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断熱材で家を包んで寒さ・暑さからガード | 外張り断熱のススメ
ひとくちに高断熱住宅といっても、つくり方はひとつではありません。日本では「充填断熱」「外張り断熱」「付加断熱」の、3つの工法が使われています。それぞれに特徴や良さがありますが、今回は「外張り断熱」を紹介します。高性能住宅づくりが得意な建築家の竹内昌義さんと、断熱材「サーマックス」を製造する東北イノアック・開発技術部長の清水敦夫さんに、外張り断熱について語り合っていただきました。※雑誌「だん10」から流用
外張り断熱は魔法瓶と同じ
切れ目なく家を包むから合理的
清水 住宅の断熱工法には、外張り断熱工法、充填断熱工法、付加断熱工法の3種類があります。
外張り断熱工法は、構造体の外側を断熱材ですっぽり覆ってしまう工法です。柱の外側に断熱材を施工し、その上に通気胴縁を設置して外装材を張ります。
充填断熱工法は、柱の間にグラスウールやセルロースファイバーなどの断熱材を施工する工法です。そして、充填断熱工法と外張り断熱工法を組み合わせたのが、付加断熱工法です。
竹内 充填断熱は、柱の間に断熱材を施工するので、どうしても柱の部分で断熱欠損が起こってしまいます。一方、外張り断熱は、建物全体に断熱材を切れ目なく施工できるので、断熱欠損は全くありません。
日本は、2050年までに二酸化炭素の排出量をゼロにする(脱炭素)目標を掲げています。住宅も省エネ、むしろゼロエネを目指さなくてはいけません。個人的には、今の省エネ基準より高断熱な、HEAT20・G2*の家が必要だと思っていまます。
私は、関東以西でも付加断熱でつくりますが、北海道や東北地方など寒い地域でG2の家をつくろうと思ったら、付加断熱はマスト。ボード状の断熱材を外張り断熱に使うのが最も合理的です。サーマックスRWも、付加断熱の家をつくるには有効な断熱材だと思います。
*ひーとにじゅう/「一般社団法人20年先を見据えた日本の高断熱住宅研究会」が出している断熱グレード(レベル)で、高断熱住宅のものさしとして参考にできる。グレード1(G1)とグレード2(G2)があり、G2が上位グレード
冬はもちろん夏の暑さにも強い
竹内 外張り断熱には、躯体を保護する効果もあります。木もそうですが、コンクリートだって熱で収縮するんです。一定の厚みは必要ですが、建物を長持ちさせるためにも、外張り断熱工法は効果的です。
清水 サーマックスRWは断熱性に加え、遮熱効果もあるんです。特に、外張り断熱工法では、遮熱効果が断熱性に加わることで、熱の移動をさらに抑制できます。両面にアルミ箔のような面材がついており、これが熱の移動量が多い赤外線を反射します。実測した結果、赤外線の反射率は76%でした。
竹内 よく「夏でも断熱の効果はあるんですか?」と聞かれます。冬、室内が暖かくなるのは理解していても、夏の効果はぴんと来ない方が多いようですね。ですが、断熱は冷房の効きも高めます。魔法瓶と同じです。温かい飲み物を入れてもずっと温かいように、冷たい飲み物を入れてもずっと冷たいままですよね。高断熱の家とはそういうことです。断熱というのは快適な暮らしをするのに欠かせないということ。きちんと断熱していれば、夏でも朝晩、涼しいときに窓を開けておけば、午前中ぐらいはエアコンなしでも過ごせるはずです。
断熱性の低い既存住宅も、断熱改修をすることで快適、かつ脱炭素にも貢献する家に生まれ変わります。しかし、新築に比べ、断熱改修はとても難しい。外張り断熱工法は、解体せずに断熱材を施工できるし、木造はもちろんRC造(鉄筋コンクリート造)でも使えますから、改修向きの工法でもあります。今後は外張り断熱工法による断熱改修も増えていくでしょう。
これからの時代は、一人ひとりのエネルギーの使い方が、とても大事です。できるだけ少ないエネルギーで快適に過ごすためにも、断熱はなくてはならないものですし、外張り断熱をきちんとした家なら意識することなくそれが可能になります。
★高断熱住宅に特化したマニアックな雑誌「だん」
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