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高分子吸水体(高吸収性ポリマー)のおもしろ実験の解説
透明なボールが入った容器に、水を入れると、ボールが消えていき、中からグッズが見える実験。
youtubeやテレビでよく紹介されていますね。
下記の動画は、一寸雑な作りですが
これって、『光の屈折』とか、『光の反射』って言葉で説明されているようですが・・・
ふしぎな現象を見てからの、ちょっとした科学的な言葉での解説で、
わかった!って気にはなるようですが、せっかくなので、もうすこし詳しく解説してみましょう。
ふしぎのキーワードは『高分子吸水体(高吸収性ポリマー)』
画像のものは、先の動画の透明なボールの色がついたバージョンです。
高分子吸水体といわれる右の粒を、水の中に入れると、一晩で、左のように膨れて、ゼリーのようになります。
夜店で「ぷよぷよすくい」なんて名前で人気です。
この高分子吸水体は、その重さの500~千倍くらいの重さの水を保つことができるといわれています。
こちらが、高分子吸水体を使った商品
一番わかりやすいのは、オムツ。オムツの綿の中に、高分子吸水体の粉が入っていて、おしっこを吸収してくれるのです。
間違って、オムツを洗濯機に入れて、大変なことになった方もいらしゃるかも。ソフトコンタクトレンズにも、使われていますよ。
高分子吸水体が、どうして、水を保持できるか
高分子吸水体は、水風船のように、膜で水を保持しているわけではありません。
高分子吸水体の分子は、吸水前は長い高分子のひもが糸マリのように丸まって小さくなった構造をしています。
ちなみに、この高分子吸水体は、プラスチックに分類されます。
図は代表的な高分子吸水体であるポリアクリル酸ナトリウが吸水した様子を簡単に示したものです。
①ポリアクリル酸ナトリウムに水が入り込むと
②COO-とNa+のイオンに分かれ
③Na+の一部は、外の水に出ていくのですが、COO-は分子にくっついて
いるので出て行けず、全体としてマイナスイオンが多くなり
④そのマイナスイオンの反発で、ポリアクリル酸ナトリウムは膨れていきます。
⑤そうすると、さらにそこに水が入ってこれるようになり、さらに膨れるのです。
高校でイオンとか習った方がいらしたら、「おお~!」と、こんなところで理解につながって感じてもらえたらうれしいです。
実際に、小さな粒を水に入れると、ぷ~っと丸く膨らむのではなく、ごつごつ膨らんでいきます。Na+により、食塩をかけると小さくもなります。
高分子吸水体を使ったおもしろ実験
いくつかご紹介しましょう。
これらの動画は、「高分子吸水体がほとんど水なので、水に入ると、まぎれて、見えなくなる。」ということを利用しています。
透明な水の中に、透明な高分子吸水体と透明なビー玉を入れるとどう見えるのか
こちらの画像。
水中で丸く見えているのは、ビー玉です。
水から上に出ているのは、高分子吸水体の膨れたボール。
水の中には、見えなくなって紛れている高分子吸水体のボールもうっすら見えるかもしれません。
それがあるから、水より上にも高分子吸水体のボールがある(浮かんでいるように見える)のです。
ビー玉・水・高分子吸水体のボールは、どれも透明ですが、
ビー玉だけは材質がガラスです。
水に入ると、
高分子吸水体のボールは、水とほとんど同じ水でできているので、まぎれて見えにくくなりますが、
ビー玉は、水と材質が違うので、見えてしまうのです。
理科的な言葉を使うと
水とほぼ同じ高分子吸水体のボールは、水中では、その屈折率も同じなので、光が屈折・反射することがなく、まっすぐ進んでいきます。
だから人間は、モノがあるとは思わず、何もないと感じるのです。
ビー玉は、透明ですが、水とは材質が違うので、屈折率が違います。
したがって、ビー玉が水中にあった場合、水中での光は、ビー玉の表面で、わずかですが、乱反射するので、人間は、そこにビー玉があると感じるのです。
同じような理由で、水から出ている高分子吸水体のボールは、空気中では、空気との屈折率が違うので、表面でわずかに乱反射し、人間には、そこに高分子吸水体のボールがあると感じるのです。
最初の動画の解説もしてみましょう。
グッズからの光は何もなければ、人間の目に届きます。それは、左のグッズが見えていることでわかりますね。
でも、高分子吸水体のボールがあることにより、グッズからの光は、目に届きません。
しかし、水を入れることにより、グッズからの光は、高分子吸水体のボールがあってもまっすぐに進み、目に届くようになり、見えてくるのです。
高分子吸水体は、消臭ビーズなどとして、100円ショップでも販売されているようです。少し薬品が入っているし、最大まで膨れていないので、水に入れると少し跡が見えるかもしれませんが、何度か水に入れておくことを繰り返すことで、今回の実験位だと、十分楽しめます。
是非やってみてくださいね。