これから家を建てる人へ『縁側ちゃん』に縁側で聞いた家づくりのリアル~インタビューまとめ
高断熱住宅を建てた経験者に、家づくりについてインタビューをした動画企画「『縁側ちゃん』に縁側で聞いた家づくりのリアル」3回分(約50分弱)の動画を記事にまとめました。※長文です。動画は記事下にリンクあり
古民家の縁側に魅了され『縁側なび』というサイトの運営までされている『縁側ちゃん』が、なぜ古民家リノベではなく高断熱住宅の新築の家を建てることになったのか。その経緯、家づくりにおいて大切にしたこと、どこに頼むのか問題、取捨選択の連続の家づくりの大変さ、なにを重要視したのか、暮らしてみて今どんなことを感じているのかなど、洗いざらいお話しいただきました。
★これから家を建てる人には、こうしたらよかったというアドバイスが、家づくりをするプロのつくり手には、施主の本音が聞けるインタビューです。
み:三浦祐成(インタビュアー)
縁:縁側ちゃん(成瀬夏実さん)
※記事中とトップで使用している写真は縁側ちゃん撮影※
コンセプトは「縁側のある家」
み:まずはじめに縁側の魅力とは?縁側に魅了されたきっかけは?
縁:一言でいうと「四季を感じられる空間」かな。庭がなければ成立しないことなんですけど、庭ではなくても農家の家だったり他の家を見ても四季が感じられるように設計されていたりすると思うので。風の心地よさとかを窓から眺めるだけではなく感じられる。そういうところが一番の魅力です。
み:日本の家で一番気持ちのいい場所の一つが縁側だと、僕も思います。
縁:縁側嫌いな人多分いないんじゃないかな(笑)。
み:縁側と軒下ですよね。
縁:軒下がないとしっくりこない。ウッドデッキじゃないところですよね。
み:縁側に魅せられてどのくらい?
縁:7年になります。水戸の偕楽園の奥にある好文亭(こうぶんてい)を訪れた時、縁側に座ってぼーっと景色を眺めながら、「縁側っていいな」と思ったのがきっかけで、色々なところを見に行くようになりました。
み:子どもの頃の原体験があると縁側のよさを思い出すということがあると思いますが、子どもの頃の縁側の原体験は?
縁:それが、ないんです。マンションで育って、おばあちゃんの家にも縁側はなかったので原体験としてはないんですが、お寺の縁側は好きでしたね。原体験がないからこその「憧れ」になったのかもしれませんね。偕楽園きっかけで都内でどのくらい縁側のある家が残っているのか調べたら、結構あって。まずは文化財から見に行きはじめました。
み:(見学に)おすすめの家はありますか?
縁:代官山の駅前にある旧朝倉家住宅。都内でもなかなか見ることができない政治家っぽい家だな、と(笑)。
地方にも大きな家はたくさんありますが、都内の政治家や旧貴族の家は使われている木も違うし、東京には東京らしい古民家があるという意味でも、見ごたえがあると思います。
み:縁側って興味のない人には全くなんだけど、体感すると気持ちいいな、とかずーっといたくなる、そんなパワーがありますよね。
縁:同世代(縁側ちゃんは30歳)だとマンション住まいの友達も多いし縁側に座ったことがない子もいて。私の結婚式を古民家でやったんですが、グループごとの集合写真を高砂の代わりに縁側で撮りました。その時初めて縁側に座ったという友達が何人もいて、「縁側っていいね」って言ってくれた。
やっぱり座ってみないとわからないんだなと、その時わかりました。無理に勧めたところで見になんて行かないし近くにないし…なので、縁側があるような古民家やカフェに友達を連れて行くようになりました。そしたら周りの友達はみんな「いいね」って言ってくれるようになって。
み:縁側のインフルエンサーですね。
縁:先日友人を家に招いて「縁側でスイカを食べる会」をやったんですが、「いいね。次は七輪でサンマを焼く会をしよう!」となり。
み:たしかに。縁側と食べ物とお酒って、それだけでずいぶんおいしく感じるものですよね。
縁:夏は暑くても夜は涼しくなるので、ちゃぶ台を出して晩ごはんをここで食べたり。
み:家を建てるにあたって縁側をつくるというのは最初から決めていた?
縁:そうですね。コンセプトは「縁側のある家」。「縁側ハウス」と言っていたので縁側だけはどうしても外せなかったですね。
み:ワンテーマあると家ってつくりやすいですよね。全く何もないところから注文住宅で夢を形にするってすごく大変です。成瀬さんの場合はコンセプトが決まっていたので、それを実現するための場所と家と建てる人という感じで探していったと思いますが、まずは場所から?
縁:前から鎌倉に住んでいたので、駅からアクセスのいいところで探しました。その前は東京に住んでいましたが、東京では縁側のある家に住めないなと思って。古民家の多い鎌倉ならいい物件に巡り合えるんじゃないかと鎌倉に越して来たので、古民家には住みたかったです。あとは知り合いが何人もいて、すでに関係人口がつくられていたのも大きかったです。
み:いいですね。テーマがあって、それを実現できる場所だけじゃなく、関係を持っているコミュニティがある。
縁:移住する前から鎌倉の古民家を何軒も取材していて応援してくれる人たちがいたのも大きかったです。
古民家リノベにしなかったわけ
み:普通はそこから「古民家」「縁側」一直線!となると思うんですが、そこからこの家(を建てて住むこと)になぜ変わったんですか?
縁:もちろん古民家に住みたかったんです。でも、タイミングが合わず、越してきた当初は普通の一軒家の賃貸に住みながら、縁側のあるいい古民家を探していました。物件も出てくることは出てきましたが、リノベ前提だし、家族4人だと大きすぎちゃうという物件が結構あって。昔の家だから寒いじゃないですか!子育てもしているし…リノベーションだと寒いのをとるのか縁側をとるのか、となるとやっぱり家族が暮らしやすい家がいいし、寒さには勝てないな、と。
あとは170件くらい縁側のある家を見てきていて、ちょっと目が肥えちゃったというのも(笑)。目が肥えすぎて自分が理想とする古民家がなかったというのも大きいです。素敵な古民家は数億円とかのレベルで手が出ないというのに加えて、土地を売ってくれないということも鎌倉は多いので。だったら新築でもいいのかな、って(笑)。
み:理想の縁側がある理想の古民家というハードルがすごく高くてお金のことも含めて手が出ないということと、「寒い家」をフルリノベーションするとお金もすごくかかる。
縁:フルリノベーションをした家にも行ったことはあるんですが、やっぱり寒かった。一部屋だけ薪ストーブを入れていてそこだけ暖かければいいという考えで。薪ストーブかー、手間もコストもかかるしその一部屋だけ暖かくても効率悪いし…と考えると、「寒いのはヤダ」となりました。
み:理想と現実の折り合いをどうつけるか、という話ですよね。
縁:そうなんです。となると、「古民家じゃなくてもいい」って。縁側がある空間が好き(欲しい)なので、古民家へのこだわりがなくなったという感じで。縁側のある家=古民家というイメージを持つ人も多いですが、数年前に新築の平屋で縁側があるすてきな家を取材したことがあって。その影響もあったと思います。
み:そのプロセスってこれから家を建てる人にとってすごく参考になる話ですよね。実際に自分が住むとなった時に、寒さやコストなんかの要素を組み合わせながら、理想と現実にどう折り合いをつけていくかというプロセスってとても大事です。
縁:「何を実現したいのか」って考えた時に、折り合いをつけないと進まないじゃないですか。そうやって納得していくという感じでした。
み:その理想としている縁側空間が新築でも実現できて、性能の面でもコスト的にもバランスできるのでここに行きついたと。
縁:実際住んでみて、「やっぱり古民家がよかった」とも思わないし、もし次に古民家に住むかといったら、お金持ちじゃないと無理かも(笑)。
み:この縁側はL字ですが、この形にしたのは?
縁:どんな形でもよかったんですけど、L字型の方が家の採光がとれるっていうのがあって。昔の古民家でもL字になってる方が家の中が明るいんですよね。あとは人が来ても向かい合って話せる、隣同士じゃなくてもいいっていうのがよくって。
み:縁側っていうとまっすぐ伸びているところで隣り合って座って月を見たりというイメージですが、コミュニケーションをとるにはこの形がいいですね。
縁:人と話すときは対面の方がよかったりするので。出入口がこっち側にもあるというのも。(写真:和室の窓の外が縁側)
み:ここまでは家づくりを考えている人にアドバイスする前提で「テーマをもって家づくりをした方が進めやすい」「テーマと現実の折り合いをどうつけるか」というお話を伺いましたが、次は誰に頼むか、ですよね。依頼された工務店との出会いは?
縁:ウェルネストホームで建てたんですが、主人が創業者の早田宏徳さんと出会ったことをきっかけに、「今住んでいる家って体に良くない」とか「日本の今の家は質が悪い」とかそんな話を聞くにつれて、「もっといい家ってあるんだ」ということを知っていって。早田さんと出会って高性能住宅のすごさを知ったから、もうそこにお願いするしかなかったという感じでした(笑)。
み:「どこに頼むんだ問題」と「誰(夫/妻)が決めるんだ問題」はよくある話ですが、その辺のところは?
縁:私は元々そんなに乗り気ではなくて(笑)。高性能住宅って、デザイン面なんかでもできることが限られちゃうこともあると思っていたので、当時はいいと思っていなかった。だって住んでみないとわからない話でしょ?と。いくら快適って言っても、それでは曖昧過ぎるというか…。でもモデルハウスでお泊り体験をしてみたら確かに快適だったし、家の中の温度が一定っていうのも大きかった。冬の寒さは切実で、お風呂あがって寒かったらお風呂に入りたくなくなるし、そういう日々のストレスを考えたら、快適な家に住むっていうのもいいのかな、と思い始めました。ずっと長く住む家なら、そっち(ストレスが少ない)の方がいいのかなって。
み:徐々にだったんですね。
縁:一目ぼれ!とかでもなく、いろいろなデータを読んで魅かれたとかでもなく、よく考えたらそっちのほうがいいのかなー、となり始めたという感じ。どちらかといえば私も世の中の主婦がよく言う「デザイン重視の方がいいじゃん!」という感じだったので、最初は工務店さんも厳しい奥さんという接し方でしたね(笑)。
み:「高性能住宅」ってときめくワードじゃないですしね。長く住んでみてわかる、納得するものなんだけど、映える話じゃない。
縁:30年でガタが来ちゃう家と50年でも全然平気な家の比較とか聞いたら、もちろん50年の方がいいけど、50年先って考えられないじゃないですか、今。そんな先のことまで…と思っちゃってたんですけど、実際住んでみたら「もう普通の家には住めない」って思いましたね(笑)。
み:デザインのこだわりもあったということですが、情報収集は何で?
縁:雑誌とPinterestが多かったですね。雑誌を見てこんな感じがいいと切り抜いたり。でも紙を切り抜いちゃうと伝わる部分も少ないので、Pinterestで好きな雰囲気の写真をいろいろ集めてそれを設計士さんに見せていました。トイレ、キッチン、玄関…それぞれこんな感じがいい、と。
み:外観や縁側とか最初からイメージがあったわけではなくて、雑誌やPinterestで探しているうちに固まっていった?
縁:Pinterestで集めてみると、だいたい似たような家ばかりになってくるので、(設計士さんは)それを見て雰囲気を察してくれたんだと思います。
み:好きな雰囲気がわかってきたところで、この会社でそれが実現できないかも?とか高性能住宅と相反するものがあるのか?やめちゃおうかなという不安はなかった?
縁:やろうと思えば実現できるんだな、と思いました。お金の問題くらいで。見た目重視となるとそこにかけていくしかなかったかな。高くなってもいいから、という前提で。
間取りでいうと柱とか耐震壁とか、窓を多くできないとか、どうしてもここじゃなきゃダメですか?というのはいくつかあって。それを何度も打合せで話して、途中から「しょうがないかな」になるんだと思います。
み:ご主人の仕事の関係とはいえ、この会社で建てるということが決まっていたから、何を妥協するかも含めてストレスはなかったんじゃないかと思います。ゼロから工務店やハウスメーカーを探していたらいつまでたっても理想の会社が見つからなかったかもしれないですよね。
縁:普通、いろいろなショールームをまわって比較、とかですよね。でも何を基準にして選べばいいのかわからないから、そこが難しいですよね。もしくは家を建てた人に話を聞いて…となるのかなと思いますけど。
み:みなさんそこが一番しんどくて不安な部分だと思います。そこがは高性能を切り口に乗り越えて、最後に納得のいく生活になったと思いますね。ご主人は最初からここと決めていたし。
縁:はい、決め打ち(笑)。間取りを考えるところまでは夫とやってたけど、あとは内装とか私が考えて全部自由にさせてもらったという感じです。建てる会社は夫が決める、その代わりに内装は私が決めた。
み:そうしたかった?
縁:そうですね。それまでいろいろな家を見てきたし、縁側がある家を建てる手前、ダサい家にはできない!っていう(笑)。カッコいいと思われる家にしたいという思いがありました。
み:揉めなかった?
縁:全然。もちろん迷っているときに相談に乗ってもらったりはしましたけど、基本事後報告でした。
Vol.2----------------------------------------------------------------------------
家づくりのプロセス
み:高性能というと耐震性能や断熱性能などが挙げられますが、最初はあまりピンとこなかったと。それでも実際にこれは大事だな、とか納得できたことはありますか?
縁:間取り図を考えてるときに性能の話もあって。耐震の話が多かったように思います。全館空調にしていて、エアコン一台で機械室から空気を流すようにしているので…、説明を受けて納得したというよりも、いいものであるのは当然でしょ、と信頼していました。夫と工務店との関係性が出来上がっていたので、技術的な不信感を抱くとかそういうのはなかったです。
み:地震に強い家のメリットや、断熱性能を高めると光熱費が…とかその辺りの話でピンとくるところはありましたか?
縁:前に住んでいた家の(冬の)電気代が月3万円くらいかかっていて(電気のパネルヒーターを使っていた)、3万はさすがに…!とは思っていましたが、この家にすると電気代がめちゃくちゃ下がるという話は聞いてました。全館空調でエアコン一台なのに電気代が下がるっていいなと。これから電気代が上がっていくでしょうから、それが下がるのはいいと思いました。
み:電気代もそうですが、体への負担が少ない、ストレスがない、快適というような健康面へのメリットも説明されたと思うのですが、それによって優先順位が上がったということは?
縁:それはありますね。風邪をひきにくくなるとか、カビが生えないから体に悪くないとかを聞いたら、子育てをしているので、体へのメリットはいいなと。
み:そもそも注文住宅という概念はありましたか?どこまで注文できるのか、とか。
縁:私はこちらの要望をずーっと言っていたように思います(笑)。
み:細かい部分まで自分の思うようにしたいという思いがあったんですね。縁:基本的には提案の中にいろいろ含まれていましたが、洗面ボウルとか細かいものは自分で好きなものをという思いがあったので、なるべく自分で全部チェックしました。結局はコストで、どう折り合いをつけるか、ということになったかな。例えば、本当は木製サッシにしたかったんですが、費用がかかりすぎて他のなにかをあきらめるしかないとなったら、原点回帰をして「そもそも縁側のある家に住めればOKだよね」というところに戻って、なら樹脂サッシでもいい、となりました。一旦コンセプトに戻って、本当にそれが必要なのか?を考えました。
み:まずは自分のやりたいもの・ことをすべて伝えて、費用面などが出てきた段階で、削れるものを削るという。
縁:そうなんですよね。夢から覚めるような感じ(笑)。あんなに提案していただいたのに…というのもね…。
み:注文住宅ってなんでも注文できるように思ってあれもこれも、となりがちですが、大概予算と合わなくて、引き算していくと結局夢から覚めちゃうという話はよく聞きますね(苦笑)。
縁:そうなんです。でも設計士さんはできるだけ要望にこたえようとしてくれて、あとは耐震など、自社(工務店)が満たす基準と要望をどう両立するかというのをすごく頑張っていただきました。例えば私が「耐震性能は落としてもいいから」というと「いや、それは無理です」とか。家としての価値が低くなるからやめたほうがいいし、耐震等級3を標準仕様としているから、と。そうなると、じゃぁどうする?と。工務店と私たちの間に挟まれて設計士さんは大変な思いをされたと思います。
み:この性能を実現するにはできないことはこれだけあります、というようなルールや作法のようなものをあらかじめ伝えてもらえたらいいのかもしれないですね。
縁:そうなんですよね。私たちは何ができて何ができないのかわからない。そういうのが事前にわかるといいのかな、と思います。
み:あえて詳細は出さないようにしているということもよくあります。
縁:結局家ってブラックボックスのようで、これにいくら、これにいくら、という詳細よりも、「標準仕様でこれです。」から始まるから、どこの何を削ったらいいのかがわからない。そういうところがちょっと…と思いました。
み:そこは悩ましいところで、そこまで詳細をちゃんと見たい人とそうでない人もいるから、細かい数字は出さないという会社もあれば、利益がそこに乗っているという部分もあるでしょうからね。もう少し透明化してお互いのストレスが減るような形になるといいですよね。
縁:(家を建てた)友人も、標準仕様のコストの詳細がわからないというのがすごくストレスだと同じことを言っていました。
み:標準仕様は決まっていて、オプションは細かく値段設定がされているんですけどね。
縁:だからオプションをつけていくしかない、と。
ずぼら優先の設計
み:耐震との絡みはありながら、間取り図はご自身で考えましたか?
縁:設計士さんから3案提案していただいて、検討して決めたという感じでした。プランの提案は間取り図で。
み:間取り図を見てイメージは浮かびましたか?
縁:ボツにした2案はイメージが浮かばなかったんですよね。私はすごくずぼらなので、「ずぼら優先の設計」を要望していました。縁側のある家の裏テーマは行動が楽な、行ったり来たりしないで済むようなプランにしたかったので、想像をして、自分でその行動があり得るか否かという目線で考えました。
玄関から冷蔵庫までの距離が長かったりしたら、あ、これはあり得ないな、とか。生活を思い浮かべるというよりも自分の性格的にこの行動はないな、というような見方でした。
み:生活シーンというよりも自分の性格でプランを眺めるというのはいいですね。
縁:昔何かの本で「片付けができない理由は家の間取りがおかしいから」というのを読んだことがあって。それを読んだ時に、なるほど、私の性格にこの家は合ってない、と思ったことがあって。もし家を建てるならずぼら優先の設計にしようと。
み:「ずぼら優先の設計」っていいですね。
縁:洗面所に洗濯機、その隣にウォークインクローゼットがあるので洗濯物は全部そこにかけておいて、季節ごとに1軍、2軍に分けて使わないものは2階のクローゼットに入れておく、というつくりにしてもらいました。
み:ずぼらでない仕様で作ってしまうと洗濯物が積み重なったり…ね。
縁:前の家はこだわりのあるデザイナーズ賃貸だったんですが、私には一つひとつの動作が多すぎたんですよね。いちいちドアを開けて、とか洗濯機からクローゼットまでが離れていたり、そういうのは無理だなと。だからこだわりの家は(反面教師として)とても参考になりました。
み:名だたる建築家の家に撮影に入ると、まずは片付けから始めないといけないというのはあるあるです。だからずぼらな性格の人がそういう家に住むと大変という気持ちはよくわかります。
Vol.3----------------------------------------------------------------------------
これから家を建てる人へ
み:打合せはどのくらいのペースでしていましたか?
縁:一週間に1回Zoomでやってました。
み:多いですね!
縁:設計士さんが県外に住まれていたので、リアルで会う機会はあまりなく、間取りを決めるまではそんなペースでした。
み:顔を合わせない不安やストレスはありませんでしたか?
縁:全くなかったです。むしろ私たちの時間に合わせていただけたのでやりやすかったです。
み:決める作業は楽しかった?辛かった?
縁:仕様決めという内装を決めるところはしんどかったです。
決めることが多すぎて疲れ果てて…最後はどうでもいい、という気持ちになってしまっていました(苦笑)。
み:注文住宅で最初はいろいろ注文したい、こだわりたいというのがあって、でも最後は疲労してどうでもよくなるというかお任せになっちゃう部分ってありますよね。そのあたり、これから家を建てようという人にどんなアドバイスができそうですか?
縁:それなりに調べておいた方がいいと思います。今は情報過多ではありますが、知っているのと知らないのとでは全然違います。今はこだわりたいと思ったらインスタで探してみると個人作家さんがすてきなペンダントライトをつくっていたり、探し甲斐があります。うちは表札も個人作家さんのものを買いました。こだわりたい人は情報収集をしておいた方がいいです。
スケジュール的にも余裕をもったほうがいい。間取りが決まると一旦落ち着いちゃって。そろそろ決めましょうという段階になってからまたあれこれ決めていくというのは大変。間を空けずに決めていった方がいいと思いました。
み:情熱が持続するように間は空けないほうがいいと。ある程度スケジュールに余裕を持ちながら、自分の理想を調べてプロに相談するのがいいということですね。
縁:自分たちで好きなものを選べるという選択があるということを知らない人も多いと思います。標準だと「ここから選んでください」と提案されたものの中からしか選べないし、そういうものだと思ってしまう人も多いのでは。
み:あとは疲労との折り合いをどうつけるか。プロに対しての不信感が出てくる時期でもあるだろうし。連絡・報告がない、質問してもすぐ返ってこないというのは不満でよく聞くことですが、そういうことは?
縁:やり取りをチャットでしていたのでレスも早かったし不信感を抱くことはなかったです。わからないことに対してはいちいち聞いていました。建築の専門的な言葉とかわからないことも多かったですが、そういうことは言葉の意味から聞いて教えてもらいました。
心掛けたのはなるべく文字に残すこと。言った言わないだとトラブルのもとになると思ったので。私からは電話しないようにしました。すぐに確認しなければいけないことなど電話がかかってくることも多々ありましたが、そういう場合は自分でチャットに文面として残していくようにしました。
み:遡れば発言や提案資料も要望も全部残るというのが安心かもしれませんね。
縁:提案していただいた資料も会話もすべてチャットに残っているし、メールよりもチャットの方が会話が進んだ感じがしたのでおすすめです。
み:建築中の不安はありましたか?
縁:家を建てているときが一番不安でしたね。柱が立っているのを見て、あれ?こんなに狭いのかな?設計士の方と私たち素人は空間把握能力が違うので、間取り図での想像と実際見た時に「思ってたのと違う」と。狭くないか大工さんに何度も確認しましたし。上棟してから6か月間、そのもどかしい思いを抱えていました。壁が全部塗り終わって初めてあ、いいじゃん!って。
み:これから家を建てる人も同じような思いを抱くかもしれませんが、どうやったら解消できたと思いますか?現場を見ないようにするとか3Dとか?
縁:3Dでも見せていただいてはいたんです。間取り図つくる段階で自分たちで土地を何度も見て感覚をすり合わせていればよかったかな。実際土地は購入してあったけれどそれほど見てはいなくて。間取り図を作る段階で土地を見ながら考えていれば大体の幅の感覚もわかったのかな、と。
み:土地を最初に頭に叩き込んでおけば間取り図と比較して広さの感覚なんかもわかったかもしれませんね。家づくりとしていく中で、ほかに建築中のストレスやアドバイスできるようなことはありましたか?
縁:色味が難しかったですね。壁、床、キッチンの色が3色絶妙に違ったんですが、違う色で大丈夫?とか。設計士の方に「変じゃない?」と相談してました。
例えば壁の色を「こんな色にしたい」と伝えたら、「そうなると家の中の家具の色を変えたほうがいい」と。「家具を買い替える予定ならそれでもいいけど、もしそうでないなら今持っている家具と合わなくなりますよ」というアドバイスをいただいて、大きな決断になるし考え直しました。
壁の色はだいぶ左右されるから、一時の迷いで決めるものじゃないな、と思いました(笑)。
み:家が建ってから今に至るまでのお話をお伺いします。引き渡し時はの感動しましたか?
縁:やっと終わった~!!!でしたね、長かったので(笑)。間取り図を考え出してからちょうど1年くらいで家が建ったんですが、土地探しはその半年くらい前からしていたから「長かったな~。やっと住める!」という気持ちがとにかく大きくて。プロジェクトが大きいだけに、終わった感でした。
み:それは(家づくりから)解放された感?それとも達成感?
縁:解放された感(笑)。色々なものを選ばなければいけない決断からの解放です。
み:思い描いてたことと暮らしてみてのギャップはありますか?
縁:建築中ずっと不安に感じていた狭さですが、結局建ってみたら狭く感じなかった。それよりも自分の性格を考えて、家が散らかるんじゃないかという不安が入居後までありました。でも住み始めて、そんなに散らかってないんです。だからやっぱりこの間取り図は正解だったし日々のストレスから解放されたストレスフリーの生活が大きいです。自分が思っていた以上に毎日何かしらにストレスを感じていたんだ、ということに気付きました。高性能住宅は予想をはるかに超えてよかった。
み:ずぼらな性格の部分と高性能住宅の動線が思っていた以上に良かったんですね。こだわって選んだものの満足度は暮らしにどう影響していますか?
縁:自分で選んだ洗面ボウルとか、家に来たお客さんがみんな褒めてくれる。毎日見るものなので、これを選んでよかったなと思います。
み:毎日見てさわるものは自分の好きなものがいいということですよね。そこを失敗しなかったのは大きいんですね。
縁:キッチンが最後の最後まで決められなくて、悩みました。標準仕様の中で選ぶか自分でいいと思ったものにするか。予算の関係ももちろんあるけれど、「いいものにしたい」という思いが勝って予算オーバーしたけど好きな方にしました。やっぱり毎日いる場所なので、これにしてよかったな、とすごく思います。「毎日いるところ」は好きなものでこだわったほうがいい。
み:そこで妥協して後悔するよりも、多少予算はオーバーしても思い切ってやったほうが後悔もないしストレスもないかもしれませんね。
これからの住まいと暮らし方「新しい日本家屋2.0」
み:縁側をどう使っていますか?
縁:昼間は友達と話したり、夜はご飯を食べたり。家の中じゃない空間がここにある、もう一つの部屋があるという感じかな。多目的な空間として何でもできる。
み:家族でも人が来た時も、季節に応じた楽しみ方ができるのが縁側のいいところかもしれませんね。縁側って外から丸見えになると思いますし、これから隣に家が建つかもしれない。こうやって外に開いていて町に溶け込んでいくのか、プライバシーをどうコントロールするのかというのは?
縁:こちらから見せている(近所に対して開いている)状態なので、ご近所から挨拶してくれたり。そんな関係をもっと築いていきたいので、何かを隠すような、閉じるようなことはしないでいます。
み:縁側の作法?心得かもしれませんね。これからこの家をどう使ってどう暮らしていきたいという想定や夢はありますか?
縁:四季を愉しみたいです。秋は七輪でサンマを焼いたり、冬は日向ぼっこ、春には桜を。そういうことを発信していって、この家を新しいライフスタイルの提案にしたいですね。新しい「日本家屋2.0」とでもいうのか。古民家じゃなきゃいけない、じゃなくて快適な家でも古民家のライフスタイルはできるという発信をしていきたいですね。古民家のよさを取り入れながらも暑さ寒さがない、快適な住環境が手に入れられる。昔の古民家は素敵だけど世界的にみると劣悪な環境。今ならいい家(高断熱住宅)で新しい日本家屋をつくっていった方が健康にもいいし、エアコン1台で済めば地球環境にもいいわけで。そんな(高断熱の)日本家屋が新しい選択肢としてあってもいいんじゃないかと思っています。
※インタビュー後に念願の七輪でサンマを焼く会を開催されたそう!
------------------------------------------------------------------------------------
縁側ちゃんが高断熱住宅を建てるまでの経緯とプロセスの苦悩、住んでみて感じているこれからの日本家屋のあり方、いかがでしたでしょうか。家づくりを考えている方の参考になればと思います。
高断熱住宅についてもっと知りたい方はこの本を▼▼▼!
縁側ちゃんのnote「縁側愛好家はなぜ古民家ではなく家を建てることにしたのか」はこちらから▼▼▼。
★この記事の動画はこちら▼▼▼