◆映画「怪物」は、是枝作品だけど是枝作品ではないと思う

Amazon primeで映画「怪物」が公開されていた。
劇場公開の時に話題になっていて、カンヌで脚本賞を取った様で、サブスクで公開されるのを楽しみにしてた作品だったので観賞した。

ネタバレ無しの感想で言うと、題目の通り、これは是枝作品だけど、是枝作品では無いが感想。

この映画の有名どころの主要なスタッフは以下になる。

監督・編集・製作:是枝裕和
脚本:坂元裕二
音楽:坂本龍一
企画・プロデュース:川村元気
出演:安藤サクラ、永山瑛太、田中裕子
配給:東宝、ギャガ

「安藤サクラ」さんが出ていた「ブラッシュアップ・ライフ」でも描かれていたが、作品におけるスタッフロールの順番は非常に大事になってくる。

僕は長年映画を観ていて、自分も作る立場でも観た時に、スタッフロールの一番最後に出てくる人とその表示方法を注視している。

基本的にその映画のスタッフロールで一番最後に出てくる人が、その映画に対して一番ものが言える人で権限のある人になるので、「監督」になる。
次に表に出ていて矢面に立ち、評価を直接受ける、この映画の一番の功労者を一番最初に表示している。
その人は「主役の役者」である。

ちなみに、最後の監督の表示方法について、最後真ん中で止まる場合は、その作品において、監督の言いたい事が言えて、思い通りに作れている作品が多い。
そして、他のスタッフと同じで、止まらず一緒に上に流れていった場合、雇われ監督などのあまり自分の意見が通っていない作品が多いかと思う。

このスタッフロールのよく見る一般的なルールを踏まえた上で「怪物」のスタッフロールを見てみて欲しい。


なんと上に挙げた順番で表示されている。

ちなみに確認したら、「万引き家族」では止まらなかったけど、一番最後に是枝監督が表示される。

もう一つちなみに言うと、アメリカ映画のスタッフロールは、最初に監督が出てきて、主要スタッフの後に俳優陣が表示されている様である。

この作品はカンヌで脚本賞を取っている作品だが、僕が思うに、「名作」では無いと思う。


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ここから下はネタバレが含まれる内容なので、映画を観た後に見て欲しい。


僕がこの作品を見終わって思った事は、脚本の振りと回収が強引過ぎて、気持ちがストレートにならず、最後の落ちもそれにする必要あったのか?って感じだった。

まず最初の「安藤サクラ」さんのパートだけど、この時の「永山瑛太」さんの先生の態度がキーになるのだが、その後を見ると、この時の先生の態度とその後のパートの先生では、その思考にあまりにも乖離的な違いが出ている。
自分も小学校の子供がいるが、「永山瑛太」さんの先生パートの様な気の利く優しい先生だったら、あの最終的な記事になるまでの事件にはならないと思う。

そしてクラスでのイジメの部分について、役名「星川依里」がイジメられているところで、確かに「安藤サクラ」さんの息子である役名「麦野湊」は、自分もイジメられたくないからイジメに加担しているが、クラスの女の子達は明らかに「星川依里」の状況を理解している。

校長の「田中裕子」さんが、就任した時にいなくて的な事を言っているので、この先生はこの学校に来て間もない事は言っているが、あんな酷いイジメであんな優しい先生だったら、女の子達と「星川依里」とは良縁な演出もあるし、「麦野湊」が言わなくても女の子達が告げ口していておかしくない。

それでその後でのクラスに対してのアンケートの時こそ、女の子達がまさしく告げ口できる時なのにも関わらず、ここで先生が怖いという風に持っていかれる。
そして焼却場で死体の猫で遊んでいた事を告げ口した女の子も、その後明らかに態度を変える。
この辺が「怪物」に関係するのだが、あまりにも強引なナビゲートだと思う。

それと「安藤サクラ」さんパートで、「永山瑛太」さんの先生が話している最中に飴を舐め、この行動こそが「怪物」的要素がみえるシーンなのだが、その回収である先生パートで、彼女である「高畑充希」さんが、ストレスを感じた時は舐めた方がいい程度の取ってつけた程度の回収。

正直、「安藤サクラ」さんパートでの「永山瑛太」さんの先生の態度があまりにもミスリードに感じた。
役者陣はそれぞれのパートで、それぞれ素晴らしい演技をしているのに。

これは是枝監督の演出ミスなのか、坂元さんの強引な脚本なのか、はたまた企画の段階でLGBTもイジメも学校問題なども詰め込み過ぎた川村さんなのか、素晴らしい「怪物」を集めたら「名作」ができるとプレッシャーをかけた配給が悪いのか。。。

恐らく「3時間」の映画だったら、もう少し振りと回収に時間を掛けられていたかもしれないが、「2時間」位にするって命題があったのか。
言いたい事が多過ぎて、ギュウギュウに押し込める必要があって、振りと回収が雑になったのか。。。

これはそれぞれ素晴らしい才能を集結させたけど、「名作」になり損ねた作品だと思う。
最近思うのは、「名作・怪作」は一人の才能が独壇場で作った方が生まれ易く、才能を集結させるとみんなの意見を集合体になるので、それなりの質の作品になるんじゃないかなあと。
最近の「ディズニー」がそんな感じ。
まあ、一人の才能だけだと「駄作」が生まれる事も大いにあるんだけど。


これが僕が「この映画は是枝作品では無い」と感じた理由であり、是枝監督こそ自分はこの映画の功労者なんだぞと言っているのではと感じた理由である。

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