paildができるまで
2020年8月24日、ついにpaildを一般公開しました。
ここまで頑張ってくれた弊社のメンバー、ベータ版を使っていただいたユーザーの皆様、株主の皆様、paildに関わり協力してくださった関係者の皆様、誠にありがとうございます。この場を借りて厚く御礼申し上げます。
今日誕生したpaildは、VISAで使える法人カードを何枚でもウェブ上で発行・管理できるサービスで、今までの法人における支払いを変革していくことができるサービスになると自負しています。
今回は良い機会なのでこのサービスができるまでの約2年間に亘る悪戦苦闘について振り返ってみようと思います。
法人カードってどうやって作るの?
paildを事業とする株式会社Handiiは、ちょうど3年前の2017年8月に創業した会社です。当時のメンバーは、私と一緒に創業してくれた昔からの友人である森の2名、しかも当時は恥ずかしいことに事業プランも決まっておらず、「世の中で何かやってやるぞ」ということだけを決めて設立した会社でした。この辺の経緯は下記に書いてます。
ちょうど2018年5-7月はピボット期にあたり、そもそも事業プランをゼロから構想していくような段階にありました。その中で、金融業界の出身である私と森は、やはり金融が自分達の原点であるということに思い至りました。そして、特に私たちのようなスタートアップにとって、資本金や売上によって設定される法人カードの与信額は非常に低く、カード決済をできずに苦労した実体験をもとに、この課題を解決するような法人カードを開発することを決意しました。
他にもいくつか考えていた事業プランがあったのですが、これを選びました。それは、なにかピンと来るものがあって、自分たちらしい世の中のためになる事業が作れるのではないか、直感的に思ったからです。今もこの想いは変わりません。
しかし、法人カードとはどうやって作るのだろう?そこからでした。そもそも当時はカード業界にいるなら当たり前に理解しているイシュアやアクアイアラに関してもきちんと理解していたかどうか怪しいような状況でした。ただ、わからないと言っても始まらないので、とにかく自分でも勉強し、お会いする機会をいただいたカード業界の方には色々教えていただき、なんとかオリエントコーポレーションさんと提携してカードを発行するプロジェクトが動き出しました。一生懸命やったのもありましたが、こうしたスタートアップによるカード発行分野を開拓されたKanmuさんやKyashさんのような先人がいたからこそ実現できた提携だと感じています。諸先輩方には頭が上がりません。
(2018年秋頃、ちょうどメンバー集めが始まった頃の飲み会の写真)
人とお金を集める
一旦事業の方向性は決まったのですが、次に問題になったのは人とお金を集めるということ。弊社は2020年3月に決済事業に必要となる前払式支払手段の業者登録を行なっていますが、この登録を実行するためには人員体制や純資産要件をクリアする必要があり、2度の資金調達とメンバー集めを急速に進めました。特に金融の領域は難易度の高い開発に挑戦することもあり、優秀なエンジニアが必要でした。
2018年秋頃から「肉食べに行きませんか?」そんな誘い文句で森がエンジニアをTwitterで誘いまくり、メンバーを探しました。彼は連夜の焼肉のせいでよくお腹を壊していましたwとにかく森の胃袋は崩壊寸前で、開発以前に体が壊れそうでした。思えばバリバリ開発している今より体調が悪そうでしたw
資金調達でも、アクセラレーションプログラムでお世話になったニッセイキャピタルやCoral Capitalなどの投資家に参加していただきながら、累計で4億円調達しました。
そんなこんなで2019年前半には優秀な人材と十分な資金が集まり、いよいよサービスリリース!と思っていましたが、想定以上の遅れを余儀なくされてしまいました。
(2019年夏のバーベキューの様子。この後真ん中に写るCTO森は一気に老け込むことになる)
思わぬ逆風のなかで
2019年前半が終わり、人も集まり、お金も集まり、あとはサービスのローンチを待つばかりとなりました。しかしここからが長かった......。
2019年早々には前払式支払手段の審査が始まっていましたし、順調に通るだろうと予想していました。しかし、法的な壁、体制面での想定外のフィードバックや、世を騒がせた前払式支払手段登録業者によるセキュリティ事故などが重なり、審査がより一層厳しくなっていきました。
しかしこれを良い機会だと捉え、セキュリティの見直しや不正対策など、フィンテックベンチャーとして高い水準のサービス内容、オペレーション体制を構築するように努めました。
そして、今年の3月にやっと前払式支払手段の登録が完了しました。かれこれ審査開始から1年以上の時が過ぎていました。正直、取得できた時は喜びよりも安堵感の方が強かったです。気持ちを切らさず粘り強く財務局の対応をしてくれた弊社メンバーに感謝です。
(ようやく取れた前払式支払手段の登録通知を持つ法務担当の影山と私。喜びを通り越してただただ安堵)
人生で最も困難な出前
また、開発面も想像以上の難易度で、弊社のエンジニアはVISAの難解かつ大量なドキュメント群と悪戦苦闘しながら少しずつ着実に開発を進めて行きました。
最初は「このドキュメントじゃよくわからん」という声をあげていた開発陣も着実に知見を貯めていき、最終的にはあの難解と思われた仕様も読み解いていきました。
そうして、初めて自分たちの作ったシステムで実行したpaildでの決済は寿司の出前でした。あんなにドキドキしながら出前の注文したのは初めてでした。そして注文するときはみんなPCの前に釘付けでした。
“自分たちの作ったシステムが世の中の決済網に繋がる”というのは普通に生活していたらなかなか想像できないものではありますが、粘り強く進めるとできるものなんだなぁ、と実感させられる瞬間でした。しかしこんなに大変な寿司の出前はこれからもないんだろう。
(ついに届いた寿司の出前)
こうして2020年4月にベータ版をリリース。
事前登録してくれていたユーザーさんは使ってくれるのか、そんな不安もありましたが、使い始めてくれたときは本当に嬉しかった。起業して約2年半で初めて世の中からお金を頂戴し、売上を立てることができました。ここまでやり抜いてくれたメンバーに感謝でした。
安定したサービスの提供が可能になったことから、8月24日に一般公開を迎えました。
金融のど真ん中で戦うという覚悟
正直paildのローンチまでの道のりについては、まさかこんなに大変だとは、、という感想しか持っていません。スタートアップ界隈でもベータ版が出るまでに1年半以上かかるというケースもなかなかないのではないでしょうか。決してみなさんにおすすめできるような道ではございません。
しかし、今振り返って思い出すのは、「為せば成る、為さねば成らぬ何事も、成らぬは人の為さぬなりけり」という上杉鷹山の言葉です。なかなかうまい言葉だと思っています。やはり信じてやれば一見難しいことでもできるんだ、ということです。非常に当たり前な言葉なんですが、本当にそうなんだなと感じています。
これから弊社のビジョン「新しい金融を切り拓く」ということに弊社のメンバーみんなで取り組んでいきます。paildのリリースはまだその第一歩です。これから、これまで以上の困難に直面することもあるかもしれません。しかし、自分たちが信じた未来に向けて少しでも良い明日が創れるように、覚悟を持って前進していきたいと思います。
(現在のメンバーとの集合写真)
皆様、ぜひpaildのご利用お待ちしております。
プレスリリース
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000008.000030365.html
サービスページ
https://www.paild.io
採用もやっておりますので興味がある方は是非ご応募ください。
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