オランダはとにかく家が足りていない
オランダ移住の最大の難関は「家探し」であることは、オランダへ移住した日本人の方ならきっと同意頂けると思います。住民登録ができる住宅の賃貸契約書がないと、居住ビザの申請を始められないからです。ところが、手頃な値段の賃貸住宅を見つけて契約してもらえるのは、結構大変。
九州程度の大きさの小さな国オランダは、更にその三分の一は海面0メートル以下で、国土に物理的な制約を抱えた国です。その中で、現在はおよそ315,000戸の住居が足りていないと言われています。必要数に足りていない空き物件の争奪戦となることに加えて、住宅不足は賃料と不動産価格の高騰にも如実に反映され、特に若年層のマイホーム購入を阻んでいます。
ガチンコ、不動産バトル・ロイヤル
賃貸はコロナ渦で若干落ち着いたかに見えましたが、売買物件は「そんなの関係ねぇ!」、向かう所敵なしとばかりに未だ上昇を続けています。具体的には、2021年1月時点で住宅価格が前年比で9.3%上昇したとのデータが出ています。物件の提示価格はすでに本来の市場価格からは乖離している上に、多数の競争相手からこれを競り落とすためには更に200万、300万オーバーベットしないと勝てない場合が多いと聞きます。ローンは市場価格分しか借りられませんから、その差額分のキャッシュを持ち合わせていないとそもそもその土俵に上がれません。
こうなると、本来の市場価格がそもそも間違っているってことじゃね?と思う訳ですが。購入検討フェーズではその家を現オーナーが過去にいくらで購入したかの情報も入手できるのですが、ここ5年のあまりの価格上昇に・・・、市場とはそういうものだとは言え、気持ちが萎えます。
もちろん、これ程の高騰はランドスタットと呼ばれる大都市の話ですが、地方の小都市であれ程度の差はあれ似たような状況のようです。まぁ厳しい。
新たな住居建設計画はあるのだが
別にこの住宅不足は今に始まった話ではなく、戦後から慢性的に続くオランダの長年の問題だそうで。出生率はオランダも基本的に減少傾向なのですが、他国から移り住んでくる人の増加により、全体としては人口増の傾向をたどっています。これを改善するには、新たな住居建設しかない訳で、もちろん国としても取り組んできているものの、まぁちょっとやそっとじゃ追いつかないらしい。
ニュースによると、住宅不足解決の1つのアイデアとしては、「高齢者向けの住居を作って、そこに移り住んでもらい → 現役層がその家を購入」というのがあります。オランダの家は狭くて急な階段があることも多く、古いオランダの家は高齢者には住みにくい。そこで、そうした住みやすさを実現できる住宅を新規に郊外に建てて、学校や通勤などのアクセスの良さ等を求める現役層にスペースを譲り渡してもらう、と。
いずれにせよ、オランダの大都市には新たに建設する空間的余裕がもうなく、じゃあ地方に建設するにも、そこに安定的な収入を約束する仕事や、新たな人たちを受け入れる文化の多様性があるのかと言う別の問題もあったりと、なかなか複雑な話です。
外国人のわたしの複雑な気持ち
日本からオランダへ呼ばれもせずに好き勝手に移り住んできた私なんぞは、この住居不足の片棒を担ぐ厄介な輩とも言えるわけでして、この話しを聞くと毎度申し訳ないような気持ちにさせられます。
そして、あまりにこの問題が激化すると矛先がいよいよこっちに向いてくるんじゃないかという恐れもあり、どうかオランダ政府よ、頑張ってこの件の解決に励んで頂きたいなとこれまた勝手に祈っておる次第です。何せ、この状況はこの先10年は続くという話でして、住環境を大切にするオランダ国民の皆さんにおいてはストレスレベルの大きな問題だろうと思います。
同時に、まだまだオランダで暮らしたいと考えている一個人としては、住居費は家計へのインパクトが一番大きいですから、安定してオランダで暮らしていくためにも不動産購入ができたらいいな…と夢みる今日この頃です。