「井戸の祟り」
今から30年ぐらい前のことです。
ある時、友人のKさんに誘われて、Kさんの友人であるNさんの家に遊びに行った時のことです。
Nさんは、家を新築し引っ越しされたと聞いていましたが、その家に着いた段階で「何かが変だ」という違和感を覚え、家に入れてもらったときにそれは確信に変わりました。
そのとき感じたのは、一般的に言う“負のエネルギー”とか“障り”と呼ばれるもので、感覚的には水に纏わる祟りのように感じました。
そしてそれがNさんの呼吸器系の病気(気管支喘息)に関係しているように思え、直感的にこれは「不味いぞ」と思ったのです。何故かというと、過去の経験から此手の祟りは命に関わることも少なくなかったからです。
しかし、そのことを伝えても良いものなのか悩みました。
これは今でも変わらないことだと思いますが、世の中の多くの人は霊障や祟りといったものを信じることが少なく、霊的な話をした段階で“変な宗教を信仰している人”や“精神的におかしな人”といったレッテルを貼られてしまうことも少なくないからです。そして1度でもそのようなお話をしてしまうと、それ以降まともに話を聞いてもらえないケースも多く、そうなると治るはずの病気が治らなくなってしまいますので、それだけは避けなくてはなりません。そのような思いから、その場はそのまま何も言わずに帰りました。
後日、Kさんにそのことを相談したところ、Kさんが言うにはNさんの家系や親戚に喘息の傾向を持っている方は皆無で、Nさんが気管支喘息を煩うようになったのも、今の家に引っ越して来た後からだったそうです。
そしてKさんからは「ぜひ祟りのことを話した方が良いのでは!」と言われましたので、話した後の判断はNさんに任せることとし、とりあえずNさんに祟りのことを話すことにしました。
Nさんは祟りの話を真剣に聞いてくれ、それを取り除くにはどうしたら良いのか?というので、そのためには何を置いても井戸を探し出す必要がありますと説明し、家の中を見せてもらうことにしました。
そうしたところ、Nさんの寝室の床下に井戸があるように感じたので、それを伝えました。後日、建築関係の業者を呼んで立ち会いの下に床を剥がし、井戸があると思われるところを掘ってもらったのです。ところが井戸がなかなか現われず「本当にあるの?」「思い違いでは?」というようなことを業者には言われる始末でした。
それでも掘り続けてもらったところ、1mぐらい掘り進んだところでやっと井戸の蓋に当たりました。そうしたらそれまでは諦め気味というより信じていなかった方々が、「鳥肌がたった!」とか「寒気がする!」と言い出したのです。きっと半信半疑の状態だったため、言ったとおりに井戸が出て来たので、その場に立ち会っていた方々は驚かれたのだと思います。
そうして見つかった井戸の蓋の一部を割り、息抜きに節を抜いた青竹を差し込んでから、蓋の上に土を被せました。そうすることで井戸の祟りを鎮め、Nさんの喘息が酷くなるのを抑えることが出来たのです。
井戸というものは扱い方を間違えると非常に怖いもので、井戸に蓋をするということは大地の呼吸を止めると言うことに繋がり、場所や人に影響が及びます。やむを得ず井戸を使わなくなった場合には、ただ蓋をするのではなく、今までの感謝と共にきちんとお祓いをし、綺麗に埋め戻すようにした方が良いと思います。