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ファックスパラダイス
皆さん、FAX、使ってますか。
2、30年前なら家の電話にFAX機能付いたやつを使っているおうちもそれなりに存在したような気がするが
老若男女大多数がインターネット端末を常に携帯し、いつでもどこでもだれとでも任意に繋がれるこの時代、FAXを日常生活で使うことってほとんどなくなったんじゃないだろうか。
というか今の若い子、FAX見たことあるのかな。
だがしかし、今でもこのFAXを第一線の通信機器として使っている業界があるのです。
そう、われらが医療業界です。
(ほかにもあるのかもしんないけど)
予約依頼にFAX
予約日時の通知にFAX
緊急入院の連絡にFAX
薬局へ処方伝えるのにFAX
地域福祉機関との情報共有にFAX
FAXFAXFAX。
わたしのいる部署には稼働しているFAXが3台(それぞれ用途が違うためもちろん番号も違う)、それらが機械トラブルで使えない際の代替要員としてFAX機能付き複合機が2台ある。
病院内に、ではなく、わたしのいる小さな事務室に、だ。
なんせ24時間フル稼働で患者情報をやり取りしているので、万が一にも止まると患者の命にかかわることにもなりかねないのだから、万全の体制である。
医療関係機関が情報のやり取りの大半をFAXに頼っている原因は、
「患者情報」という個人情報の中でも特に取り扱いに留意せねばならないプライバシーの塊を即時にやり取りする上でのセキュリティー的な問題
メールなどのようにいちいち確認しに行かなくても受信したものを勝手にガンガン印刷して吐き出してピーピー鳴ってくれる
情報をやり取りする機関のほぼ全てがFAX通信可能な端末を所持している
…などいろいろあるのだろうが、
このご時世いつまでこんなことを続けるのか
日々100件を優に超えるやり取りをこなし、送信データがたまりすぎて30分以上受信ができなくなっているFAXに何度も何度も待っている情報が届いていないか確認しに来る職員を見つつ、遠い目になってしまう。
医療DXが声高に叫ばれて久しいし、おそらくこのFAXに代わるような安全かつ迅速に患者情報をやり取りできるシステムはたくさんの頭のいい人たちが考え、すでに実用化され運用している機関もあるのだろうとは思う。
だが、問題はこのやり取りは双方向である、というところだ。
受け手も送り手もどちらもそのシステムを導入して初めて活用できるのだ。 どちらかだけでは運用できない。
今や当たり前のように使われている印象のある電子カルテだが、
この電子カルテの普及率は400床以上のいわゆる大病院では9割以上となっている一方で
200床以下の規模の小さい病院や地域の診療所ではなんと普及率5割を切っている。半分に届いていないのだ。
患者のカルテすらいまだ紙で運用している医療機関が全国で半分もあるのに
登録医の先生に「メールマガジン送るので、よければメールアドレスのご登録を」と言ったら1/3は「メール無し」の返事、1/3はキャリアメールやGmail・yahooメールなどの明らかに私用のアドレスで登録がくるのに
セキュリティレベルの高い(つまり導入および運用がそれなりに厄介)新しいシステムを入れるなんてそんなことができるのだろうか。
政府もこの医療業界のデジタル化への遅れは認識していて様々な施策を打ち出しているのだけど
体感では数年で解決できるレベルじゃないと思うんだよなあ…
(医師の年齢層の変動によってある程度加速するとは思うけど)
政府は2030年に電子カルテ普及率100%到達を目指してるそうです。
がんばっていただきたい。
FAXの楽園から飛び立てるのはきっとまだその先なんだろう。