前髪と私と
ワカチャンは マエガミ イノチである
そう、若ちゃんは前髪がいのちで
体育の時も、部活の時もとにかく前髪を気にしている。
櫛は絶対持ち歩いているし、
毎朝ヘアアイロンは欠かさないらしい。
「あーん。前髪崩れた〜。」と1日に何回聞くことか。
誰も見てないから大丈夫だよ。
と
今日たまたま櫛を忘れた若ちゃんに、
たまたま櫛を持っていた僕はかしてあげた。
「これは誰が見てるとか関係ない。私と前髪との戦いなんだから!」
と手から僕の櫛を乱暴に取ると
丁寧に前髪をとかしはじめた。
戦いとか言ってたわりには若ちゃんの前髪を見つめる目はとても愛おしそうだ。
そんな若ちゃんに呆気にとられつつ
心のどこかで ほんの少し、少しだけ
カッコいい…と思うのだった。