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ほうれんそうのたねまき:おいしかった記憶をたよりに7年前のこの時期の作業のようすを記す
はじめに
採れたてのほうれんそうのソテーはほんのりあまかった。「やさいがあまいなんて…。」とわたしの発したことばを学生のひとりはしんじてくれなかった。
だんだんと過去なにげなくやれたことさえ記憶がうすれていく。とくに農業はからだをうごかす行為なのでなおさら。うごかないままではなかなか思い出せない。
いずれ再開の必要なこともあろう。そのためうまくできたときのようすをふりかえり、記しておいたほうがなにかとのちの役にたちそう。同時になにをつくっていたのか同時に記録しておきたい。
きょうはそんな話。
めったにつくらない
ほうれんそうはわたしにとり鬼門だった。その理由はCKDとともに腎臓に石ができやすい体質のため。この痛みは尋常でない。「悪魔の一撃」との海外のたとえがあるほど。いきなりが~んとせなかにくらう。いつもとつぜんなのでまわりがびっくりするほど。
担当の医師からは石のできやすいほうれんそうはなるべく…と指示されているぐらい。とはいえそれなりにシュウ酸の成分をある程度とりのぞく調理法があるので少量ずつたべられればさいわい。
医師のことばを聞いて7年前のこの時期にほぼはじめてすこしだけつくることにした。
はたけしごと
以下の2か所の「 」部分はほぼ当時の記録のまま。
「ほうれんそうを畑にまく準備をした。ほうれんそうはアルカリ性を好むので、苦土石灰と草木灰を多めに入れる。そこへ3年置いたたい肥を入れて土をよくほぐして90㎝幅の畝を作った。
ほんとうは何日か置いて土をなじませた方がいいが、2日以内に雨の予報。やむなくきのうナーセリーで買っておいた種子を今日のうちに種まきした。5,6㎝の株間になるように3条ですじまき。土をごくうすくかぶせて軽く押さえ、水をじょうろでまく。
すでにこの畑にはじゃがいも、あかそらまめ、らっきょう、わけぎでほぼ埋まっている。これからあく場所は、ごぼうを植えていたところとさといもののこりの場所のみ。さといもは年の暮れにかけて重宝するので、地上の葉は枯れたが土中のいもはそのまま置いておく。
ほうれんそうをまいているとご近所さんが来て風力発電の話。畑に音のしないタイプの小型の風車を何台か設置して、その下で農業をしてはどうかとアイデアを話してくれた。なるほどと思った。小型風力に関してはまだ採算の面でペイするかどうか微妙とのこと。
これからしばらくの状況次第でしょうとの話。農産物をつくりながらその一方で電気を起こし、それを草刈りなどの電力として使えれば一石二鳥。採算が合う時期がくればいいかもしれない。」
1週間後
それから1週間後。ひととおり3か所のはたけでそれぞれ作業してまわるようすのつづき。
「きょうは祭日だが、朝から本業の方の仕事。仕事を終えてから麦まきののこり。先日の麦ののこりがほぼ2畝分残っていた。先日麦まきした畑のとなりのあらたな畝に2日まえに急遽肥料を入れておいた。きょうのこりの麦をそこへ蒔いた。見つもりよりもけっこうこの袋には麦つぶがはいっていた。
先日の種まきと同じく曇りがちの空で夕方以降雨の予報。日に日に寒くなり種まきを急いだほうがよさそう。ひとつぶずつ蒔くので1時間でようやく蒔きおわり、あとは雨を待つことにした。水まきはしない。
それからべつの畑に上がり、先日蒔いたほうれんそうを見に行った。なんとか7割ほど発芽していた。ちょうど数日おきに雨が降っていたので、種をまいた日にしか水やりしなかったが、連日畑は湿ったままだった。
これから数日寒くなる予報。しばらく伸長しないでしばらく子葉2枚のままかもしれない。ネキリムシがこなければいいが。
ここではだいこんが大きく育ちつつある。おそらくあと3週間ほどで初収穫ではないか。蒔くのが若干遅めだったので、ちょうど虫にやられずに済んだ。
それから畑を移動しエンドウ豆の発芽のようすを確認。まだ2,3株といったところ。どうもエンドウの発芽がおくれているのは覆いをながくかぶせすぎたためかもしれない。」
おわりに
こうしてほぼ毎日3か所の畑を作業してまわっていた。3か所とも輪作しながらほぼ畝はなにかしらの野菜で埋まっていた。
はたけにいると上記のようにけっこう話しかけられた。どんなようすか興味を示すだけでなく世間話をしていく。こうした情報のやりとりで役にたつことを仕入れられた。話相手は何代も農業を行ってきた方が多い。親から受け継いだ畑と技術。とぎれてしまうのはやはり惜しい。
ほうれんそうとともにおこなった麦はその年の作物のなかで最後の種まき。数千粒をひと粒ずつ畑に蒔いていた。年が明けるとすぐにかぼちゃやトマトなどをこんどは温床に蒔き、じゃがいもを縁側で陽にあてて芽出しをはじめる。
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