地下クイズについて

私は地下クイズを見てクイズを始めました。ただいまクイズ歴半年です。

地下クイズとはBSスカパー!のBAZOOKA!!!という番組で時折開催される、地上波のクイズ番組では絶対ありえないアンダーグラウンドな知識を競い合うクイズ企画です。現在までに5回放送されています。

自分なりにこれまでの放送を振り返って思ったこと、分析したことなどをここでまとめてみようと思います。

一応読み物の体で書いていますが、半分は自分がクイズをする時に参考にするための覚え書きのようなものです。


まず先に現在の地下クイズ界の状況をおさらいしておきましょう。

「地下クイズ王決定戦」というタイトルで行われた過去5回の放送で、これまで2人の地下クイズ王が誕生しました。

1人は初代王者であり、その後3連覇を果たした渡辺徹さん。
もう1人は第4回、第5回を制したAV男優のしみけんさんです。

過去の放送は太っ腹にも全てYouTube上にあるBAZOOKA!!!のチャンネルにアップロードされてますので、「地下クイズ」と検索をかければすぐに見ることができます。興味のある方は是非ご覧ください。(現在は削除済み)


とりあえずここでは初めて王位の座が渡辺さんからしみけんさんへと移った第4回に焦点を絞って話をします。

結論から言うと第4回はしみけんさんの圧勝でした。が、それはあくまで獲得ポイントの上でのことであって、純粋な知識量の差においてはしみけんさんと他の出場者との間にそこまでの大きな開きはなかったと私は考えています。

それでいながら何故あそこまでしみけんさんは強かったのか。そこを考察していきましょう。


・徹底的な地下クイズ対策

第2回、第3回での敗戦の後、しみけんさんの王位奪取に向けられた決意が並々ならぬものであったことは想像に難くありません。

例えば彼は第4回地下クイズ王決定戦の収録に備え、その3日前からAVの仕事を休んで備えていたと話しています。勝ったところで名誉以外ほとんど得るもののない勝負の為に仕事を3日休むこと自体相当なことですが、他ならぬしみけんさんが仕事を3日休むということがどれほどのことなのか、こちらのインタビュー記事を読むとより一層わかると思います。

AV男優ってどんな仕事? カリスマ男優しみけんに一日密着してみた

他にも後日の放送で、地下クイズの為に机を買って毎日勉強していたなんて話も明かされています。とにかく勝負への入れ込みようが違った。これは間違いなさそうです。


それほど気合いを入れて彼はどのように備えていたのでしょうか?

私はまだクイズ歴半年のペーペーですが、最近わかってきたのは競技クイズの世界においては「傾向と対策」が非常に重要ということです。

地下クイズ王決定戦で出題される問題は一般人には全くわからないような問題がほとんど(わかっても早押し勝負ではとても敵わないレベルの攻防が繰り広げられる)ですが、第1回から出題ジャンルそのものはほぼ固定化しています。

第4回では<芸能ゴシップ><殺人鬼><オカルト><裏社会><宗教><SEX><薬物><北朝鮮>の8ジャンルから出題。このうち薬物と北朝鮮以外は過去全ての回で用いられており、薬物と北朝鮮にしても初登場のジャンルではありませんでした。

つまりこの8つにまつわる出来事を片っ端から頭に入れておけば、理屈の上ではそれなりに戦うことができますが、勿論それだけでは足りません。問題文をある程度聞いただけでその先を想像し、答えを導き出す瞬発力がなければ戦えないのが地下クイズ王決定戦の舞台です。


・他を圧倒するスピード

しみけんさんが優れていた点はまさにここでした。初めて参戦した第2回から、そのボタンを押すスピードと問題文の先を読む能力において彼は非凡な力を見せています。特にこの第4回では本人が「ゾーンに入っていた」(twitterより)と語るように神懸かり的な状態でした。

クイズ上級者であればジャンルを指定した上で問題文の序盤を聞けば、ある程度答えを推察することができますが、クイズの問題文には答えを確定できるポイントがいくつかあります。最初のポイントを聞けば確定できるもの、その先でさらに答えが分岐するもの、しみけんさんはその2つを判別して前者の問題の時は最も早いタイミングでボタンを押しています。

例えば『ネット掲示板で「覚醒剤とMDMA」をまとめて呼ぶときに使う、それにハマった女優と俳優の名前を合わせた4文字の隠語は何?』という問題で、しみけんさんは『ネット掲示板で「覚醒剤とM』まで聞いたタイミングでボタンを押し、躊躇なく答えています。つまり彼の中でこの問題は「M」まで聞けば(あるいは覚醒剤「と」までで良かったのかもしれませんが)答えを確定できる問題であるとわかっていたわけです。

一方で答えが分岐する問題でも鋭い読みを連発しています。

『幸福の科学の月間機関誌で、小学生がターゲットなのは「ヘルメス・エンゼルス」ですが大学生をターゲットにしたものは何?』という問題で、しみけんさんは『幸福の科学の月間機関誌で、小学生がター』でボタンを押しました。その後長考の上で「ヤング・ブッダ」と回答して見事正解。

ここでは小学生をターゲットにしたものが「ヘルメス・エンゼルス」で、その後別のターゲット層の機関誌を答えさせる問題であることがわかった上で、どれが答えになるか読み切って正解したことがわかります。

前述した2点の要素の組み合わせの例もあります。

『北朝鮮の「喜び組」は活動内容から大きく3つに分かれます。では性的なサービスをするのは「何組」?』という問題。ここでしみけんさんは『北朝鮮の「喜び組」は活動内容から大』でボタンを押し即答。彼は当然喜び組の3つのグループ分けを知っていたはずですが、ここではその中でどれについて答えさせるか確定させるポイントまで聞くことなく解答しています。これは「地下クイズ」であれば性的サービスをするグループを答えさせる問題が出ることが自明だったからでしょう。

後から分析すれば「なるほど、そういうことだったのか」と首肯できますが、本当にすごいのはこれが実践の場で瞬発的にできることです。こんな調子で彼は序盤から終盤までゾーン状態で突き進み、過去に例を見ない圧倒的な大差で勝利を手にします。

正直な話、他の回答者が正解できたのは、しみけんさんが先読みを誤った問題や、終盤まで聞かないと答えが確定できないような問題、あるいはマシンガンクイズのように確実に解答権が回ってくる問題がほとんどでした。

私は過去見てきたあらゆるクイズ番組の中でここまで「仕上がった」選手は見たことがありません。個人的な見解ですが、この第4回に関しては誰があの場に居てもしみけんさんに勝てる人はいなかったでしょう。それほどにあの時のしみけんさんは強かった。


ただ少し付け加えるならば、彼があれだけの強さを発揮できたのは本人の努力や能力だけでなく、大会のルールにも要因があると考えられます。

最も大きな点としては、この地下クイズ王決定戦においては誤答のペナルティがないということです。多くのクイズ番組や大会では誤答した人間に何かしらのペナルティが課せられます。ポイントがマイナスされるとか、1回解答権を失うとかですね。

このペナルティがないが故に、言ってみれば早い者勝ち状態になって皆さんとにかくボタンを押すタイミングが早い早い。中でもしみけんさんは特に早い。(勿論ボタンを早く押すには豊富な知識と素早く問題を解析して先読みする反射神経が必要なのは言うまでもありませんが)

それと彼はボタンを押してから考えるというテクニックも多用しています。一応この大会はボタンを押してから5カウント以内に解答するように設定されているようですが、実際のところこのカウントを始めるタイミングがかなりいい加減で、ボタンを押してからかなり考える時間を与えられている場面が多々あります。

正直これは運営側の怠慢と言うべき問題ですが、ルールに違反しているわけではないので、そういう部分も使って戦う方が賢いという言い方も出来そうです。


第4回ほどの鬼気迫るものはなかったものの、しみけんさんは続く第5回も横綱相撲とも言うべき戦いぶりで安定の勝利。この防衛戦をもってしばらく地下クイズ休養宣言を出します。

申し訳ないですが、これは正しい判断でしょう。彼はやるとなれば相当な覚悟と準備をもって勝負に臨むでしょう。そしてそこまでしているしみけんさんはあまりにも強すぎる為、このまま続けても新たなる展開が見込めそうにありませんから。私を含め大衆は飽きやすいのです(笑)


今後地下クイズ王決定戦が6回7回と続いていくのであれば、私はいくつか提案したいことがあります。


・出題ジャンルの見直し

第4回大会は個人的な見解としては早押しクイズの極点に達したものであったと思っています。(第2回、第3回もほぼ同等のレベルだったとも思いますが)

ここまで到達してしまった以上、もうジャンルを選んでから問題を聞くという方式はそろそろやめにしてもいいんじゃないかと思うわけです。それよりもどんな問題が読まれるのか全く分からない、ニュートラルな状態で戦った方が面白いんじゃないかと。

ただBAZOOKA!!!はクイズ番組ではなく、あくまでもバラエティ番組なので、問題文をほんのワンワード聞いただけで答えを導き出すという離れ業を映したい、それがあってこその地下クイズだ!という意識は、きっとスタッフの中にあると思いますので、なかなか難しいかもしれません。

ジャンルセレクトそのものは残すのであれば、せめて新ジャンルをもっと増やして欲しいですね。

個人的にはこれまで番組内でも特集もしてきたわけだし、現代音楽やノイズを使った問題を出して欲しいです。それと殺人鬼や薬物中毒者などに限らず、広く犯罪者を扱った問題を出して欲しいなと。放火魔とか窃盗団とか。篠原さん(第3回、第5回に出場)が絶対有利になるけど昆虫食なんかもいいですね。


・ルールの改正

とりあえず誤答ペナルティなしという部分については、いい加減見直した方がいいんじゃないかとずっと思っています。

繰り返しになりますが、常軌を逸した早押しがテレビ的に良い画ヅラなのはわかりますが、「驚異的な読み押し」と「乱暴な押し」は紙一重です。答えの候補が1つでも浮かんだら押すような乱暴な早押しはどうなのかなという気もします。

自分も実際にクイズの場に参加するようになって初めてわかったことですが、この乱暴な押しというのは場合によっては結構冷める行為なんですね。例えて言うならば、クイズゲームで〇×問題の時に、問題文が読まれる前から答えを決めてしまうような行為に似ています。もちろん攻めなくては終わってしまうような状況においては必然ですが、それもやはりペナルティのリスクを背負ってこそ。

クイズ番組の最高峰とも言うべきハイレベルな地下クイズ王決定戦だからこそ、この部分に関しては是非メスを入れていただきたい。

それと1問につき同じ回答者が何度でも答えを言えるという方式。このルールが第2回、第3回、そして第5回で用いられていますが、第4回で1度廃止されたのにもかかわらず第5回で復活させた意味がわかりません。

これは先程指摘した乱暴な押しを助長するルールとしか言えません。極端なことを言えば、しみけんさんのように手の早い人ならば、問題文をある程度聞いたらとりあえずボタンを押して、後は正解が出るまで延々と答え続けるということも可能なのです。ここまで行くとバラエティを通り越して単なるお笑いになってしまいます。(幸いにもそういう場面はほとんどありませんでしたが)


・・・とまぁ、とりあえず言いたいことをほぼ余さず書いていたら相当な量になってしまいましたが、愛着のある企画ゆえのこと。

願わくば今後も地下クイズ王決定戦が高校生RAP選手権のように続いていきますように。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?