読む、 #ウェンホリ No.14「みうらじゅんさんと一緒に朗読で成仏」
副部長さんからの悩みを朗読で成仏
堀井:さあ、それではですね、人生を考えてまいりましたけれども、ここからはこちらのコーナーです。「朗読で成仏」。ラジオをお聞きのあなたのお仕事の悩み、モヤモヤを成仏するコーナーです。
今回は小学4年生の頃から仏像に目覚めた、仏教にも明るいみうらじゅんさんも一緒にリスナーの悩み、モヤモヤを成仏していきます。まずはこちらからです。「副部長」さん。50代会社員の方です。
「友人、知人が活躍していると……特に講演や登壇など目立つ活躍をすると、不意にモヤッとしてしまいます。自分は裏方、運営事務局、オペレーションが好きで得意だと思っているのに、自らが前に出たい欲望が自意識の外で渦巻いているのかと思うと、落ち着かない気持ちです。みうらさんも美香さんを前に出るキャラクターではないようにお見受けしますが、同じようにモヤッとすることはありませんか? この気持ちは何でしょうか?」
みうら:うーん。僕がもし若い頃なら確実に「オペレーションズ」っていうバンドを組みますね。
堀井:最高ですね(笑)。
みうら:確実にそうです。やり口は。
堀井:私もちょっと他の番組ですけれども。そのオペレーションっていうものがどれだけ大事かっていうものに気づかされる瞬間があったんですね。「裏方」ということですね。「オペレーションズ」いいですね。
みうら:オペレーションズでバンドを組んで、バンドのオーディションとかに出て。それで売れればいいと思います。だから仕事のところでは前には出ないけど、そっちではステージに立てばいいんじゃないですか?
堀井:なるほど。光の当たる場所を自分でつくるってことですね。
みうら:そうです。そっちに持っていったときに、バンド名はオペレーションズにしてくださいね。もうそれは譲れませんよ?
堀井:素晴らしいです。あなたの輝く場所はもう他にもあります。
みうら:響き、いいもん。オペレーションズ。「えっ、なんだろう? かっこいいな」って思いそうですよ。
堀井:でも「ズ」だからやっぱり3人ぐらいは必要っていうことですよね? 1人ではただの「オペレーション」で。
みうら:まあ、僕の世代の考えですからバンドって考えたけど。1人でね、なんか打ち込みでやられてもいいんじゃないですかね。「どうもー。はじめまして、DJのオペレーションズです!」とかって言ってやるのもいいじゃないですか。だから外では「オペレーション」っていう自分のペンネームというか、名前にするのはどうですか?
堀井:心強いです! なんかグッズもつくって。
みうら:ああ、黒に白抜きのやつで頼みますね。ちょっと歳を取ってきたんで。あんまり派手なのは着れないんで。そのときはぜひとも送ってください。
堀井:とても本当にいい意見をいただきました。
ハマチさんからの悩みを朗読で成仏
堀井:続いて「ハマチ」さん。30代会社員の方です。「仕事中の先輩の口笛にイラッとします。仲良くない先輩だし、その先輩の上司に当たる人も注意しないのでピーヒャラ吹き続けています。ちなみに社風はだいぶフリーダムです。これは仕方がないのでしょうか? みうらさん」
みうら:僕はね、口笛世代なんですよ。口笛世代っていうのは、あるんですよ。確実にね。
堀井:あります、あります。
みうら:やっぱり「口笛を吹くと寂しくない」って教えられたもんで。1人でいても、怖いときとかよく口笛吹いてね、ごまかしてきたんだけども。その口笛文化がある時代に育った人間としては当然、マカロニ・ウェスタンを経てるんですよ。『荒野の用心棒』の「さすらいの口笛」っていうテーマ曲はもう大ヒットして。今でも、たまにテレビとかでそういうクールな場面にBGMとして使われるんですけど。だからその先輩が口笛はやめないと思うんですよ。やめさせることはできない。そんな「ブリーズ○○」みたいな、いびき防止みたいなのを貼るわけにいかないじゃないですか。だから、その人がやめないっていうことは、口笛を好きになるしかないんですよね。だから、ぜひとも『荒野の用心棒』を見てください。たぶんネットのやつ見れると思うんだよね。名作だから。
堀井:変換ですね。「好きになっていく」っていうのはみうらさんの手法のひとつでもありますね。
みうら:『夕陽のガンマン』でもたぶん……エンリオ・モリコーネのやつはけっこう、口笛が入ってきますんで。これを機にマカロニ・ウェスタンを好きになるのはどうでしょう?
堀井:ああ、素晴らしいご意見をいただきました!
みうら:それだったら、その先輩の口笛に「そこはね、もっと食ったように吹いた方がいいよ」とか。逆にアドバイスしてみるのはどうでしょう?
堀井:毛嫌いをせずに寄り添っていくってことですね。ありがとうございます。
ブルーアワーさんからの悩みを朗読で成仏
堀井:では続いてです。「ブルーアワー」さん。20代会社員の方。「この春から会社で新人教育を担当していますが、日々試行錯誤していくなかで、どう褒めて、どう叱ればいいかわからないという悩みを抱えています。褒めすぎてもいけない。かといって叱りすぎてもいけないということは重々承知しておりますが、褒めることと叱ることのバランスを取ることに苦戦しております。指導を意識するあまり、褒めることよりも叱ることが増えてしまうこともあります」。褒めることと叱ることの……。
みうら:っていうか、この方が褒め下手なんじゃないですか? 褒め下手、叱り下手なんですよ。だから、悩むんですよ。うまい人は、褒めますよ。そんなの。
堀井:みうらさんは褒めるタイプですか? 叱るタイプですか?
みうら:えっ、誰をですか?
堀井:なにかムッと来たことですとか、「こうじゃないんじゃないかな?」と思った時に、どうやって……その、人をよき方に導く時にですね。
みうら:もう、帰りますね。
堀井:アハハハハハハハハッ! 新しい(笑)。
みうら:まず、相当好きな人だったら別だけど。もういいや。そんな人。面倒くさいもん。
堀井:「帰る」っていうのは今までの私の会社人生のなかではなかったので。これは新しい考えですね。素晴らしいです。
みうら:別に帰ってもいいんですよ。
堀井:そういうことですよね。どうして帰らなかったんだろう? っていうことになってきます(笑)。
みうら:人は帰ってもいいし、帰らなくてもいいんですよ。ねえ。でも、そういう上の立場で褒めるのがいいか、叱るのがいいかっていうのを悩んでる人って絶対、下手ですよね。元々。「やっぱりあの人の褒め下手はすごいよ!」って言われてる人ってもう、イチコロですよ。その人。人を伸ばしますよ。
堀井:だから、中途半端はいけないってことですよね。
みうら:どっちかに振り切った方がいいんですよ。1回ね、どっちかに振り切ってみないと、わからないんですよ。真ん中って。
堀井:なるほど。そうですね。でも、その真ん中、中道の大切さもみうらさん、説いていらっしゃいましたけども。
みうら:まあ、だんだん歳を取ると「ほどほどがいい」っていうのが気がつくじゃないですか。それをお釈迦様があんな若い頃に……20代そこそこで気がつくことがすごいじゃないですか。人ってだいたいね、悟るんですよ。きっと。だって「なんか、どうやるいつか死ぬらしいじゃない」みたいな。あれも悟りじゃないですか。「覚悟」っていう字があるように「悟りを覚える」っていうんだから。だから歳を取っていったらだいたいね、もう悟ってつまらない人間になっていくんですよ。「あいつ、悟ったみたいなことを言って、つまんねえな」ってよく言われるじゃないですか。でも、それを若い頃に気がついたお釈迦様がすごいわけで。だから……何の話してましたっけ?
堀井:今は中道じゃなくても、振り切れっていうことですね。お釈迦様は若いうちに気がついたけれども。
みうら:歳を取ったら、ほどほどがいいじゃないですか。当然。だから飲み過ぎなんてもう今、3日酔いとか4日酔いになるよ。
堀井:ほどほど、聞きますけども。若いときは振り切れっていうことですね?
みうら:振り切ってみないと中道はわからないですよ。絶対。わかるわけないですもん。お釈迦さんじゃないんだから。
堀井:これ、ずっとやっていたいんですけど(笑)。
みうら:俺もね、今、いいのが出てます。
堀井:100本ノックみたいにやりたいですけど。
みうら:こんなこと、聞かれたことないからですよ。いいの、浮かんでます。今。
理系ちゃんからの悩みを朗読で成仏
堀井:もうすでにビンビン来てます。もう本当に。「理系ちゃん」。20代の会社員の方です。「私のご相談はテレワークでの寂しさの向き合い方です。私の仕事はプロジェクト単位で進む技術職で、テレワークが多い日々です。家にずっといると、世界から置いてけぼりな気持ちになる私は、ついつい家の食べ物を口寂しく食べてしまい、52キロから58キロに増えました。家にも居場所はありません。食事、そしてポッドキャスト、YouTubeなどコンテンツ以外の息抜きを知りたいです。みうらさん、テレワーク中の息抜きの仕方をご教示ください」
みうら:その前に引っかかるのはやっぱり「置いてけぼり」ですよね。そのルーツは魚を釣り上げて持って帰ろうと思ったら「置いてけ、置いてけ」っていうホラー話なんですよ。「置いてけ堀」っていう。
堀井:ああ、そうなんですか! 実際にあったお堀なんですね?
みうら:そうですよ。「置いてけ、置いてけ」っていう。そんな堀、どこにあるんでしょう? どこにそいつは出るんでしょう? その「置いてけ」って言う幽霊は? 俺、それがものすごく前から興味があって。「あそこのお堀のところなんじゃないかな?」と思って。いろんなところに伝説があるんですよ。「置いてけ堀」って。それにすごい興味があります。
堀井:それは全然まだ解明はされてないですか? いろんなところに……。
みうら:だから、俺は置いてけ堀ブームがあったと見ているんですよ。だから、いろんなところで観光資源というか、盛り上げるために……一時ほら、北海道の屈斜路湖でクッシーとか。九州では池田湖のイッシーとか、いきなり途端に出てきては、途端にいなくなったやつ、あるじゃないですか。おいてけぼりもたぶん江戸時代になんか流行ったと思うんですよね。で、いろんなところに「ここが置いてけ堀の本当のところだ!」なんていうので、すごい観光客が来たりしていたんじゃないですかね。
堀井:そうやってそれぞれの地域が盛り上がったりしたんでしょうね。
みうら:活性化したと思うから。「そのテレワークをしているそこが置いてけ堀なのかな?」って思ったんだよね。「ここが発祥地だ! って言われてしまうぞ、これは」って。置いてけ堀の震源地というか。
堀井:「もしかして、ここからはじまったんじゃないか?」っていうことですよね。
みうら:そう思ったらね、なんかすごく愉快な気持ちになってくるんじゃないかな?って。「ここが置いてけ堀だ!」っていう。
堀井:なるほど! 「この地が、数々の伝説の!」って。
みうら:で、そのテレワークのパソコンのところに「ここが置いてけ堀」っていうシールを貼ると、なんか1人じゃない。置いてけ堀がいるわけですから。「置いてけ、置いてけ」っていうやつが。
堀井:時々、お祓いに来てもらったりとか。
みうら:やった方がいいね。イベントとしてね。で、そのときには人を集めてもいいんじゃないですかね? そう思うんですけどね。
堀井:素晴らしいですね(笑)。ありがとうございます。やっぱりみうらさん、こうやって全部そうやって最後、結果、かたちにしていくっていう。
みうら:途中からね。深い考えはなく、途中からまとめていくのが前から得意でした。はい。
堀井:素晴らしい(笑)。
<書き起こし終わり>
文:みやーんZZ
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