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共働き世帯の家づくり「家事楽な家は家族円満」

共働き世帯が多数派になった昨今、日々の家事を楽にすることは家づくりの大きなテーマでもあります。家事の負担を最小限に減らすことができれば、家族の時間も笑顔も増えるのでは。今の共働き世帯のニーズと解決策のヒントを、YouTubeで自ら間取りや動線について発信をしているホームランディック一級建築士事務所の伊岐見恭子さんに聞きました。

高断熱住宅専門誌「だん」14より

洗濯と収納がトレンド
私が特に大事だと考えているのが、洗濯の動線です。洗濯機を置く場所と干す場所、しまう場所をいかに近づけるかが重要です。最近では、費用や耐久性の観点から、バルコニーを設けない家が増えていますが、洗濯物を干す場所は必要ですよね。共働きで、昼間、外に干すのは雨が心配というご家庭も増えています。

そこで、今人気が高まっているのがランドリールームです。今は乾燥機も普及していますし、洗剤も臭わないよう進化しているので、外に干せなくても全く問題はありません。

もうひとつ、人気なのがファミリークローゼット(家族全員分の収納)ですね。洗濯した衣類を各部屋に持っていくのは大変。ランドリールームからファミリークローゼットにしまえる方が時短になるため、ランドリールームとファミリークローゼットが一体の家も増えています。

家事動線はとにかく「近く」
動線の一番のポイントは「近い」ことです。毎日、キッチンからお風呂場の洗濯機まで走っていくのは大変ですよね。YouTubeでは「家事が〇歩で完結する」とも表現していますが、具体的には10歩以内で家事が完結すると楽だと感じます。

上下の移動もないに越したことはありません。1階なら1階、2階なら2階で家事が完結する〝ワンフロア完結型〟の動線が理想です。例えば洗濯物を2階で干すのならば、浴室を2階に設置することも検討していただきます。

さらに、ファミリークローゼットも2階につくって、1階はLDKだけにする――そんな間取りを提案することもあります。

コロナ禍と趣味に対応する土間収納
土間収納も増えています。新型コロナが流行し、菌やウイルスをリビングに持ち込みたくない方が増えたのでしょう。玄関からすぐ土間収納でコートを脱いで、手を洗ったりお風呂に入ってからリビングに行ける動線の人気が高まりました。

また、キャンプなど、アウトドアが趣味の人が増えた影響もあるのでは。昔だったら外に物置を置いたのでしょうが、敷地には限りがありますよね。また、ロードバイクなど高価なものは、家の中にちゃんとしまいたいと思う人も多いはずです。

家事に関連して言えば、家電も設計上大事な要素です。最近ではロボット掃除機の"基地"を計画する人も多いですし、家電タワーのニーズも多いです。

特にキッチンは家電の多いところ。オーブン、炊飯器、パン焼き機など、人によっていろいろな家電を持っています。具体的に何を置くかまではお聞きしませんが、家電タワーの有無は間取りを変えてしまうので、必ず事前に希望を聞くようにしていますね。

理想は1階集中の間取り
ハウスメーカーの住宅などは総二階が多い傾向にありますが、私は1階で家事を完結させて、2階を少しコンパクトに設計することが多いです。お客様のお話をよく聞いてみると、1階は要望がたくさん出てきますが、2階は寝室さえあればいい、というパターンが多いので、2階は小さくてもいいのです。

平屋的な間取り、とでも言えばいいでしょうか。平屋にすると建築費が割高になりますから、子ども部屋と寝室だけを2階にします。家事も1階で完結しますからとても楽です。畳スペースをつくっておくと、歳を重ねたときにそこを寝室にすれば、1階だけで生活することも可能になるでしょう。

敷地が狭く、1階で家事が完結できない場合、第一に考えるのは洗濯の動線です。浴室に洗濯機を置く、という固定概念を捨てて、お風呂は1階、ランドリールームとファミリークローゼットを2階にする。洗濯した衣類ではなく、これから洗濯する衣類を2階に持っていく方が楽なはずです。

子ども部屋は遠い未来も考えて
子ども部屋の大きさは悩みどころだと思います。昔は、最低でも6畳の部屋を確保すべき、とも言われましたが、今は3.8畳でも構わないという人が多いようです。

つづきは「だん」14でお読みいただけます。