選択的夫婦別姓の必要性
※以下本文はある程度わかりやすさを重視して記述することに心がけているため法律上の解釈や定義、文言とは異なる箇所が一部ございます。
意味を誤解させない程度に言い回しを簡略化している箇所もあるため、正確な文章を読まれたい方にはおすすめできません。
選択的夫婦別姓とは
「婚姻※1 をした際に夫婦の姓を別にすることを認める制度」のことです。それだけならご存知の方も多いかもしれません。
ただ、それを認める際のメリット・デメリットはなんなのか。
自分自身の思考の整理も含めて今回noteを書くことに決めました。
経緯としてサイボウズ株式会社、青野さんの東京地裁への提訴に対しての法制度上の純粋な疑問からです。青野さん自身、婚姻に際して妻の姓を選択したことで「青野」姓ではなくなったものの通称として「青野」と名乗っているようです。
民法の規定
まず現在の日本の法制度のもとでは日本人同士の男女が婚姻した場合においては夫婦同姓が原則として定められており、どちらかの姓を選択することが求められます(民法750条)。一方で、日本人と外国人の男女が婚姻した場合には例外的に夫婦別姓を選択することも可能です。

出典:https://ja.wikibooks.org/wiki/民法750条
今回の争い
これに対して戸籍法自体を青野さんは「法の下の平等に反する」との意見を表明し提訴に至ったわけです。2019年3月25日 東京地方裁判所での判断としては民法が夫婦別姓を認めていない以上、戸籍法の問題はなくあくまでも立法の(国会の)裁量によるとしている。
つまり現段階では民法の規定に従って制定された戸籍法自体は違法(憲法違反)とは言えない、という内容です。
とすれば民法750条 夫婦同姓の原則が問題になりそうである。
これについては2015年12月16日に最高裁判所にて違法(憲法違反)ではないとしている。
(参考:http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/546/085546_hanrei.pdf)
過去の裁判例
その理由として婚姻は両者の合意によって成立するのであって、法によって強制されるものではなく自由意志のもとに届け出るものであるからとする理由である。
だが、だとすれば別姓を選択するならば婚姻をしない、という結論しか選択できなくなってしまう。とすれば事実婚しかありえない。内縁であったり事実婚というのはそれはまた別の問題で法律的な問題を含んでいる。
内縁であったり事実婚である場合には、嫡出推定の問題や財産の相続というのも発生する。嫡出推定とは婚姻関係にない男女※2 の間に生まれたこどもを法的にどのように扱うかということである。
今回は選択的夫婦別姓制度のnoteのため割愛するが、反響があれば同じように取り扱ってみたい。
今回の結論
今回の東京地裁の判断はあくまで戸籍法の合憲性(憲法違反でないかどうか)を下級審(地方裁判所)が判断したものであって、法的な拘束力もなければ国会に法律を変更するよう求める力もないのである。
また別の問題として、もし今後選択的夫婦別姓が認められると考えた場合において戸籍上の(事務的な)手続きはどうするべきなのか、他人から見た時に誰と誰が夫婦であるか判断する基準はあるのか、生まれてきたこどもの姓はどうするべきなのかなど見直さなければならない制度上の問題はまだまだある。
また法制度の変更は予算や手間のかかる(万が一にもミスは許されない)作業であるため、他にも政治的に重要な意思決定が多数存在する中で選択的夫婦別姓が憲法違反だとしても、それを今すぐ解消しなければならないほど重大なトラブルが起こる可能性が高いのかどうかもしっかり考えなければいけない。
最後に
このままで問題がないというわけでは全くないが、だとしても国家的に緊急性の高い事案なのか、それによって不利益を被る可能性がある人はいないのか、など様々な人の意見を調整し司法(裁判所)も立法(国会)も判断しなければいけない。そうするとどうしても消極的にならざるを得ない。
外国では認められているからと言って日本でもその制度が文化的に馴染むのか、それほど権利意識が高いのか、国内的に関心の高い事案なのか、(誤解を恐れずに言えば)それによって政治家が票稼ぎ出来て次も当選できるのか、など多種多様な権利関係や利権やしがらみが存在する。
高度に発展した現代社会においてある側面からだけ見た一方的な理論は通らず、万が一通す方法があるとしたら世論を盛り上げることである。
極論を言えば、みんながやってほしいと言ったから法律制定したんだよという空気感を作ること。それがなければ中々制度や文化は変えられない。
個人的には例え少数派の人であっても制度上の不備があって困っている人がいるのなら、なるべくその数が少なくなるように国は制度変更すべきであると思うがこれは理想論であって現実とはかけ離れている。
だが、だからと言って誰も声を上げなければ世間は変わらない。私だったらこの制度についてどう思うのか国民一人一人がしっかり関心を持ち自分の意志を発信し団結し世論に訴えかけていくことでしか歴史は変えられない。
注釈
※1 ここで言う婚姻とは、法律上の婚姻届を提出することであって事実婚は含んでおりません。事実婚自信を否定するものではなく、あくまで現行法上の婚姻制度についてお話ししています。
※2 ここでいう男女とは、生物学的男女のことを指し、現在の日本の法制度では厳密に言えば男性と女性しか婚姻を認められていない。同性婚やLGBTQ等についての婚姻その他類似の関係を認める法制度は今の日本にはない。今後の法制度上の課題点として認めていく必要があるだろう。
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