お返事は心をこめて
お手紙をもらったら、お返事を書く。
ごく普通のことである。
ましてや、「この患者さんの診察と治療をお願いします」なんてお手紙に対してはなるべく早くに「ちゃんと患者さんが当院に来ましたよ」「わたしはこういう病気であると診断しました」「治療方針はこんな感じです」というようなお返事を書かねばならない。だってお手紙くれた人はきっと自分の手が離れた後の展開がどうなったのかという知らせを、ソワソワしながら待っているだろうから。
これを「返書」といいます。
地域医療機関から紹介状をもらってやってきた患者さんを診たら、なるべく早くに返書を書く。
そうやって地域の先生方と病院医師とで信頼関係を築き、一人の患者の情報をお互いに共有することで、患者さんが地域でかかりつけ医にかかっているときも、少し具合が悪くなって大きい病院へ行った時も、切れ目のない一貫した医療を提供することができる。
地域医療の根幹の考え方である。
とはいえ、
そんな簡単にいかないのもまた事実。
かつて、当院の返書率は80%に届いていなかった。
7、8割と聞けば高そうに感じるが、「お返事を書く」という人としてごくごく当たり前のことである。
100%が基準値なのだ。
10人患者が来たら、2、3人には返事を書いていない。失礼以外の何物でもない。
というわけで、電子カルテシステム更新に合わせて「返書管理システム」なるものを導入したのが数年前の話。
システムでデータを出し、データをもとに毎月毎月「まだお返事かけてない患者さんリスト」を事務で作成し、各科医師のケツをたたいてたたいて…
現在、当院の返書率は99.8%を維持している。
返書率は改善した(書かないドクターは何をどう言っても書かないので100%にはどうしてもならなかった)
が
何のために返書率改善の取り組みをしたかといえば
「返事を書く」という当然のことができてない医師が一定数いるからで
何のために返事を書くのかといえば
患者紹介に対するお礼を伝え、当院での診断・治療の情報を共有するため
なのだが
患者さんの受診日からどれくらいの日数で返書を行っているかのデータを見ると、
90%以上が「受診日当日」なのである。
これが何を意味するかというと、要するに
「患者さん来たよ、紹介ありがと」
~ fin ~
ということ。
受診日当日は検査結果なども出ていないことが多く、「受診した」という事実以外に言えることなどほとんどないのだ。
いやまあ、
>何のために返事を書くのかといえば
>患者紹介に対するお礼を伝え、当院での診断・治療の情報を共有するため
これの前半はできてるよ、できてるけど、
地域医療連携の肝は後半の「患者情報を共有する」なのに…
別に、1回目の返事で後半までカバーしろという話ではない。
検査結果が出たら、入院したら、手術したら、退院が決まったら、
何かイベントが起きればそのたびに何回でも書いていい。
けれど、システムで管理できるのは「紹介を受けて初めて来た患者さんに対する最初の文書を書いたかどうか」という観点でしかデータが取れない。
前述のイベントは患者さんによって起きるタイミングが異なるし、医師次第なところもあるので「システムによるフラグ管理」はできないのだ。
なのでシステムによる「2回目以降の返書について」の調査はできず、地道に毎月数百人単位の患者カルテを開けて目視確認をしている(一人で)…のだけども…
いやあ書いてないのけっこうあるね??(もちろん書いてるのもたくさんあるけれども)
なんで??
そりゃ地域の先生から
「そっちに紹介した患者が久しぶりにうちに来たけどそっちでどんな治療してたかさっぱりわからんしすぐ報告書よこしてくれ」
とか
「受診した連絡は来たけどそのあとさっぱり連絡ないぞどうなってるんだ患者はどうしてるんだ」
とかお叱りのお電話がくるわけですよ…
まあこの電話受けるのわれら地域連携部門なわけですけれども…
ドクターはとっても忙しい。
返書を記載する時間を確保するのも一苦労。
それはよくわかってる。
けどね、「逆紹介がはかどらない」とか言うけどちゃんと連絡よこさない人の紹介なんか受けたくないよ地域の先生だって。
その内紹介もしてくれなくなっちゃうぞ。
「あの病院に紹介しても返事よこさないし何してるかわからん」て言われるんだぞ。
地域の先生方は友達じゃなくて取引先なのだ。
ちゃんとコミュニケーションを取らなければとたんにそっぽを向かれてしまう。
紹介された患者を「診てやってる」んじゃなくて、「地域からお預かりしてる」のだ。
そういう根本を忘れないでほしいので会議で再三経過報告書を送ることの重要性について注意喚起してるんですが…
数字で見えなきゃぴんと来ないのか、なんだかさっぱり伝わっている気がしないのはなぜなのか
だれか医師の琴線をつつくいいやり方、教えてくれませんか。