クロッキーデッサンをする目的はフォルムへの気づきを的確な描線でもっておのずとえらんでメモのようにのこすこと
はじめに
絵を描く。デッサンすることはいい練習になる。たくさんのまよいばかりの線から自信をもち確固としたひとつの描線をえらぶために。楽器の演奏をくりかえしてスムーズにこなせるまで弾く感じ。
なにげない表情やしぐさのなかに、うつくしさやおもむきに気づいても時は過ぎ去る。はっと思う瞬間をのこせれば。そしてすかさずメモをとるようにクロッキー帳に確実にのこせるといい。そのために欠かせない作業。
じゃあカメラで撮るといいのではとおもわれそうだが、そうはなかなかいかない。参考までに肉眼にちかい標準レンズで撮影することもあるが基本は肉眼でおこなう。デッサンではここぞというところの線やタッチにそれなりのおもいがはいりこむ。
かなりあとで見かえすとあきらかにここが描きたかった個所だったんだとわかる。そこが写真とはすこしちがうかもしれない。
きょうはそんな話。
人物を描く
どちらかというと風景を中心にえがいていた。ところが描いた風景はどこかいいかげんであまさのあると気づいた。おもしろみに欠けていて没個性的ともいえそう。
そこで不具合に気づきやすい人物をもう一度描いてみようと思った。クロッキーの基礎からやりなおし。まずはヒトに大きな布をかぶせたかのようにおおつかみにかたまりをつかむところから着手しないとおかしな絵になる。わずか数分間でのできごと。躊躇したり試行錯誤できない。これはねらいどおりの練習になるとわかった。
モデルさんをたのんで
短大の美術の先生の人物画講座に毎週通い1年間基礎からみっちりおそわった。これについては以前にnoteの記事に。毎回入れかわりたちかわりモデルさんをお願いする本格的な講座。絵の経験者や学校の美術の先生などが参加していた。
描き方に関しては高校の美術を選択し、つづいて大学の美術部に在籍したおりにデッサンの基本も先輩からおそわった経験で、初回からわりとすんなりとはいっていけた。20人ほどの受講者ひとりひとりをまわり、先生みずから修正してくださりつつアドバイスを受ける。みちがえるように絵がかわる。
ここでクロッキーデッサンとともに、モデルさんへの気づかいや接し方も学ばせていただけた。やってみるとわかるがじ~とポーズするのはけっこうしんどい。モデルさんを慮りじゅうぶんな配慮がもとめられる。先生とモデルさんとのやりとりはその点でとても参考になった。相前後してわたしも知りあいの方にモデルをお願いして描かせていただいた。
短時間をくりかえす
ポーズをとっていただくのは数分間が多く、ながくても10分ほど。そのあいだほぼじっとしてもらう。ここが写真や動画ならば多少うごけるポージングとちがう。おなじくらいかうわまわるぐらい休憩が必要。ほんとうは何人かでおたがいが交代でポーズして描きあうのがいちばいい。1対1ならば1~2時間ぐらいが多い。
クロッキーデッサンといえば大学の美術部在籍中のこと。朝8時ごろの始業まえのキャンパス。そのまま部室にむかう。
いつも同級生で学部のちがう女子学生とふたりで、おたがいに交代でポーズをとっては描き、そののちそれぞれの1時間目の授業に出ていた。気ごころのしれた部員たちどうし。おもいおもいの時間でこんなふうに練習しあえる場だった。このころがなつかしい。
さまざま配慮が必要
さて、この気温の下がる時期にモデルさんにポーズを頼むならばじゅうぶんな保温がもとめられるし、暑すぎたり寒すぎる環境のもとでは無理。すわるいすや場所などもさまざま気づかいは当然。
無理していないかとようすをたずねて何でも言ってもらいやすい雰囲気をたもつ。絵に集中するのと協力してくださる方へのつねなる配慮の両方がいる。
いざじぶんでデッサンをやろうとするとさまざまな条件をととのえるのは思っている以上にたいへん。たとえば場所。陽あたりのいいへやより理想的にうつくしい光といわれているのは北むきのやわらかな間接光のあかるい室内。描くヒトと描かれる人物の数によりある程度の距離(数mほど)がほしい。
どうにかおぜん立てが整うとこんどはおたがいのスケジュールの照らし合わせ。知りあいとはいえおたがいに仕事をもつ身で、あつかましいお願いはできない。あわせるのはなかなかたいへん。
おわりに
こうした困難をのりこえてようやくかなうデッサン。いちばん描いていたころの線は躊躇なく、いきいきして迷いがすくない。
充実して描けているのが明白。それをもとに作品に仕上げる。なんとか展覧会などで選んでいただけた。これらはモデルさんとの共同作品といえそう。
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