作品振り返り『ヒロイックステージ』その2

作品詳細

2021年1月~2月製作 ネーム 40ページ



製作までの経緯

前回

ヒーローショーのネーム作りは難航を極めた。
主人公の悩みに共感できない?
ヒーローショーが読者に馴染みがない世界だから理解してもらうのが難しい?
言われた事、「どうやらダメらしい」という事はわかる。
しかしどういう意味なのかを理解することがまるでできない。

以前の記事にも書いたが、この時僕は僕自身の世間の認識と実際の世間の現実の差が存在する事に気づいていなかった。
(詳しくはこちらの記事)

とにかく、主人公の課題は誰でもわかるものにしなければならない。となると現状の世界観ではダメだ。
そして新しく一から構築したネームは、未だ『プロの思考』に及ばない未熟さを露呈する事になる。

あらすじ

高校3年生の『メイ』は空手部を引退しいよいよ進学か就活かを選ばなければならない。だが、メイはそんな事より10歳年下の妹の『あかり』が心配。
あかりの為に進学せずに就職しようと考えていた。
そして、ヒーロー番組が好きなあかりはクラスの同級生から馬鹿にされる事があった。
なんとか妹を元気づけたいメイはデパートで開催されたヒーローショーを目撃する。
すぐに控室に突撃したメイはヒーローショーを行っていた大学のサークルのメンバーに事情を話し、サークルに参加させてもらう事に。
本番はあかりの小学校のクリスマス会。果たしてメイはヒーローショーを通してあかりに勇気を与える事ができるのか!

解説と講評

そうじゃないんだってば!そうじゃないんだよ!違う違う違うそうじゃない!

キャラのアク(敢えて個性と呼ばない)を強くしてゴリ押ししようという魂胆が見える

この時僕が考えていた主人公の『共感点』は多分こう。
『家族の事、誰でも心配だよね』

いや、そう。確かにそう。そうなんだけど、これ実は課題を真に抱えてるのは主人公のメイではなく妹のあかりなのだ。

趣味を理解されずふさぎ込んだ妹を助ける姉…という構図。一見ヒロイズムを感じるが。
当時担当さんから言われた意見がこう。
『姉が手を差し伸べる事が妹にとって真の救いになるんですか?』

この作品、実はシスコンの姉がいじめっ子をねじ伏せるだけの内容

物語のセオリー(というか前提?)として「物語とは登場人物の成長を描いたもの」というものがある。

僕のこの作品の認識は
・主人公
やりたい事がない→やりたい事を見つける
妹が心配→妹が元気を取り戻して安心

・妹
好きな事を堂々と好きでいられない→好きな事を堂々と好きでいられるようになった

ぐらいのものだった。
しかし実際はこうだ。
・主人公
やりたい事がない(妹に依存している為)→やりたい事を見つける(そのきっかけは妹。多分今後も行動原理は妹中心)
妹が心配→妹が元気を取り戻して安心(いじめっ子を一時的にねじふせただけ)

・妹
好きな事を堂々と好きでいられない→好きな事を堂々と好きでいられるようになった(なってない。いじめっ子が何も言わなくなっただけ)

実はこんな感じで根本の問題は何も解決していない。
そもそも作中で妹は目の前のヒーローが姉という事に気づき、努力する姉に感銘を受けて勇気を手に入れる。
これはつまり「姉が頑張っている事」が妹にとってのきっかけであり、正直頑張ってる内容がヒーローショーである必然はどこにもない。

なまじちょっと良いシーンっぽくなってるのがご都合主義展開に気づくべき所を盲目にしていたのかもしれない

…とまぁこんな具合に
「自分はもう十分面白い漫画が描けている」
「とにかく早くネームを通したい」
「読者に寄り添えたアイディアのはず」
こういった驕りが歪な登場キャラクターと歪な展開を孕んだ作品を生み出してしまった。

正直嘘松みたいな内容の漫画なので恥ずかしくてもうあまり読みたくない

結局このアイディアベースのネームは3回ほど直したが、流石にそれくらい弄ると自分でも「確かに何課違うな…」となってくるもの。

登場キャラクターも相変わらず多い事もあり、よりテーマと情報を凝縮した作品で新たにネームを作り直すことになる。

果たしてその結果は…?

その3に続く

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?