読む、 #ウェンホリ No.08-03「エンタメは、生きる理由になる」
<No.08-02から続く>
「エンタメと無縁だ」と思っていても、そんなことはない
小沢:あとさ、あの当時、本当に「エンタメいらない」みたいだったじゃん?
ハマ:うんうん。
小沢:どう思う? エンタメってどういう存在なんだろう?
ハマ:でも、人間にしかつくれないし、感じられないことですからね。いらないも何も、なんていうか、生きるうえで絶対に何かしらそれに支えられてるっていうことを気づいてない人がこんなにもいるんだなって僕は思いました。
小沢:うん、そうだね。
ハマ:好きで映画をよく観に行くとか、本をすごい読むんですとか、漫画が大好きでとか、音楽を聞くんですとか。何でもいいんですけど。お笑いが好きとか。っていう自覚がないから「エンタメと無縁だ」と思ってるだけで、そんなことはないと思うんですね。
小沢:なるほど。
ハマ:だからなんか、そういうことを……趣味とかじゃないから、エンターテイメントと全然離れた生活してるって思ってるだけで、これは人間がつくり出した文化じゃないですか。もう自然発生じゃないっていうか。だから、それがすごくはっきりわかって、僕はすごい嬉しかったんですけど。なんか「そうじゃない」って思う人がやっぱりそこでいるんだなっていうのも大きい発見だったっていうか。
必要・必要じゃないっていうか……よく、なんか「あなたにとって音楽はなんですか?」「空気みたいなもんです」みたいな、あるじゃないですか。それは全然間違ってないと思うし。いや、本当あれに近いというか。「エンターテイメント」っていうジャンルにしてるから、そこに触れてるか、触れてないかみたいな思考になってるだけで。なんか衣食住みたいなことと並列で、もう常にあるもんだと思ってますけどね。
小沢:俺はね、結構今の衣食住で言うと、衣食住は生きるために必要じゃない? で、衣食住じゃない仕事って、究極言えば、エンタメとか音楽でも映画でも漫画でも、なくても息はしていられるよ。
ハマ:そうですね。それは本当にそうです。
小沢:衣食住がなきゃ生きてはいけないけど、衣食住以外のものがあるから生きていく理由があるみたいな。衣食住だったら下書きというか、鉛筆で下書き書いてるんだけど、他のエンタメがあるからそれに色を塗ってるような気がするというか。
ハマ:うんうん。奥行きとか色彩がその人生につくっていくというか。やっぱり小沢さん、本当にたとえが……さすがですね。
小沢:いや、全然下手だから。
ハマ:「下手だから」じゃないですよ。そんなことない。絶対に。
小沢:じゃあ俺、思ったこと言っていい? たまにさ、「もう嫌だな。自分の中で終わっちゃおうかな?」って思う日があったとしても、「いやいや、待てよ?」って。若い頃とかね、「来月、『ジョジョ』の新刊出るから、それまで俺は死ぬわけにはいかない」とか。「1年に1回、クロマニヨンズのアルバムが出る。まだ今年の、聞いてないから。そこまでは俺、なんとか乗り切ろう」とか。エンタメって、生きる理由をくれるというかさ。
ハマ:そうですね。それがないと生きられないか? っていうのは、なかなか意地悪な質問だなとも思いますけど。でも、人生みんな何が起こるかわからないなかで生きてるじゃないですか。「あと3日生きたら、こうなります」みたいなことってないから。そこに、なんていうかピンを刺してくれるっていうのはすごく、ありますよね。今の新刊とか、新しいアルバムとか。そういうぼんやりした明かりみたいなのが灯っているというか。
レールがバーッて見えてるわけじゃないけど。でもそれをキャッチできるかできないかでやっぱり、どういう気持ちで進んでいくかっていうのは大きく変わるし。何かをつくるとか表現するっていうことも含めて、エンタメといえばもうね、だって、食べてるものとか、見てる景色も含めて全部そうだと思いますからね。
小沢:そうだよね。衣食住じゃないけど、たとえば恋愛もエンタメとして考えてみると、恋愛も生きる理由のひとつじゃん? 別に恋愛がなくても、生きるだけならできるんだから。
「好き」が広がっていくのがエンタメの魅力
小沢:ちなみに今、支えられてる、自分にとっての毎日の……まあ、ハマくんも俺らもやる側だけど。受け取る側として、好きなものは何かある? 好きなバンド、好きな漫画、好きな映画……ゲームでもいいし。
ハマ:そうですね。もうゲームをやるのも大好きなんで。やっぱり、たとえば少し前にフロム・ソフトウェアっていう会社があるんですけど。そこの結構待望の新作が出るみたいなのはもうさっき、小沢さんがたとえに出したように「フロムの新作が3月に出るんだから、ちょっともう、体調を整えよう」みたいな(笑)。「いや、どうせ何徹もするんだから、よく寝ておこう」とか。それがあるからなんかイラッとしても、「まあでも来週、出るしな……」とか。それとか、やっぱりゲームが好きだからシンプルにそういうのもありますし。
小沢:俺の友達で同期の次長課長の井上っていうのが、ゲーム大好きなんだけど。『ドラクエ』とか『モンハン』とか、発売日発表されたらそこから3日間は休みを取ってるもんね。半年前から(笑)。
ハマ:アハハハハハハハハッ! いや、でも本当に好きってね、なんかそういうことだし、わかるから。とか、なんかこう、たとえば音楽も、すごい良い演奏を聞くとか、好きなアルバムを聞くってもちろんたくさんあるんですけど。ママズ・ガンっていうソウルをやるイギリスのバンドがいて。で、そういうなんか昔からの慣わしみたいなトレースのバンドって、たくさんあるんですけど。僕、はじめて現代でそういうことをやってるバンドで、素晴らしいのはもちろんのこと、なんかもう会ったこともないのに、共感しちゃうぐらい好きになっちゃって。
「こんなことができたら、それは楽しいよな。だし、俺がやりたいことって本当にこういうことなのかも」って思わせてくれるぐらい素晴らしいバンドで。そのバンドの新譜がこの間、出たときとかは本当にすごく新鮮に「頑張ろう」と思いましたね。発売された後も、される前も。なんかそんなことが、大きくてもちっちゃくても、あるのがエンターテイメントのいいところっていうか。いいところっていうか、それがエンターテイメントかなと思いますけど。
小沢:で、エンターテイメントの良いところはたとえば今、ハマくんが話してくれたバンド。知らなくても、たぶんこれを聞いているハマくんのことが好きな人は、それを聞こうと思うじゃん?
ハマ:そうですね。
小沢:そうやってどんどん「好き」が広がっていくのがいいと思う。俺、子供の頃からマーシーが好きで。マーシーの読んだ本、マーシーが観たい映画、全部観なきゃと思って。やっぱりそれを追いかけることによって……だから好きな人の好きなものを知りたいっていうのは、すべてそうなんだろうけど。エンタメはいちばんそれが伝えやすいよね。
ハマ:うんうん。残していくために……。
小沢:その80年代のロックンロールでもいいけど。
ハマ:でも、だからこそ残ってるんですもんね。もう最初にやった人をただ見てた人が感化されて。で、まったく同じことなんかできるわけないじゃないですか。それはもうその人にしか生めないから。でも、その人の感覚を持った……だからDNAみたいなもの。その人なりに表現したものっていうので、ずっと枝葉が続いてるから。本当にその、笑うことなんてそれこそ人間にしかできないじゃないですか。面白いって感じるって。でも、それって別にコメディだから笑うんじゃなくて、すごいライブとかも見ると、笑っちゃいません? すっごい良い演奏とかを見ると、感動して泣いちゃうとかあるけど。もう面白すぎちゃって。
小沢:「怖っ!」ってね。「怖っ!」って。笑いながら「怖っ!」だもんね(笑)。
ハマ:すごすぎて、自分の器に入りきらないから。だから笑う、笑っちゃうみたいな感情表現って本当にエンタメの……小沢さんはこれ、お笑いをやってるから言ってるとかじゃなくて。なんかすごい特筆するべきポイントだなとすごく思ってて。すごすぎて笑っちゃう、みたいな。
小沢:そうだよね。だって、どれぐらい感情あるかわかんないけど、赤ちゃんだって笑うと泣くしかしないんだから。すごいことだよね。笑うと泣くがエンタメとは直結してるから。
ハマ:「なんであの機能がついたんだろう?」と思っちゃいますよね。でも、それ研究している人だって絶対いるわけじゃないですか。笑いって。
小沢:研究ででも答えが出るようなものは、笑えない気もするけどね。
ハマ:とかっていう話になりますよね。なんかそれが本当に面白いところというか、いいところというか。最初に言った、だから自覚して「エンタメと密接かどうか」なんて思ってる人もいるけど。いや、みんななにかしらの枝葉の一部にいるんだよなと思うというか。それに「興味ない」って意見することも、もうある意味エンターテイメントだと思いますよね。
小沢:ああ、そうだよね。そうかもね。
ハマ:それはやっぱり淘汰されるものも、もちろんあるじゃないですか。生み出されるものが全部、残るとは思わないから。
小沢:そうかそうか。
<08-04に続く>
文:みやーんZZ
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