レモンイエローブルー・サマー (※二次創作)(あと時光代理人というアニメにはまって苦しいというよく分からん日記(?))

「なあなあ、かき氷! 食おうぜ」
 左右にずらりとひしめく夜店の先に目をやりながら、トキは横にいるヒカルに声をかける。
人混みの喧騒に混じる祭り独特の匂いと音。
街の中に突然現れたみたいな非日常な空間に、誰もが少し浮き足立って不思議な浮遊感に包まれているかのようだ。ぐいとヒカルの肩に腕を回して屋台の並ぶ小路を右に進みかけたところで、左手からふわりとただようバターの香りに足が止まる。
「うわーじゃがバタ……いいなあ」
「りんご飴もある」
「あっ見ろよあれ美味そう」
数秒ごとに右へ左へ立ち止まって……とやっていたら、
「お、ま、え、」
引っ張るな、ちょっと落ち着け、と、肩を組まれたまま振り回されていたヒカルが声を上げた。
「あ、ごめん、つい。どれも美味そうなんだもん……」
それにお前とお祭り来れて嬉しーしさ、と顔を覗きこんで笑うと、ため息と共にふいと横を向かれてしまう。けれど、うっすら赤い頬を見れば満更じゃないことくらいすぐ分かるからトキはまた目を細める。

近所で夏祭りがあるというので、トキはヒカルを誘った。当然のように誘って、当然のようについてきてくれる、この関係性の確かな安心感。
でも、ヒカルと一緒に祭りに来たのはこれが初めてだ。
そもそも去年の夏は、まだ知り合ってもいなかった。


 今度は綿飴屋台の前で足を止めたトキに、ヒカルも黙ったまま立ち止まる。
「なあお前綿飴って食べたことある?」
「いや、ない」
「おれも」
「……腹にたまらなそうだよな」
「ぶは、確かに」
ヒカルらしい言い方だ。
実体の無い煙のように真っ白なものがみるみる棒に絡んで形になっていくのを、トキは暫し不思議な気持ちで眺めた。
「なんとなく懐かしいモノ、みたいな、ほぼお祭りでしか見ない食べ物だよな」
トキがそう呟くと、ヒカルの目がちらりとこちらを向く。
「……言われてみるとそうかもしれない」
「不思議だよな、食べたこともないのに……」

こどもの頃のヒカルは誰かと夏祭りに来たりしていただろうか。自分と出会う前の彼のことを、訊ねてみたことは無かった。
いつもじっとこちらを見る目の色の強さは、彼の色素が特段薄いわけでもないことを感じさせる。だから小さなヒカルが果たして今と同じ髪色だったのかも分からないけれど。
ただ、ぽわぽわの白い髪の子が綿飴を手に佇んでいたらそれは似合いすぎるのになと思う。もし幼いヒカルと今の自分が夏祭りで出会ったなら、きっと自分は綿飴を買って手渡していただろうと、トキは思った。
まあそんな出会いはないんだけれど。

「……そもそも夏祭り自体初めて来たしなあ」
そう独りごつと、ヒカルが少し驚いたような表情をして、それから
「え、でも、他の先輩たちと来たりとか……」
と、戸惑ったように言いよどむ。
「他の先輩?」
「あ、いや……今日のお祭りだって、同級生の人とかからもけっこう誘われてただろ」
「そうだっけ? え、あー、まあ声はかけられた気もするけど」
……お祭りに行こうと思う感覚すらも少し前までの自分には存在しなかったかもしれない。ごく自然に誰かを誘って今こうして過ごしている自分に、今更ながらトキは不思議な気持ちになる。
ヒカルという、この名もない関係性の存在が自然と自分の世界の色を変えてしまった。一年前には知り合ってさえいなかった後輩なのに。
こういうのをつまり親友と呼ぶのだろうか。
いや、親友と呼ぶにはおれはこいつのことを何も知らない。

一瞬ぼんやりしていたらしい。
気づいたらヒカルが屋台の店主に小銭を払っていた。そして振り向くと、手にした綿飴を「ん」と差し出す。
「へっ?」
トキは目を瞬いた。
「……一度くらい食べてみるのもいいかと思って」
俺も食べるの初めてだし、と言いながらヒカルはぐいとトキに綿飴を手渡す。
ふわふわの綿飴とヒカルとを交互に見て唖然としている間に、ヒカルはさっさと歩き出してしまった。
慌てて後を追いながら、トキは手にした綿飴をじっと見てみる。真っ白で、よく見ると繊細な飴の糸がきらきらしていた。
「ヒカルー、初綿飴、一緒に食べよ」
追いついて並び、眉間にしわを寄せたヒカルの横でじわじわと顔がゆるむのを止められない。
「へへへ、ありがとな」
おれはこいつの昔を何も知らない。でもそれは関係ない、今一緒にいる目の前の存在がすべてだ、と思う。
「別に。……俺も綿飴とかお祭りとか初めてだし、
……お前に誘われなきゃ来ることも無かったし」
そっか、……そっか。
「じゃ、さっそくひと口」
お互い綿飴にぱくりと噛みついて、「甘!!」と声を上げた。

 甘々な綿飴を半分ずつ食べ終え、しょっぱいものも食べようかということで、人気らしく行列の葱餅屋台にトキは並んでいた。手際よく次々焼かれるのを待って、熱々を二人分受け取る。
あれヒカルは? と見回すと、何やら袋を手に数軒先から戻って来るところだった。
「ヒカルも何か買ってたのか? なにそれ?」
「鈴カステラ」
「すずかすてら……」

 夜店の端に移動し、少し静かな薄暗がりに腰掛けて二人で葱餅を食べた。葱餅はもちろん、鈴カステラも焼き立てで粉の香りがふんわりやわらかで美味い。
ヒカルはというと鈴カステラをひょいとつまんでは口に入れ、小さく頷きながら無心で食べている。
祭りの喧騒と夜風が心地よく体に沁みていく。
汗ばんだ額にはりつく前髪を指先で払いながら、そういえばかき氷を食べ忘れていたことをトキは不意に思い出した。帰る前に涼をとりたい。
「おれかき氷買ってくる、ちょっと待ってて」
ヒカルお前何味がいい? と聞いて立ち上がると、トキは冷たいかき氷を求めに行く。

 両手の氷が溶けないよう駆け足で戻って、爽やかなレモンイエローのかき氷をヒカルに手渡すと、トキはさっそく氷を掬った。ひんやりした氷が喉を滑り火照った体を潤していく。
「冷たー、最高」
「うわ、すごい色だな」
トキのかき氷は目にも鮮やかなブルーハワイだ。
「……お前、舌まで青くなってるぞ」
「えっうそ」
くっきり眩しい青色は白い氷を染めながら、じわじわと澄んだ滴になっていく。
「ヒカルだって色ついてんじゃないの」
溶けゆく氷を掬いつつ言い返してみると、ヒカルも「え」という顔をして、それからちょっとだけ舌を出して見ながら「本当だ……」と呟いている。
綺麗なレモンイエローと鮮やかな青色。
「なあなあ、これ混ぜたら緑になるかな?!」
良いこと思いついたとばかりにトキは目を輝かせ、「お前の半分こっちにさ……」と言いかけながら横を見ると、ヒカルは涼しい顔で器に残った雫を飲み干しているところだった。
「え?! 食べ終わんの早! ……ってか、元々レモン味もひと口貰おうと思ってたのに……」
器に口をつけたまま目だけをちらりとこちらに向けたヒカルが、「ん? 悪かったな」といういつもの表情でしれっとしている。くだらない話には全然乗ってくれない、つれない年下なのだ。
さくさくと残りの青い氷を一気に口に流しこみながら、トキは自分の舌をぺろりと出して見てみる。言われた通り本当に真っ青だ。
「……あっ、待てよ? ヒカル、お前がこれ食べたらさ、舌が緑に」
「……」
「気づくのが遅すぎた……食べ終えちまったよ……」
呆れ顔のヒカルに「次こそ試すぞ」とトキは宣言する。
「だから来年も一緒に来よーな」
横に座ったヒカルの顔を覗きこんで「な?」と問うと、微妙に目を合わせないまま「分かったから」と言うから、トキはまたゆるゆると笑みが止まらなくなってしまう。なぜだろう、呼吸をするように自然と笑えてしまうんだ、最近の自分は。
「次、俺はメロン味にするけどな」
「…………、えっ……ひどい」
「何でだ」
「冷たい……」
そっちがメロンなら、じゃあおれはイチゴにするもんね……あれっ緑と赤は混ぜたら何色になるんだっけ? とか一瞬真面目に考え込んでいたら、ヒカルが堪えきれなかったように小さく笑い出した。
「そこまでして……あはは」
「くだらない約束こそ執念で」
来年は二色のかき氷を混ぜてみるのだ。
まあ、ヒカルとまた来られるのなら何でもいいけど。自分の目には表情豊かに映るヒカルの小さな笑みを見ながらトキは思う。

 並んで座り夜風に吹かれながら、持ち歩いていたペットボトルの水を飲む。温くなった水はブルーハワイで冷えた舌には丁度良かった。横でヒカルも水を飲んでいて、おそらくお互い舌の着色も取れたことだろう。
ちゅうしたら舌の色変わるかもよ、という、おそらくよくある冗談が実は先ほど頭に浮かんだけれど、さすがにヒカルに言うのは止めておいた。
いつものように「馬鹿か」と言うだろうヒカルの声色を聞くのが、なぜだか少し怖い気がしたので。もし純度100%の呆れた冷たい声で言い放ってくれなかったら、困る。
何が困るなのか自分でもよく分からないまま、名もないこの関係がきっと来年も自分の隣にありますようにと願いトキは目を閉じた。
隣に座るヒカルの体温と夜風が心地よくて、ふわふわと甘く溶けていくような夏祭りの夜だった。



*****
#時光代理人二次創作 (?)
写真館の二人ですらなく、ただの、年齢通りな普通の男子高校生がお祭りでだらだらするだけ(主に食べ歩き)のお話……
ほぼお名前だけ借りた、(あとお祭りの雰囲気からして多分これは日本)とにかく時光代理人の世界から遠い遠く離れたパロディです。
(なんとなく学年はひとつ違いで、まだお互いのことをあまり知らない、家庭環境はちょっと何かありそう、などのぼんやり設定で)


最終回を観てもうどうすれば……(苦しすぎて思わずnote登録)な気持ちのまま気づけばすでに1ヶ月以上経っていてそんな馬鹿な。
吐き出すためのお話を考えていても、もうひたすら際限なく悲しくなってしまい……でも毎日考え続けてしまい……(毎日その状態で1ヶ月経ってて本当怖い)
先月からずっと感情がぐちゃぐちゃなまま。

また気晴らし(?)に可愛い話を……(写真館の二人、で書こうとすると、考えるたび全て暗い辛い話に向かってしまうので、そうだもう普通の男子高校生だ!的な……)
コレハ悲シクナラナイ…何モ起キナイ……と謎に言い聞かせつつ、結果、屋台で買い食いするだけの謎話。
食べ歩きは楽しいよね、食べ物の話は幸せ。


たまたま観たこの「時光」がアニメでなく漫画だったなら、本を読み返したりで多少気持ちを消化できた気もするんですが、色々何も観返せない状態(あと一期もほぼ観られていない)が苦しさを加速させている(?)気が……うわー(この状態で1ヶ月経っても全然変わらず「苦しい苦しい」が持続なことにまずびっくりで……アニメにここまでハマったことも無くて……)
気持ちが「うわー泣」状態すぎて、出来もしないのに初・二次創作にまで走り……なんて恐ろしいアニメなんでせうか時光代理人。
とりあえず「Ⅰ」「II」とまた再放送してくださらないかなぁ……

思わず独り言を書いてしまった。
怖……これも全て時光アニメのせいです……
(!もう日記書けばいいのか、妄想吐き出し日記を)



熟読に熟読を重ねて好きが煮詰まりすぎて「好き!萌!二次創作イラストとか描いてみたい!(描けないので妄想止まり)」と思った作品なら過去普通にたくさんあるけれど、熟知も出来ていないまま(プロフィールすらもよく分かっていないし、放送が深夜すぎて音小さくして観るから名前とか台詞とか展開も??てなったままの部分が多々)なのに、辛すぎて何か無理矢理でも二次を吐き出さずにはいられないって一体どういうことなんじゃろ……
ちなみに文章書いたこともないのに突然二次創作に挑戦したら案の定ポエムになって震えたし、人は何歳だろうと初めて二次創作する時に中二になるんだなと学び泣きました。うそ、自分が日本語書けないだけだった。恥を捨てることは学べました。

とりあえず今は何とかしてアニメⅠ、IIを観直したいし、全話1秒ごとに止めて永遠に眺めたい。

テレビの番組表見ていて、最近は海外のアニメなんてやってるんだ~中文文化興味深いな~て思って偶然観てみたのがきっかけなのだけど(そしてまずop曲と映像に一瞬で目を奪われた)、つまり原語版もあるわけで……それも聞いてみたいし。沼の淵にいるのだろうか、もしや。
まずは画像がほぼ表示できなくなっているスマホ様を、なんとか買い換えてから……(noteでも時光アニメ関連記事を検索してみたいのだけど、背景とか画像が貼られているページ?を開いただけでもスマホ様が激しく蛍光グリーンに発光したのちダウンするので、怖くて何にも見られない)
機械弱すぎてきっとスマホが完全に壊れるまで行動に移せなそう。涙涙涙
ーーーー自分用ぐだぐだ日記


蛍光グリーンの発光携帯に怯えつつも、最近文字情報で少しずつ時光のことを知れまして、とりあえずアニメ三期が確実にあるらしいこととか!(その情報だけで生きられますありがとう……)
グッズまであるらしいこととか!(画像は見られなくて泣く)
様々な妄想している方がけっこう大勢いらっしゃいそう(?)なこととか…!

(あと、固定とか地雷とか同担拒否とか、色々未知な強めのきっぱりした表現が今はあるのかな? ありそう、いや確実にあるんだな、とか……。ネット上では昔からあったのを自分が知らなかっただけなんじゃろか……)(純粋に知らないことが多そうで、概念が言葉になる過程や文化の変遷とかも知りたいなとか今後様々興味が広がりそうなんですが、同時にちょっと……もう少し色々理解してから呟かないとなのかな……という気もしたり。ネットがまともに見られるようになったら色々調べてみたい)
(日本語って日々新しい表現が生まれていて、その背景とか時代の傾向とかにまで思いを馳せたくなります)

ネットで二次創作的な色々の情報を見ようとするのがそもそも初めてな気もしてきた。同人誌とか買っていた時期は、アナログに生きてたのでネット無しだった……(けっこう最近のことだけど、長年ネット無しでどう生きていたのかもう思い出せない)


アニメを観始めてからずっとトキとヒカルに思考がとらわれ続けていて、……特に最終回を観てからはもう本当に毎日ずっとずっとヒカルのことを考えてしまう。
のだけど、言語化って難しい。
勿論あほな妄想もたくさんしているのに、それもいざ呟こうとすると書けないんだなあ……絵が描けたならなあと思ってしまう。自分の気持ち吐き出し用に日記、というのも難しいんだなあ~(きっと来月もつづく) 


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