制作メンバーと一緒に振り返る #ウェンホリ「堀井美香さん、ファーストシーズンいかがでしたか?」
まずはファーストシーズンを振り返り
──堀井さんは、独立1年目の年に「ウェンズデイ・ホリデイ」のパーソナリティを務めることになりました。ファーストシーズンはいかがでしたか?
堀井 ゲストのバリエーションがすごかったですよね。
中澤 篠田真貴子さんからはじまり、佐野亜裕美さん、みうらじゅんさん、岸本聡子さん、小国士朗さん、そして最後に松本紹圭さんという顔ぶれでした。
堀井 そもそもゲストの選定については、すべてお任せしようと考えていたんです。リクエストを出してしまうと、私の興味のある人ばかり呼んでしまうことになる気がしたので。自分の知らない分野で活躍されている方々に話を伺ったことで、いろんな知識を得ることができました。
中澤 前提として、できるかぎりいろんな角度から「働く」に関する話を聴きたいと思っていたんですね。仕事に日々邁進していると、自分たちのまわりのことばかりに目が行きがちになってしまうので。私たちで言えば、「IT企業」や「スタートアップ企業」といった枠組みに収まってしまう怖さがあったんです。でも、外にはもっと広い世界があるわけじゃないですか。それをもっと知りたいなと思って。
──印象に残っている言葉やエピソードはありますか?
堀井 篠田さんのおっしゃっていた「ジョブレス」という言葉は、目から鱗でした。かつてなら、敷かれたレールから一度でも外れてしまうと、メインストリームに戻ってくるのはなかなか難しかったと思うんです。私の世代なんかは特に。でも、これからの時代は休むことも選択肢に入るし、むしろ休みの期間を設けることで人生が豊かになるんだっていう、そういう時代の変化を知る良いきっかけになりました。
中澤 私は佐野さんのチームづくりに関する話がすごく参考になりました。業界はまったく違うけれど、苦労されていることや悩んでいることがどこか似ていて、自分事として考えることができたなって。
堀井 ドラマプロデューサーって本当に大変だと思うんですよ。今まで男性中心で成り立ってきた業界ですから。現在は過渡期ということもあり、少しずつ若い女性の活躍が目立つようになっているそうですが、それでもプロデューサーという立場で活躍されている女性はまだまだ少数なわけで、苦労も多分にあるんだろうなと。
中澤 配信時は放送直前だったドラマ『エルピス』に関する話題も出てきて、反響も大きかったように思います。
──反響という意味では、みうらじゅんさんの回はSNSでも多くの感想が寄せられました。
堀井 もう最高ですよね。みんなの憧れ。あんなふうに肩の力を抜いて生きることができたらものすごくハッピーだなと思います。と言いながらも、簡単にみうらじゅんさんのようにはなれないし、勇気も覚悟も持てないんですけど(笑)。
中澤 ただ、「みうらさんみたいになりたい!」と思えるだけで心が軽くなりますよね。
堀井 どんなに過酷な現場でも、あの佇まいでいらっしゃるんでしょうね。たまに写真なんかを撮ったりして(笑)。
──みうらじゅんさんの次の回では、東京都杉並区長の岸本聡子さんがいらっしゃいました。
堀井 これもナイスキャスティングでしたよね。みうらじゅんさんからのギャップに驚いたリスナーも多かったと思います。
中澤 意図してあの順番になったわけではないので、実は偶然の産物だったのですが、結果としてすごく良い並びになったと思います。
堀井 そもそも、よく出演してくださったなと。お忙しいはずなのに。
中澤 お仕事が終わった後、夜の時間にいらしていただきましたもんね。しかも、行政のことをすごくフランクに話してくださったのが印象的でした。良い意味でタブーのない話し合いができた気がします。
──続くプロデューサーの小国士郎さんは、「前のめり12度になったときがチャンス」「素人は世の中のマジョリティ」など数々の名言を残していかれました。
堀井 テレビ番組をつくってきた方なので、どうしたらわかりやすく伝わるのかをとことん考えているんでしょうね。「注文を間違える料理店」や「deleteC」をはじめ、名前の付け方もすごく印象的ですし。
中澤 認知症やがんなど、センシティブなテーマを扱うプロジェクトを手がけるときにも、「北風と太陽」でいう太陽的なアプローチで取り組みたいとおっしゃっていたのが心に残っています。
「今、世の中では大変なことが起きていますよ!」とシリアスなトーンで注意を引くのではなく、みんなが思わず覗いてみたくなるようなユーモアのあるプロジェクトにして広げているのは素敵だなと。
しかもユニークなだけではなく、プロジェクトの中心にいつも小国さんが現実のなかで心を動かされた原風景があるというところに誠実さを感じました。
──そして、ファーストシーズン最後のゲストは現代仏教僧の松本紹圭さんでした。
中澤 ウェンホリを聴いてくれている社内のメンバーに感想を聞いてみると、松本紹圭さんの「“目標”という呪い」に関する話がすごく響いたみたいで。会社に所属していると、常に目標を追わないといけないし、目標を達成したらしたで新しい目標を立てないといけない。そういう繰り返しに疲れてしまうこともあるから、心が解き放たれる感覚があったみたいです。
堀井 お坊さんの話ってなんであんなに癒されるんでしょうね、同じ人間なのに。「あ、掃除しよう!」みたいな気持ちになりましたもんね。
セカンドシーズンはどんな感じになる?
──本日2023年2月8日(水)17時からセカンドシーズンの配信がスタートします。ファーストシーズンからの変化はありますか?
中澤 ファーストシーズンは手探りで進めていたのですが、この約3カ月である程度の感触は掴めたし、音声コンテンツの可能性も感じることができました。本当に多くの方に聴いていただけたし、社内メンバーからも「仕事終わりに聴くのにちょうどいい」という声をもらっていて。堀井さんとゲストが、緩やかに話している感じが心地よいみたいです。
堀井 ありがとうございます。
中澤 そういう雰囲気は、セカンドシーズンでも保っていけたらいいなと考えています。加えてセカンドシーズンでは、SmartHRがコーポレートミッションのキャッチフレーズとして掲げている「well-working」(ウェルワーキング)を啓蒙する発信もしたいなと。
──どのような意図が?
中澤 ほんの数年前までは「オフィスに出社して、8時間働いて帰る」みたいな働き方が当たり前でしたが、今は“こうあるべき”という価値観からの転換期を迎えていて、徐々に時間や場所に捉われずに働けるようになっていますよね。そうやって働き方の多様化が進んでいる一方で、何をどうしたらいいんだろうと迷っている人も多いと思うんです。
中澤 しかも理想的な働き方って、人それぞれに異なるじゃないですか。それこそ、100人いれば100通りあるというか。だから「これが理想の働き方です」と一方的に正解を押し付けるのではなくて、いろんな方の働き方にまつわる話を聴きながら「こんな働き方があってもいいんだ」「自分が今いる環境でも生かせそう」と気づきになるトークプログラムにできたらいいなと考えています。
──ちなみに、堀井さんにとって“いい働き方”はどのようなものですか?
堀井 自分にとって何かしらプラスになっていることでしょうか。きちんと成果が出ているとか、人のためになるものをつくっているとか。仕事って自分の感じ方次第でやりがいは変わってくると思うんですよ。たとえば、コピーを1枚取るだけでも、本人が達成感を感じていたらいい仕事じゃないですか。
中澤 そうですね。
堀井 そうやって少しでもポジティブな気持ちで働くためには、労働環境ってすごく大切だと思うんですよ。
中澤 私も経験があるのですが、つらいときって視野が狭くなってしまって「この仕事がうまくいかなかったら、私の人生は終ってしまうのでは?」みたいに思う瞬間があるんですよね。でも、今その人が見ている世界がすべてではないじゃないですか。
堀井 違う道もあるでしょうしね。とはいえ、私は1人で動いているので、嫌いな人と一緒にいることもないし、ストレスになる出来事もほとんどないし、面倒な業務報告を書く必要もない。自分がプラスになることだけに集中できるのですが、企業に属しているとそうも言ってられないですしね。
中澤 増えてきているとはいえ、さまざまな統計データを見ると働いている人のなかでフリーランスの方ってまだ10%もいないみたいなんですね。逆を言えば、残りの約90%以上は何らかの形で雇用されているということでもあるので、企業や組織について考えることで、人々の働き方が見えてくる。そんな予感がしています。
あらためて、セカンドシーズンに対する展望を!
──セカンドシーズンでもさまざまなゲストを迎えることになりますが、どのようなシーズンにしたいですか?
堀井 現場で奮闘されている方の声をたくさん聞けるといいなと思います。トップランナーの話は聞き応えがあるので、それはそれで面白いのですが、その方だからこその事例も多いじゃないですか。
中澤 すごくわかります。こうしたらいいと言われても、実際に取り組むのはハードルが高いことってありますよね。
堀井 それに、本を読むだけでは知ることのできない事実がどんな業界にもあると思うんです。
先日、あるラジオ番組のゲストにマシンガンズの滝沢秀一さんがいらっしゃって、ゴミ清掃員として働いているからこそ見える現状について話を伺ったのですが、サービスで1枚追加された無料のピザがそのままゴミとして出されるケースが増えているとおっしゃっていて。
中澤 マーケティングの手法として効果があると思われているものが、実は負荷になっているということですよね。
堀井 そういう話って普通に過ごしていたら知り得ないことなんですけど、いろんな場所で巻き起こっているはずだし、現場のリアルな声に触れることで得られる働き方のヒントもあるのかなと思います。
中澤 それぞれの業界が抱える葛藤や悩みを知る機会があってもいいですよね。そのうえで、「そんなこともあるのか」と納得して終わるのではなく、小さな単位で構わないから何ができるのかを話し合っていけたらいいなと思いました。
──では、中澤さんはどんなシーズンにしたいですか?
中澤 先ほども話したとおり、「well-working」という言葉を大きなテーマにしたいと考えています。そのうえでの話になるのですが、少し前に「well-working」を実現するためにはどんな要素が必要かを考えていたんですね。それでこれは仮説なんですが、3つくらいに集約されるんじゃないかなと。
まずは持続可能であること。どんなに好きな仕事でも、毎日15時間絶対に働かないといけないとか、給与が見合わないとかだと、長く働くことができないんですよね。
次に心理的安全性が担保されていること。一緒に働く人と信頼関係が築けていないと、パフォーマンスを十分に発揮できなくなってしまうから、上司とか部下とか、内部とか外部とか関係なく、きちんと信頼関係を築くことが不可欠だと思います。
中澤 そして最後に、こだわりを持てること。たとえば、私は文章を書くのが好きなのですが、他人からしたら気にならない細部にこだわることがあって。そんなに時間をかける意味はないし、理解されないかもしれないけれど、それでも突き詰めることで私は達成感を感じることができるんですよね。
もちろん、これらにかぎらなくてもいいのですが、ゲストやリスナーにとっての“いい働き方”についても聞けるといいなと考えています。
──ありがとうございます! それでは、セカンドシーズンもよろしくお願いします。
堀井 よろしくお願いします。
中澤 よろしくお願いします。
取材・文:村上広大
撮影:玉村敬太
本日配信スタートのセカンドシーズン第1回はこちら!