リモートワークの功罪
新型コロナウイルスの流行をきっかけとした社会の変化から、まもなく5年。
感染拡大防止のため、多くの企業がリモートワーク制度を導入し、我々の生活も大きく変わりました。
月日が経ち、ここ最近は フルリモート→出社回帰 の動きをよく見かけます。
しかし、だからと言って出社回帰が正義だと決めつけるのは時期尚早ではないでしょうか。
私自身が実際にリモートワークをしてきた経験を踏まえて、リモートワーク・出社回帰について今思うことを率直に書いてみようと思います。
リモートワークのメリット
通勤時間の削減
「満員電車で疲弊しなくていい」
「雨の日や寒波の日に家を出なくていい」
「役所や病院など平日に間抜けしやすい」
最高に居心地が良いです。
家族がいる先輩社員だと、保育園の送り迎えや家族の看病などでリモートワークを活用している例もありました。
ワークライフバランス
通勤時間の削減により自由な時間が生まれました。
「勉強や趣味の時間が増えた」
「家族と過ごせる時間が増えた」
通勤時間の削減に伴って自由な時間ができたことで、余裕が生まれたように思います。働く場所の融通が利くようになったため、地方や海外を旅行しながら仕事をする「ワーケーション」という言葉も耳にするようになりました。
リモートワークのデメリット
仕事とプライベートの境界が曖昧になる
私の会社ではリモートワークに加えてフルフレックスが採用されています。
いつでも働けるということは、常に気が休まらないということ。
「仕事を終えた後も通知が気になって見てしまう」
「気になって早めに仕事を始めてしまい、気づけば長時間労働してしまっている」
「仕事部屋とプライベート空間を区別できず、気持ちをリフレッシュできない」
オン・オフの切り替えが難しかったり、無意識のうちに長時間労働してしまっているケースは少ないと思います。
組織の求心力の低下
「チームメンバーとのコミュニケーションが減った」
「他のチームが何をしているか分からない」
「会社が何を考えているか分からない」
リモートワーク下では、オフィスで働いていた頃ほどの人間関係を結ぶのが難しいと感じています。
コミュニケーションの希薄化という問題は、心理的安全性やモチベーションの低下を招き、一人での作業が孤独感を誘発し、精神的健康を害してしまったという人の話も聞きます。
ちょっとした休憩時間やランチタイムに同僚と雑談していた時間は、目に見えない形で組織を支えてくれていたのかもしれません。
オンラインミーティング
オンライン上では、表情や身振り、視線などの非言語的な要素が伝わりにくく、対面のミーティングに比べて相手の感情や反応を読み取るのが難しいです。
「会話の間を掴みづらく、発言のタイミングが難しい」
「カメラオフ、マイクオフでただそこにいるだけ」
「10人参加しているのに話しているのはたった3人」
このような経験はきっと私だけじゃないはず。
また、通信環境や機材トラブルなど物理的な制約によってスムーズな会話が阻害されたりもします。
週2出社は有効か
週に2日だけ出社日を決めて、あとはリモートワークが主体。いわゆるハイブリッドワークと呼ばれる働き方も主流になっています。
しかし、ハイブリッドワークは本当に有効でしょうか。
私の前職でハイブリッドワークが導入され始めた当初、週に2日出社することが推奨されていました。ところが、蓋を開けてみるとどうでしょう。部署ごとに出社日が異なるため、全員対面で集まるのは難しく、オフィスに出社しているのに自席でオンラインミーティミーティングという状況でした。
一人でもリモートワークしている人がいると、結局オンラインでミーティングせざるを得なくなり、出社している意味が薄れてしまいかねません。
ハイブリッドワークという制度はリモートワークと出社の良いとこ取りに見えて、実は一番制度設計が難しく、社員の満足度を上げづらい施策かもしれません。
出社回帰への反発
先日LINEヤフーがリモートワーク→原則週1回出社を発表しました。
この発表に対してSNSは大盛り上がり。
「フルリモートを推していたから入社したのに、そりゃないよ」
「地方に家を購入してしまった人はどうするんだ」
「週1出社になったくらいでピーピー騒ぐな」
各々が様々な意見をぶつけ合っているのを見て、私も思うところがありました。
一方、ここ5年ほどで急速に普及したリモートワーク中心の生活は我々にとって初でした。この問題がいつまで続くのか、働き手としてどのように振る舞うべきか、会社としてどのような制度設計をしていくべきか、誰もが手探りで進めてきたと思います。
本来であれば、社員側はリモートが恒久的に保証されるのかを入社前に確認しておくべきですし、会社側もリモートを廃止する可能性があるのなら誰もが分かるHP等へ事前に書いておくべきだと思います。が、コロナ真っ只中にこのような確認・判断をすることが現実的に難しかったのも正直なところでしょうか。
リモートワークは今後減っていくのか
コロナの終息に伴い、出社回帰・ハイブリッドワークを導入する会社が増えてきています。
リモートワークは今後減っていくのでしょうか。
私の答えは「No」です。
今後もリモートワークできる会社はそう簡単に減らないと思っています。
一度リモートワークの良さを知ってしまったら、元の生活に戻るのって現実的に難しくないでしょうか。
私の今の会社はフルリモートですが、もし突然来週から出社回帰と言われてしまったら、真剣に退職を検討するかもしれません。リモートワークが好きすぎるので…
私と同じような考えを持つ人は少なからずいると思っています。現在フルリモートの会社が出社回帰をする場合には、慎重な判断をするべきですし、逆に外の会社はリモートワークを売りにすれば、そういう思いを持った優秀人材を確保しやすくなると予想されます。
私も定期的に求人情報を見たりしますが、「リモート可」と記載があるだけで「おっ、転職するならこの会社いいかも」とプラスに捉えてしまう自分がいます。
大切なのは選択の自由、そして後押しする制度設計
リモートワークにおいて重要なのは「選択の自由」だと思います。
リモートで働きたい人はリモートワーク
出社したい人は出社
これらは全体で決めつけられるわけではなく、各個人・各チーム・各組織に合った形を模索していくものだと思います。
リモートワークはまだまだ発展途上です。ここ5年でリモーワークの旨み・辛みを経験してきた我々なら、この制度をさらにブラッシュアップし、これまでデメリットとして認知されていた問題と向き合う術を開発していけるのではないでしょうか。