ドラマ「Shrink ~精神科医ヨワイ~」第3話
『グランドジャンプ』(集英社)で連載中の漫画「Shrink ~精神科医ヨワイ~」の原作を担当している七海仁です(漫画は月子さん)。
本日は、ドラマ「Shrink」最終話(第3話)の放送でした。
ご覧いただけましたでしょうか。
テーマは「パーソナリティ症(パーソナリティ障害)」。「風花」を演じてくださったのは、白石聖さんです。
第3話の見学に伺ったのは、ちょうど風花と優がふたりでひだまりクリニックに駆け込むシーンの撮影日でした。中に入ってすぐ、現場の雰囲気が重いことに気づきました。医療監修の方もいらっしゃって、実際に腕を切った場合どのような処置が行われるかについて細かい調整を続ける中、廊下に白石さん、そして優役の細田佳央太さんが真剣な顔で立って出番を待っていらっしゃいました。役柄に入り込んでいらっしゃるのが見てとれて、簡単にご挨拶だけして離れた場所にいようとしたところ、白石さんが「あの…髪の毛、染めました」とお声をかけてくださいました。
一見自由奔放で周りを惹き付けるほど無邪気で明るくて、でも本当はその裏にある虚しさにいつも苦しんでいる風花。その不安定さゆえの魅力もあり、原作に出て来る中では常に上位の人気があるキャラクターです。ただ、その激しい気性と乱高下する気持ちを演じるのは本当に大変なことなのだと、現場に伺ってわかりました。そんな中で話しかけてくださった白石さんのお気遣いが嬉しかったです。
精神医療がテーマの「Shrink」にご出演なさる方は皆さんおそらく、ご自分の演技によって観ている誰かを傷つけてはいけない、最大の配慮を持った上で出来る限り真実に近い姿を届けなくてはいけない、というある種の覚悟を持って臨んでいらっしゃるのではないかと思います。普段原作を制作している我々の気持ちもきっとそれに近いはずですが、より多くの人に観てもらう立場の方々のご苦労は相当なものなのだとあらためて思いました。
撮影見学中、白石さんが中江監督に色々とご提案されている姿も拝見し、その真剣な瞳に心を打たれました。完成した第3話の映像を観ると、母親が追ってきた時や弱井に会った時に喜ぶ風花の表情が可愛くて、感情を爆発させた後ひとり静かに涙を流す姿は切なくて。その喜怒哀楽をすべて愛おしく感じました。風花が「変わりたい」と声を震わせて絞り出したシーンに涙しました。ドラマで見えたそれらの感情の振り幅が、白石さんご自身がひとつひとつお考えになって辿り着いた先にある唯一無二のものだと思うと感慨深かったです。
3回目の撮影見学ではシリアスなシーンが続きました。少し緊張しながら観ていたところ、後ろから「また差し入れ持ってきてくれたの~?」とのんびりした声が聞こえて、振り返ると中村さんの笑顔。一瞬でほっと気持ちが解れました。中村さんがいらっしゃると、いつもその場がぱっと明るくなるのですが、それは普段からすごく広い視野で周りの方や状況を見ていらっしゃって最も必要な心配りをされているからではないかと、お会いするたび思うようになりました。後に白石さんが「中村さんが『あまり無理をしないように』と優しく声をかけてくださったおかげで、安心して風花と向き合うことが出来ました」と書かれたコメントも読んで、「Shrink」の座長が中村さんであることをとてもありがたく感じました。
3回伺った撮影見学の中で唯一この時、弱井のセリフについて気になる点がありご相談させていただきました。皆で話し合っている際に、中村さんがご自身のスマホを取り出して何かを見ながら台本と見比べていらして、何だろうと思ったら、プロデューサーさんが「あれは原作を確認しているんですよ」と。目の前で大切そうに原作を読んでくださっているその姿に、私も、そして月子さんも、深く感動していました。
ドラマ放送直前に行われた会見やインタビューでも、たびたび「原作を多くの人に知ってもらいたい」 「そのために実写化で間口を広げるのは意義のあること」「漫画の拡声器になりたい」とおっしゃってくださった中村さん。原作者として、これ以上に嬉しく、励まされるお言葉はありません。また気を引き締めて書き続けようという思いを新たにすると同時に、今回ドラマに関わってくださったキャスト・スタッフの皆さんの姿を見て、自分もこれだけ真摯に仕事に向き合えているだろうかと自問しました。そんな機会を与えていただけてよかったと思っています。
さて、ドラマ「Shrink」最終話の放送が終わりましたが、皆様今どんなご感想をお持ちでしょうか。「面白かった」とおっしゃっていただけたら個人的には一番嬉しいですが、フィクションである以上「現実とは違う」「自分のケースとは違う」という点もあるかと思います。原作者としては、そういったお気持ちも全部ひっくるめて、皆さんとこれからも「心」の話を続けていけたらと思っています。
ドラマの放送が始まって、予想を遥かに超える反響やご感想を頂きました。その中にいくつも見つけた、「自分の病について知って欲しい」と声を挙げていらっしゃる方の勇気、「知ることで何かできることがあるかもしれない」とおっしゃっている方の優しさに、心が震えました。そして、精神医療というテーマが本当はこれほどまでに必要とされている、誰にとっても無関係ではないものなのだとあらためて思わされました。
ドラマや漫画をきっかけにして、ご友人やご家族の方達と少しでも多く「心」について語る機会を増やしていただけたら…「あの人、もしかしたらこういう可能性があるかも」「最近調子が悪いから近くの病院行ってみようかな」、そう思っていただけることが増えていくのではないかと思います。
そうしていつの日か、そう遠くない未来に、『Shrink』1巻を初めて読んでくださった方に「なんだ、こんな内容、とっくに知ってるよ」と言っていただけること、それが私の願いでもあります。
その日まで、許される限りはこの物語を続けていきたいと思っています。
ただ…、ドラマがあまりにも良かったので……正直に言うと、シーズン2が観たいな~、やっぱり!! どうでしょうか…!!
同じ思いの方がいらっしゃったら、是非そのお声をSNSなどで(よろしければ「#ドラマShrink」など付けて)聞かせていただけたら嬉しいです。
おまけ。
見学の際に持っていった差し入れをご紹介。
① ショコラティエ「Rond-Point」のフィナンシェショコラ(中野)
② 畑田本舗のクリーム入りどら焼き「どら一」(松山)
③ 追分団子の各種お団子(新宿)
シーズン2が実現したら今度は何を持って行こう…と今から勝手に考えています笑。
以上、拙いnoteにお付き合いいただきありがとうございました!
あらためて、ドラマ「Shrink」に、そして原作「Shrink」に関わってくださったすべての方、ドラマを観てくださった皆様に心から感謝申し上げます。
七海
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