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オランダのモンテッソーリ小学校に通いはじめて4年が経ちました。
新学期が始まってそろそろ2ヶ月が経とうとしている。
保護者会や個人面談、授業参観といった新学期の恒例行事も一通り終わり、子どもたちも落ち着いて学校生活を送っているのを見て、ほっと一安心する今日この頃です。
まぁ、新学期というのはいつだって慣れるまでソワソワするものだけど、今年はいつもに増してそうなる理由がありました。
教員不足のオランダ教育現場は、カオスです。
まず、息子二人の担任が(また)変わったんですよ。
進級する度に担任が変わるふつう(?)の学校と違い、息子達が通うモンテッソーリ小学校では、
・Group 1 & 2のクラス(日本でいう保育園の年中・年長相当)
・Group3&4&5のクラス(小学1−3年生相当)
・Group6&7&8のクラス(小学4−6年生相当)
と縦割りになっていて、先生が3年間同じなことの方がふつう。
ところが、長男なんて、この3年間で毎年担任が変わった。
最初の先生は、円満退社という形で、別の学校でも教えてみたいと辞めていった。まあ、この時に長男はGroup5で、次のクラスに進級するとともに担任はいずれにせよ変わる予定だったから良いとして。
進級後に受け持ってくれた新しい担任の先生が、なんと一学期終了と同時に辞めてしまったんである。それも、後味の悪い感じで。
その先生は保護者の間ですごく評判が良い人で、周りの保護者からは「いい先生に当たって良かったね」と言われるぐらいだった。私も個人面談でとても話しやすい印象を受けたし、さらには、その先生の娘がうちの娘と同じ中学のクラスメイトなのが判明し、親近感もあった。
それが、クリスマス休暇明けから、体調不良でお休みと言うことになり、最初はしばらくの間と言っていたのが期間不明となり、最後は退職することになった、と学校から告げられた。本人は言葉は濁していたけど、学校のマネジメント側と何かトラブルがあったらしい。
その結果、息子のクラスは3つに分割され、他の3クラスにバラバラに配置された。新しい代わりの先生が見つけられなかったのである。
ただ幸いにも、息子が配置されたクラスには元から仲の良い友達が多く、そのクラスの担任の先生ともうまが合い、本人は楽しそうだったのが救いだった。
その後、新しい先生が見つかったら再度クラスをもとに戻す予定のはずだったが、新しい代わりの先生は見つからないまま一年が経ち、その間に生徒数が減って、結局は4クラスから3クラスに減ったまま続行ということになった。
もうこうなったら、頼むからこのまま卒業まで行ってほしいと願っていたのに、一安心したのも束の間、その担任の先生がまたしても「勤務日数を減らすのからクラスを担当できない」と昨年度末で担任を降任。
次男の方も状況は似たり寄ったり。
担任がメインとサブの2人体制だったのが、サブの先生が「モンテッソーリ教育は自分に合わない」と言って辞めることになり、信頼していたメインの先生も健康上の理由で休職。
代わりの新しい先生を探していると言われたときは、いくら教員不足で仕方がないとはいえ、あまりに不安定な学校の状況に流石にうんざりした気持ちにさせられた。
息子達の学校に調査が入り、最低評価を受ける。
さて、こうなるともはや驚くことでもないのだが、この多発する先生たちの退職・休職の背景を説明するような事実が判明。
学校に「Kwaliteitsonderzoek」という調査が入ったのだった。そしてその結果、息子達の学校は「非常によくない」という最低評価を受けたのである。
調査が入るまでのフラグはいくつかあったらしく、保護者がその不満をクレームとして学校や担当機関に提出していたらしいことや、Citoテストと呼ばれるオランダの全国学力テスト的なやつの平均スコアが急激に大幅に下がったことも影響していたらしい。
ちなみに、こんぐらい(↓)急激に下がっていた。緑がうちの学校。
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教育の質や運営が基準に達していないという指摘がなされ、学校は改善計画を提出、一年以内の改善を求められている。そして、この間(現在)は教育監査機関の監視とサポートのもとに置かれている。
この調査結果が明らかになると、当然のことながら、保護者の中にはいよいよ子供を転校させることを決める人も出てきた。
次男の仲の良い友達もその一人だった。その子の母親はPTA会長みたいな立場の保護者代表役をしていた人だったから、「そんな彼女も見切るぐらいにこの学校はまずいのか・・」と、私もさすがに心細くなった。
でも、結局、転校させることはなく、今に至り、冒頭の通りに息子達は今年も同じ学校にいるわけだが。
転校させなかった理由
転校させなかった理由は、オランダは好きに学校を自由に選べる、ということになっているけど、現実はそんなことは全くなくて、みんなが行きたいな〜(親が行かせたいな〜)みたいな評判の良い学校は定員が埋まっていて、まずそんな簡単には入れない。
さらに、子供にとっては「転校」ってやはり相当なインパクトがあり、そんな簡単に決めれることではない。転校させたからと言って、物事が好転するという保証はどこにもない。
何より、うちの息子達は自分たちの学校をとてもとても気に入っていて、毎日学校を楽しみに登校していくというのが大きかった。
学校が楽しい、そう思えることは本当に幸せなことだと思うし、少なくとも息子達にとってこの学校が安心して通える場所だということは何ごとにも変え難い価値のあることだと思った。
また、学業面においては、長男は今年度が小学校最終学年で今さら変えても仕方がないし、成績も中の上ぐらいは維持していたので、いずれにせよ変えるつもりはなかった。
ただし、次男についてはまだ小学3年生にあたり、ここから基礎をしっかりと積み上げていかないと、後々に困ることになるという不安は拭えなかった。
新しい先生が見つかる!
そんな不安も募る中、夏休みのギリギリになって、学校から「先生見つかりました!」というお知らせが舞い込む。
これで無事に学校に行ける!
ということで一安心であることは間違いないものの、正直に言って、学校への信頼感はだだ落ち状態での新学期スタートだったわけです(ここでやっと話が冒頭に戻る)。
さて、長男の担任は、海外での教育経験もあるという、ベルギー育ちのオランダ人。経験は7年程度あり、ただしモンテッソーリ教育の現場は初めてという30歳ぐらいの女性の先生。
次男の担任は、60歳のベテランのおじいちゃん先生。校長経験もあり、教育現場にありとあらゆる立場から関わってきたという人。ただし、同じくモンテッソーリ教育は学んだことがなく、現場も初めて。キャリアの最後にモンテッソーリ教育を学びたいという希望で、本校を選んだらしい。
要するには、新しい担任の先生は二人ともモンテッソーリ教育メソッドの専門家ではなく、その経験も訓練も受けたことがないという先生でした。
もはやモンテッソーリかどうか不明ではあるが、結果オーライ。
そんな新しいお二人をお迎えしての、新しいクラスとしての新学期。
学校に行けるというだけで、まず合格。
それも、どちらの先生も基本は週5勤務してくれるという。
はい、100点。
(オランダは二人の先生がチームを組んで1クラスを見るということはごく普通にあり、もちろんその良い面もあるわけですが、マイナス面もあって、先生間のコミュニケーションで齟齬が起きたり、少なくとも息子達の様子を見る限りでは、これによってクラスが不安定になるという状況が起きてました。)
さらには、むしろモンテッソーリの経験がない先生が来てくれたおかげで(?)、クラスに秩序が生まれ、落ち着きが生まれているように見える。
長男は、自由度が減ったと若干不満を漏らしているものの、モンテッソーリ教育という名のただの放置教育に成り下がっていた感があったので、これは良い変化なことのように思える。
モンテッソーリ教育は先生の「観察力」なくては成り立たないのに、目が行き届かないばかりか、手も回らないみたいな感じだったから。。
そして、そう感じているのは私だけでなく、他の保護者達も同様のようで、「良かったね〜、良かったね〜」と声をひそめて言い合っている。
はー、やれやれ。
まとめ
そんなわけで、インターに行けば違うとは思いますが、教員不足のオランダのローカル校はなかなかに大変な状況です、という話でした。
教員は不足してるのに、学生数は増えていて、クラス当たりの生徒数も本来の適正人数より増えています。もちろん、先生の負担も増えています。
学校にあまり期待と夢は抱かず、勉強の面倒は家庭で半分みる、ぐらいの気持ちが必要かなと思います。オランダ人家庭でない家庭にとっては、これは簡単な話しではありませんし、でも、手探りでやるしかないのですよね〜。
現場からは以上です。