかんのと違うかな? と、そう思い、3点あげてみました(あくまで私見です)。
そして、書き出しとしての魅力。こちらは6つのポイント(ただし、6つ目はイセコイとして重要視したいポイントと被ってるので、5つ)を重要視したいと思っています。
書き出しとして重要視したい6点
ホットスタートしているか、もしくは静から動への転換がダイナミックで印象的か。実はこれが書き出しを魅力的にする最重要項目なんじゃないかなと密かに思っています。
主人公の背負う業や、解決すべき問題、今後の成長を期待させる課題や、読み進めることで明かされるであろう謎を提供できているか。
一話目の中で小さなトラブルに直面し、主人公の持つ能力や機転で解決してみせることで、読者にワクワクを提供できているか。
設定を活かした効果的な引きで次話への誘導ができているか。
心を捉える一文があるか。
魅力的なキャラクターが描かれているか。これはヒロイン、ヒーローが魅力的かと被るので割愛します。
このまま書かれているわけでは無いですが、以上はフィルムアート社刊『「書き出し」で釣りあげろ』のアレンジになります。
これまで何度か参加してきた書き出し祭りの上位入賞作品を見ると、この全てが揃っていないといけないわけでもない事は明白ですが、同時にこれらの要素が上手く一話目で開示された作品は強いとも思っています。
また、これらの要素はあくまでエンタメ系作品の場合にしか当てはまらないとも思っています。その点、異世界恋愛はエンタメ系の1ジャンルだと思うので、これらの要素は重要視していきたいとも思っています。
あと、これはかなりお遊び的な好奇心からなのですが、最初の一文と最後の一文だけを抜き出してきたら、どんな風に見えるのかも、ちょっと試してみたいなと思っています。(それだけで意味をなす必要があるとか、そういうわけではなく、お遊びなのでご容赦ください)
前置きがずいぶんと長くなりました。では、ここからは作者様が心を込めて執筆された各作品に私の拙い感想を書いていこうと思います。リスペクトを忘れず書いていこうと思いますが、気に入らなければ訂正、削除いたします。開催期間中は匿名ですので、長岡更紗さんに「ジンパパの○○の感想が気に入らない」ってお伝えください。
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■ こ こ か ら 感 想 本 文 ■
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ジンパパ感想
おまたせしました。各作品の感想です。ルーレットを使って順不同で書いていこうと思います。
01.美貌の宰相様が探し求める女性は元気いっぱいの野太い声の持ち主らしい……それ私かもしれない
ヒロイン自身が本当の自分の気持ちに気がついていないけれど、ついつい本音が漏れそうになる感じが堪らないですね。
本作のヒロインは、アマリア・セーブルズ。今をときめく宰相、サミュエル・ドーム公爵の第二秘書を、それはそれは真面目に勤めているにも関わらず、口さがない噂の種にされて閉口しています。
自分は能力を買われてここに居るという仕事への矜持。また、下劣な噂通りになるのもプライドが許さない。だいいち、宰相閣下が私なんかに気があるはずがない。
そんな彼女ですが、やはり宰相サミュエルは魅力的過ぎるようで。
好き・嫌いといった感情とは別に、綺麗なものは綺麗だし、眩しいものは眩しい。乙女心の機微に疎いジンパパは、そういうことかな、などととぼけた感想を抱きながら読みすすめます。
目にも毒、耳にも毒ってなかなか面白い表現だなぁ……などと、乙女心の機微に疎すぎるジンパパは、まだ気付けていません。
乙女心の機微には疎いものの、男の下心には敏感なジンパパ、気付いちゃいました。アマリアは、あくまで部下に向けられる優しさとして受け止めているようですが、違う。違うぞ。サミュエルはアマリアに特別な好意を抱いてる。ただ、それを表出することは、彼女の仕事への矜持や、噂話に抗う彼女のプライドを傷つけてしまう。だから、控えめに、遠慮がちに、あくまで部下へ示す優しさというラインを守ろうとしている。そういうことじゃないですか。
しかし、サミュエルのその気持ちを一番傍で知っている第一秘書のキューテックが言い放ちます。
「お前ら、もう、付き合っちまえよ」
言ってませんでした。でも、
これ、そういうことですよね?
さすがにここに至っては、いくら鈍感なジンパパにもキューテックさんの力を借りて、理解することが出来ました。
サミュエルはアマリアが好き。ただ彼女を傷つけまいと自分の気持ちを抑えているだけ。
アマリアもサミュエルが好き。ただそれを表に出してはサミュエルに迷惑がかかると自分の気持ちに蓋をしているだけ。
まさに、ジレジレ! まさに、「お前ら、もう、付き合っちまえよ」案件!
キューテックさん、あなた真名はキューピッドなのでは?
となると。
アマリアの事が好きなサミュエルが、別人の可能性のある「『えーい! どっせい!』の声の主」に恋をした、なんて言いますかね?
むしろ、「『えーい! どっせい!』の声の主」がアマリアだと知ってるからこそ、これをきっかけに交際を持ちかけられるのでは、とキューテックが入れ知恵したんじゃないか。そんな気がします。
なにはともあれ、「お前ら、もう、付き合っちまえよ」。現場からは以上です。
最後にお遊び。最初の一文と最後の一文を抜き出してみます。
最高のジレジレでした。面白かったです。
02.雛鳥は黄昏星の檻の中
婚約破棄という、衝撃的なシーンを冒頭に配し、少し時間を遡って物語が始まり、冒頭のシーンへと回帰する構成になっています。ホットスタートという側面だけでなく、作者様の何らかの意図を明確に感じさせる構成ですね。
というのも、重たい雰囲気の世界観にヒロインの雛と使い魔の夕星のコミカルで軽妙なやり取りを配することで、とても上手くバランスを取っている辺りに、作者様の技術の高さを感じるからです。
――何かあるな?
私のゴーストがささくのよ(草薙素子風)。
そこで、いったん登場人物を整理してみたいと思います。
九条雛
ヒロイン。血筋、美貌、頭脳、呪術の才。全てを備えた完璧な姫君との世間からの評価とは裏腹にいつも満たれない思いを抱えている。
夕星
ヒロインの九条雛が従えている従魔異界の住人。強い力を持っているため、人に近い姿。真意は不明だが、雛に「好き」の安売りをしながら纏わりつく。
近衛孤月
ヒロインの三つ年上の許婚。冒頭でヒロインに別れを切り出す。
「彼女」
孤月がヒロインに婚約破棄の話をした時に語った女性。
黄昏星
ヒロインのと孤月の婚約破棄の様子を高みの見物をしていた謎のキャラクター。
タイトルにもあるこの「黄昏星」。これ、「夕星」のことですよね? 夕星=宵の明星=黄昏星。どこにも言及は無いですが「黄昏星」と「夕星」が同じ意味であろうこと、どちらもヒロインに邪な好意を寄せていることから、そうだろうと推測します。恐らく、人間が住む浄刹階では「夕星」と名乗っているものの、妖魔が住む九泉階での本来の名前が「黄昏星」なのでしょう。
とすると、本作におけるヒーローは、夕星(黄昏星)でしょうか? だから、雛を九泉階に「早く堕ちておいで」と誘い、その計画が着々と進む様をタイトルで「檻の中」と表現しているのでしょう。何故、そこまで雛に執着するのかは、まだ明かされてはいませんが。
なので、冒頭のシーンは、婚約破棄に主眼が置かれているのではなく、それを契機に雛が下階に堕ちることにこそ、主眼を置いたシーンなのではないか。そんな気がします。
なんとなくですが、夕星(黄昏星)の一貫していてブレない雛への好意に、禍々しさではなく、どこか純愛のようなものを感じます。雛の出自にまつわる何らかの謎がまだ隠されているような気がしてなりません。
それにしても。連載を前提によく練られた世界観と設定だなと感服します。
その上で雰囲気を盛り上げる言葉選びの巧みさ。固くなりすぎないよう塩梅に気を配った台詞回し。とても素敵な作品でした。
欲を言えば、ヒロインの背負う業がまだ明かされてはいないために、課された試練やそれを克服していく今後の成長が感じられなかった点でしょうか。弧月に婚約破棄を突きつけられ、夕星に振り回され、と始終受け身な感じを受けました。じゃあ、どうすればって答えを持ち合わせてなくてゴメンナサイ。前半の婚約破棄の場面、雰囲気たっぷりで好きなんですが、そこをもう少しコンパクトにまとめる、とかですかね。
最後にお遊び。最初の一文と最後の一文を抜き出してみます。
一気に世界観に引き込む最初の一文が本当に素敵です。「繊月」素敵ですね。英訳だと「crescent moon(三日月)」になっちゃいます。月齢二日程度の糸を引いたような細い月を指す言葉が英語圏にはありません。日本語の情緒豊かな言葉が冴えますね。本当に素敵です。
面白かったです。
03.王太子殿下の婚約者候補に選ばれましたが、私が好きなのは従弟のほうです
物語の仕掛けが最高です。最高すぎます。うますぎます。コミカライズ待ったなしなので、作者さま、是非とも連載なさって下さい。
さて、ヒロインから見ていきましょう。
ソフィーネ・グラデス
パン屋の一人娘。20歳。平民で唯一、王太子殿下の婚約者候補に選ばれた。
特別な能力を持っているわけではなく(たぶん)、このチャンスに玉の輿をと思っているわけでもない。どちらかと言うと、色恋沙汰からも縁遠く(母のお下がり以外にお洒落な服を持っていなかったことからの推測)、このまま両親と一緒にパン屋をやっていければそれで良いぐらいに思っている。
路上で見知らぬ迷子の子にパンをあげたりする優しさももつ。
自分が王太子のお妃に選ばれることはないと思ってはいても、人から「選ばれることはない」ときっぱり言われるのは、それはそれで釈然としない(←この反応が実に自然で可愛いポイント)。
身分の違いにこだわる事なく、優しく接してくれるステラ公爵に好感をもつ。
ステラ公爵
本作のヒーロー。王弟の息子で王太子の従弟にあたる。ソフィーネの第一印象は悪くない模様。
そしてあらすじによると、
なんとなんと。相思相愛となる未来!
しかし、この二人の恋路に影を指すのがアーデン・パーミルトン王太子殿下。
アーデン・パーミルトン王太子
25歳独身。見目麗しいと評判で、パーティーで令嬢たちが修羅場ったり、他国のプリンセスが言い寄ってきたりと人気だが、当の本人は女嫌い。
ご本人がまだ登場していないので想像ですが。
「年齢的にもいい加減、周りがうるさいし、妃の候補を決めなきゃなー。でも、正直、女の人は苦手だなー。面倒くさいなー。がっついてる系は問題外だしなー。気立ての良い子で仮面夫婦に協力してくれそうな、そんな都合の良い子、いないかなー」
こんな感じでしょうか(語尾は絶対に違う)。
なので、王太子から見れば、ソフィーネはまさにうってつけ。
三角関係! そう言えば、恋愛物語として欠かせない様式として、三角関係ってのがありましたね。でも、今回のイセミュの中では唯一かも?
ちなみに。どうでも良いジンパパに関するトリビアとして。私が「三角関係」という、まるで図形の証明問題のような単語の真の意味を知ったのは、「ときめきトゥナイト」です。(本当にどうでも良いトリビアだった……)
さて、そんなこととは知らないソフィーネは、日々周りの候補者からの酷いいじめを必死にかわそうとします。そして、頑張ってここに留まることが出来れば、時折ステラ公爵様が優しく声を掛け、時には窮地から救い出してもくださる。
自分が王太子妃となる未来同様、ステラ公爵夫人となる未来もあり得ないけど、ここに留まる時間が少しでも長ければ、それだけステラ公爵様をお見かけすることができる。そうした動機で、ついつい落ちないようにと頑張ってしまう。
わけですよ!
またステラ公爵も、
ソフィーネが苦しんだり、悲しんだりする様子を見かねて、こっそりとサポートしてしまう。表立っては出来ないんだけど。
すると、何故か妃候補として残ってしまう。
いやぁ、まさに設定の勝利というべきでしょう。他の候補者からの嫌がらせを回避すべく眼前の試練を乗り越えれば乗り越えるほどに、妃候補として残ってしまうという。
二人にとって、この問題が、否が応でもどんどん大きくなっていきます。
月に一回ふるいにかけられるという期限付きのイベントが設定されていること、それを克服すればするほど意にそまない妃候補の座が近づき、問題が大きくなっていくこと。
――こんなん、面白いに決まってる!(マジで)
近年流行りの、アイドル育成番組やバチェラーなどのリアルバラエティ番組のような興奮が味わえつつ、後半に向けて「イカ・ゲーム」のように問題がより大きくなっていく見事な設定に感服です。
一つだけ。テクニックなどとは一切関係のない個人的な指摘。
これが17歳(高2)と12歳(小6)とかなら完全に事案。犯罪、炎上待ったなしですが、王太子25歳でヒロイン20歳なので、年の差ぜんぜん大きくないです! なんなら私もカミさんより5歳年上ですし(それでか、と納得しつつ、厳しい読者の皆さんの視線が背中に注がれてるのを感じます)。
それに。なんなら精神年齢はカミさんの方がずっと上ですし(←なぜか力説)。
最後にお遊び。最初の一文と最後の一文を抜き出してみます。
不安に揺れるヒロインの心情がよく伝わってきます。読者も一緒にハラハラ出来るこの感じ、とても良いですね。
面白かったです。
追記:
これは余りにも重箱の隅をつつきすぎかなと、最初は書かなかったんですが、候補者の人数が気にはなっています。
候補者30人から毎月5人ずつ脱落したら、半年後1人に絞られるのではなく、0人になっちゃう。
そのからくりに、弁護士マイヤーさんも気づいていません。
マイヤーさんがそう言うなら、最後だけ脱落するの4人なのかなーって読んじゃいます。ですが、女嫌いでそもそも結婚する気のないアーデン王子が周到に仕込んだ「誰も候補に残らない」作戦だったりして、ともちょっと思いました。
04.永遠(とわ)を生きる聖女の、失われた記憶
白状します。私、実は「ドアマットヒロイン」なる単語を存じ上げませんでした。知りませんでした。ジャンル初心者の化けの皮がぺろりんちょと剥がれてしまいました。(元々隠してはいませんでしたが)
最終的に幸せを掴むことになる(展開が多い)ものの、人々に虐げられ、苦しみ、不幸な目にあう様に重点の置かれた物語の一形態。またそのような物語における不幸を一人で背負うヒロインのこと。
と理解しましたが、合ってますでしょうか? そして、頭の中に最初に浮かんだのが『シンデレラ』なんですが。合ってますでしょうか?
(まぁ、だいたい合ってる。合ってるっちゃ、合ってる。まぁ、そんな感じで良いんじゃない? 読んだこと無くてそれしか知らないのなら、まぁ……との皆さんのお言葉がいただけたので←妄想)
さて、本作のヒロイン……。
――か、可哀想すぎるやろ!(泣く)
で
それが本作のヒロインのフェアリです。「不老」と言われる所以は、
から。魔王の復活サイクルは一定ではなく、冒頭でヒロインが20代だったことから、聖女の力を得てから5年以上経過しています。
その間に出会ったヒーロー(聖女付きの騎士)と恋仲になるものの、彼と出会う以前に退行させられ、記憶も巻き戻ってしまいます。
聖女の力を得た15歳の時からそばに居たとすると、10年以上の付き合いなのに……。
薬の効果で退行してしまったフェアリを聖女付きの騎士を辞めて匿うヒーロー、ティタニウス。
名前が呼びにくいからと、覚えていないのに、かつてそう呼んでいたのと同じ略称の「ティウ」と呼ばれて、物悲しそうな顔になるの、良いですね。
この物語には4つの悲劇が描かれています。
1つ目はヒロインが際限なく魔王を封じるための道具として生かされ、利用されていること。
2つ目はそのせいで、薬で退行させられ、想い人であるティタニウスのことを忘れてしまっていること。
3つ目は魔王を封じるために12歳に退行させられるヒロインと違って、ヒーローは時の流れと共に歳を取っていくこと。前回同い年だったとして、今回の退行で8歳以上の年齢差がついてしまっています。
15歳になると同時に魔王が復活したとして、これを封じて再び退行させられた場合には3年。25歳になった頃に魔王が復活したとして13年。平均8年。今後も、退行させられる度に8歳ずつ年齢差が開いていきます。
そして、いつかはフェアリを残し、ティタニウスはこの世を去ることになります。
不老、もしくは長寿のキャラクターは、物語の中でこの悲しい定めを負うことになります。「超人ロック」が頭に浮かびましたが、「葬送のフリーレン」の方が例として分かりやすいですよね。
フェアリに過去の記憶がないことから、この若返りを何回繰り返してきたのか、定かではありませんが、もしかしたらその繰り返しの中にもティタニウスのような相手がいて、先立たれてしまっていたりするかもしれません。
そして4つ目。
自分にしか魔王を封じることが出来ない。その定めを、愛する人から聞かされても、愛を選択出来るものでしょうか。(私なら魔王との戦いなんか知るか、とばかりに利己的な選択をしかねないですが)フェアリは、恐らく自分に課せられた宿命と向き合うことを選ぶのでしょう。
献身的なティタニウスが折角くれたチャンスですが、魔王の復活が続く限り、フェアリに課せられた無限の環は終わらない。
そしてこれは、ティタニウスとの年齢差がさらに広がることも意味しています。
もう、設定が重すぎて、悲しすぎて、辛いんすけど(歳のせいか涙腺ゆるゆるなもんで)。
以上見てきた4つの悲劇のうち、1と3と4については、恐らくこれからも避ける手立てがありません。
ですが2についてだけは、避ける方法があるのでしょうね。それが「泉」です。
薬を飲まされて24時間。薬の効果が表れて退行が始まり、記憶をなくしてしまう前に辿り着きたかった泉。
退行そのものを止める事はできないけれど、記憶を失うことだけは防いでくれる。そういう効果があるのかなと思います。
フェアリは、自分に課された聖女の使命から逃げたいわけではないんだと思います。だけど、愛する人の記憶を失いたくはない。
その一心で泉を探し出そうとしていたのでしょう。
聖女の勤めを果たしてくれるなら、泉の水を飲ませてあげれば良いのに。
ですが、それは永遠の環に囚われた者と、時と共に老いる者との定めを直視するという、より辛い状況を強いることになります。だから、魔王を封じるためにフェアリに頼らざるを得ない人々は退行と同時に彼女の記憶を奪おうとしたのでしょう。
では、この物語をハッピーエンドに向かわせるには、どうすればよいのでしょうか?
とあることから、15歳になると勝手に発現するのではなく、そのタイミングで何らかの儀式を執り行わなければならないのかもしれませんね。
そして、それを行わずに時を逃すと、もう一生聖女の力は発現しなくなる。そうすればこれ以上、退行させられることはなくなります。
ただし、復活した魔王と、それによって力を増大させた魔物が跋扈し、平和とは縁遠い世界になってしまいます。なんなら、主人公たちも殺されるかもしれず、これは最終的にバッドエンドかもしれません。
魔王封印の勤めを投げ出さず、愛する人と添い遂げるには、二人で退行を繰り返すしか道は残されていないんじゃないか。
なんとなく、そんな気がします。完全なハッピーエンドとはいえませんが。
最後にお遊び。最初の一文と最後の一文を抜き出してみます。
永遠の時の環に囚われ続けるのだとしても。愛し合う二人でなら乗り越えられる。乗り越えていって欲しい。
そんな風に思います。面白かったです。
05.婚約者と書いて、ライバルと読む。負けず嫌い令嬢は、親友と呼ばれて複雑です
からかったつもりが、レイラが真に受けて
「……そうですね」
と返したもんだから、アルベルト大慌て。
(なら言わなきゃ良いのに)
でも、分かりますぞ。ジンパパも男の子なので。
これ、「好きな女の子に、ついついいじわるしちゃう」男の子特有の謎行動ですわ。逆効果なだけなのに、何故かやっちゃうんですよね。つまり、アルベルトはガキんちょなんですね。
加えて。勝負に勝った剣術でさらにマウントを取りに行くかのような言葉。これ、剣術では勝っているものの、総合的にレイラに遅れを取っているという、劣等感の表れですね。
レイラ目線では、アルベルトの方が色々と勝っているように見えてるけれど、アルベルトはアルベルトでレイラが勝っていると感じる物が自分より多いんでしょうね。
アルベルトもレイラに負けず劣らず、相当な負けず嫌いなようです。
なぜか? そりゃ、好きな子に良いところ見せたいからですよ! 格好つけたいからですよ! つまり、アルベルトはやっぱりガキんちょなんですよ。仕方ないね。
ただ、当事者のレイラにしてみれば、たまったもんじゃない。ほんと、男の子ってやつは……(「オマエモナー」という突っ込みは、あーあーあー聞こえない!)。
幼き頃から張り合い、同じ勉強科目を履修してきた二人。成長するに連れ、性差、体格、個性によって、得意不得意が生まれてくるのは道理。それでも、互いにどんな勉強をしてきたか、どんな努力をしてきたかを知っていて、互いの強み弱みを知っている者同士というのは、単なる幼馴染以上の強い結びつきと感じます。
そこに割って入ることなど、早々出来るものじゃない。
「クラークに猛アタックをかけ(られ)」……クラークくん、割って入っちゃった。
大方、アルベルトくんが、「べ、別に産まれた時に決められただけの婚約だし、なんなら親友ぐらいにしか思ってないし」とかなんとか言ってこじれちゃうんでしょうね。
取り返しのつかない事になる前に素直に謝る、素直に好きだと言うって出来れば良いんでしょうが、負けず嫌いが悪い方に出て、素直な言葉が出ないまま、どんどんこじれていくのでしょう。
そして、アルベルトくんが折角素直になったと思ったら、今度はレイラが頑固に突っぱねる、と。
でも、最後には互いに素直になれる良い子たちだとジンパパは信じてます。それまでニヤニヤしてたら、良いんですよね?
最後にお遊び。最初の一文と最後の一文を抜き出してみます。
いいか。アルベルトくん。自分に非がある時に謝るのはもちろん、お互いに非がある時も男の子が謝るんだ。そして自分には一切非がないと思える時も男の子が謝るんだ。
そして、相手からの謝罪は期待しない。女の子が許してくれさえすれば、それで良いんだから。頑張れ。(レイラ嬢のお話なのに、何故かアルベルトくんに肩入れするジンパパ)
面白かったです。
06.かつて身分差の恋で結ばれなかった恋人の生まれ変わりを見つけたら、これまで塩対応してきた王太子でした
正統派のイセコイってことで良いのでしょうか。このジャンルに不慣れなので、判断しきれないのですが、きっとそうでしょう。
恋に恋する16歳のリリィ姫が今生では身分違いの護衛騎士と結ばれることが出来ないのではとの予感から、用意周到に準備をしていたお陰で、来世の侯爵家令嬢レイラ・ローゼンバルクの中で記憶が蘇ります。
そして、レイラもリリィ姫の時に報われなかった恋を成就するためにと、前世の恋人を探し出す魔道具の力を借りて、運命の人を探します。
果たして、そのお相手は、二年前のパーティーで塩対応してきた王太子でした。
でも。
って。おいコラ、レイラ。察し悪いぞ。
自分なんかを好きになったがために、リリィ姫を巻き込んで死なせてしまった。自分なんかに関わると碌なことにならない。
って後悔からの……
ですやん。表情読んだなら、塩対応の理由に気付きなさいよ!
って感じの
♀//♂ (擦れ違い)
ですね!
なるほど、なるほど(勝手に分かった気になってるだけなので、解釈間違ってたらゴメンナサイ)。
良いですねぇ。本当は好き同士なのに、相手への思い遣りが裏目、裏目に出て擦れ違う感じ。最高ですし🍣。
ただ、惜しいのは、叔父の忠告にも関わらず恋に邁進するリリィ姫。前世の恋人とめぐり逢いたいレイラの恋心はたっぷりと伝わってきたのですが、キャラクターとしての魅力が薄いように感じたところ。
このままでも勿論、ヒロインを応援したいって気持ちになりますが、恋心以外の魅力も押し出せていれば、もっと彼女の恋を応援したくなるかなって思いました。(ジャンルに不慣れな故、私の認識が間違ってるかもしれません。その場合は、戯言と聞き流してくださいね。お願いします)
最後にお遊び。最初の一文と最後の一文を抜き出してみます。
印象的で思わせぶりな叔父の忠告から始まる感じ、めっちゃ良いですね。どういうこと? なんで? って疑問を読者に植え付ける、良い台詞だと思います。
そしてラスト。あの塩対応はなんだったのか。もしかして、王太子にも前世の記憶があるのではないか。それをきちんと確かめたいとポジティブに行動するヒロインのキャラクターがよく出ています。
面白かったです。
07.秘する翡翠
短いタイトルですが、「ヒスるヒスい」と語感を大切に付けられたタイトルだと分かります。また、読み終わってから振り返ってみると、「翡翠」がヒロインの名前であることから、ヒロインが何かを誰かに秘密にしている。隠してる。そういうタイトルだと分かります。
職人の出である翡翠は、後宮での妾妃たちの虐めに耐えかねて実家に戻ってきます。
しかし、いざ帰って来てみると、実の父親は「御部屋様」などと呼んで、腫れ物に触るような応対をみせます。
実家にすら居場所がないと嘆くヒロインを救い出したのは幼なじみの青年・礫。父親までもが「御部屋様」と呼ぶ中、彼だけは本来の名前「ミドリ」と呼んでくれます。その上、察しの良い彼が気分転換にと、翡翠を町へ連れ出してくれます。傷心の翡翠目線だと、もうこれだけで落ちるよね? ね?
町で立ち寄った石屋で見つけたある石について、翡翠が呟きます。その石は、加工中に割れてしまったジェダイト(=翡翠)。彼女と同じ名前の石です。
どれも彼女が割れた石について語っただけの、他意のない言葉ですが、それを礫は彼女に重ねて受け止めます。後宮へと上がることになった翡翠への思い。一度は蓋をしたはずの彼女への思いが……。
だから、彼女がこれ以上のストレスを受けて壊れてしまう前にと、助け出そうとしたんですね。一話目はここで終わります。
彼の言葉に乗って外の世界に飛び出せたら、どんなにか良かったでしょう。まだ見ぬ世界へと飛び出していく冒険譚!
ですが、この物語は(あらすじにも書かれてますが)後宮物。恐らくはそんな事をしたら、残された翡翠の父がどんな仕打ちを受けることになるか、礫の家族、親族、それどころか村ごと酷い罰を受けることになるかと、考えたんですね。
それで、彼女は彼の誘いに乗れないと否定して、後宮へと帰って行くのでしょう。たっぷりと彼に未練を残して。
彼も彼で、このまま自分の気持ちに蓋をして済む問題じゃない。なんとか、彼女を陰ながら救えないだろうか。ってなるわけですね。
♀→X←♂ (許されない恋)
です。良いですねぇ。ロミジュリからずっとこれまで、形を変えつつ紡がれてきた愛の物語の一つの形です。許されない恋を遂げるために重ねられていく嘘と秘密。
でも、愛するが故に重ねた嘘と秘密がいつか愛する相手をも裏切ることに……。このパターンってハッピーエンドにならないような……。
最後にお遊び。最初の一文と最後の一文を抜き出してみます。
最初の一文、すらすらと読んでて気付いてませんでした。抜き出してきて初めて気付きました。「抱かれて」「横たえ」って、恋愛小説にぴったりな言葉を使った暗喩だったんですね。え、凄いんだけど。恋愛小説に誘うサブリミナル効果がありそう。
そして最後の一文。礫は翡翠を助けたくてそう言ったんだよね。でも、これ、Yesと答えてもNoと答えても翡翠が苦しむ呪いの言葉だよ……。勝手に切なさが盛り上がっております。
面白かったです。
追記:
「抱かれて」は恋愛を「横たえ」は悲劇のラストを暗示してるのかもしれないですね。
08.妖精くれた魔法の指輪
私、方向感覚は割とある方なんですが。どういうわけだか、イセコイシティに居るとばかり思っていたのに、コメディタウンに迷い込んでしまったようです。
ずるいわw こんなんww
既に本作をお読みになった上で、こちらの感想をご覧の皆さま。私のこの魂の叫び、共感いただけるものと思います。
タイトルもあらすじも本文も、ずーっとファンタジーしてましたやん。
タイトル:とてもファンタジー感に溢れたタイトル。
あらすじ:なにやら波乱の予感を感じさせるファンタジー感溢れたあらすじ。
本文序盤:一風変わった語尾で喋る妖精さんだな。まぁ、これもキャラ付けか。外見は「かわいい」らしいし、ま、いっか。小鬼に追いかけられてたん、お前がちょっかい出したからかい! ま、それも妖精らしっちゃ、妖精らしいし。ファンタジー、ファンタジー。
本文中盤:指輪をお互いに嵌め合うとか。言っといて照れてるとか。いやぁ、イセコイしてますなぁ。
って、気分で読んでたのに!
待てい、こら!
なりましゅ、やないがな。なんやねん。『ビキニアーマー』ってwww
ファンタジー感が……。あれ?
あ、ビキニアーマーはファンタジーか……。
ちなみに、ジンパパのビキニアーマー初体験(と言っても、初めて装着した、じゃなくて、初めて観た、だからね!)は、いのまたむつみさんがキャラクターデザインされた『幻夢戦記レダ』です。
当時の私は中学3年生。多感で頭の中から煩悩ばかり垂れ流してた頃です。はい。ドキドキしました。
まぁ、そうか。ビキニアーマーは一応ファンタジーか。と、無理やり納得して続きを読んで、とうとう膝から崩れ落ちました。
どういうこと? え、叫べと!? じゃぁ、叫ぶよ? 叫べば良いんでしょ?
「パーンツ!」
たまげたなぁ。そして、やられたなぁ。
フッ
ってなっちまったし!
ヒーローとヒロインがビキニアーマーに変身した姿も気になるし。
ビキニアーマーがどういうものかも分からず変身しちゃったみたいだから、お互いの肌の露出が増えて、それはもう慌てそうだし、その様子をニマニマと眺めたいし。
くそ、作者の手のひらの上じゃねーか。
最後にお遊び。最初の一文と最後の一文を抜き出してみます。
作者様の狙い通りに踊らされました。面白かったけれども!
ちょっと、悔しいですww
09.失踪王子の代役〜片割れ王女と気づかれないまま、兄の側近から告白されそうです〜
魅力的なヒロインと共に、謎めいた兄の言動、そして失踪。ついつい、ロマンスの香りよりも、ミステリーの匂いをくんか、くんかと嗅ぎ回ってしまいます(なんせミステリーに美人は付き物ですし!)。
ところで、このヒロイン、置かれた境遇からは、コミュ障に疑心暗鬼に人間不信、下手すりゃ精神疾患とかのフルコンボでもおかしくないのに、明るくて素直で、真っ直ぐで、前向きで、おまけに当たって砕けろな度胸もあるなんて、なんて素敵で強々なんでしょう。おまけに毒の研究も抜かりがないとか、これは敵対者さん、相当手こずることになるんじゃないでしょうか。
あらすじには
なんて書かれてるんですが、アルスが王太子をお守り出来なかったと悔し泣きしてると、
「アルスどしたん?」
と、王太子ベルカントに扮するアリアがケロッと現れるみたいな「ほぼほぼ、一人で危機を乗り越えちゃう」ぐらいの強さを感じる主人公です。
いやぁ、そんなん男惚れしちゃってもおかしく……あれ? てことはBL展開? いや、男装なだけだから、NL? 本人はBLと信じてるNL? と、いきなりジャンル初心者を露呈して、慌々しちゃいます。
なんすか、このレギュレーションを三段跳びで軽やかに超えていく感じ。世の中には凄い方がおられます。
しかし、この兄貴。表面的に捉えると、大層酷いことを大事な妹に押し付けてる感じがします。
全てのヒントは置き手紙にあるはず。早速、読み解いていきましょう。
実はこっそり注目したいのは、「アルス・ノヴァリーに気をつけろ」のところ。「気をつけろ」とは書かれているものの、「毒殺しようと企んでいるから、アルス・ノヴァリーに気をつけろ」などとは書かれていないこと。「毒殺しようとしている者がいる」という物騒な話から書き出されているために、読み間違いそうになるけれど、ここは違うって気がします。
さらにタイミング悪く、アルス自身、
なんてこと言ってますが、彼は兄の手紙を知らないわけですし。
想像ですが、「(手が早く両刀使いだと噂があるので、)本日より側近につくアルス・ノヴァリーに気をつけろ(ただし、側近としては頼りになるぞ)」の可能性もあるんですよね。お兄さん、言葉足らなすぎですぞ。
なにしろ、ノヴァリー家は、国王陛下と対立する王弟殿下と結びついているようですが、アルスはそのノヴァリー家の次男です。長男ならいざ知らず、次男ならば家命よりも自分の意志を尊重して生きている可能性はあります。つまり、敵の敵は味方ってやつですね。
兄貴「俺、アルス・ノヴァリーが苦手でさぁ、あいつすぐ好色の目で俺を見てくるんだよな。ってわけで、あいつが側近になってる間だけ、お前に代わりを勤めてもらったってわけ。手紙書いといたから、ちゃんと、正体をバラさず、警戒も出来ただろ? え? 毒殺? まぁ、そういう奴も居なくはないさ。それに、そう書いとけば、脳天気なお前も少しは自重するかなって」
妹「兄貴……。いや、も少し丁寧に書いといてよ。毎日アルスの熱を帯びた眼差しかわすのどんだけ大変だったか……」
みたいな予想をこっそり置いておきます(こっそりとは……)。
最後にお遊び。最初の一文と最後の一文を抜き出してみます。
最初の一文も最後の一文も、どちらも台詞って意外と少ないかも。
推理(とは言えない予想)がどう転ぶか。楽しみです。面白かったです。
10.封印されていた竜王に見初められ嫁に来ないかと誘われたので婿に来るならいいよと言ってみた
めっちゃ悪いやつ出てきた(笑)
主催の長岡更紗さんの割烹、「募集締め切りました!!【イセコイ冒頭ミュージアム】企画概要」にも、
と書かれてますからね。こんな悪い奴はコテンパンにやっつけちゃいましょう。
冒頭の場面は恐らく『王家の墓』ですね。そして墓を荒らしているのは、大神官ダーゼル。そこで手に入れた伝説の万能薬エリクサーの小瓶。
飲み干しちまいやがった!
あれ? エリクサー無くなった?
弟の治療にエリクサーを使ったなんて、真っ赤な嘘。それどころか、王家の血を引くものしか入れない宝の間にダーゼルが入れたのは、治療と称して弟の血を抜いて使ったからなのでしょう。
にも関わらず、高額な治療費を請求し、バーレンダーク王国の王家転覆を企てる悪党。
対するヒロイン、ルキアは気丈に振る舞います。残された唯一の家族である弟の治療を打ち切る苦渋の選択を強いられても。
これ、めっちゃ辛いですよ。昨年、末期がんで亡くなった弟の場合は、治療費の問題ではなく、適用効果が合わず、まったく改善のみられない、ただ辛いだけの抗がん剤を飲むのを本人が止めたいというので治療を止めて緩和ケアに移行したんですが。
抗がん剤の辛さは本人にしか分かりませんが、それでも治療を中止するというのは、遠くない死を受け入れるってのと同義なので、やるせなかったですね。
恐らくルキアも同じ心持ちだったろうと思います。ルキア、女王としての格を備えた立派なヒロインですね。腹心の部下からも厚い信頼を得ています。
悪の塊のような敵と、これと相対する強い心をもったヒロイン。あとは、ヒーローさえ登場すれば完璧。
ヒーローが王家の墓に頑丈な鎖で繋がれ囚われの身の竜王であることは分かるのですが、ヒロインとの恋愛要素がタイトルだけってのが残念です。
文字数と言う名のラスボスに苦しめられたんだろうなって思います。
ダーゼルの絵に描いたような悪党っぷりや、ルキア王女の魅力がたっぷり伝わってくる、素敵な書き出しだっただけに、異世界恋愛の恋愛要素も1話目から垣間見たいと思ってしまいました。
最後にお遊び。最初の一文と最後の一文を抜き出してみます。
竜王がなぜ王家の墓に囚われていたのかも気になりますね。面白かったです。
11.魔法学院の一流クズ教師が求婚してくる理由
いきなり引用から書き始めてしまいましたが。こういう心に残る一文がキマってる作品は強いと思います。
ヒーローの人となり、性格、そしてヒロインの置かれた立場。それらがぎゅっとこの一文に濃縮されていて、本当に上手いと思います。
本作もそうですが、ヒロイン一人称の作品多いですね。主たる読者層である女性にリーチしやすい利点があるからだと思います。
ですが、一人称だと、なかなか主人公自身のプロフィールを開示しにくい問題があります。その点、本作ではヒーローにそれを語らせてて面白いです。
返す刀でヒーローについてもヒロインが教えてくれます。
本当は「『クズ』の蔑称で呼ばれている」なんでしょうね。ウェンディの配慮を感じます。
そんなヒロインが虐められているのを目撃したクウェレディズ先生。魔法を軽やかに操って、窮地から救い出します。そして、そのお礼に結婚を迫ります。卒業を待つよと言いながらも、その圧は凄く……16歳にそれやったら……事案じゃね?
それはそうと、クウェレディズ先生、虐めからヒロインを救い出す手際は見事。単に助けただけでは、虐めがエスカレートしかねない。そう思って、ヘイトが自分に向くよう、うまく仕向けてますね。クズを装ってますが、なかなかどうして。只者ではない。
実際、只者じゃないわけですが。
一方のヒロイン。先程の引用のように、きちんと情報が開示されているにも関わらず、肝心の「求婚してくる理由」に関わる部分は、その一切が伏せられています。
ですが、「いやぁ、好みのタイプだからさ」とか(言いそうではありますが)、そんな上っ面な理由ではないのでしょう。じゃあ、何なのか。
まず、ウェンディは、クウェレディズ先生が強く結婚を望むほどの運命の人だという前提を置きたいと思います。
その上で(情報が伏せられていることから、なかなか難しいのですが)、逆に「ない」ことに注目してみます。
・ウェンディはクウェレディズ先生が運命の人だという記憶がない
・入学にあたってはクウェレディズ先生が陰ながら推薦という形で支援しているが、おそらくは生きづらかったであろう孤児院時代には支援できていない
・入学後も数々の虐めを受けてきたが、物語冒頭の場面以前は助けられていない
・ウェンディは入学に必要な魔力が微々たるもので殆ど持っていない
・運命の人という割に、年齢差があり、釣り合っていない
思いついたのはこのぐらいです。ここから見えてくるのは、クウェレディズ先生がウェンディに迫るある危機を回避するために、彼女に若返りの魔法を施し、かくまおうとしたのではないか、ということ。
その危機が政敵によるものか、身内による迫害か、生まれ持った能力か血筋に起因する定めかは分かりませんが。
その危機を回避するために、彼女の本来身につけている強大な魔力を記憶ごと封印した。しかし、不幸な事故により、安全な場所にかくまうはずの計画が破綻し、行方がわからなくなってしまった。
魔力が封じられているために、彼女が孤児院に居ると分かるまでに時間を要したし、入学後も、彼女の居場所を常には把握できず、いつも助けてあげられるわけではない。
今の情報量での予想はこんな感じです。彼女の記憶に関してはこんなやり取りがあります。
クウェレディズ先生は、封印したはずの記憶が彼女に戻ったのかと勘違いして驚いたわけですね。
クウェレディズ先生は、ウェンディの記憶を戻す気はなく(戻す手立てがないのかもしれませんが)、このまま二人の距離を縮めることを望んでいますが、そうはならないのでしょう。
ウェンディの記憶が戻るとき、物語が本当に動き出す。そんな感じがします。
最後にお遊び。最初の一文と最後の一文を抜き出してみます。
本当のヒーローは(ぎりぎり手遅れにならないタイミングで)ちょっと遅れてやってくるものですからね!
面白かったです。
12.犬獣人の従僕の溺愛は、姫君には忠義と映る
(注意 こちらの感想、感嘆符多めとなっております。作品の楽しみ方を作品に合わせて変えているためと、ご理解ください)
キャラ立ちが大事っていうのが如実に現れた作品ですね。めっちゃ良いです。
なんと言っても、砂犬獣人のディザードくん。普段は犬要素のないイケメンです。
そんな彼が時折見せる犬要素! 其の1!
犬歯! しかも、この犬歯で……
噛んで物を掴む!
犬要素、其の2!
ケモ耳! このケモ耳は、さらに。
ここ、ポイント高い! 獣人における最大の疑問点を軽やかに設定に組み入れてる! その上……
ヒロインにこう語らせることで、不思議設定に免罪符! あざとい! あざとすぎます!
そして極めつけ、犬要素、其の3!
もう、メロメロです。
かのシャーロック・ホームズすら犬化して人気作品になっちゃう、お国柄。日本人でモフモフ嫌いな人なんてそうそういません(ジンパパ調べ)。
しかも、もふもふを出しときゃ良いだろではなく、徹底的に描ききる。もう、完敗ですよ(何に負けたのかは不明)。
※ここまで、引用過多ですみません。
そんなディザードくんが従うお相手が、ヒロインのエメリン様。さすがにディザードくんに比べると描写控えめですが、こちらも妖精郷のお姫さまと設定盛り盛り。
そんなお姫さまには、なにやら「いにしえからの慣習」がのしかかってはいるものの、
のんびりしてた!(笑)
全力でこのもふもふワールドと、ディザードくんの溺愛を単に忠義と受け取る姫さまのほんわか、のんびりワールドを堪能してくれ給えという、ね(笑)
皆さんは「世話やきキツネの仙狐さん」という作品、お好きですか? 私は大好きです! それに通じるものを感じます。
最後にお遊び。最初の一文と最後の一文を抜き出してみます。
最後の最後まで可愛かった(笑)
面白かったです。
13.ガラスの花の乙女と結ばれる真の恋は「366日」前から始まりました。
行頭の段下げをしない形式にケータイ小説サイト感を感じます。作者様の主戦場は魔法のiらんどなのかもしれないなぁ、だとしたら、作者様超ベテランさんなんじゃないのかなぁ、震えるなぁ、などと思いつつ読ませていただきました。
私がまず注目したのは、約3年に渡って続いたという戦争
と、これから語られる366日(=1年)の物語の関係です。
4年に一度の閏年の恋の物語であり、その閏年に戦争が始まったとあります。つまり、クルグスル戦争を大雑把に前期(最初の1年)、中期(中盤の1年)、後期(最後の1年)と区切った時、これから語られる366日の物語は、その前期、最初の1年に相当するということ。
つまり、
には違いないのだけれど、戦争はまだ始まったばかりだということ。二人は366日かけて「真に結ばれる」ことになるけれど、それからまだ約2年は戦争が終わらないということ。
――どういうことだろう?
これが、クルグスル戦争後期に二人が出会った、であれば、ガラスの花によって二人が真に結ばれたことで戦争が集結したのかな、などと読むところです。
しかし、時はクルグスル戦争前期。戦争はまだまだ続きます。
ならば。戦争の渦中にあっても、愛を貫き通した二人のとある悲劇の物語が語られるのでしょうか。
わかりません。わかりませんが、そんなとある悲恋の物語ではなく、二人の成した功績を後世に伝えようとする者の意志によって語られている強い物語、そんな風に感じました。
戦争の最中、愛を貫き生き抜いた、そして出会って366日目に非業の死を遂げたある夫婦。彼らはこの戦争にたった二人で挑んでいた。不毛な戦争を終わらせたい、その一心で。そんな彼らの意志を受け継ぎ、ガラスの花にて結ばれた永遠の想いに応えようとした人たち。彼らがその後、2年の戦いを経て終戦を勝ち取り、叙事詩として語り継いでいる物語。そんな風に想像しました。
ヤン・ウェンリー死してなお、彼の意志を継ぐものによって、戦いが続き、伝説が語り継がれているように。
ぜんぜん違ってるかもしれませんが。
さて、強いキーワードとして登場するガラスの花とはなんでしょうか?
通称、ガラスの花と呼ばれる綺麗な花はあります。オーニソガラムのヌタンスと呼ばれる花で、薄く白い花弁がうっすらと透けていて、まるでガラスのように見えます。が、これは違いますね。
ガラスの強さと脆さ、そして花という平和の象徴に由来する、戦争という不毛な行為へのアンチマターとして存在する遺物とか、そういう物なのかなと思います。
ですので、この物語は、やはり平和への祈りを込めた物語として紡がれているのかなと思います。
まったく関係無いのですが、ヒロインの名前「ユレイラ」に近い名前の鉱物があります。
ユレイライト。火成岩のような岩石組織をもつ隕石で、ダイヤモンドが含まれているのが特徴です。
この知識に引きずられつつ読んだので、いたいけな少女の中にダイヤモンドの強さを勝手に感じながら読んでました。
(あー、でも閏年の絡みで天文への言及もあるし、あながち無関係でもなかったり?)
最後にお遊び。最初の一文と最後の一文を抜き出してみます。
秘されてはいますが、「???日目」は、366日目ないし、それに近い日にちなんでしょうね。
「100日後に死ぬワニ」って作品が一時話題になりましたが、時間制限の設けられた物語は緊張感が生まれるので、妙手ですよね。面白かったです。
▲ 01〜13
▼ 14〜26
14.好みドストライクな暴虐公爵様に「君を愛することはないから安心してほしい」と言われましたが、ごめんなさい、私は愛してます。
(*ノω・*)テヘ
作中の文章を勝手に改変して、感想に使っちゃいました。ごめんなさい。最初は仕掛けに気づけず、兄貴何考えてんの? だったもので……。
それにしても。舞台設定の整え方がとても上手いです。主たる登場人物を4人も見せて、その個性、性格、立ち位置などを描きつつ、読者を引き込む物語を僅か4200文字で提示する。
これ、めちゃくちゃ難易度高いですよね。本家に参加させてもらって、書き出し4000文字程度できちんとそれらを描き切る難しさを身をもって味わってきてますから、凄く分かります。
さて、妹ちゃん。第一印象、めっちゃヘイト高いですね(笑)
これは、もう主人公が幸せになるだけでは気持ちがおさまりません。是非とも、ざまぁを食らわせてやりたいものです。
……と、ここでふと我に返るわけです。
主催の長岡更紗さんの割烹、「募集締め切りました!!【イセコイ冒頭ミュージアム】企画概要」。
そう。レギュレーションです。
1話目にざまぁ展開が無かったからOKとか、ざまぁしたいぐらいにヘイトは溜めたけど、ざまぁはしない予定だからOKとか、それじゃあ、読者が納得しないですよね。
♪違う、違う🕶
♪そうじゃ、そうじゃな〜い🕶
ドーラン塗って顔黒キメてサングラス掛けて歌っちゃいそうになりました。
これ、妹ちゃんも王子もヒール感を出しまくって思わせぶりなだけで、リリアンとアンガスの二人が思い合ってることに気付いてて、ちゃんと想い人とくっつけるように仕組んだんじゃないでしょうかね?
そんな風に産まれた時から決まっていては、誰かを好きになるなんて気持ちに蓋をして生きてきたに決まってます。
なんてリリアンは言ってます。恐らく、「年相応になり、婚姻の話がもちあがってからは」初顔合わせに違いなかったのでしょうが、アンガスによると、二人は幼少期に出会っています。
その時のリリアンの印象をアンガスはこれ以上にないストレートな言葉で語っています。
思わず微笑んでしまうぐらい可愛いことを仰る(笑)
一方、リリアンは産まれた時からの王子との婚約がありますから、自分の気持ちは押し殺していますので、この時の印象含め、彼女がどう思っているのかは、本文では触れられておらず、タイトルやあらすじで察するよりありません。
彼女が自分の気持ちにいつ気が付いたのかは書かれていませんが、初夜に望むも気絶してしまい、
と言っていることから、気絶寸前の彼女の心持ちとしては、「ドストライク」だったわけですね。
二人の気持ちが確認できたところで、妹ちゃんのセリフを振り返ってみます。
二人の気持ちを確認した上で見てみると。余命少ない姉が時を無駄にすることなく、想い人との時間を共有出来るようにと取り計らい、それが今、上手くいこうとしている。それが我が事のように嬉しい姉想いな妹の姿が浮かんでくるではありませんか。
王子もそんな優しい妹に心を寄せ、全面的に協力することにしたのでしょう。
王子の妹への評価が高いことにも納得です。
誰も悪くない。悪人がいない。平和な世界。
あらすじ最後の謎の一文。
まさに、この通りなんですね。
ただ、この仕掛け、ちょっと気付き難いかもしれません。見落としそうになりました。
「はて、レギュレーション違反では?」
という、メタな考察を行うことでようやく気付けました。
タイトルやあらすじを振り返れば、ヒントは沢山あったんですが。初読1話だけでの読後感だと、この後ざまぁが始まりそうな、そんな感覚になっちゃいました。(私が単に読み方が浅くて気付けなかっただけなんですが。ごめんなさい)
最後にお遊び。最初の一文と最後の一文を抜き出してみます。
まさに。折角の全方位ハッピーエンドなお話なので、ちょっと「もったいない」気分。
なにしろ、すっかりざまぁ物かと騙されちゃいそうになった程のヘイトコントロール力ですから。
連載時には、是非どんでん返しであっと言わせるところまでを1話目としていただき、「全方位ハッピーエンド」感全開でお願いしたいです(あくまで個人の感想です。話半分、いやスルーしてください)。
面白かったです。
15.小柄な竜に恋をした、不器用な治癒術師 ~バルツクローゲン魔法学院、教師の職場恋愛物語~
全体が4つの部分で構成されています。設定に触れた前書き、初登校でヒロインとヒーローが邂逅するシーン、笑いを誘うホームルーム、そしてヒーローの独白。
これ、作者様、相当文字数で苦しんだんじゃないかなぁ。4つの部分を過不足なく見せつつ、制限内に文字数を抑えるのってかなり難易度高かったと思います。
タイトルから、勝手に「教師びんびん物語」を連想するような世代ですが、熱血教師ではなく、小柄で童顔、人見知りで恥ずかしがり屋、その上ちょっと天然な、とても可愛らしい教師でした。
特に、「後ろから見れば本が歩いているように見える」がめっちゃ良いですね。もうすぐ春です。数日前まで幼稚園に通っていたピカピカの一年生が、身の丈に合わない大きなランドセルを背負って登校する姿、後ろから見るとまるでランドセルに足が生えてヨチヨチと歩くようで可愛いですよね。あんな感じで想像しました。
そして、上手いなと思ったのが、使い魔のノチェさん。猫らしい癒やしを提供すると共に、人見知りの激しいヨランダに代わって、物語を牽引します。こういう配置の妙も、テクニックですね。メモ、メモ。
初登校での緊張感溢れる邂逅シーンに続き、笑いを誘うホームルームの場面。笑いをこらえる生徒たちの様子が、さながら大晦日のあの番組を彷彿とさせます。番組、終わっちゃいましたが。
なにしろ、掛け合いの台詞が面白くて、とても好きな場面です。
地の文に生徒たちの感情が乗ってるのが良いですね。読んでてとても楽しかったです。そして、極めつけ。
ここでも使い魔のノチェが良い味を出しています。ノチェさん込みで、ヒロインの魅力倍増です。
そして、大戦中に負った顔の傷のせいで堅物と思われたマティアス先生の可愛らしい独白。ギャップが良いですね。素敵です。
と、2部分〜4部分が申し分ないだけに、冒頭がちょっぴり残念かなぁ。大戦中にヨランダが大怪我を負い、誰だかわからない人(まぁ、マティアス先生なわけですが)に治癒魔法で助けられたこと。それが縁でヨランダも魔法を学ぼうと志したこと。ノチェからお墨付きを貰うほどに習得し、晴れて教師になったこと。
こうした物語の背景に関わる重要情報だけに、削ることはできません。が、冒頭に地の文として置くのではなく、その後の部分に散らして配置しても良かったかな、とは思いました。個人の感想ですし、これが正解というわけでもないので、話半分に受け止めるか、意にそまなければスルーしてください。
最後にお遊び。最初の一文と最後の一文を抜き出してみます。
会話劇部分にとても魅力を感じる作品でした。地の文の使い方が個性的で、会話劇の魅力が増してるあたりに、技術の高さを感じます。
そしてラスト。ヨランダが竜の子である事に触れられてタイトル回収。マティアス先生は独白ではデレてましたが、ヨランダの前ではそんな一面はお首にも出さないんでしょうね。二人の関係がなかなか進展しないジレジレが味わえそうで面白かったです。
16.好きな人にだけ発動する落とし穴魔法を身につけてしまいました…
簡潔で適確で、これは楽しいお話だと期待できる良いタイトルですよね。「しまいました…」のところに、主人公にもその能力を制御出来てないってのが、しっかりと表現されていて、これは暴走する落とし穴魔法によるドタバタラブコメディが楽しめるってことねと、読む前からワクワクしてきます。
そして、タイトルに偽りなし。タイトルから予想した通りのとても楽しいお話でした。
しかも、パレードの場面で起きた落とし穴事件から始まるというホットスタート。これはさり気ないながら、ポイント高いですよね。
まず、ヒロイン。
どうやら、好きな人に対してってだけでなく、さらにその人が視界に入ることが発動条件のようですね。そして、この場面では、それを既に知っている。
片や、ヒーローも落とし穴を作ったのが誰だか知っている。
だからこそ、この作品一番の売りである、
このやり取りを見せることが出来ている。
(ひええええ)と「どこだーっ!」は、次話以降も何度も見ることになる象徴的なやり取りなんだと思います。
「ダーリンは浮気者だっちゃ!」「よせ! ラム〜!」ビリビリビリ! みたいな感じですね。
ヒーローもヒロインも何が起きたかわからないって感じで始まるよりも何倍も楽しいスタートになってると思います。
さて本作の最重要登場人物である、この落とし穴。
「消えた」「悪戯みたいな呪い」「慌ただしくなった」「直径一メートルほどの穴」と、毎回めっちゃ丁寧に表現を変えていて、読者を飽きさせないための工夫がされています。
そして、「直径一メートル」「まったく姿が見えない(ほどの深さ)」といった情報を最後まで取っておく、落とし穴への落ち方についても具体的に示さず取っておくことで、
の醸しだすクスッと笑える面白さを効果的に引き立てている気がします。
これらの事から、この作品を書かれた作者様、かなりコメディ作品を書き慣れておられる気がします。
この作品の面白さは、何と言ってもヒロインの魅力にあると思います。
一人称で語られるオラール様への乙女心や、家族に見透かされて「恥っず」となる様子など、とても好感が持てます。それこそ、ニヤニヤしちゃいます。
とても秀逸なコメディ作品なのですが、第一話だけだと、ラブの部分がちょっと薄いとは感じました。
もちろん、ヒロインのヒーローへの溢れんばかりの愛は感じられます。それでも十分なんですが、ヒーローからヒロインへの愛も見たい。そんな贅沢な欲求を少し感じます。
後半は出会いの場面ですし、カディオ様の力を借りて、落とし穴魔法が好きな相手にしか発動しないなどの条件が解明されることになるのでしょうが、それはまだ先。
となると、前半のパレードの場面。穴に消えたヒーローが「どこだー!」と怒るのへ、隊員たちから「副隊長、今日もお熱いですね」と囃し立てられ、怒っているのか、照れているのか、両方なのか顔が真っ赤。みたいなのがあると、箱で推せて捗るなぁ、なんて感じちゃいました。
あぁ、ただこれ、解釈違いの暴走窯してるかもしれませんし、解釈合ってたとしてもアドバイスを越えて無用な口出ししてるかも。
ゴメンナサイ。もし、そうであれば無視してくださって結構です。
最後にお遊び。最初の一文と最後の一文を抜き出してみます。
コメディなのに、シリアスな導入ってのも落差を生んでて良いですよね。
面白かったです。
17.幼女になった呪われ嬢は、婚約者を解放したい
最高の賛辞を送りたくなる作品の一つです。というか、異次元の面白さでした。そこら辺は後々触れるとして……。
いきなり目に飛び込んでくる「幼女」の2文字。普段、あまり見せていない1面なので、ご存知ない方も多かろうと思いますが、ジンパパは「幼女」が出てくる作品が好きです。
ということは。こちらの作品は、私のために書かれた作品ということです(違う)。
あ、ただし。"「幼女」が出てくる作品"が好きなだけですから。決して石を投げたりしないでく……痛いって!
ところで(話題を逸らす)。ふと気がついたんですが。「〇〇したい(けど、それが叶わない)」系のタイトルは、イセコイとの親和性がめちゃ高そうな気がします。調べたわけじゃないです。なんとなく(なんとなく)。
恥ずかしい性癖の開陳はこれぐらいにして。真面目に作品の感想を書いていきます。
全体が3部構成になっています。
最初の場面は、翌日に21歳の誕生日を控えナーヴァスになったヒロインと、なんら問題ないと諭す(けど冒頭ではバカとのたまう)ヒーローの会話です。
次の場面は、ちょうど20歳の誕生日を迎えたヒロインの様子です。既に幼女歴3か月で、祖母に身を寄せ、幼女ライフを楽しんでいます。
そして最後の場面は、その3か月前。ヒロインが若返ってしまった瞬間を描いています。
二段階に時間を遡ってみせることで、まずはヒロインとヒーローの関係が良好であること。良好であるが故に、ヒロインがヒーローと分かれるべきだと悩んでいることを示します。
次に、幼児化以降は祖母に身を寄せることで安定した生活を送れていること、なんなら、幼児化を最大限に楽しんでいることを描いています。
そして、その後で不遇な20年間と幼児化した直後に実母から浴びせられた酷い言葉のシーンを描くことで、読者はそのショッキングな場面を多少柔らかく受け止めることができます。
読者は、です。
アイリーンは、これを時系列の順に体験するのです。21歳になると死ぬ運命だと聞かされながら、約20年もの間、育児放棄の母と、そんな母を気遣うばかりで味方にはなってくれない父の下で暮らしてきました。
これだけでも闇落ちしておかしくない程の苦痛だと思います。
その上、幼児化した際には、母から花瓶を投げつけられます。
継母ならいざ知らず、実母からこんな言葉を聞かされて平気でいられるはずがない。たとえ、母が強迫観念からノイローゼだったとしても。これは相当、辛かったろうと思います。
しかし、アイリーンはめげません。寧ろ吹っ切れて、呪われたタイムリミットが1年のままなのか、リセットされたのか定かではないものの、残りの人生を謳歌してやろうと気持ちを切り替えます。
1話ラストは幼児化した直後ということで、今後どうすれば良いか考えあぐねている様子ですが、20歳を迎えた場面では、祖母の庇護を受け楽しく過ごせているようです。
その甲斐あって、
の見た目らしい。良かったです。その僅か3か月前、幼児化した直後は
なのです。
満足な食事も与えられず、5、6歳なのに、ガリガリの3歳とか……。お話だというのに、胸が締め付けられる心地がします。
それだけに、祖母に身を寄せ、裁縫サークルで着せ替え人形役を買って出て、可愛く着飾って貰い、満更でもない様子の彼女がとても可愛く思えます。
痺れのせいとはいえ、可愛く噛むところもニクい演出です。
全体の構成力と言うんでしょうか。高低差のある、落差の演出と見せ方のバランスが凄く良いなと思います。
その上、全てのブロックが、必ず「情景描写+心理描写」のセットになっていて、心理描写が細やかで丁寧に描かれているのが特徴的だと思います。
ほんの1例です。全ての箇所を引用していたら大変なことになります。それ程に丁寧に情景描写に寄せて、その折々のヒロインの心情が添えられています。
これが読者の感情移入を誘うのだと思います。そして、物語世界に埋没させ、一気に読ませるのです。作者様の力量半端ないです。確かな文章力をあらゆる部分に感じます。
本作の謎にも触れておかねば。男児しか産まれない、稀に産まれる女児は21歳までしか生きられないというフルオスパー家の血筋については、「そーなんだー」ですが、彼女が幼児化したのには、レックスが関わっていそうな気がします。もしかしたら、弟も。二人で協力して、アイリーンが呪いを克服し21歳を越えて生きられるように、何かしたんじゃないかな。そんな気がします。
単なる気休めで言ったのではない雰囲気を感じます。オッカムの剃刀ってやつです。(間違いました)チェーホフの銃ってやつです。
最後にお遊び。最初の一文と最後の一文を抜き出してみます。
感想冒頭で「幼女」「幼女」と、ちょっとフザケたために、伝わらなくなっちゃったかもですが、本当に凄い作品だと思います。
ですので、握りしめてるその石を、そっと地面に置いてください。ね?
追記:
1つ見落としてました。
彼のこの言葉の真意はなんでしょうか。何の都合が良いのでしょう。
最初は「ボンキュッボンのセクシーなお姉様」に言い寄られて手を焼いていて、これを躱すのに都合が良いのかと思いましたが、違いますね。
レックスが幼児趣味なので都合が良いってことかと。アイリちゃん、彼氏がロリコンで良かったね。
……あれ?
「彼女が幼児化したのには、レックスが関わっていそうな気がします。」
……まさか、ね?
落書きレベルで恐縮ですが、貼っときます。
18.コソ泥令嬢が皇帝陛下の初恋を盗んだら
最高の賛辞を送りたくなる作品の一つです。
まずヒロイン。職業、伯爵令嬢、兼「コソ泥」。人形のようだと評される美貌を持ちながら、口さがない噂に留まらぬ、正真正銘、本物のコソ泥。
しかも、数多の金品を盗んできた彼女に課された次なるミッションは、冷酷非道の血まみれ皇帝の二つ名で恐れられる現皇帝の初恋。「妃の座」でも「寵愛」でもなく、敢えての「初恋」。
泥棒が恋心を奪っていく名作と言えば。「ルパン三世 カリオストロの城」ですね。そして、美人の泥棒と言えば、「キャッツ・アイ」。作者様がどうやってこの設定を思いついたかは分かりませんが、私にも同じ設定に思い至ることの出来るだけの引き出しがあると言うのに。「この発想はなかった」です。
しかも。特筆すべきはヒロインとヒーローの関係。
←♀ ♂→(互いに恋愛感情なし)
擦れ違いなんてもんじゃない。こんな関係性で始まるお話、他には見当たら無かったです(間違ってたら、後で訂正します)。
ヒロインのヒーローへの感情は、畏れ。そして、単なる攻略対象。ヒーローにとってのヒロインは、「鬱陶しい虫ケラ」程度。出会い方も最悪で、これがロマンスに発展するとは到底思えない。にも関わらず、「後に夫婦となる」と言うのですから、ビックリです。一体これから、どんな展開が? そして、先に相手への愛情を持ち始めるのは、果たしてどっち? 俄然、興味が湧いてくるじゃないですか。
唯一無二が随所に詰まっていて、最高の賛辞を送りたくなる所以です。
ただ、設定上仕方ないのですが、最初の関係性が
←♀ ♂→(互いに恋愛感情なし)
であるために、ジレジレも擦れ違いもキュンキュンも無いので、イセコイ作品にそうした期待を持つ読者にどう受け止められるかは推し量りきれないところはあります。
かなり意地悪な穿った見方になりますが、最後に夫婦になるとは書かれているものの、何らかの利害の一致による仮面夫婦の可能性もないわけではなく。「安心してください。これからロマンスが始まりますよ!」ってサインがもう少しあっても良いかなとは思いました。
あと、一点だけ。
ここだけ、ちょっと分かりにくかったです。
だろうか、と解釈しました。間違っていたら、ごめんなさい。
それでも最初の一文、
の破壊力は凄まじく、作品としての面白さはこの一文で保証されたも同然って気がしますから、書き出し第一話としては、大成功と言って良いと思います。
最後にお遊び。最初の一文と最後の一文を抜き出してみます。
なんとなく、この二文だけでも作品の売りが垣間見え、面白さが伝わってくるところが凄いですね。
面白かったです。
19.長年の恋を諦められはしないので。覚悟してくださいませね、騎士団長様?
好きです。最の高に最高ってやつです。
ヒロイン6歳、ヒーロー19歳の時の求婚は敢え無くその「年齢」に阻まれます。
しかし、ヒロインは諦めてはいなかった! それから10年。
いまや、ヒロイン16歳、ヒーロー29歳。しかもこの10年。ただ指を加えて時が過ぎるのを待っていたわけではなく。
こうした障害もなんのその。
こんな調子で、あらゆる根回しをして外堀を埋め、内堀を埋め、想定問答も用意周到、あとは本丸を落とすのみ。フィアマ嬢、勢いだけでなく、かなりの才女であらせられる……。
フィアマ嬢がなぜここまで押せ押せで迫るのか。
ノービル様がフィアマ嬢にとって、正真正銘、ヒーローだからなんですね。なるほど、納得。
そんなフィアマ嬢をなんとか押し留めようとするノービル様がまた良いですね。13歳も年上にも関わらず、フィアマ嬢の手の上で転がされる感じが、可愛らしくもあります。
掛け合いそのものもとても面白いのですが、フィアマ嬢が余りに用意周到なもので、だんだん余裕がなくなっていきます。
それでも頑なに断ろうとするところが、さすがヒーローですよね。
ここで折れて、早々に「そこまで言うのなら」ってなっちゃったら、一話で終わってしまいます。私がノービル様と同じ年齢で同じく独身で同じ立場だったら……、きっと大して盛り上がりもせず「完」ってなってます!
勢いだけではない、我慢に我慢を重ねた10年である事が伺い知れる、素敵な一文だと思います。
私も同じような経験(絶対に違う)があります。
2003年5月にMーVロケット5号機で打ち上げられた「航宙機はやぶさ」がイトカワの砂粒をカプセルで持ち帰ってきた直後のJAXA相模原キャンパスの特別公開。帰還カプセルを一目見ようと大勢の人が詰めかけ、炎天下、入場だけで2時間待ちの長蛇の列でした。私と息子もその列に。
「7年待ちましたからね。それに比べれば、2時間なんて」
そう言うと、前後に並んでた皆さん、一様に頷き、疲労が和らいで笑顔に。
ね、同じ(やっぱり、絶対に違う)。
最後にお遊び。最初の一文と最後の一文を抜き出してみます。
どんなに用意周到と言えど、まだまだ波乱が待ち受けていそうです。
面白かったです。
20.知識を欲しがる美女と、禁忌を破り知識を持ってしまった少年
不思議な雰囲気のダークファンタジーです。どこか、神話的でもあり、寓意を込めたおとぎ話のようでもあります。
知識を得ることが禁忌とされているっていう設定が、禁断の木の実(善悪の知識の木の実)を食べてしまい、エデンの園を追われることになった、あの旧約聖書の失楽園を思わせるからでしょうか。
こちらの作品でも、森に住む少女(=化け物)は、贄として供された人間を食べることで知識を得ているようです。
そうして人間を食べることで得た知識によって、少女(=化け物)は「知識を司る」者と見做されてもいます。
「知識を司る」者との呼称は、相当な知識の集積を指すと思われます。これまでに大量の人間を食べてきたのでしょう。そうして知識を得てきたのでしょう。ですが、それでも知識を得たい、人間を喰らいたいという欲求は収まらないようです。
「人を食べて知識を得る」だと、化け物じみて聞こえますが、これを「他人の犠牲の上に探究心を満たす」みたいに言い換えると、我々人間そのもののようでもあります。
禁忌の村をエデンの園、原罪を負い村を追放された化け物がヒトとも言えるのかもと思う所以です。
旧約聖書においても、先に禁断の果実を食べたのはイヴでした。
また、作中で特別な色として扱われている「赤」。この作品が失楽園に取材する作品であるならば、林檎とも、血の色とも、また愛を象徴するものとも言えるのかもしれませんね。
少女(=化け物)は、知識を得る手段として少年を食べる欲求になんとか抗い、知識を分かち合う相手とする道を選びます。
本からも知識を得られるんかーい。ここまでの考察はなんだったんじゃー!
という心の叫びを封印して(しきれてないけど)。
この本は一体誰が?
ここまで、旧約聖書に取材した失楽園物かと思っていましたが、もしかしたら、終末世界物だったのかもしれません。
いずれにせよ、少女と少年の、捕食者と被食者の関係から始まった同棲生活に「愛」を見つけ出すのが難しい作品ではありました。
食べ物に感じる愛おしさの延長上にあるものも、愛と言ってよいのか……。
その辺りの解釈次第でしょうか。
最後にお遊び。最初の一文と最後の一文を抜き出してみます。
記号的で謎めいていて、こうした考察を楽しむのもまた一興、そんな作品でした。面白かったです。
21.君のうなじを吸いたくて
故、生頼範義先生の挿絵がぴったりな気のする作品でした。透けるように肌理細やかな白い肌と、墨で塗り込めたような影のコントラストが妖しさと色香を浮かび上がらせる、素敵なイラストを描かれる先生でした。
怪奇とエロスって、何故か相性が良いんですよね。遺伝子レベルで刻み込まれた人類普遍の記憶なのか、単に私の読書遍歴の偏りによる刷り込みなのかは定かではないですが。
なんとなくですが。怪奇が理知の及ばぬ怪しい力で人を襲う暴力性や残虐性、生理的嫌悪を催す不快さと恐怖が、どこかしら性がもつ暴力性や残虐性や生々しさといった側面と親和性が高いからなのかもしれません。時に倒錯と耽美は、嗜虐性と被虐性に至ります。その延長上に怪奇があるように感じられるからなのかもしれません。知らんけど。
本作のヒロインとヒーローは共にそんな妖と近いところにいます。それ故、一般人とは異なる風体をしています。
ヒロインの蜜は蜘蛛に取り憑かれています。今宵も取り憑く蜘蛛に贄を与えるために町を探索している様子。
一方、ヒーローの鐙の方も。
そんな二人が、満月の夜に出会います。鐙が猪の妖に襲われているところを蜜が助けるという形で。
ここの描写がまた素晴らしい。
緊張感のあるアクションシーンなのですが、蜜に取り憑く蜘蛛にとっては、捕食行為でもあり、その間、依代である蜜にも身体的影響が及びます。
作者様が狙っておられるのと解釈が違っていたら大変申し訳ないのですが、ゾクゾクすると同時にエロスを感じます。
これが、蜘蛛の妖が髪の毛から敵を吸収したってだけだとそこまででは無かったと思うのです。しかし、蜜の感覚で、「髪から頭皮に入り込み、うなじへと流れ、背中を伝う」とか、「溶かした鉄が皮膚の下を通り抜けるような」とかの描写があるお陰で、ぞわぞわってなり、その感覚が卑近なものとは言い難く、また、どこか知ってはいけないようなそんな後ろめたささえ覚えるために、かえって興奮するんですね。はい、変態だと思います。自覚はあります。でも、似た感覚を覚えたあなたも同類ですから!
解釈違ってたらゴメンナサイとは言いましたが、タイトルといい、こちらの描写といい、作者様の狙いを正しく共有出来ているのではと自負しています。つまり、作者様も変態ってことです。
蜜の髪の毛が暴れた時に、後ろから浴衣の両肩を後ろへ引きずり下ろすようにはだけたんだと想像しました。つまり、両乳房があらわになり、前腕と腰紐に引っかかっているものの、上半身はほぼ全裸。
温泉旅館で浴衣で卓球勝負に熱くなって片乳がポロリなんてお上品な状態ではないんじゃないかなって思いましたが、どうでしょうね。
作者様の答え合わせを待ちたいと思います。
エロスだ乳房だと、なんだか、そんなことばかり書いてますね。ちょっと軌道修正。
この蜘蛛の妖。
ここを読むまでは、なんとなく雄だと思ってました。不思議です。なんでそう思ったのか。なので、ちょっとした驚きでした。
この蜘蛛と蜜の関係は凄く不安定で、そこが良いですね。本来は、蜜も蜘蛛にとっての餌でしかなかったのでしょうが、
「まだ恋を知らない幼い蜜に間違って取り憑いてしまったために、本来の蜘蛛の能力が発揮できず蜜を食べることができない」のかな、と思いました。もちろん、他の妖を取り込み喰らうことができる程には強いんですが。それでも、持てる力が発揮できず、半ば寝ている状態。
一方で、蜜はその蜘蛛の能力で町にはびこる妖を退治できる。
そんな感じでしょうか。
しかし、そこに鐙があらわれ、蜜は恋に落ちてしまいます。
妖とは、若い女のこと。ここ、さり気ない一文ですが、無茶苦茶、重要そうですね。
恋に落ちた若い女性と妖の境界はあやふやなのかもしれません。そういうものですか? そういう感覚ありますか? かつて、「恋に落ちた若い女性」だった体験を一度もしたことのないジンパパには、ちょっと分からないですが。もちろん、機会が与えられるなら、是非とも体験してみたいです。
冒頭で「(性の)延長上に怪奇があるように」って書きました。あながち間違ってないのかもしれません。
ですが、蜘蛛が取り憑いたと聞いて、赤い覆面の奴とマルチバースで繋がってたりしてw、とか思ってるような私には、一生かかっても真理に到達することは無理でしょう。
https://watch.amazon.co.jp/detail?gti=amzn1.dv.gti.390a8189-28e2-4d18-bb33-5bb2b03a84a5&ref_=atv_dp_share_mv&r=web
最後にお遊び。最初の一文と最後の一文を抜き出してみます。
特別な感情の無かった相手でも、自分の恥部を見られたことによって、特別な相手となり、それがきっかけで特別な感情を持つようになりつつある。そんな感じでしょうか。えぇ、はい。知ってますよ。「ただし、イケメンに限る」ですよね。
ジンパパには逆立ちしたって起こり得ない奇跡です(笑)
面白かったです。
22.人嫌いの王子妃となりましたが、わたし、幸せです。
なんて大人な恋の物語なんでしょう。直接的な表現の有無に関わらず、愛や結婚が同衾や共寝前提の作品ばかりな中、良くぞ書いてくださったと拍手喝采です。
こちらの作品を書かれた方、自身の体験か、ご家族身内の体験か、はたまた想像力のなせる技かは分かりませんが、高齢夫婦の愛の形をよく理解されていると、読んでいて共感増々でした。
そうですよ。抱きしめるばかりが愛じゃない。互いに相手を慈しみ、心を配り、支え合い、尊敬し、感謝を忘れず共に同じ時を過ごす。これもまた愛です。
なんて素晴らしい着眼。最高です。
さて、物語に話を戻します。あらすじではヒロインについて、そしてヒーローについての順に、主役を立てて紹介されています。
まずヒロイン。
あらすじでは控えめな表現ですが、本文中での噂はもっと棘があります。
それでも、シャルテは意に介しません。
そして、いかにも草花が好きなお姫様らしい優しさが光るのがここ。
自分が相手に示すことの出来る愛の形として、瞳の色に似た花を植えたいという、その言葉に、降って湧いた政略結婚といえども、前向きに受け入れていきたいというヒロインの気持ちがよく現れています。
そして、この結婚に置いて、彼女が望む唯一の物がこちら。
なんといじらしい。彼女が望むもの、それは「会話」です。社交や政治どころか、愛のささやきですら無い、何気ない日常の会話。
一方のヒーロー。彼にも悩みがありました。対人アレルギー故、そばに人を近づけさせたくない(させられない)というもの。アイナスが人嫌いの第二王子と呼ばれているのは、それが原因でした。
物語の冒頭、衝撃的な台詞で幕を開けますが、理由が分かってみると成る程と得心します。王子は王子で、ずっとこの病に苦しんで生きてきたんですね。
凄いのは横顔の写真と結婚式での王子の様子を観察しただけでそうと見抜いたシャルテです。草花を愛する優しい心が、そうした機微を敏感に読み取る力となったのでしょうか。
夫に理解を示し、優しく距離を取るヒロイン。そうして、彼女は
を取ります。
一方で、夫のアイナスはそうとは知らず、都合よく距離を取ってくれる彼女に不信感を覚えます。
初夜を断り、快諾された時にも
と、状況を理解しきれていません。
――いつだって、奥さんの方が一枚も二枚も上手で、何もかもお見通しなんだよなぁ……。
すみません。独り言です。
そんないびつな夫婦生活はいつかどこかで破綻してしまいます。
原因は、シャルテがこの結婚において、唯一欲しかったもの。夫婦の会話が得られなかったから、なのでしょう。
切ないですね。何も多くを望んだわけではないのに。距離を置いて接していても、会話は出来たはずなのに。
掛け違ったボタンのように、距離を取ることで会話さえも得られなかった彼女の悲しい決断。
ですが、物語にはまだきっとその先があるはず。老いてなお、花壇を挟んで談笑する二人が見られると信じています。
地面は雨が降って固まるものですから。
最後にお遊び。最初の一文と最後の一文を抜き出してみます。
ホットスタートが見事な最初の一文です。作者様、手練れでいらっしゃる。凄いです。面白かったです。
23.人形王の婚姻
意地悪ですね(褒め言葉)。作者様のいたずら心の冴えるタイトルでした。お話を素直にタイトルに反映するなら、「傀儡王女の婚姻」とかになりそうなところ。
それを敢えて外して、読者のミスディレクションを誘い、あらすじも置かず、いきなりベッドシーンに叩き落してくるw
作者様の狙い通りにもて遊ばれましたよ! 凄いです。してやられました。かえって「人形王の婚姻」というシンプルなタイトルが頭に叩き込まれ、新着にこのタイトルを見かけたら、ポチッと続きを読みたくなる。なんと、なんと。操り人形なのは、読者の方ではないですか!
冒頭のベッドシーン。一瞬、ここはお月さま? と見紛うばかりの活写ながら、レギュレーションには抵触もしない超絶技巧。読んでて頬の火照りを覚える程なのに。なんですか、この手練れ感。
なんでこんな表現が可能なのか。自分の創作に還元するためにも、もう少し分析を続けます。これは具体的な所作を最低限に留めつつ、一人称で内面の変化に寄せて描写を組み立てているからかな、と思います。機会があれば真似てみようと思います。
さてヒロイン。いきなり目茶苦茶ピンチに陥ってます。一人称による作品であることもあり、彼女の外見こそわかりませんが、若く経験が浅いながらも、宰相の妨害をかい潜って独学で帝王学を身に着け、真に国のためにと心を配る強い内面がしっかりと描かれており、好感のもてる人物像です。
そんな彼女に立ち塞がる「悪」。彼女が多少、足掻いた程度では覆せない、大きな障壁。
起死回生の一打として、政略結婚としての側面の大きいヒーローとの婚姻、それを既成事実化するための冒頭のベッドシーンとなるわけですね。
なので、こちらの作品、ロマンスには重点はなく、政治、政略ものって感じですが、練られたお膳立てが丁寧で、続きが気になる面白さに溢れています。
こういうのも有りなんだなぁ、と感心しちゃいました。イセコイ奥が深いです。
ところで。冒頭のベッドシーンのお相手は誰でしょう? 一見すると、ナサーラ王国の切れ者と名高いナサーラ国王のようですが。実は、敢えて誰だか書かれていないんですよね。いたずら心に溢れ、ミスディレクションを楽しんでいる作者様が、ここにナサーラ国王を配するとは思えないです。
と言うことは、別人。さすがに宰相は無いと思うので、ラストでリリアナ王女がどんな秘策を思いついたのか、とても気になります。
最後にお遊び。最初の一文と最後の一文を抜き出してみます。
冒頭のドキドキと引きのハラハラ。読後感の余韻そのままの印象的な一文です。
面白かったです。
24.全ては世界救済の為、我らこれより悪となる。
これはまた、激しく挑戦的な作品ですね。作者様は2つの大きな挑戦をされたように思います。
1つ目はカテゴリ。これ、普通はハイファンタジーにカテゴライズされるお話だと思います。ですが、敢えて異世界恋愛に飛び込んでます(この企画は、「異世界恋愛」のコンペティション企画ですので)。
「このお話、ちゃんと異世界ですよね?」
「そうですね」
「女性主人公ですよね?」
「そうですね」
「ヒーローを登場させてますよね?」
「そうですね」
「恋愛要素も、ちゃんとありますよね?」
「ん? 待って下さい。ヒロインからヒーローへの愛情だけじゃないですか?」
「よく見てください。シガーキッスの場面。ヒーロー側から誘ってます」
「ホントだ……」
「じゃあ、異世界恋愛と言っても良いですよね?」
「確かに🦀」
そういう境界線ギリギリを攻めた作品です。挑戦的と言いました。良い、悪いではないです。
手前味噌ですみません。私も、そういう作品があります。
『アノマロカリスのマロカとボクの大ぼうけん』
私のこちらの作品、ジャンルは「歴史/時代小説」です。ですが描いた時代は5億2千万年前。カンブリア紀です。ジャンル中一番古い時代を扱ってます。
「言ったもん勝ち」は荒っぽすぎますが、カテチぎりぎりを攻めるのも、それはそれで楽しいものです。
ただ、この挑戦は大きなリスクを伴います。なにしろ、わざわざ想定読者から遠いところに投げ込むことになるからです。
「そんな事は承知の上。書きたいなって思った作品を書いてるんだ」
そんな作者様の心意気を感じます。良いと思います。
2つ目の挑戦は、描写を極限まで削ったこと。
いったい、【獄門デスぺラティオ】はどんな見た目なのでしょう?
私は国立西洋美術館にあるオーギュスト・ロダンの地獄の門をイメージしましたが。
「この名前から、自由にイメージを膨らませて欲しい。読者それぞれがイメージした【獄門デスぺラティオ】、それがあなたの【獄門デスぺラティオ】なのです」
ということなのでしょう。
同じく、【騎甲殻マギア】も【飛空獣艦カロン】も。最小限の説明と、名前自体が持つ意味だけを頼りに、読者のイメージに任せます、と。
めっちゃ挑戦的。そのお陰で、本来描写に割くことになる文字数を、物語の進行に全振り。壮大な設定や物語の展開をかなり見せることが出来てます。カッコいい台詞劇も沢山入っています。シガーキッスのシーンもなかなかな物です。
ですが。その分、読者に強いるカロリー消費が半端ないです。まるで山川出版社の『世界史一問一答』を読む心地でした。 まるで映画の予告を1時間見ているようでした。
やはり、ここはシーンを絞り込む方が良かったのでは? と思わなくもないです。
どのシーンも捨てがたいし、書きたいってお気持ち、凄くわかりますが。
最後にお遊び。最初の一文と最後の一文を抜き出してみます。
最初の一文も、最後の一文も、相当な格好良さです。正に格好良いところを詰め込んだ感。それだけに(カロリー消費は高かったものの)、面白かったです。
25.君を愛することはない、て言いたいんですよね?
最高のやつ、キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!
相思相愛なのに!
ツンデレ勘違いヒロイン VS ムッツリ肉食系勘違いヒーロー
の
♀//♂ (擦れ違い)
ってやつ!
イセコイ企画を読ませて貰おうかなって思った時に、こういうのが読めるんかなって想像した、まさにその通りのやつ!
ローズ! 言え! その一言を言え!
言えないのかぁ……。傷つきたくないよね。分かるよ。でも、そこで一言勇気を出せれば幸せになれるのに……。
そうだ。グレン! ローズが言えないのならば、君が言うんだ!
もう一息! さぁ、言え! さぁ、言え!
言・え・よーーーっ!!
そして互いに相手を好いているにも関わらず、相手から嫌われていると勘違いしたまま会話は続きます。
ローズ、それ勘違い! 分かってない、分かってないよ!
グレン、だからそれ、ローズの勘違いなんだってば!
気付いてない! 気付いてないよ!! ほんと、気付かない方がおかしいよ! なんで気付かないの!!
引用しまくりですみません。
私、アンジャッシュのコントが大好きなんですよ。スキャンダル以降、彼らのコントを目にする機会は失われてしまいましたが。ですが、彼らの繰り出す、勘違いしたままズレた会話が続いていく感じが堪りません。
こちらの作品はまさにそういう感じです。大好きです。大好物です。でも、それが自分に書けるかというと、まったく自信がない。
なので、ただ、ただ、作者様の才能に脱帽です。素晴らしい。爪の垢ください。
構成的にも、台詞と情景描写、台詞と心理描写というように少しずつ積み上げていき、盛り上がったところで台詞の応酬って感じになっていて、それがこの作品の面白さに繋がっていると思います。
感想冒頭で長々と引用しつつツッコミ入れさせて貰いましたが、まさにそういう気分で読める(に浸れる)のも、丁寧に仕上げられたこの構成に寄るところが大きいのかなって思います。
時に。相思相愛なのに気持ちがすれ違っている、こういう現象を他の方の感想で「両片思い」と呼ぶことをついさっき知りました。
めっちゃ、的を射た言葉。凄い、凄い。まさにそれだ。「両片思い」だ。ジンパパ覚えました。この言葉、思いついた人、天才。
そして、この作品の何が凄いって、ここ。
互いに相手のことが好きなのに。互いに相手に嫌われてると勘違いしたまま初夜が始まってしまうところ!
勘違いだけど! 誰も傷つかないし、誰も裏切らないし、間違ってもいない! けど、何故だか両片思いなまま!
凄いです。当の本人達は気がついてないけれど、作者様と読者は丸っとお見通しなわけで。
こんな楽しい読後感が味わえるとは。最高でしょ!
謎を解明しなきゃいけないようなところが一切なくてストレスフリーに、ただただ楽しい。
あとは、この関係が続いて欲しい(笑)
最後にお遊び。最初の一文と最後の一文を抜き出してみます。
関白宣言みたいな台詞から始まって、こんな展開のお話が読めるとは。いや、このジャンルに慣れてる方なら、タイトルだけでピンと来るのかもですが。ジャンル初心者、免疫ゼロなので、めっちゃ堪能しました。
面白かったです。あと、爪の垢ください。
26.社交界で妖精とうたわれるシルフィア嬢、今日も今日とて敬愛する義兄へ毒を盛る
タイトルぅ! インパクトあり過ぎ! 素晴らしいですよね。「敬愛する義兄」へ「毒を盛る」って……「え? え? どういうこと?」ってなります。吸い込まれるようにあらすじを読みに行き、「いや、だから、どういうこと!」ってなって、本文にダイブしちゃいましたもん。素晴らしいです。
加えて、「今日も今日とて」が目茶苦茶、良い! ちょっと並べてみましょうか。
「今日も今日とて」の語感とリズムが「毒を盛る」のインパクトを増幅させてます。最高です。このセンスに脱帽です。作者様、握手してください。
タイトルの感想だけでめっちゃ語ってしまった。本文行きます!
タイトルのインパクトも冷めやらぬまま、本文を読み進めると、ヒロインについて細かく言及されてます。
久しぶりに帰宅する義兄を待ち焦がれる様子も可愛らしい。てか、マジで可愛い。
そ・れ・な・の・に!
シルフィア嬢には裏の顔がある。それも一人だけの秘密ってわけじゃなく、侍女も知ってるし、なんなら、秘密の部屋で研究に勤しむ白衣の男まで居る! 一体全体、どういうことですか!
私が一番気に入ったのはここ。
私も毒好きです。大好きです。そもそもがミステリー好きなもので、一夜漬けながら、毒に関する知識を増やしてやろうじゃないかと、一年ほど前に国立科学博物館の特別展「毒」にも行ってきました。
正に、「植物の毒、生き物の毒、鉱石の毒」と様々な「毒」を分類して紹介した楽しい特別展でした。
そして、そこで入手した知識がもう一つあるのです。
です。薬と毒は表裏一体。
とあります。「常人ならば」と。つまり、義兄は常人ではなく、薬剤にことさら耐性があるか、常人ならざる剛の人なのでしょう。
だから、三滴で昏倒しなかったし、シルフィア嬢が義兄に施した量として適量だったのでしょう。
一体全体、その毒にも薬にもなる物の正体とは……。ズバリ「惚れ薬」でファイナルアンサーです。
しかも、「Eー12」ってことは、少なくともその試みが11回は失敗していて、恐らくは今回も失敗だったのでしょう。(「今日も今日とて」ですから!)
シルフィア嬢、恐ろしい子!
いつまでも妹あつかいして、どんなにモーションかけても振り向いて貰えないからって、薬に頼っちゃ駄目でしょう(笑)
……って感じで予想したんですが、果たして合ってるかどうか。結果発表が楽しみです。
最後にお遊び。最初の一文と最後の一文を抜き出してみます。
この始まり方も素敵です。「いわく」。私も今度、(こっそり)使ってみよう。タイトルからあらすじ、本文と、センスの塊のような作品でした。
面白かったです。
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
■ 投 票 候 補 の 検 討 ■ ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
投票候補の検討
さて、26作品の全感想が終わりましたので、5作品を選んで投票しなければなりません(5作品とか無理です! 長岡さん、ずいぶんと無茶な事を仰います……)。
どの作品も面白かったので、選ぶのが心苦しいのですが、投票候補を絞っていこうと思います(選から漏れた作品が面白くなかったというわけではないです。どの作品も優劣付けがたいほど面白かったです!)。
などと言いつつ、実は感想を書きながら、若干の絞り込みはしておりました。現在、以下の9作品に絞り込んでいます。ピックアップに付したリンクから私の感想に飛べますので、振り返り時にご活用ください。
9作品をピックアップ
01.美貌の宰相様が探し求める女性は元気いっぱいの野太い声の持ち主らしい……それ私かもしれない
最高のジレジレ
03.王太子殿下の婚約者候補に選ばれましたが、私が好きなのは従弟のほうです
物語の仕掛けが最高です。最高すぎます。
06.かつて身分差の恋で結ばれなかった恋人の生まれ変わりを見つけたら、これまで塩対応してきた王太子でした
本当は好き同士なのに、相手への思い遣りが裏目、裏目に出て擦れ違う感じ。最高ですし🍣。
17.幼女になった呪われ嬢は、婚約者を解放したい
最高の賛辞を送りたくなる作品の一つです。
18.コソ泥令嬢が皇帝陛下の初恋を盗んだら
最高の賛辞を送りたくなる作品の一つです。
唯一無二が随所に詰まっていて、最高の賛辞を送りたくなる所以です。
19.長年の恋を諦められはしないので。覚悟してくださいませね、騎士団長様?
好きです。最の高に最高ってやつです。
22.人嫌いの王子妃となりましたが、わたし、幸せです。
なんて素晴らしい着眼。最高です。
25.君を愛することはない、て言いたいんですよね?
最高のやつ、キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!
こんな楽しい読後感が味わえるとは。最高でしょ!
26.社交界で妖精とうたわれるシルフィア嬢、今日も今日とて敬愛する義兄へ毒を盛る
最高です。このセンスに脱帽です。
以上の9作品です。お気付きでしょうか。感想文中で「最高」と書かせていただいたものは、後でピックアップしようと、こっそり意図的に忍ばせた単語になります。
それでも、まだ多い……。
個別感想に入る前の「はじめに」の中で、「イセコイとして重要視したい3点」「書き出しとして重要視したい6点」というのを上げておりました。
個別感想の中では余り触れなかったので、「これ、結局なんだったの?」と思われたかもしれません。これから! これから、使っていきます!
ただし、ご注意いただきたいのは、これらの要素が、ある/ない、ではなく、あるとジンパパが感じたか/ないとジンパパが感じたか、だという点。どこまでも私の主観に過ぎないことをご留意いただければと思います。
評価表
まずは表にまとめます。
タイトルは投票時に使用可能と長岡さんからお知らせのあった短縮名で記載させていてだいてます。
凡例は以下の通りです。
点数は凡例に従って算出した合計と、カッコの中は先頭4項目のみの合計になります。合計値が同じ場合、カッコの点数も参照しようという心づもりです。
イセコイの書き出しに置いて、私が(←ここ大事)重点を置きたいなという項目になります。
$$
\begin{array}{|l|c|c|c|c|c|c|c|c|c|} \hline
No & ヒロ & ヒー & 恋愛 & スタ & 核心 & ワク & 引 & 一 & 点 & 投 \\
& イン & ロー & 感情 & ート & 的謎 & ワク & き & 文 & 数 & 票 \\ \hline
01.美貌の宰相 & ◎ & ◎ & ◎ & ◯ & ◯ & ◎ & ◎ & ◯ & 13(7) & - \\ \hline
03.従弟のほう & ◯ & ◯ & ◯ & ◎ & ◎ & ◎ & ◎ & ◎ & 13(5) & - \\ \hline
06.塩対応王太子 & ◯ & ◯ & ◎ & ◎ & ◎ & ◎ & ◎ & ◯ & 13(6) & - \\ \hline
17.呪われ嬢 & ◎ & ◯ & ◎ & ◎ & ◎ & ◎ & ◎ & ◎ & 15(7) & 2 \\ \hline
18.コソ泥令嬢 & ◎ & ◯ & ◯ & ◎ & ◎ & ◎ & ◎ & ◎ & 14(6) & 5 \\ \hline
19.覚悟して & ◎ & ◎ & ◎ & ◎ & ◯ & ◎ & ◯ & ◎ & 14(8) & 3 \\ \hline
22.人嫌いの王子妃 & ◎ & ◎ & ◎ & ◎ & ◎ & ◯ & ◯ & ◎ & 14(8) & 4 \\ \hline
25.言いたいんですよね? & ◎ & ◎ & ◎ & ◎ & ◎ & ◎ & ◎ & ◎ & 16(8) & 1 \\ \hline
26.毒を盛る & ◎ & ◯ & ◯ & ◯ & ◎ & ◎ & ◎ & ◎ & 13(5) & - \\ \hline
\end{array}
$$
あまり表を文字通りに受け止めないでくださいね。「-(要素をあまり感じない)」が全然ないのは当然として、同点では順位が付けられないからと、本当は「◎(要素がすごくあると感じる)」と付けるべきところを無理やり「◯(要素があると感じる)」にしちゃったところ、あります。
本当にどれも面白くて、なかなか決められませんでした。
さらに、感想の中でも何度か言及していますが、私はあまり異世界恋愛ものを読んでいない、慣れていない読者です。
ですので、ジャンル内でのお約束といった部分に不慣れです。不慣れな故に、イセコイがこんなにもバリエーション豊かなジャンルだとは思ってもみませんでした。それ故、私の最初に決めた評価基準は「王道的な」イセコイものにやや、偏ってしまったかもしれません。
そうした点を踏まえてご覧いただければ、と思います。
投票
そうして無理やり決めさせていただいた順位がこちら。
1位票
25.君を愛することはない、て言いたいんですよね?
2位票
17.幼女になった呪われ嬢は、婚約者を解放したい
3位票
19.長年の恋を諦められはしないので。覚悟してくださいませね、騎士団長様?
4位票
22.人嫌いの王子妃となりましたが、わたし、幸せです。
5位票
18.コソ泥令嬢が皇帝陛下の初恋を盗んだら
以上で、「イセコイ冒頭ミュージアム #イセミュ ジンパパ感想」を終わります。
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■ 猛 反 省 会 ( 復 習 ) ■
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猛反省会
楽しかったイベントも終わってみればあっという間。参加者の皆さまは割烹での報告や挨拶回りなど、後夜祭を存分に楽しまれ、早い方は連載開始等、次のステップに進まれているようです。
主催の長岡更紗様、25名の参加者の皆様、お疲れさまでした。失礼な感想の数々、大変失礼いたしました。どうか、どうか、ご放念くださいますよう、お願いいたします。
特に。腹田貝様、変態呼ばわりしてすみません! 魔仙狼のpeco様(メアリー=ドゥ様)、御作を山川出版社の『世界史一問一答』とか言ってすみません! (他にも謝罪しなければならない方が多すぎて書ききれません……)
皆さま、ジャンピン2回転土下座で、どうか、どうかお許しください。
さて。私の酷い感想はいったん脇に置かせていただいて。読ませていただいた26作のイセコイの書き出しからは、それはもう、沢山の刺激をいただきました。これを活かして私も執筆に向かいたいところですが、その前に。復習だいじ。結果を振り返っておこうと思います。というのも、私の投票先と結果の乖離が凄まじかったから、です。
結果発表の振り返り
まずは点数順の結果を見てみます。
こちらを参考にさせていただき、上位10作品を振り返ってみます。
1位 04.永遠(とわ)を生きる聖女の、失われた記憶
ジンパパ:候補絞り込み時に除外
2位 16.好きな人にだけ発動する落とし穴魔法を身につけてしまいました…
ジンパパ:候補絞り込み時に除外
3位 01.美貌の宰相様が探し求める女性は元気いっぱいの野太い声の持ち主らしい……それ私かもしれない
ジンパパ:候補絞り込みには入っているものの、投票せず
4位 11.魔法学院の一流クズ教師が求婚してくる理由
ジンパパ:候補絞り込み時に除外
5位 07.秘する翡翠
ジンパパ:候補絞り込み時に除外
6位 19.長年の恋を諦められはしないので。覚悟してくださいませね、騎士団長様?
ジンパパ:3位投票
7位 25.君を愛することはない、て言いたいんですよね?
ジンパパ:1位投票
8位 22.人嫌いの王子妃となりましたが、わたし、幸せです。
ジンパパ:4位投票
9位 17.幼女になった呪われ嬢は、婚約者を解放したい
ジンパパ:2位投票
9位 26.社交界で妖精とうたわれるシルフィア嬢、今日も今日とて敬愛する義兄へ毒を盛る
ジンパパ:候補絞り込みには入っているものの、投票せず
なんと、上位5作には私が投票させていただいた作品は1つも入っておらず、それどころか、内4作は候補絞り込み時点で除外としてしまっていました(ゴメンナサイ)。
(5作品にしか投票出来ない仕様とはいえ、)投票出来なかった21作品の方々、また、9作品に絞り込みをした時点で漏れてしまった17作品の方々には大変申し訳ないです。
上位10作まで広げれば、うち4作品は私が投票させていただいた作品が入っています。しかし、上位5作までだと、結果との乖離が甚だしい。
1点、2点を争う拮抗した中にあっては、誤差とも言えなくもないかもしれません。
それに、個人の好みで投票するんだから、自由に選んで良い筈っていうのは勿論なのです。
しかし、私は投票させていただいた作品が上位を占めるものと思っていたので、かなりの衝撃でした。
つまり、私の思う良いイセコイと、普段からイセコイに親しむ皆さまのそれとでは、かなり感覚が違っているということです。
別に気にしなくても、自分の好きな作品を推せば良いんじゃない? 勿論。もちろん、その通りです。結果発表や作者公開によって、推し作品を変えようとは思っていません。
しかし、この感覚のズレをきちんと分析して置かなければ、いざ自分がイセコイを愛する皆さんを想定読者として作品を書こうとした時に、きちんと刺さらず、作品が迷子になる危険性があるってことだと思うのです。
そういう目でもう一度上位作品を振り返ってみると、ある事に気が付きます。
1位作品=永遠に聖女とか、めっちゃ可哀想。
2位作品=落とし穴魔法とか、めっちゃ面白い。
3位作品=どっせいとか、めっちゃインパクトある。
……ひょっとして。
イセコイ読者の皆さんは、心くすぐるジレジレや、舌がとろけるような甘々よりも、もっと強い刺激を求めておられる?
表面上はそう見えなくもないです。
いやいや、そんな筈はないと思います。イセコイ好きな皆さまは、ジレジレや甘々が大好物なはず。ジレジレをお腹いっぱい満喫してなお、別腹で甘々のスイーツを召し上がるような方々だと思います。
じゃあ、この結果はどういうこと……?
そのヒントは、スイーツビュッフェにあるのではないかなと思いました。よりどりみどり。大好きなスイーツに囲まれて、好きなだけ好きなものを食べられるとなった時に。どんなスイーツを自分のお皿に取り分けるだろうか、と。
あっまーいショートケーキやチョコレートケーキも食べたいけれど、ヨーグルトの酸味、柑橘系の酸味の程よく利いたスイーツ。コーヒーの苦みを隠し味に利かせたスイーツ。欠かせないですよね(個人の見解)。
今回のイベントも。すべてがイセコイであるが故に。甘い中にも酸味(インパクト)や苦み(悲劇)といった刺激が加味されているものを自分のお皿に盛り付ける際に、欠かせなかったんじゃないかな。
そんな風に感じました。
その辺の感覚が、イセコイ初心者な私には無かったために、結果に大きな差が表れたんじゃないか、そんな風に思ったのですが、どうでしょう。
そう考えると、今回のようにイセコイだけを集めたイベントでの結果が、そのまま多ジャンルで競う「書き出し祭り」でも同じになるというものでもなさそうです。
なんてものは取り越し苦労であろう。好きなものを好き。推したいものを推す。それで良さそうだなと、結論にもならない結論に至りました。
それにしても、楽しい企画でした。感想を書き連ねていくうちに、私も参加したかったなという思いが強くなりました。
いつか機会があれば。イセコイ、書かせてもらっても良いですか?
おしまい。
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