断捨離とは言うけれど――好きなものに囲まれて暮らすと生活はより楽しくなる|住宅収納スペシャリスト川島マリ
住宅収納スペシャリストの川島マリです。
モノを十分に生かしきらずに無駄にすることを「もったいない」と小さい頃から教わっていたので、使えるモノを処分することに抵抗がありました。
ところが100円ショップやファストファッションなど、気軽にモノを買っていると家のなかはモノで溢れかえり、片付けが大変になっていきます。
写真/PhotoAC
以前の私は、入る量に対して同じ量を出すことができなく、収納グッズを駆使して何とか片付けていました。
私と同じように増え続けるモノに悩んでいる方には「モノへの執着を断つ」という断捨離の考え方は、モノを手放す背中を押してくれました。実際、断捨離ブームの後は、少ないモノで充実した日々を過ごしている写真をインスタなどのSNSで見る機会が増えました。でも、モノの数を絞るライフスタイルが全ての人に快適なわけではありません。
モノを減らさなければと思い込み過ぎていませんか
整理収納サービスでお客様が渋々モノを減らそうとしている時は、場合によっては残すようにおすすめします。ご自分の理想の暮らしに合ったモノの適正量を考えることが大切だからです。
お気に入りのモノに囲まれた暮らしが好きなら、"物持ちさん"でもいいのではないでしょうか。洋服を楽しむ価値観をお持ちの方なら、それを優先して洋服の量(適正量)に合わせたクローゼットをつくり、その量を守る生活をすればいいのです。
私は靴は18足、洋服は長さ130cmのポールにかかる枚数で何年も生活しています。家の収納量と私のライフスタイルから考えてちょうどいい量(適正量)なのですが、仕事柄なのか多いと言われる時もあります。
自分にとっての適正量のモノが、整理され余裕の収納量に収まっていればストレスは感じないので、全ての人がモノを減らせばいいというわけではありません。
「いる」と「いらない」モノの整理
家づくりを考えはじめたら、まずは今家にあるモノを、「いる」「いらない」で選別しましょう。
これは、どんなに忙しくても早めにやることをオススメします!
タンスや押入れ、クローゼットにしまってあるモノも全部出して、1年使っているモノ(いる)と1年使っていないモノ(いらない)で分けていきます。
いるかどうかで考えると必要な気がしてくるかもしれませんので、実際に使っているかどうかで分けましょう。
これをすることで新しい家の適切な収納量がわかるので、間取りの依頼に役立ちます。入れたいモノが決まらないのに、収納用品を買うと失敗するのと同じで、モノを決めてから収納と間取りを考えると後悔することがなくなります。
使っていなくてもすぐに手放せないモノもありますので、それは保留品とします。使っている、使っていない、保留品の3つに分類することで、家中の整理が早くなります。
手放し方は、捨てるだけではありません。今はスマホ一つで気軽にモノの売り買いができますし、リサイクルショップに持ち込んだり寄付することもできるので、捨てることに罪悪感がある方は「手放す」という感覚で不要なモノを整理してはいかがでしょうか。
保留品の判断は、今の暮らしに必要?で決める
もし手放すことが苦手で何でも保留したくなったら残す理由を考えます。
今は使っていないけれど残したい理由は、次の3つに含まれることがほとんどです。
・思い出のモノ(過去)
・高かったモノ(過去)
・いつか使うかもしれないモノ(未来)
悩む理由が過去と未来にあると思ったら「今のわたしにとって必要なモノなの?」と自分自身に聞いてみると、実は不要だったというモノは結構でてきます。
「買った時に高かった洋服だけど今は似合わない。でも、保留にすれば着るかも?」と考えて保留品として残したら、1年の間に着るようにしましょう。着ないのなら不要なのです。保留品は必要になったら出して使い、1年の猶予期間を経ても使わずにそのまま残っていたら手放します。整理をしてから家が完成するまでに1年くらいかかるのなら、ちょうどいいですね。
「思い出のモノ」については、厳選してから保留品→「思い出品」として分けて保存場所をつくり、収納してあげればいいと思います。でも、意外と時間が経つと気持ちは変わるものなので、「思い出品」も定期的に見直してみることが必要です。
例えば子どもの絵。私も子どもたちの絵は捨てられませんでした。ですがある時、写真に撮って残せば十分だと思い、手放しました。「気持ちが変わる」とはそういうことを言います。子どもの作品やモノは増えやすいので、日常生活に支障のでない量を決めて、スペースをつくり収納しましょう。
スペースに合わせて持つモノを選ぶ
お料理好きでキッチン空間を楽しみたいと思うと、どうしてもキッチンまわりにモノが増えてしまいます。モノの数を絞れば収納スペースに余裕がでますが、収納の本などに書かれている「お皿は○枚、お鍋は○個が適量」といった一般的な情報が全てではありません。人によって暮らし方は千差万別。収納スペースを考慮して重なるモノでそろえるなど、持ち物を工夫する方法もありますので、まずは自分にとってちょうどいい量を考えてみましょう。
とはいえ、狭小住宅でどうしてもキッチン収納がわずかの場合は、どんなお料理にも合うように白い食器を数枚にするなど、こだわりを残しながら、収納スペースに合わせたモノを選び、数も絞る必要があります。
家づくりに重要な「どんな暮らしをしたいのか」といったこだわりは、モノの持ち方や収納方法を決めるときにも役立ちます。
個人のモノの置き場所も家族で相談
趣味やコレクションは、家が完成して広いスペースがあると思うと生活を圧迫するほど増えてしまう可能性もありますので、はじめから趣味のモノを置く収納スペースを決めておくことが理想です。
サーフィンが趣味なら、ボードのスペースだけじゃなくウエットスーツやワックスも置く場所がいるな…など、整理して全体の収納量を決めましょう。
フィギュアを集めているなら、棚に飾るのか、窓際に飾るのか、それとも日に当てないように保管したいのかによって収納方法と場所は変わります。
新しい家に持っていくモノと量を設計者に伝えることで、使いやすい収納のある間取りの提案をしてもらうことができます。モノを整理することは、収納がどれ位必要なのか、間取りをどうするのか、その家でどう過ごすのかといった大切なことに繋がります。
あるものをどう活用するのか(プロの視点)
私は使わないモノは処分しますが、いただき物と収納用品として活用できそうなモノについては、一旦考えます。
お客様の家でも、他で使える用途がないか考えたり、その場で思いつかなければ「何かに使えるかも」と曖昧のままにせず、売る、あげる、捨てる、保留と行き先はその場で必ず決めます。
お土産にもらって、気に入ってはいるけれど行き場がなかった人形も、アクセサリー掛けとして使える!となれば置き場所が決まります。
お風呂場のボトル用ラックも場所を変えればワインラックになる、縦置きの棚を横置きにしたら押入れ収納に利用できる!など、工夫次第で生かすことができます。
家の中にあるモノを「他のところで使えないかな」とか、「この場所にこんなモノがあったら便利だけど、代用できるモノはないかな」と固定概念を捨てて考えてみると面白い発見があります。
家づくりの際は、各部屋に置く家具や収納用品を決めるときに、サイズ的に収まりが悪ければ他の用途や目的で使えないか検討してみましょう。
モノを増やさないためにできること
写真/PhotoAC
冒頭に書いたように、気をつけて暮らさないとモノは増えていく一方です。
定位置を決めたら、そこからはみ出さないように定期的に見直しも大切。
よく言われますが、ひとつ買ったらひとつ手放す。これがとっても大切なのです。
とは言え、モノを処分することは、手間もお金もかかりますし、面倒なことだらけなので、買う時に慎重になることをおすすめします。
参考までに、衝動買いを抑えられる質問5つをご紹介します。
①とっても気に入っている?
②同じ様なモノは家のなかにない?
③必ず使う?
④置き場所はある?
⑤使わなくなったらどうする?
これを基準に買い物をすれば、買ったままそのうち使おうと忘れてしまうモノはなくなりますし、使わなくなった時にも処分に悩みません。
もう一つの買い物方法は、一生使えるモノを選ぶこと。年齢が若い時に買うほど使える期間が長くなるので特におすすめです(笑)。
一生モノと思って厳選して買う、使わなければ気軽に手放すと決めていればモノは増えません。手放せるものへの判断は人によってそれぞれですが、処分が苦手な人は買い物をする時、慎重になりましょう。
まとめ
●理想とするライフスタイルから、モノを減らすか残すか考える
●家づくりを考えはじめたら、家にあるモノを選別する
●保留品の判断は、今の暮らしに必要?で決める
●趣味やコレクションは、収納したい全体量を知る
●他の用途はないか固定概念を捨てて考えてみる
●モノを買う時は慎重に
モノを持ちすぎていたことに気づけたり、モノを頑張って減らしたあともスッキリが続く「収納マップ®」のメリットについて詳しく解説し、実際に持ち物を書き込めるリストもついた『はれやか「収納マップ®」』ぜひご活用ください。