安倍元首相の国葬についての閣議決定に抗議し撤回を求める声明(靖国・天皇制問題情報センター)
安倍元首相の国葬についての閣議決定に抗議し撤回を求める声明
岸田文雄内閣総理大臣は、2022年7月22日、安倍元首相の「国葬」実施を閣議決定しま したが、わたしたちは下記の理由でこれに抗議し、その撤回を求めることをここに声明します。
1. 根拠法がないこと 「国葬」なるものは、敗戦後根拠となる法律が存在しません。岸田首相ならびに内閣法制局は、内閣府設置法を根拠法と強弁していますが、そこで内閣府の所掌事務とされている「国の儀式」 に「国葬」が含まれると解することは出来ません。1967年の吉田茂元首相の「国葬」に関し て当時の大蔵大臣は「法的根拠はない」と明言していますし、そもそも、次項に述べる通り「国 葬」なるものは、憲法違反ですから、解釈も行政裁量の余地もありません。
2. 憲法違反であること 遡れば「国葬」は、大日本帝国憲法下において天皇の勅令である「国葬令」に基づき、天皇の勅旨により「國家ニ偉勳アル者」について実施されましたが、その目的は全体主義と軍国主義の 醸成であり戦意高揚でした。換言するならばそれは、個人の内心に踏み込み、個人を操作するも のであったということです。
国政府は「弔意の強制はしない」などと詭弁を弄していますが、その真実は、一つには公費で 賄うことにおいて個々人が間接的とは言え、自動的・強制的に参与させられることになるのであ り、今ひとつには、半旗等の要請が為された場合、実質的には強制力が働くことは明らかです。
そもそも人の死は、その近親者個々人の極めて内面に係る事柄であり、国家が関与することは 許されるべきではありません。
故に日本国憲法施行に際して「国葬令」は、戦争放棄と思想・信条・信教の自由を保障する憲 法に抵触するものとして失効しており、当時の国会は、新たに立法化しないことも選択している のです。
この度の「国葬」実施の閣議決定は、法治主義並びに立憲主義を逸脱したものと言わざるを得 ず、わたしたちはこれに抗議し、その撤回を求めることをここに声明するものです。
2022年8月26日
靖国・天皇制問題情報センター運営委員会