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第二十一回書き出し祭り ジンパパ感想

■感想を書き終わった作品(随時追加予定)
1-15 1-21 1-24
2-01 2-06
3-05 3-07 3-12
4-03

この番号で作品感想に直接飛べます

はじめに

書き出し祭りについて

 こちらには、肥前文俊さん主催の「第二十一回書き出し祭り」の感想を書いていこうと思います。
 「書き出し祭り」って何? って方は、書き出し祭り事務局のこちらのポストをご覧ください。

ジンパパ感想について

 X(旧Twitter)のポストで感想依頼の募集をさせていただきました。マシュマロ経由でご応募いただいた作品の感想を先着順に書いていきます。

 今回の募集要項、読みにくい(汗)

募集要項

 開催期間3週間(21日間)ですので、頑張って感想、書いていきます。
 タイトルだけで感想が未だ書かれていないものは、今後感想を書かせていただく予定の作品となります。


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第一会場

1-01 多分これが一番早いと思います〜妹の安全が第一なので急いで魔王を討伐しました〜




1-02 ドキッ♡ヤクザだらけの異世界転生〜仁義もあるよ〜




1-03 我が弦に囁け、霹靂よ




1-04 こひつじちゃんとおおかみくん~またその手を取れる日を夢に見て~




1-12 殉葬妃は蘇る ~今度こそ愛する貴方と生きるために~




1-13 亡くした初恋 〜王女が結婚したがらない理由〜




1-15 Re;TRY!〜どうか、今度こそ殺されませんように!〜

 高校生活初日の朝にセーブポイント(再生ポイント)が設定された死亡誘発の巻き戻りものですね。
 幾つかの謎が散りばめられていて、それが読者を次話へと誘います。今後の展開を予測できそうなヒントが無いか、謎を掘り下げてみたいと思います。

謎1.なぜ元彼は執拗に主人公を殺そうと狙ってくるのか。

 いちばん気になる謎ですね。なぜ同じ人を7回も(まぁ、元彼の方は巻き戻っているわけではないのでしょうから、7回とも初回なのでしょうけれど)、繰り返し殺害しようとするのでしょうか? 人を殺すにあたっては、通り魔的犯行でない限り、そこには強い殺意があるものです。
 ところが、今回(8回目の巻き戻り)は、なんと面識もないはずの高校生活初日に殺意をもって追い掛け回されます。クラスが違い、入学式の帰りに正門前でハンカチを拾って貰って初めて相手を認識し、仲良くなる。その出会いそのものを回避しようと、裏門から出たにも関わらずです。
 そして、ここで違和感。

「ねぇ、唯ちゃん。近くなんだから一緒に帰るだけじゃん」

 彼は主人公を明らかに認識しています。名前も知った上で近づこうとしています。ということは、高校生活初日の下校時に正門で知り合ったのではなく、それ以前から主人公のことを知っていたか、あるいは、主人公と一緒に巻き戻っていて、その記憶を持っているかのいずれかということになります。

謎2.これまでの7回の死因と犯人

 まずは、過去7回の死因を振り返ってみます。

 1回目。26歳のとき、終電ギリギリのホームから突き落とされ、直後に来た電車に撥ねられた。
 2回目。25歳のとき、歩行者信号が赤の道路に突き飛ばされ、横から来たバイクに撥ねられた。
 3回目。23歳のとき、出先から帰宅したところ、居直り強盗にお気に入りの置物で殴られた。
 4回目。22歳のとき、社会人になってはじめての歓送迎会で、私は風に当たろうと屋上に千鳥足で向かっていたところ、錆びた階段に嵌って、そのまま転落。
 5回目。21歳のとき、たまたま工事現場の隣の歩道を歩いていたら、上から鉄骨が落ちて、頭にミラクルヒット。
 6回目。19歳のとき、サークル帰りにストーカーにショルダーバッグの紐で首を絞められる。
 7回目。18歳のとき、家でタコパしてたら、気づいたときには浴槽に沈んでいた。

 明らかに回を重ねる毎に生き延びられる期間が減っています。また、主人公の唯ちゃんは、元彼こと誠くんの犯行と決めつけていますが、どれもこれも、犯人を特定しにくそうな状況に思えます。
 恐らく、殺害直前にすぐそばに彼が居たから、そう思ったんでしょうが、逆に彼は唯ちゃんを守ろうとしていたって可能性ないですかね?
 にも関わらず、唯ちゃんが彼を敬遠して遠ざけようとするものだから、真犯人にとっては好機。それで、前回よりも早く殺害できている。そんな気がします。
 謎1に戻ると。彼は主人公と一緒に毎回、巻き戻っていて、その度に彼女を守ろうとしている。だから、今回もナイフで周囲を警戒しつつ、彼女を護るために、近づこうとしたんでしょう。
 彼が犯人ではないとすると、犯人は別にいることになります。果たして、それは誰なのか?

謎3.自称神様とは何者か。なぜ主人公に「九つの命」をくれたのか。

 狐面に浴衣に紙扇子。確かに神様というよりも、妖を思わせる風体です。妖となると、主人公を罠に陥れようとしているか、からかって楽しんでいるという可能性もあります。実行犯の人心を操り、けしかけ犯行へと駆り立てる一方、「九つの命」を与えて、繰り返させ、殺人犯から上手く逃げおおせるかをゲームのように楽しんでいる。そんな風にも感じます。
 九つの命、狐の面と来ると、自ずと九尾の狐を連想します。幾つものチートな能力の中に確か、人心掌握もあったように思います。

謎4.「九つの命」を得、八回目の生を生きているのだから、まだ残弾1を残している筈なのに、なぜ生命線が消えている(残弾0となっている)のか。

 これは、簡単。今が九回目だから、なのでしょう。主人公は主観的に物を見、判断しているので、かなり認識に間違いがあるように思います。
 誠くんは敵ではなく、味方ですし、彼を遠ざけようとすることは、返って真の犯人を利することに他なりません。そして、今回は八回目ではなく、九回目なのです。最初に、記憶出来ていない一回目があった、と。あ、違うか。七回目には手相に違和感無かった(残弾2)のですから、七回目と今回(九回目)の間に記憶していない八回目があった、と。そういうことでしょう。

謎5.なぜ2008年なのか。

 ここで、この物語の時代考証をしてみます。
 高校の入学式が行われたのは、2008年4月6日(日)。チェーホフの銃。これが2008年の物語として描かれているのには、理由があるはずです。2008年に起きた主な国内外のニュースを振り返ってみると……。
 1月 中国製冷凍餃子による食中毒事件
 6月 秋葉原にて無差別殺人事件
 6月 岩手・宮城内陸地震
 8月 北京五輪
 9月 リーマンショックにより世界規模の金融危機

 色々な出来事があった年なんですね。ちょっと、秋葉原の無差別殺人事件が気になりますね。この物語は、主人公が明確に何度も殺害されるお話なので、無差別殺人とは相容れないのですが、もしかしたら、真犯人から恨みを買うことになる原因が隠されているのかもしれません。
 これまでも小学校の時から主人公を虐めてきた真犯人ですが、この年に起きた出来事が、その後の殺意の種になっているのでしょう。

 と、ここまで色々と謎について考察してみましたが、あくまで予想。正解かどうか分かりません。
 ただ、この物語は大小様々なこうした謎を解き明かしつつ、追いかけていくというのが、楽しみ方としてぴったりな気がします。
 面白かったです。答え合わせ、してみたいですね。感想依頼、ありがとうございました。



1-17 黄泉坂学園で生き返りを目指して




1-20 毒は蓄積、決壊刹那




1-21 ユピテル09は宇宙を目指す


 まずはひと言。めっちゃ良い! これは良い物です。どこがって? 何もかも、ですよ。
 SF要素のさじ加減とファンタジー要素のさじ加減の混ぜ具合の絶妙なこと。
 そして、それぞれの設定が好み、ドストライク。全部を語るのは無理ですが、幾つかを。

ユピテル09

 ギリシア神話のゼウスに相当する、天空と雷の神の名前。名は体を表すと言いますか、これだけで強いことが察せられます。

機械人

 機械人と書いて「マシーネン」。マシーネンクリーガーを思わせるドイツ語音が、無骨で荒々しい戦闘に晒されるSF世界にピッタリです。

胸部にはわずかな膨らみがあり、顔立ちは十代半ばの少女のような幼さ

 好きしか詰まっておりません。癖をぶっ刺してきますね。

 この調子で書き出してたら、きりが無い(笑)

 対するファンタジー側もまた、素敵です。

 そして、この作品が決定的に面白いのは、その会話劇でしょう。ユピテル09と、攻殻機動隊に出てきたイワサキ社長のような操舵長との会話も楽しいですし、ユピテル09がベアトリス姫との会話を思い出し、読者がユピテル09の立場や行動原理を端的に理解できるのも上手い。
 ファンタジー勢のコミカルな会話も良いです。互いの欠点を含めて理解し合い、信頼し合っている絆を感じます。なんだかんだ言ってますが、自分たちの力量を見定めている辺り、彼らも相当な腕前のパーティーだと感じられます。
 そんな魅力的なキャラクターたちが、化学反応を起こして一つのパーティーとなった時、どんな物語が紡がれるのか。そして、ユピテル09は姫のもとに帰れるのか。
 めっちゃ楽しい冒険譚の始まりを予感させる書き出しでした。
 面白かったです。感想依頼、ありがとうございました。



1-24 今日も猫とともに


 清貧を慎ましく静かに愉しむような日常風景。訳アリなのは何となく察せられるけれど、波の音や潮の匂いが感じられる丁寧な描写。だけど、ちょっと物足りない。
 そんな風に感じていた頃もありました(過去形)。そんな失礼な感想を抱きつつ(ゴメンナサイ)読み進め、そして最後の一文にガツンとやられました……(放心)。

 作者様はこの最後の一文の効果を最大限に高め、効果的に引きを作るために、敢えてこのようなタッチで書かれていたのですね。まんまと(まんまと!)作者様の手のひらの上で踊らされてしまいました。

過去に囚われた桜と未来しか見えない翔太。そして今を生きる猫タロ。

 上手い。過去(主人公)、未来(少年)、現在(猫)と割り振ることで、形而上の時制をキャラクターに落とし込んでいるところが実に(実に!)上手いです。

 この手練れ感、脱帽です。

 読み返してみても、物語はあまり前へは進んでいないんですよね。そこだけ時の進みが遅くなったような空間。過去に囚われて生きる主人公が猫と関わる瞬間だけ今を生きている。そんな印象です。
 そして、前へ進むばかりが物語じゃないと、この物語は教えてくれます。深いなぁ。それでいて、重苦しい感じじゃなくて、爽やかさも感じられて。
 過去と現在と未来が混ざりあって、過去への決別、未来への躊躇いなんかが、全て現在(=猫のタロ)に収束していくのかと思うと、続きが待ち遠しくなります。
 そう思って、タイトルに立ち返り、このセンスの良さよと惚れ惚れしました。タイトルにセンスの欠片もない私に、どうか爪の垢を分けてくださいませ。
 面白かったです。感想依頼ありがとうございました。


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第二会場

2-01 シナスタジアの聖女、今日も最前線を征く


 遅くなりました。結果発表後の感想になってしまい、申し訳ありません。順位も作者も確認せず、匿名のまま感想を書かせていただきます。

 シナスタジア。一瞬、固有名詞かなと思いましたが、どこかで聞き覚えが……。あぁ、共感覚! 生まれつき、感覚が鋭敏で、音に色が付いて見えたり、数字や文字を色で捉えたりと、外部刺激を通常よりも多角的に捉えられる知覚現象のことですね。
 言葉では知っていても、凡庸極まりなく非才な私には縁遠い感覚で、ピンとこないあまり、すぐには思い出せませんでした。

 そして、そんなシナスタジアな主人公、アリシアが備えていたのは、「心理状態が色で感知できる」という、分かりやすくも興味深い共感覚。いや、もうこれ、超能力でしょ。(ヒロアカで言うところの)個性でしょ。ヒーローとしての素質ばっちりでしょ。
 その上、その能力の一端をもって、協会に蔓延する下心に楔を打ってみせる主人公。良いですね。チャラい同僚から乙女の純愛を守る。メンタルもヒーローですやん。

 一方で、悪意を持った輩がたちまち分かってしまうと、物語に奥行き(謎)が足りず、あっさりした展開になってしまわないかなぁ、なんて邪推もしてましたが。心配無用でした。
 裏で騎士たちを操り、勇者にけしかけようとしている者のいることまでは察せられても、それが誰だかはわからない。
 あぁ、上手い。設定と物語のベクトルが二人三脚、物語を転がす両輪になっていて、めちゃくちゃしっくりとくるじゃないですか。

 異世界から召喚された勇者の能力の一端も垣間見えます。純真無垢の白をまとい、アリシアよりも更に鋭敏にドラゴンの存在を感知。そして、空高く飛翔して、ドラゴンに一撃を喰らわせる力量。
 そんな勇者が、取り巻きの騎兵を操る何者かの魔の手によって害されようとしている。
 メンタルも素養もヒーローの資格バッチリなアリシアがこの事態を放置できる筈がない!

 設定に寄りすぎず、キャラクターの持つ行動規範が無理なく描写されているので、物語がスムーズに走り出した、そんな読後感でした。
 面白かったです。感想依頼ありがとうございました。




2-05 虚界本紀 機神サカトケ




2-06 勇者でしかなかった女は、孤独な魔王と結ばれない


 産まれた時から勇者として生きる定めを課された少女と、同じく産まれた時から魔王として生きる定めを課された男の物語ですね。
 両者に共通するのは「孤独」。だから、互いの中に自分を見出して時には惹かれ合い、時には退け合う。
 一話で描かれるのは

勇者と魔王、決して結ばれない二人の、一度目・・・の決別の瞬間だった。

 あらすじに拠ると、この後、何度も時を巻き戻し、勇者は二人の関係を模索する事になるようです。
 しかし、所詮は光と闇。どうしたってハッピーエンドは望むべくもない。
 「勇者」も「魔王」も。その称号は、二人にとって「呪い」でしかないのですね。

 そうして何度も繰り返すうちに女は気づく。
 魔王の手を取っても取らなくても、自分たちは決して結ばれないのだと。

 救いは、救いはないのですかーっ!
 話数を重ね、あり得たかもしれない二人の関係の「if」のバリエーションが紡がれ、そしてその度に読者は悲劇を目撃し、主人公は悲嘆のうちに「次こそは」と再び時を巻き戻す……。
 ふぇぇぇ。哀しいなぁ。

 もし、最後には何かハピエンに至る妙手に辿り着けるのなら、あらすじでさり気なく触れそうに思うので、こちらの作品は、どんなに話数を重ねても、悲劇でしか終わらないことを暗示させているように感じました。(読み取り方、間違っていたらゴメンナサイ)
 でも。もし、悲劇の積み重ねの末に、彼らが幸せになれる、そんな未来があるのなら、それに賭けてみたい。そんな感慨を覚えた作品でした。
 ですので(もし作者様の中に明確にバッドエンドの構想があっても、無くても)、主人公が次の時の巻き戻しに期待する感情に寄せて、読者にも期待をもたせると、より次話への引きとして効果が高まるんじゃないかなって思いました。
 読者に嘘を付く必要はないんです。主人公に「次こそは。私は私の運命に抗ってみせる」みたいな決意を語らせるだけで、読者も主人公と一緒に次への期待を強く持てると思うのです。(一話はその場面まで行かないので、あらすじとかで)
 面白かったです。好き放題書いた点、ご容赦ください。「違うんだよなぁ」って場合は、どうかご放念くださいませ。感想依頼ありがとうございました。



2-09 グリモワールの愛し子




2-13 島流しされた濡れ衣令嬢、絶海の孤島で赤竜と出会う。




2-14 虐げられた王の生まれ変わりと白銀の騎士




2-15 仙女の愛し子は嗤う




2-22 父の遺書が異世界転移ライトノベルだった件




2-25 前世、愛を伝えられなかった私たちは



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第三会場

3-02 神の庭に住むこどもたち




3-03 月は七色、剣と踊れ




3-05 その竜は、人間を知りたいと思った


 面白いです。オリジナリティ溢れる作品は、読んでいてワクワクしますね。ですが、ふと我に返ってみると、魔王、勇者、竜と出てくるキャラクターはおなじみのものばかり。素材は馴染みの物でも、調理法と味付けが変わると、こうもオリジナリティが出せるものなのかと関心してしまいました。

 まず、竜の立ち位置が斬新。魔王かその配下かと思われた竜は、

知らんな。おれはここ千年ずっと山で眠っていたのだ。

 ぜんぜん、魔王と関係なかった! それなのに、勇者は勘違いしてこの竜に挑み、そして敗れてしまいます。
 さらに、この竜、人の世に興味津々。死にかけの勇者の姿を借りて、人間社会へ向かいます。「しちゅう」を食すため! ついでに魔王もやっつけちゃうよ!
 勇者リュートはこの竜に食われ、死んだのかと思いきや。

案ずるな。人の世を愉しんで、魔王を倒したら返してやるとも。

 魂を返す(解放する)だけなのか、元通りの生きた人間として少女のもとに返すのかは、このセリフだけでは定かではありませんが。
 ここまででも十分に面白いのに、脳天にげんこつを落とされて、竜と少女の立場が逆転。魔王を「ついでに」やっつけると受け合う竜を、後ろにも目があるのかと疑うばかりの立ち回りをしてみせた竜を。げんこつでいなす少女。この立場の逆転が最高に、面白い。
 俄然、これから始まる二人、いや一人と一匹の珍道中への期待が高まります。人間社会で見る物、聞く物、味わう物、すべてが目新しく新鮮で、そして美味しい。そんな体験につい羽目を外し、少女に怒られる竜。
 なんだか、サザエさん時空で色んなエピソードが作れそう。魔王退治というゴールはありますが、コナンも高校生に戻らないし、アーニャもぜんぜんステラ集まらないし、良いんじゃないでしょうか(マテ)。

 ですが、最後に本当にこの竜、リュートを解放してくれるのでしょうか。人の社会が楽しくなって、リュートを手放すのが惜しくなったりしませんかね?
 よしんば、リュートが解放されて少女のもとに戻ってきたとして。今度は少女が竜ではないリュートに物足りなさを感じたりはしませんかね?
 なので、竜とリュートが双方の意思で共存するような未来が選択されても良いかなって思ったりしました。(なんだ、結局サザエさん時空……)

 いやぁ、卑近な素材を調理法と味付けの工夫で見たことのない料理に仕立てる手腕。まさに「創作」料理。美味しゅうございました。ごちそうさまです。感想依頼、ありがとうございました。




3-07 僻地コンビニの雇われ宇宙人店長はKawaii原生生物が好き


 遅くなりました。結果発表後の感想になってしまい、申し訳ありません。順位も作者も確認せず、匿名のまま感想を書かせていただきます。

 めっちゃ面白い。関西出身なのに、ギャグやコメディーの素養が致命的に欠けているジンパパには到底書けないジャンルですが、気付きや学びも多かったです。

 まず。笑いの根っこにある物は「ズレ」なんだろうなと思っています。
 本作の場合には、主人公が宇宙人であり、現生生物たる地球人を愚かで無知で不合理にも関わらず、懸命に生きている「Kawaii」ものと感じている、その価値観の「ズレ」が笑いの根幹にあります。
 その上で、本作を上質なコメディー作品に仕立て上げるために、作者様は幾つものテクニックを駆使されています。

 一つ目は、我々とは決定的に価値観を異にする宇宙人を主人公に据えたこと。そして、宇宙人の目を通して日常風景を描くことで、読者に彼と同じ視点から眺め、彼の思考、ひいては彼の価値観を読者に理解、共感出来るようにしていること。そうする事で、奇異なはずの宇宙人の言動こそが「普通」となり、原生生物の言動が「奇異」に見えてきます。読者に新しい視点が加わる体験ほど、読書体験として楽しいものはありません。

 二つ目は、そうして彼の目を通して描かれる原生生物の愚かな言動がシニカルな笑いに昇華されていること。年齢確認のボタンを押す程度のことで怒り出す人、いますよね。それを単に非難するだけの書き方だったなら、こうも楽しい読書体験にはならないでしょう。それでいて、皮肉が効いている。上手いです。

 三つ目は、彼を「宇宙人」呼ばわりして憚らないキャラクターを配したこと、敵対関係(とまで言うと大げさですが)にある別の宇宙人を配したこと。
 主人公と愚かな原生生物という線の関係に、交差する別のベクトルが差し込まれたことで、俄然面白さが増しています。

 と、ここまで書き出してみて、分かりました。この作者様は天才なんじゃなかろうか、
と。
 作品が面白くなる要素をギュッと詰め込んで、ドキドキするような引きまで用意して四千字に収めて、楽しい読後感を読者に与え、続きが更に面白くなるぞと、期待させる。
 ええ、これは珠玉の一品と言って差し支えないと思います。
 めっちゃ面白かったです。感想依頼、ありがとうございました。



3-12 犬と香りとイノベーション!


 完璧。まさにお手本のような書き出しです。お手本と言うと、なんかパターンだとか、テンプレだとかのネガティブなイメージもあるかもなので補足すると、ぜんぜんそういうのではなくて。細部まで手を抜かないオリジナリティ溢れる世界観を構築しつつ、魅力的なキャラクターをバシッと魅せつつ、テーマも課題もちゃんと描けてて。次話への期待感が爆上げで終わるという、そういう意味での非の打ち所のない「お手本」。
 物足りないとか、展開への不安とか、そういうのが一切なく、「ワクワク」を噛み締めながら、続きへの期待がもてる、そういう書き出しでした。

 冷たいシャワーを小一時間も? って思ってたら、後半にちゃんとその解も物語に絡める形でちゃんと用意されてて。
 敏腕社長と警備担当社員の軽妙な会話劇だけでも魅力的なのに、警備担当のワンちゃんが決めるところは決める、切れ味抜群の決め台詞を披露してて。
 もう一度言います。完璧。

 ただ、一つ気になる点としては、フレフレ社にそれだけの実力が本当にあるのなら、もう少し業績も良いんじゃないかなって点。

 ――スズリさんの臭い、案外苦戦するんとちゃうかな?

 でも、それはそれで。あっさりとは解決しないところがまた楽しみなわけで。

 つまり、続きが楽しみです!
 よくこれだけの欲張りな設定と魅力を四千文字に詰め込んだなぁと、脱帽です。
 面白かったです。感想依頼、ありがとうございました。「お手本」にさせてもらいます!




3-13 【略名は本王女で】本当の貴方は王女様ですと言われたので、別の世界に行ってきます!




3-20 時待町の交差点




3-25 数の魔法使いは女神さまを振り向かせたい



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第四会場

4-03 愛は不要なので結婚しましょう


 スラスラとストレスなく読める文体の中にも、

グルグルッと気味の悪い唸り声を響かせながら王子は意識を手放していた。

 さり気なく、言葉選びにキラリと光るものがあって素敵です。
 さて。王子にかけられた呪いを解くには

「身内にしか見せられん呪解法が必要なのだ。婚姻した上で、長期にわたる呪解の術法を掛け続けねばならん。どのくらいの期間が必要かも謎だ」

 とのこと。「身内」と言っても、養子となって王子の姉か妹というのでは駄目らしいので、呪解の術法というのは、夫婦の営みに近しい何かなんでしょうね。(*´艸`*)ワーオ

 そんな大きな目的(=王子にかけられた呪いを解く)を遠くに見定めつつ、近くはジェラがダークエルフであるが故の周囲との確執が問題になるのであろう事が伺えます。

ダークエルフは言霊を操ることで恐れられ、暗黒面に足を踏み入れた不吉な者たちだと忌避されている。どこの国でもおおよそモンスター扱いだ。

 この点については、ジェラ自身、相当なコンプレックスがあるようで。

女主人であるダークエルフのジェラは、来客のないときもぶかぶかのローブで体を覆い顔をベールで隠している。闇色でさらさらの肌を、ダークエルフであることを、視覚的に封じていた。

 周囲の無理解もさることながら、彼女自身が自分に課せられた運命(呪い)を解くことも、テーマの一つのように思います。
 そして、中盤には

王子へと呪いを掛けた者との闘い

 のあることも示唆されています。

 こんな風に、(あらすじ込みですが)一話目で凡そのストーリーラインが掴める物語には安心感を感じます。
 読者は純粋に物語を楽しむことが出来ます。主語が大きすぎました。私はそうです。

 タイトルについて。「愛は不要」とあります。一話を読ませていただいた限り、確かに王子の呪いを解くための方便としての結婚なので、愛は不要なのでしょうが、(契約によるものだとはいえ)ジェラの献身的な呪解(ワーオ)や、ジェラに対してダークエルフであることを厭わず、そして自分の運命に必至に抗おうとする王子の姿勢などから、二人の間には少しずつ愛が芽生えていくのでしょう。

 そういう訳で、安心して読み進められる物語だなと思います。と、同時にもう少し強い引きがラストにあっても良かったかなとは思います。文体もストーリーラインもストレスフリーなので、このままでも続きを読むにあたって何ら障害はないので、自然と次話のリンクをクリックすると思います。
 ですが、「続きはお洗濯が終わってからでも良いかな」ってなる人もいるかも知れません。ここに強い引きがあると、「え、お洗濯どころじゃないんだけど!」と強くリンクをクリックすると思うのです。

 などと、偉そうなことを言える立場じゃないので、謝ります。ゴメンナサイ。完成度の高い書き出しだったもので、つい。ご放念ください。
 面白かったです。感想依頼、ありがとうございました。



4-14 マリファナ売りの少女




4-16 言罪の旅人たち




4-17 うたかたのアンドロイド




4-22 時計仕掛けの都市




4-25 貧乏令嬢の花婿探し ~なぜか、悪役令嬢に溺愛されるなんて聞いてませんけど!?~





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