
個人でできるバックアップ
この記事は、教職員、社員等のエンドユーザーやシステム管理者を対象としています。
職場のルールを決める際の考え方などが記載されていますので、担当者だけが理解するものではなく、全ユーザーが理解を深めていただくためにお読みいただければ幸いです。
バックアップとは「万が一に備えること」を意味する言葉で、コンピュータ以外の分野でも使われます。
バックアップには用途や視点が異なる方法が複数ありますが、ここでは業務において「個人が気軽にできる対策」という観点で扱い、あまり深くは追及しないものとして説明していきます。
それでは個人でできるバックアップの方法をみていきましょう。
同じデータを複製して保管
通常使用する文書ファイルとは別に、バックアップ用フォルダを作成し手動ですべてのデータをコピーする方法です。デスクトップや他のわかりやすい場所に、バックアップ用の専用フォルダを用意してそこに随時コピーをしていくイメージです。
まったく同じ文書ファイルが2つ存在することになり、結果として容量も2倍必要となります。片方のデータが使用できなくなっても、もう片方の正常なデータを使用するという考えです。
現在作成している文書が不慮の事故で破損してしまった場合に簡単に戻せるので、どちらかといえばご自分の操作ミスやパソコンのトラブルで文書データを失った際に戻すケースで活用される方法です。
この方法についての詳細記事を作成しました。
個人向けバックアップの仕組みをつくる
よろしければ ご覧ください。
ただしこの方法の弱いところは、同一HDD上にいくらバックアップをとっても、そのHDDが障害を起こせば丸ごとデータはなくなることです。
職場となると自宅で使用するときよりも広くリスクについて考えなくてはなりませんが、たとえばパソコンが水没したり、落下などでHDDが破損した場合をイメージされると深刻さが伝わるものと思います。
また高度な犯罪ではパソコンに内蔵しているHDDを引き抜いて持ち去るので、同一HDDにデータを保存しておいても、無力であるということがご理解いただけるものと思います。
バックアップは同一HDDにとらない
その改善方法としてはリスクが同じレベルの場所に保管しないということです。同じHDDに重要なデータが2つあれば、HDDが壊れた際に2つのデータも失う、という理屈です。
その解決策としての方法を以下に記します。
外部記憶装置にバックアップをとる
機器としてポータブルHDDやUSBメモリ、DVD-Rなどが該当します。
パソコン本体にはオリジナルデータを置いて通常使用し、バックアップを外部記憶装置にすれば、2つの機器に別れて保存されているので先ほどの問題点が解消されます。パソコンが破壊されても保存場所が物理的に分離されているので、もう一つの機器は影響を受けないという考えです。
次にこの機器の取り扱いが問題になります。
保存機器が分かれればリスクも増える
パソコン本体はパスワードなどでアクセスが制限され誰でも触れることができない状態になっていると思いますが、外部記憶装置は特に対策がなされていないことが多く、別のパソコンに接続すれば容易にデータを扱うことができます。
パソコンの見えない部分に保存されることよりも、外部機器は露出しているために多くの人の目に触れることになり、取り扱い上のリスクも高まります。
データは安全に分散されて保管されますが、先ほどとは異なる性質のリスクが増加します。
クラウド上のサービスに保管するリスク
これもよく精査して使用しないとリスクが高まります。
問題点は2つあると考えます。
(1)データがインターネット上に保管されているリスク
誰でも利用できるインターネットの場に重要なデータをアップロードするというリスクです。ほんの数文字のアルファベットで構成されたユーザーIDとパスワードでロックしてあるだけなので、本来は業務用途には向いていません。
無料で使用できるサービスも多いので気軽に始められますが、同時にリスクもあるので職場では禁止していることも多いサービスです。
(2)保存データのスキャンが行われているリスク
ほとんどすべてのインターネットを利用したクラウドサービスを提供する運営会社は、個人を特定しないという条件の下、利用者の動向やデータをサービス向上のためとしてスキャンを行っています。写真データも同様です。
業務で使用する自分たちのデータを他社にわざわざ提供しているようなイメージです。サービスの利用について職場内で同意または解決しておかなくてはなりません。
※これについては別途記事を書きたいと思います。
例外的に外部記憶装置を使用可能にする運用も考える
もしも職場の都合でUSBメモリ等を使用する必要があれば、運用をルールでコントロールすることも必要だと思います。
たとえば‥
USBメモリに保存は認めるが必ず職場内のロッカーで保管、施錠を必要とし、持ち帰りは不可とする
クラウドストレージの使用を認めるが、流出時しても問題がないようなデータ(例えばチラシデータ等)に限る
※保存データが不用意に閲覧されても問題がないという意味で、流出・漏洩の事態については大問題であるので誤解なきよう‥。
USBメモリ自体を管理するシステムもありますが、利用する本数や用途に見合った費用であるか見極める必要があるかと思います。
上記では個人の端末での操作や接続できる機器でのバックアップについて説明してきました。
データの操作上の間違いなどには対応できますが、機器のトラブルでは巻き込まれてしまう場合があるという話でした。
それでは、それ以上の保証を得るにはどうするのかというと、個人の範囲を離れ、一般ユーザーよりも上位の層でお世話をするシステム管理者がバックアップの仕組みを用意する必要があります。
たとえばファイルサーバを用意して、そこにユーザーにデータを保管し、そのバックアップを強化することです。ファイルサーバは昔からある方法なので すでに多くの職場では導入しているものと思います。
ファイルサーバのバックアップの特徴
バックアップはファイルサーバに対して行うためユーザー個人は何も行うことがないため、一度運用が始まっていれば効果は高いものといえます。もちろん個人でも万が一に備えた対策は必要です。
システム管理者はデータを集約するために、「最新のデータはファイルサーバに置く」ように強制力を持った運用ルールを定める必要があります。
※ファイルサーバのバックアップは、システム管理者が責任を持ち、日々の点検と管理を適切に行う必要があります。
システム管理者向けの仕組みとなり、また直接的なバックアップの仕組みとは異なりますが、以下のような方法も有効です。
ActiveDirectryとプロファイルを使用して、ユーザーのドキュメントフォルダをローカルに置かずサーバ側に保存する設定方法や、シンクライアントを使用した方法などがあります。どちらもデータはユーザーが操作するパソコンには存在せずに、離れた別の場所にあるサーバに保存される仕組みを持っています。
そのため容易にバックアップを取ることができます。一方ユーザーはそれを意識する必要はありません。
管理する作業が増えてしまうので必ずしも導入する必要はないものと思いますが、費用面などを考慮して利便性を感じられるようであれば導入を検討してもよい分野であると思います。
まとめ
一般ユーザーは自分の部署など管轄しているデータが安全に保管されているかに関心を持ってもらい、システム管理者は業務の上位層でそれらの仕組みを考えなくてはなりません。また運用面についてイメージして規程などを決めていく必要があります。
いずれにしてもどの立場のユーザーであっても、業務を中断させない意識と環境づくりが必要です。