DEAR FRIENDS←→from NEEEWME!→DEAR ME ショートストーリー&リリック
JJ17歳。
この春、高校は捨てた。
だって窮屈。退屈。先が見えない鬱屈感。
だから、私は今、何者でもない。
だけど、必ず私にしか出来ないことで自分の未来を掴まえる。
中高一貫私立女子校、生徒の規模も馬鹿らしい規則もマンモス級の高校をドロップアウト。
とにかく、あのどうしようもないセンスの灰色の3シーズンコートを着て、軍隊のように列を作り、あの狭められた鉄の門を通りたくなかった。
それも毎日。毎朝。
あきれる。
ブービートラップ。
教室へ進むには罠だらけ。
私を誰が捕まえるの?
捕まえて、どうするの?
初夏の向かい風の中、退学届を出して、教室を背に堂々と門を出たときの爽快感。その先のことなんか、見上げた空の青さに吸い込まれ、どこまでもどこまでも舞い上がる。
そして、その空に吸い上げられたハイな気分は数ヶ月後にはすうっと、収まるところに収まる少し先の自分に着地。
自由度満点の姿は絶好調。
熱風が吹き荒れる真夏の日差し。
ノイズゲートを振り切る蝉の鳴き声。
姉に頼んで買って貰ったベースギターを担ぎ、足元は赤の9cmハイヒール。
髪は半分ハイブリーチでプラチナ。半分は栗毛の地毛。
ロッカー気取りで好き勝手な服を着て向かうのは、自由に開け放たれた門。
年齢も職種も全てバラバラの生徒たち。
だけど、皆同じ高校の生徒。
東京都の進路相談であちらこちらにタライ回しされた後、やっと通信制の2年生に転入したJJ。
このあと3年はたっぷり続くリベンジ高校生活。
ただし、通学は月2回。
あとは自宅学習レポート提出の日々。
その他はスタジオ代を稼ぐためのバイトと、晴れてバンドでプロを目指すために、不器用だけど楽しく転がり続ける毎日がやってきた。ブラボー!
「ROCKやってるのか?」
月2回のスクーリングの登校の時に担任教諭が声をかけてきた。
「はい。これで食べていこうと思います!」
と、即答する私。
担任は短い髪が天然なのかクルクルっとしたヘアスタイルで、眼光鋭いけど、決して怖くはない印象。
日焼けした顔で首を少し傾げながら
「お、頑張れよ!」
初夏の日差しに逆光で見た眩しい瞳に残像が残った。
その時から彼は卒業するまでJJの良き理解者になった。
単位制、スクーリング、レポート提出。
校則もない世界。
今日は現代国語のテストが戻ってくる日。
JJは目立つ格好ながら、目立たないようにいつも教室の後方の席に座る。
現代国語の教諭は言葉じりが風変わり、独特のリズムで間延びしながら授業を進める。
「先日のテストをぉ〜返します。設問5問目。正しく解答できた方はぁ〜ただひとりです。あとは皆、ダメェ〜。再度宿題として出すのでぇ、全員レポートを期日内に提出してください〜。では〜、はい。JJさぁ〜ん、前に出てぇ。模範解答はあなたひとりでした。はいぃ〜」
意外過ぎてよくわからないが、言われるがままに立ち上がって教諭の前まで歩いていく。教室全体の視線がJJに注がれる。
フランスの詩に関する設問だった。
「その馬はうしろを振り向いて
誰もまだ見たことのないものを見た。
それからユーカリの木の陰で
牧草をまた食べ続けた。」
(動作 ジュール・シュペルヴィエル 安藤元雄訳 Mouvement Jules Supervielle)
この馬が振り向いて、誰もまだ見たことのないものをみた。
それは一体何だったのか。
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